Rock Listner's Guide To Jazz Music


Red Garland


Groovy

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1957/8/9

[1] C-Jam Blues
[2] Gone Again
[3] Will You Still Be Mine
[4] Willow Weep For Me
[5] What Can I Say
[6] Hey Now
Red Garland (p)
Paul Chambers (b)
Art Taylor (ds)
オリジナル曲を重視し、リハーサルを積んでからレコーディングさせることでアルバム全体の完成度の高さを売りとしていたブルーノートに対し、イージーなジャム・セッションを中心に録音し続けてきたレーベルとして引き合いに出されるのがプレスティッジ。そんなプレスティッジ所属の代表的ミュージシャンとして真っ先に思い浮かぶのが僕の場合はこのレッド・ガーランド。そもそもジャズのライヴとして普通にある姿というのは曲は枠組みだけでそれぞれにアドリブを披露するというジャム・セッション的なもので、プレスティッジの記録してきたものこそジャズ本来の姿だとブルーノート支持者である僕でも思う。ガーランドの資質というのがまたそんなプレスティッジの姿勢に実に良く合う。このアルバムは、当時さまざまなセッションでほとんど毎日のように顔を合わせ、気心知れた仲間であるポール・チェンバースとアート・テイラーを従えているだけにガーランドの普段着姿、素の魅力が出ている作品と言える。黒っぽいフィーリングが濃厚でチャーミングなテイストも良く出ている。小刻みなブラッシュ・ワークでピアノを巧みに引き立てるアート・テイラーの名人芸も堪能できるし、チェンバースのベースは星の数ほどある彼の録音の中でもベストと言って良いほどグルーヴィかつメロディアス。肩肘張らずに黒人らしいファンキーなジャズ・ピアノを味わうには最高ランクの1枚。(2006年12月14日)

Soul Junction

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1957/11/15

[1] Soul Junction
[2] Woody'n You
[3] Birk's Works
[4] I've Got It Bad
[5] Hallelujah
Donald Byrd (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
George Joyner (b)
Art Taylor (ds)
このアルバムもセッション色が濃厚でそんなお気楽なムードの演奏が魅力的。いきなり[1]からスローなコテコテのブルース。黒さ全開のガーランドの転がるピアノが心地良い。コルトレーンのシャープなテナーもバードの張りのあるトランペットも輝いている。[2]はマイルス・デイヴィスの「Relaxin'」で演奏されていた曲を再演、しかも曲の構成はあまり変えていないのでバードとマイルスの違いを楽しめる。コルトレーン、バード両者のソロはキレが良く、弾力感のあるジョージ・ジョイナーのベースも存在感たっぷり。もちろんどの曲もガーランド節全開。なじみの曲が多く演奏も快調、しかしこのムードを作っているのはリラックスしたセッションだからこそのように思え、プレスティッジのおおらかさが良い結果をもたらしている。オーソドックスかつブルース・フィーリング、黒人のフィーリングが濃厚なジャズが聴きたい人に自信を持っておすすめできる好盤。60年代のジャズばかり聴いているとこういうアルバムがときどき無性に聴きたくなる。(2007年5月27日)

All Mornin' Long

曲:★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1957/11/15

[1] All Mornin' Long
[2] They Can't Take That
[3] Our Delight
Donald Byrd (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
George Joyner (b)
Art Taylor (ds)
この時期にプレスティッジに多数残されている、バード、コルトレーンとのセッションからの1枚で「Soul Junction」と同日のセッションのアルバム。同じクインテット編成、同じプレスティッジでの録音ということでマイルス・グループと比較したくなるけれど、当然違った仕上がりになっていて、特に大きく異なるのは曲の扱い方。マイルス・グループは歌ものなどメロディがハッキリしている部分を曲のテーマに採用して、曲そのものの構成を意識しているのに対し、このアルバムはテーマはそこそこに、各人のソロを順番にまわす、いかにもジャム・セッション的なものになっている。また、マイルス・グループでのガーランドのピアノは黒人らしい泥臭さの中にもチャーミングなメロディを織り込んでいるところが何よりも魅力なのに対し、ここでは黒っぽさをより前面に出したものになっている。冒頭の[1]から20分以上に及ぶスロー・テンポのコテコテな長尺ブルース。[2]もゆったりとリラックスした曲で演奏そのもののムードはほとんど同じ。そんな中、シーツ・オブ・サウンド完成直前のコルトレーンのプレイが空気を引き締める。コルトレーンがいなかったらきっとグタグタのだらけたムードになっていたんじゃないだろうか。[3]はややテンポを上げるも大きくムードが変わるという感じでもなく、「Soul Junction」よりも、良くも悪くもイージーなムードに溢れている。(2006年9月14日)

High Pressure

曲:★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1957/11/15
1957/12/13

[1] Soft Winds
[2] Solitude
[3] Undecided
[4] What Is There To Say
[5] Two Bass Hit
Donald Byrd (tp)
John Coltrane (ts)
Red Garland (p)
George Joyner (b)
Art Taylor (ds)
これもプレスティッジ得意のジャム・セッションのひとつで曲はブルースかスタンダードという実にイージー感が漂う作り。[1][3][5]のアップ・テンポな曲にスローな曲をサンドイッチ的に挟む構成もイージー。ところが、ここでの演奏には勢いがあって明らかに皆がノッている様子が伝わってくるし、ガーランドのピアノもバンド全体も実にスウィンギー。ガーランドは得意のブロック・コードで盛り上げ、バードの活発なソロとコルトレーンのシーツ・オブ・サウンドが炸裂。ジョージ・ジョイナーのベースは極太のゴムを弾いているかのような粘着性と弾力性と音圧で迫り、いつもは堅実なアート・テイラーまでもが暴れ気味。こういう熱いジャム・セッションもまたジャズの大きな魅力と言えるでしょう。音楽的に歴史に残る類のものではないけれど、オーソドックスなジャズを好むリスナーに愛されるであろう珠玉の好演集。(2006年11月27日)