= INDEX =
1 アリゾナの風来坊 2 オカバンゴのフォックス 3 入墨屋のルソー 4 ルーマニアの自転車乗り 5 キリマンジャロのセラフィンとエリ 6 アラスカのジャックさん 7 アマゾンのナポレオン 8 パプアの村人たち 9 ウォークマン 10 エルサルバドルのコロー 11 エクアドルの警官 12 イランのホセイン 13 ヒンバ族 14 ザンビアの妖術師 15 国境警備隊 16 マサイの大男 17 ツルカナ族 18 メキシコのおじさん 19 巡礼船にて 20 牛をつれたおばさん |
オーストラリアでパプア・ニューギニアのセピック川を溯るツアーを見つけ参加した。しかし僕は、マヌケにもニューギニアの国内線を乗り間違えて手荷物を失い。裸一貫のまま外人旅行者たちと現地合流となった。
ツアーとはいえカヌーに乗せられる食料は限られている、足らない分は現地調達だ。そんな強引なツアーなのに村人たちは僕が旅した国の中で一番親切だった。
川沿いの村には文明が奇妙な形で入り込んでいた。ある村では電気も電池もないのに家の神棚にピカピカのステレオが飾ってあったし、別の村ではナイロン袋を靴がわりにはいている子供もいた。彼らはそれを自慢そうに見せてくれた。僕らの船頭はなぜか僕には特別に親切だった。彼と話してると「ぶた」という日本語がでた。老人から聞いたらしい。
翌日、小さな村に上陸すると長老が嬉しそうに出てきて「お前どこから来た」と一人ずつに聞いた。僕が「日本だ」と答えると彼はひどくびっくりして「ありがとう」と日本語で言った。一瞬、何て答えようか戸惑ったが「ありがとう」と言ってみると彼は顔をしゃわくちゃにして「本当に日本人だ」と言い、村人たちを呼び集め「見ろ、これが日本人だ」と自慢そうにしゃべっている。なんと僕は戦後初めて会う日本人だという。激戦地だったニューギニアで彼と日本兵の間にどんなドラマがあったのかは分からないが、彼には悪い思い出ではなさそうなことが嬉しかった。 |