= INDEX =
1 アリゾナの風来坊 2 オカバンゴのフォックス 3 入墨屋のルソー 4 ルーマニアの自転車乗り 5 キリマンジャロのセラフィンとエリ 6 アラスカのジャックさん 7 アマゾンのナポレオン 8 パプアの村人たち 9 ウォークマン 10 エルサルバドルのコロー 11 エクアドルの警官 12 イランのホセイン 13 ヒンバ族 14 ザンビアの妖術師 15 国境警備隊 16 マサイの大男 17 ツルカナ族 18 メキシコのおじさん 19 巡礼船にて 20 牛をつれたおばさん |
テヘランで道に迷った。バイク屋で尋ねると主人から『まぁ、お茶でもどうぞ』と日本語が返ってきた。イランには日本からの出稼ぎ帰りの人が多い。ホセインもそのひとりで、今も仲間たちに日本の話をしていたのだと言う。彼は僕が店に来たのは偶然とは思えないと言って、自分のバイクで一緒にホテル探しを手伝ってくれた。
しかし、この町には交通ルールなんてないようだ。ロータリを逆走するホセインについていくのは本当恐ろしい。その無理のせいか、僕のバイクは町中で動かなくなりバイク屋街に通う毎日になった。
バイク屋街周辺は昔は歌舞伎町みたいだったらしいが、ホメイニ政権誕生後は風紀上の理由から取り壊され、今や彼らの店も風前の灯だ。ある日、通りがかりのイラン人紳士が英語で『なぜこんな所にいるんだ?こいつら危ないぞ」と早口で言った。実際彼らはよく地区ぐるみでバイク屋に来る客を騙していた。でも、見慣れてくればそれは騙すというより、駆け引きを楽しんでいるようだ。そしてうまく儲かれば禁制の密造酒で乾杯する。
僕は山賊の一味に加えてもらったようで最高におもしろかった。しかし騙すなら同国人より僕の方が簡単なはずだ。なぜ親切にしてくれるのか聞いてみると「俺たちは金のあるヤツや強いヤツからは取る。あなたは強いけど、この町では弱い人」と言った。なかなかカッコイイことを言う。彼らは現在の義賊なのだ。 |