= INDEX =
1 アリゾナの風来坊 2 オカバンゴのフォックス 3 入墨屋のルソー 4 ルーマニアの自転車乗り 5 キリマンジャロのセラフィンとエリ 6 アラスカのジャックさん 7 アマゾンのナポレオン 8 パプアの村人たち 9 ウォークマン 10 エルサルバドルのコロー 11 エクアドルの警官 12 イランのホセイン 13 ヒンバ族 14 ザンビアの妖術師 15 国境警備隊 16 マサイの大男 17 ツルカナ族 18 メキシコのおじさん 19 巡礼船にて 20 牛をつれたおばさん |
ザンビアにあるアンゴラ難民のキャンプに行ってみた。知人の話ではここに南部アフリカ最強の妖術師がいるという。
キャンプに来て二日目、子供達に聞いてみると『彼は自分の思い通りに人を操れるんだ』と真剣に言った。翌日、疑いながらも妖術師に会ってみたくなった僕はキャンプの日本人や子供達に彼の家に案内してもらう。意外にも戸口に現れたのは竹中直人に似た全然迫力のない小男だった。実は彼等は妖術三兄弟で一番の実力者である長兄は今、別の部落に出張中らしい。でも次男の彼も術は使えるという。
彼の指定する小屋に僕らがバイクで向かうとその後から自転車に乗った彼は異常なスピードで追いかけてくる。先程の怯えた様子と変わり、すでに何かに憑かれたような顔になっていた。
小屋で車座になった僕等に彼は『その棒を全員で力一杯地面に押しつけろ』と言うと、瓢箪を数個串ざしにしたような物をジャラジャラ鳴らして不気味な呪文を唱え出す。それを見た子供達の顔に恐怖が走った。
最初は冷笑していた僕等も繰り返される呪文を聞いてるうちにだんだん変な気分になってきた。やがて彼が棒の上に手を置いて揺すると棒は空中に浮き上がり、四人共、彼に振り回される。もうどんなに力を入れても棒を地面に付ける事は出来なかった。
何かカラクリがあるに違いない。信じられずにア然とする僕らを見て『だから言っただろう』と子供達は得意そうに言った。 |