= INDEX =
1 アリゾナの風来坊 2 オカバンゴのフォックス 3 入墨屋のルソー 4 ルーマニアの自転車乗り 5 キリマンジャロのセラフィンとエリ 6 アラスカのジャックさん 7 アマゾンのナポレオン 8 パプアの村人たち 9 ウォークマン 10 エルサルバドルのコロー 11 エクアドルの警官 12 イランのホセイン 13 ヒンバ族 14 ザンビアの妖術師 15 国境警備隊 16 マサイの大男 17 ツルカナ族 18 メキシコのおじさん 19 巡礼船にて 20 牛をつれたおばさん |
ブラジルとパラグアイの国境を流れる川の写真を撮ろうと土手から降りた時だった。『そこで何をしている!』と後から鋭い声が響いた。振り向くとジープに乗った軍人に指示された兵士が走ってきている。
言い訳する暇もなく銃を突き付けられた僕は、学校のような軍の兵舎に連行された。中庭に入ると行軍の練習をしていた数十人の兵士の視線が一斉にそそがれる。気がつけば悪名高い南米の軍のど真ん中にいた。
HOLD・UPのまま周囲を観察してると、勲章を付けた軍人が6人やってきて僕を取り囲んだ。『お前はあそこで何をしていた?』『川の写真を撮ろうと思っていたんだけど』『あそこは写真撮影禁止だ』『そんなの看板もないのに分かるか』『口答えするな!』後ろから兵士が刑棒でビシリと背中を打った。
スパイ容疑で一時間近い尋問が続いた頃に最初に僕を捕まえるように指示した上官が帰ってきた。どうもこの人が隊長らしく周囲の空気が一気に緊張した。彼はこちらに近付いて来るとぎこちない英語で同じ質問をした。すると若い兵士の間から『すごい!隊長は英語がしゃべれるんだ』とどよめきが起こる。
それを聞いた彼は得意満面で急に機嫌が良くなり、おかげで僕はいきなり無罪放免となった。『兵士と共に行軍して敷地を出ろ』妙な命令を受け、歩調を合わしてると追いかけてきた彼は『俺と一緒に橋を背景に写真を撮ろう』と兵士に僕のカメラを渡した。なんだよ、それ?じゃなんで僕は捕まったんだ。 |