Rock Listner's Guide To Jazz Music


Bill Evans


Portrait In Jazz

曲:★★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1959/12/28

[1] Come Rain Or Come Shine
[2] Autumn Leaves (take 1)
[3] Autumn Leaves (take 2)
[4] Witchcraft
[5] When I Fall In Love
[6] Peri's Scope
[7] What Is Thing Called Love
[8] Spring Is Here
[9] Someday My Prince Will Come
[10] Blue In Green (take 3)
[11] Blue In Green (take 2)
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (ds)
マイルス・グループから自立(実はクビになったらしい)し、リーダーとなって自身のトリオを結成。そのデビューがこのアルバムで既に高い完成度を持っている。さんざん言い尽くされているように既成のピアノ・トリオとは異なり三者のインタープレイを前面に押し出したところが斬新。インタープレイをスリリングなものにするには、もちろんプレイヤー間の感性が一致していなければならないけれど、その点でこのトリオは今もって他の追随を許さない。スタンダードを中心にしていながらただのBGM的なピアノ・トリオ演奏にに陥っていないのは、この密度の高さとエヴァンス独自の感性があるからこそ。黒人っぽい泥臭ささがなく一見洗練されたピアノはとかく初心者向け、女性向けとされているけれど、独自のテンション・ノートを駆使した内省的なピアノは実は結構難解であるというのが僕のエヴァンス観で、聴きやすいこのアルバムでもそういう部分が深層にあると感じる。後のアルバムと比較すると三者の絡みの緻密さははまだそれほどではない。(2006年8月5日)

Explorations

曲:★★★★☆
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1961/2/2

[1] Israel
[2] Haunted Heart
[3] Beautiful Love (take 2)
[4] Beautiful Love (take 1)
[5] Elsa
[6] Nardis
[7] How Deep Is Ocean
[8] I Wish I Knew
[9] Sweet And Lovely
[10] The Boy Next Door
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (ds)
黄金のトリオによるスタジオ盤2作目。なんとなく聴き流してしまいそうではあるけれど、実はかなり個性的な入り方をしている[1]のエヴァンスのピアノ、そしてモチアンの小刻みでスリリングなブラッシュ・ワークにラファロのベース・ソロからより緊張感が高まり、3人の音が緻密に絡あう静かなスリルはこのトリオならでは。[2]のようなバラードでも、阿吽の呼吸でエヴァンスの美しいピアノをサポート。既にこの3人による演奏は完成の域に達している。美しく洗練されているために初心者向けとされているエヴァンスのピアノは、実は繊細でダーク、深層には前衛性(良きパートナーのラファロは元々フリー・ジャズ系の人であることをお忘れなく)までも内包していて、その表現はますます深化。BGMとして流していると一番おいしい緻密な絡みを聴き逃す。神経を集中して聴かないと本当の凄味はわからないと思う。(2006年8月5日)

Waltz For Debby


曲:★★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1961/6/25

[1] My Foolish Heart
[2] Waltz For Debby (take 2)
[3] Detour Ahead (take 2)
[4] My Romance (take 1)
[5] Some Other Time
[6] Milestones
[7] Waltz For Debby (take 1)
[8] Detour Ahead (take 1)
[9] My Romance (take 2)
[10] Porgy (I Loves You, Porgy)
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (ds)
ヴィレッジ・ヴァンガードでのライヴ盤で、10日後に交通事故で他界するスコット・ラファロの遺作となったもの。それにしてもここでの観客の反応は、偉大なるトリオに聴き入っている様子がまるでなく(ベース・ソロの後に拍手すら起こらない)、食事のBGM扱いであるかのよう。もっとも、ジャズを高尚なものとして扱う必要なんてまったくないし、むしろニューヨークではそれが日常であったことを窺い知ることができて興味深い。本作も名盤とされているけれど、ため息が出そうなほどに美しい[1]、チャーミングなメロディとスイング感も心地よい[2]が余りにも素晴らしい一方で、あおりを食らって霞んでしまうのか他の曲はあんまりパッとしない印象を受けてしまう。でも実は、印象の薄い[3]以降こそがこのトリオ本来の絡みが堪能できる内容。そういう構成のせいか全体的なバランスという意味でアルバムとしての完成度はそれほど高いとは思わない。トリオの日常の姿を捉えた記録として楽しむべきアルバムで、そこに2曲の奇跡的名演が収録されていた偶然にこそ価値がある。(2006年8月5日)

Sunday At The Village Vanguard


曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★☆
評価:★★★★★
[Recording Date]
1961/6/25

[1] Gloria's Step (take 2)
[2] My Man's Gone Now
[3] Solar
[4] Alice In Wonderland (take 2)
[5] All Of You (take 2)
[6] Jade Visions (take 2)
[7] Gloria's Step (take 3)
[8] Alice In Wonderland (take 1)
[9] All Of You (take 1)
[10] All Of You (take 3)
[11] Jade Visions (take 1)
Bill Evans (p)
Scott LaFaro (b)
Paul Motian (ds)
「Waltz For Debby」と同日のヴィレッジ・ヴァンガードのライヴ盤。アチラには美しくも有名な2曲が収録されていることから超人気盤で万人向け、コチラはインタープレイが多く収められたマニア向けの内容となっている。というよりは "My Foolish Heart" "Waltz For Debby" は、この日のライヴの中では例外的なパフォーマンスで、中核を成すのは本作のような演奏だったのではないのだろうか(Complete版は未聴)。それはともかく、このトリオがいかに他のピアノ・トリオと違うのかということを知るには最良のアルバムのように思える。エヴァンスのピアノとラファロのベースが、まるで同時進行でソロを取っているかのように進む。しかも、その場限りのひらめきで成り立っているかのように奔放に展開され、複雑に絡み方が変化する様は実にスリリングで、そこをサポートするポール・モチアンが地味でありながら、否、地味であるからこそ絶妙。エヴァンスの内面的前衛度もよく出ていることから、それを理解し好む人には超名盤と言えるでしょう。ファンには言うまでもないけれど、ビル・エヴァンスは他のジャズ・ピアニストとはまったく個性が異なる。個人的にはジャズ初心者が最初に手を出すアーティストとしてまったく相応しくないと思うし、他のピアニストを知ってこそエヴァンスの凄さがわかるというもの。このアルバムにはそのエヴァンスの個性と凄さが凝縮されているように思う。(2006年8月5日)

Undercurrent


曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1962/4/24 [2]
1962/5/14

[1] My Funny Valentine
[2] I Hear A Rhapsody
[3] Dream Gypsy
[4] Romain
[5] Skating In Central Park
[6] Darn That Dream
[7] Stairway To The Stars
[8] I'm Getting Sentimental
                               Over You
[9] My Funny Valentine (alt take)
[10] Romain (alternate take)
Bill Evans (p)
Jim Hall (g)
ピアノとギターはメロディとリズムを両方担うことができる楽器であるという点で共通している。ここではそんな二つの楽器が、時にはメロディを、時にはリズムを、入れ代わり立ち代わり複雑に絡み合う。演奏は決して熱くならずクールに、リリカルに、そして繊細に展開される。そのソフィスティケイトされた演奏は他のジャズでは得られないワンアンドオンリーのムードがある。聴きなれた曲も、この2人にかかれば斬新に料理されてしまう。特にエヴァンスの繊細なプレイは特筆モノ。(2007年1月28日)

How My Heart Sings


曲:★★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1962/5/17
1962/5/29
1962/6/5

[1] How My Heart Sings
[2] I Should Care
[3] In Your Own Sweet Way
[4] Walkin Up
[5] Summertime
[6] 34 Skidoo
[7] Ev'rything I Love
[8] Show-Type Tune
Bill Evans (p)
Chuck Israels (b)
Paul Motian (ds)
交通事故で亡くなったスコット・ラファロに代わってチャック・イスラエルズが加入した新トリオによる最初の録音。大きく変わったとも言えるし、ほとんど変わっていないとも言える内容で、特にエヴァンスのピアノに関してはスタイルの変化はなし。もっともエヴァンスのピアノはそのときどきの振幅があったとしても基本は最後まで変わらなかったと思っているので当然といえば当然か。一方で、あまりにも存在の大きかったラファロに代わるイスラエルズのプレイは比べてしまうと地味な感じは否めない。エヴァンス+ラファロの組み合わせで起こる緊張感には奇跡的なマジックがあったことは事実ながら、しかしイスラエルズのプレイが悪いというわけではないし、モチアンのドラムは変わらぬ魅力を発していることもあってエヴァンスのピアノこそが重要という人にとってはあまり影響はないかもしれない。美しさ、リリシズム、親しみやすさを併せ持つ[1]はエヴァンスならではの名演だし、手垢にまみれたスタンダードに新しい生命力を与えることにかけては圧倒的であることを再認識させる[5]も流石の演奏。全体的にはミドル・テンポのやや落ち着いた曲が多く、それが地味な印象に繋がっている気もするかれど、わかりやすさではラファロ時代より上を行くと思う。(2006年12月12日)

Moon Beams


曲:★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1962/5/17
1962/5/29
1962/6/5

[1] Re: Person I Knew
[2] Polka Dots And Moonbeams
[3] I Fall In Love Too Easily
[4] Stairway To The Stars
[5] If You Could See Me Now
[6] It Might As Well Be Spring
[7] In Love In Vain
[8] Very Early
Bill Evans (p)
Chuck Israels (b)
Paul Motian (ds)
「How My Heart Sings」と同じセッションからのもう1枚は、静かな曲で構成されていることで知られているアルバム。しかし、静かな曲と言っても甘いだけのものになっていないところはさすが。シリアスでリリシズム溢れる演奏は美しくはあっても、お洒落でムーディなジャズとは程遠いというのが僕の意見。ここでは確かにゆったりめの曲で占められていることもあってチャック・イスラエルズのメロディアスなベースが浮き上がり、ポール・モチアンのブラッシュ・ワークも絶妙に響く。つまり、このトリオのバランスがこれらの曲を表現するのに最適であるように思える。深淵で思慮深いこのピアノはエヴァンスでしか成し得ない世界で、尚且つ、内に秘めたエキセントリックな感性と緊張感が滲み出ているために、BGM として聴き流すことができない。冒頭で「バラード」と書かず、あえて「静かな曲」と書いたのは、バラードという言葉から連想させる甘さがこのアルバムにはないから。しかし、だからこそ聴き応えがある。僕はエヴァンスの良い聴き手ではないけれど、この引き締まった美しさこそがマニアを惹きつけて止まない理由だということは良く分かる。(2007年5月13日)

Interplay


曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1962/7/16

[1] You And The Night
                   And The Music
[2] When You Wish Upon A Star
[3] I'll Never Smile Again
[4] I'll Never Smile Again (alt take)
[5] Interplay
[6] You Go To My Head
[7] Wrap Your Troubles In Dream
Freddie Hubbard (tp)
Jim Hall (g)
Bill Evans (p)
Percy Heath (b)
Philly Joe Jones (ds)
ビル・エヴァンスといえばトリオ、そしてそのピアノ・トリオにインタープレイを持ち込んだ先駆者として知られているけれど、ここではメンバーをガラリと変えてのクインテット編成でタイトルが「インタープレイ」。では、5人
による激しいインタープレイが聴けるかといえばさにあらずで、実に聴きやすくも心地よい、オーソドックスなジャズが展開されている。その要因はベースとドラムが「ちょっと前」の人だからかもしれない。では、62年としてはちょっと時代遅れな感じのあるこのオーソドックスさがつまらないかといえば、これまたさにあらず。フィリー・ジョー・ジョーンズの独特なルーズなリズム感と、上下音をまんべんなく使うパーシー・ヒースのベースが実に溌剌としていてアルバム全体を爽やかに心地よく支えている。エヴァンスは時に現代音楽的な響きを見せ、繊細なトーンを織り交ぜつつも基本的には伴奏者の領域をはみ出ようとはしない。アップテンポのときはバッキングを含めて軽快に、バラードのときはムーディに、というわけでトリオのときに聴ける殺気を秘めた難解なムードは薄く、そこをどう感じるかでこのアルバムの評価が変わるでしょう。ジム・ホールはホーン・ライクな低めの音でサウンドに厚みを加えてつつ要所を押さえる好演。特筆すべきはリラックスしながらもテクニカルに、そしてミュートでは小粋に、と伸び伸びと歌うフレディ・ハバードのトランペット。エヴァンスを聴こうというときに手が伸びるアルバムではないけれど、気持ちが踊る心地よいジャズが聴きたいというときにその期待に応えてくれる1枚。 (2007年4月30日)

Trio 64


曲:★★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1963/12/18

[1] Litle Lulu
[2] A Sleeping Bee
[3] Always
[4] Santa Claus Is Coming To Town
[5] I'll See You Again
[6] For Heaven's Sake
[7] Dancing In The Dark
[8] Everything Happens To Me
Bill Evans (p)
Gary Peacock (b)
Paul Motian (ds)
タイトルとは微妙に違う63年末の録音。ワン・ショットでこのメンバーで吹き込まれたせいかエヴァンスのアルバムの中で貴重品扱いされている感もあるアルバム。録音時期にちなんで[4]が入っていることでも有名。この選曲からも読める通り、全体に軽妙でチャーミングな演奏で占められており、メンバーから想起する前衛性は聴くことができない。それがつまらないかと言うとそんなことはなく、リバーサイド時代に取り上げていた定番曲がないことから却って新鮮な気持ちで聴けるし、リラックスした中で展開される3人のインタープレイはやはりこのメンツならではと納得させてくれるだけの聴き応えがある。ピーコックのベースの切れ込みとモチアンの的確なサポートはあのファースト・トリオに匹敵するポテンシャルを感じさせるだけに、このメンバーでもっと攻めた演奏を聴いてみたいという気がするのも確かだけど、そこをあえてこう仕上げているのもまた楽しいし、歴史に残る類のものではなくても上質で充実した演奏は十分に魅力的。(2009年5月10日)

Trio '65


曲:★★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1965/2/3

[1] Israel
[2] Elsa
[3] 'Round Midnight
[4] Our Love Is Here To Stay
[5] How My Heart Sings
[6] Who Can I Turn To?
[7] Come Rain Or Come Shine
[8] If You Could See Me Now
Bill Evans (p)
Chuck Israels (b)
Larry Bunker (ds)
当時のレギュラー・トリオで、過去に吹き込んだものや聴き覚えのあるレパートリーをやってみましたという感じのアルバム。従って、エヴァンス初心者向けというよりは、これ以前のエヴァンスを聴きこんだ熱心なファン向けと言える内容。エヴァンスのプレイは活気と独特の憂いがあって十分に気合いが入っているけれど、強いて言えば作り込んだという感じはあまりなく、良くも悪くもナチュラルかつカジュアルなムードがある。イスラエルズとバンカーはやや地味なタイプながら、よく聴けば小技を忙しく繰り出していることに気づくし、なによりもトリオとしてのまとまりが良いために安心して聴けるところがいい。どちらかと言えば軽快な演奏が印象残るために、エヴァンスに初期アルバムのようなムードを求める人には物足りないと言われるかもしれないものの、ジャズ・ピアニストとしてのエヴァンスを聴くという意味ではなかなかの秀作だと思う。先に書いた通り、リバーサイド時代のアルバムを聴き倒して飽きがきている人へのリフレッシュ盤としても十分にお勧めできる。(2009年9月19日)

At The Montreux Jazz Festival

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★★
[Recording Date]
1968/6/15

[1] Spoken Introduction
[2] One For Hallen
[3] A Sleepin' Bee
[4] Mother Of Earl
[5] Nardis
[6] Quiet Now
[7] I Loves You, Porgy
[8] The Touch Of Your Lips
[9] Embraceable
[10] Someday My Prince Will Come
[11] Walkin' Up
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Jack DeJohnette (ds)
リバーサイド四部作に次いでの人気盤とされるライヴ・アルバム。ここでのエヴァンスの相手はエディ・ゴメスにジャック・デジョネット。アグレッシヴな演奏を得意とする2人とあってインタープレイの妙味がたっぷり楽しめる。しかも、スコット・ラファロ+ポール・モチアンとは異質のバランス感覚で成り立っているところが魅力。ピアノ・トリオであることを十分に意識しながらも押し出しの強いデジョネットのドラミングは明らかにモチアンのそれとは(そして後のキース・ジャレット・トリオのそれとも)違う新鮮さがあり、このあとすぐにマイルスに引き抜かれてしまってこのトリオでの活動が続かなかったことが惜しまれる。ラファロとはメロディの紡ぎ方がまるで違うゴメスのベースも個性的。その2人に煽られてかエヴァンスのピアノがいつになく生気に溢れているし、それでいてリリカルなタッチはいささかも失われていないところがいい。さらにトリオ演奏の合間に挿入された[6][7]のソロ演奏もいい。個人的には弦と指板がぶつかってバチバチという音を頻繁に発するゴメスの固いベース・サウンドはあまり好きではないものの、それもこのアルバムのムードの一部と言える。冒頭のメンバー紹介に導かれて始まる "One For Hallen"の入り方は何度聴いてもカッコいい。(2009年5月1日)

Some Other Time:The Lost Session from The Black Forest


曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★☆
[Recording Date]
1968/6/20

Disc 1
[1] You Go To My Head
[2] Very Early
[3] What Kind of Fool Am I?
[4] I'll Remember April
[5] My Funny Valentine
[6] Baubles, Bangles & Beads
[7] Turn Out The Stars
[8] It Could Happen To You
[9] In A Sentimental Mood
[10] These Foolish Things
[11] Some Other Time

Disc 2
[1] You're Gonna Hear From Me
[2] Walkin' Up
[3] Baubles, Bangles & Beads
[4] It's Alright With Me (Incomplete)
[5] What Kind Of Fool Am I?
[6] How About You?
[7] On Green Dolphin Street
[8] I Wonder Why
[9] Lover Man
      (Oh, Where Can You Be?)
[10] You're Gonna Hear From Me
     (alt take)
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Jack DeJohnette (ds)
名盤「At The Montreux Jazz Festival」と同じメンバーでその5日後のスタジオ録音。「The Montreux Jazz Festival」でのインタープレイの素晴らしさとジャック・ディジョネットのビル・エヴァンス・トリオ在籍期間が短いという希少性からマニアは狂喜したであろう音源の発掘。しかし、Disc 1 [3][4][6][8][10]がベースとのデュオ、Disc 2 [4][9]はピアノ・ソロという構成の通り、3人による緊密なインタープレイを期待した人には肩透かしとなったに違いない。契約の関係で世に出ていなかったであろうことはわかるものの、アルバムを作り込むという感じではなく、エヴァンスの演奏を中心に他の2人がサポートする曲がほとんどで特にジャック・ディジョネットはブラシワークを中心とした補助的な役割に終始、全体にリラックスした、とりあえずやってみました的なセッションというのがその正体。曲も短めで、ぶっちゃけこのレベルの演奏ならできて当たり前というレベル。従って、いくら久しぶりのエヴァンス発掘音源だからといって世紀の大発掘的な扱いは持ち上げすぎ(まあ確かに貴重ではあるけれど)。しかしながら、この力の抜けたセッションにおけるエヴァンスも悪くなく、熱心なファンなら十分楽しめる内容でもある。マニアにだけオススメできる音源集。(2016年5月5日)

Another Time: The Hilversum Concert


曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1968/6/22

[1] You're Gonna Hear From Me
[2] Very Early
[3] Who Can I Turn To?
[4] Alfie
[5] Embraceable You
[6] Emily
[7] Nardis
[8] Turn Out The Stars
[9] Five
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Jack DeJohnette (ds)
2016年の「Some Other Time」に続いて発掘された、名盤「At The Montreux Jazz Festival」と同じメンバーによる、今度はライヴ音源。「Some Other Time」が、あまりレコード化することを意識していないと思われるスタジオでのジャム・セッションであったのに対して、こちらはスタジオとはいえ観客のいる、即ち人に聴かせるための演奏であるため、必然的に演奏のレベルが違ってきている。このごく短期間だけ活動したメンツの音源を求めているファンは、この3人による、この3人ならではのピアノ・トリオ・ジャズが聴きたいと思っているはずで、その点でこの音源はそうした欲求を満たすものになっている。曲も演奏のテンションも最高レベルである「At The Montreux Jazz Festival」に肩を並べるとまでは言えないものの、気の抜けた演奏ということではなく、妙なテンションの高さがない分、普段着のライヴはこうだったんだろうなという楽しみ方ができる。発掘音源は、ともすれば貴重さや存在することじたいを持ち上げてしまいがち。しかしこのCDは、最後にお遊び的な演奏で終えるところを含めて1枚を通して聴ける内容の良さも光っている。これぞ、まさにファンが待ちわびた一大発掘モノ。ベースが右チャンネルに片寄せしてあるという難点はあるけれど、録音状態が良好である点でも広くオススメできる。(2017年9月4日)

You're Gonna Hear From Me


曲:★★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1969/11/23

[1] You're Gonna Hear From Me
[2] 'Round Midnight
[3] Waltz For Debby
[4] Nardis
[5] Time Remembered
[6] Who Can I Turn To
[7] Emily
[8] Our Love Is Here To Stay
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Marty Morell (ds)
こちらも定番曲を中心としたクラブでのライヴを、もっとも長く活動したゴメス、モレルのトリオで楽しみましょうという趣向。従ってリラックスした普段着のエヴァンス・トリオの姿が捉えられているようで、練られた演奏というよりは、息の合ったメンバーで小気味よく演奏されているところが聴きどころ。活動期間が長く希少性がないせいか、あまり評価が高くないこのトリオ、確かにゴメスのベースは攻撃的なだけで深みや柔軟性という意味ではイマイチとはいえ、やはりこういうツッコんでくれる相手がいてくれた方がエヴァンスを刺激してくれるような気がするし、的確に小技でサポートできるモレルのドラムだって十分レベルが高い。この3人が長続きしたのは理由なきことではなかったことがこのアルバムを聴くとよくわかる。ただし、個人的にエヴァンスのピアノは年を追うごとに少しずつではあるものの淡白に、味わいという点では後退して行ったと思っていて、60年代後半あたりからその傾向が特に表面化してきていて、場面によっては雑に感じるところもある。そんなケチをつけてみてもこんなにカッコいいピアノ・トリオはやはり他に代わりがない。このアルバムで本当にケチをつけたいのは録音状態。ピアノの音が引っ込み気味なだけでなく、ご丁寧に左にベース、右にピアノと音を完全に振り分けてある。ステレオ録音黎明期ならともかく69年の録音でこれはないだろう。ヘッドホンで聴く気になれない。(2010年4月9日)

Evans In England

曲:★★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★☆
[Recording Date]
1969/Dec

Disc 1
[1] Our Love Is Here to Stay
[2] Sugar Plum
[3] Stella By Starlight
[4] My Foolish Heart
[5] Waltz for Debby
[6] 'Round Midnight
[7] The Two Lonely People
[8] Who Can I Turn To
    (When Nobody Needs Me)

Disc 2
[1] Elsa
[2] What Are You Doing
         for The Rest of Your Life?
[3] Turn Out the Stars
[4] Re: Person I Knew
[5] Goodbye
[6] Come Rain or Come Shine
[7] Very Early
[8] So What
[9] Midnight Mood
[10] Polka Dots and Moonbeams
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Marty Morell (ds)
新音源発掘に勤しむレゾナンスというレーベルから、今度はロンドン、ロニー・スコッツでのライヴ音源がリリースされた。安定期のメンバーでお馴染みの曲をたっぷりと、そしてあの"So What"まで聴けるという趣向、もちろんその場限りのノリで演奏されるから、またあの曲か、という落胆はなく、演奏で楽しむという視点では素晴らしい発掘音源だとと言えるでしょう。演奏のテンション自体は特別良いわけでもなければ悪いわけでもなく、ある意味普段着のトリオの姿を捉えているように思う。全体のムードも一貫しており、ここロニー・スコッツでの、いかにもジャズ・クラブでの演奏らしい落ち着いたトリオの姿をありのままに味わうことができるところが良い。しかし、残念なのが音質で、演奏そのものを楽しめるクオリティは保っているものの、シンバルの高音域はシャカつき、まるでお屋敷の脇に置かれた手入れの行き届いていない古いピアノのような音は、数あるエヴァンスのアルバムの中から積極的にこの音源を選びたいと思わせる気持ちを遠ざけてしまう。すべてのアルバムを聴き倒したマニアのみが、喜びを感じられる貴重な記録集といったところか。(2019年4月23日)

From Left To Right

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★
[Recording Date]
1969/Oct and Nov
1970/Mar-May

[1] What Are You Doing
        The Rest Of Your Life?
[2] I'm All Smiles
[3] Why Did I Choose You?
[4] Soiree
[5] The Dolphin - Before
[6] The Dolphin - After
[7] Lullaby For Helene
[8] Like Someone In Love
[9] Children's Play Song

Bonus Tracks
[10] What Are You Doing
        The Rest Of Your Life?
[11] Why Did I Choose You?
[12] Soiree
[13] Lullaby For Helene
Bill Evans (p, elp)
Sam Brown (g)
Eddie Gomez (b)
Marty Morell (ds)
Mickey Leonard
         (arr, cond)
僕はビル・エヴァンスに特別な思い入れがなく、それゆえに「エヴァンスはこうでなければならない」という気持ちもない。だからエレピを弾くエヴァンスの世界というのにも単純に興味がそそられる。しかし、そういうアルバムの多くは廃盤、それでも2010年当時容易に入手できたのがエヴァンスが初めてエレピに手を染めたこのアルバム。結論から言うと、このアルバムは実につまらない。それはエヴァンスがエレピを弾いているからではなく、まるで根暗なポール・モーリアのようなセンスのないストリングスが入っているから。カルテットによる演奏のボーナス・トラックを聴けばそれは一目瞭然(ストリングスなしの方が断然良い)で、なぜこんなアルバムを作ってしまったのだろう、なぜこのアルバムが廃盤でないんだろうと不思議に思ってしまう。こんな風にお膳立てされてしまえば、エヴァンス
のプレイもイージー・リスニング的なムードに終始しているのは仕方ないところで、内面的な前衛度も当然ながら表出してこない。強いて言えばエヴァンスにしては珍しい 、ラテンタッチのリズムの[5][6]が聴きどころか。(2010年9月23日)

The Bill Evans Album

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1971/5/11,12,17,19,20

[1] Funkallero
[2] The Two Lonely
[3] Sugar Plum
[4] Waltz For Debby
[5] T.T.T (Twelve Tone Tune)
[6] Re: Person I Knew
[7] Comrade Conrad
[8] Waltz For Debby (alt take)
[9] Re: Person I Knew (alt take)
[10] Funkallero (alt take)
Bill Evans (p, elp)
Eddie Gomez (b)
Marty Morell (ds)
はじめにエレクトリック・ピアノに取り組んだ「From Left to Roght」は、腑抜けたイージーリスニングそのものでおよそ聴く気がしないんだけれど、レコード製作サイドとしては聴きやすく売れ線を狙った保険という意味合いがあったのかもしれない。それに対してこのアルバムは自分の音楽(全曲自作)で真っ向からエレピに挑んでいる。エレピのエヴァンスを評価するとしたらこちらだろう。そして多くの人がこのアルバムを聴いてこう思うんじゃないだろうか。「エレピのエヴァンスは、まあなくてもいいんじゃないか」と。エヴァンスらしさがないということではない。ただ、エレピのフレージングがアコースティック・ピアノとまったく同じなので、あえてエレピじゃなくてもいんじゃないかという気がしてしまう。とはいえ、このアルバムでも中心はアコースティック・ピアノでエレピはあくまでも補助的な使い方に留まる。よって、本来のゴメス-モレルとの安定したトリオ演奏を楽しめるし、それ故に演奏は良い。名曲 "Waltz For Debby" のエレピ版も聴けるし、一般的にほとんど無視されているほど質は低くない。いやそれどころか、軽く水準は超えていることを考えれば、エレピ・アレルギーさえなければ聴いてみるべき高品質アルバムだと言える。(2013年9月29日)

Complete February 1972 Paris ORTF Performance

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1972/2/6
1972/6/10 [15]

Disc 1
[1] Re: Person I Knew
[2] Turn Out The Stars
[3] Gloria's Step
[4] Two Lonely People
[5] Waltz For Debby
[6] What Are You Doing For
[7] T.T.T (Twelve Tone Tune)
[8] Sugar Plum

Disc 2
[9] Quiet Now
[10] Very Early
[11] Autumn Leaves
[12] Time Remembered
[13] My Romance
[14] Someday My Prince Will Come
[15] Nardis
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Marty Morell (ds)

[15]
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Tony Oxley (ds)
さまざまなメンバーで活動してきたビル・エヴァンス・トリオの中にあって、もっとも人気があるのはいわゆるリヴァーサイド4部作のメンツであることは周知の事実でありながら、このアルバムのメンバーが最も長く充実した活動をしていた(ときどき入れ替わることはあったらしいけれど)。もちろん、予期せぬ形でファースト・トリオが強制的に終わってしまったという事情はあったにせよ、ゴメス、モレルによるトリオもエヴァンス自身、手応えを感じていたのだろうということは予測できる。そんなメンバーによるフランスにおけるライヴ。ホールでの演奏ということもあり、音はやや反響、拡散気味で僕の好み通りではなく低音が薄めながら、音質は上々で内容も悪くない。ファースト・トリオのころのようなチャーミングな面がやや薄いとはいえエヴァンスの繊細で美しく時に難解なピアノがたっぷり聴ける。ゴメスは例の固い音でガンガン弾きまくっているし、マーティ・モレルもブラッシュ・ワークが非常に巧み。2枚組、約2時間弱というボリュームはやや重いけれど、リヴァーサイド時代に演奏した曲が数多く収録されているので聴き比べも楽しめる充実盤(2006年8月5日)

Half Moon Bay

曲:★★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1973/11/4

[1] Introduction
[2] Waltz For Debby
[3] Time Remembered
[4] Very Early
[5] Autumn Leaves
[6] What Are You Doing
      The Rest Of Your Life
[7] Quiet Now
[8] Who Can I Turn To
[9] How My Heart Sings
[10] Someday My Prince Will Come
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Marty Morell (ds)
エヴァンス死後にリリースされた音源のひとつ。この時期のライヴとしては、初期の重要なレパートリーがかなり網羅されているところがこのアルバムの存在意義であるのと同時に、初期の演奏とはだいぶ趣が異なるところを楽しめるのも存在意義と言える。演奏はライヴらしい活気溢れるもので3人ともテンションが高い。一方で、レコード化することを意識していなかったと言われている録音のせいか、ライヴらしい粗削りなところもかなりのもので、3人の絡みも緻密さよりも出たところ勝負的な計算のない感じになっている。加えて、もともとあまり知的とは言い難いゴメスのツッコミ型ベースが、その特性をフルに発揮しているとろも特徴で、イントロのあとはほとんどベース・ソロという有名曲[5]を楽しめるかどうかが評価の分かれ目になるかもしれない。とはいえ、この時期このメンツのライヴ、普段はこういう感じだったんだろう、という雰囲気は伝わってくる内容でそれを楽しむべきアルバム。(2017年10月14日)

Since We Met

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1974/1/11,12

[1] Since We Met
[2] Midnight Mood
[3] See-Saw
[4] Sareen Jurer
[5] Time Remembered
[6] Turn Out The Stars
[7] But Beautiful
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Marty Morell (ds)
もっとも安定した活動をしていたゴメス、モレルとのトリオは、それだけにリリースされたアルバムの枚数は数多く、熱心なファンでもない僕はつまみ食いしている程度にすぎない。従って、そのどれがベストかということを言うのはおこがましいんだけれど、このアルバムは恐らく最高ランクに位置するのではないかと思える。エヴァンスのピアノは繊細さと屈折した感性を持ち合わせたうえで生気が漲っているし、ゴメスの固くもメロディックなベースが絡み、モレルが出しゃばらないように好サポートをするというお得意パターンが理想的に展開されている。場所はエヴァンスにとって浅からぬ関係性をイメージさせるヴィレッジ・ヴァンガードとなれば揃っていないものはもう何もない。いや、あとは選曲がどうかという重要なポイントがあるんだけれど、これがまた初期によく演奏されたの有名曲をあえて外していることでピュアな「74年のビル・エヴァンス・トリオ」を堪能できるという美味しいアルバムになっている。リヴァーサイド時代と同じ気構えで聴いても何の違和感がなく、それでも一味違うところを堪能できるという点でも申し分ない。充実した内容で名盤の資格十分。(2011年8月28日)

On A Friday Evening

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1975/6/20

[1] Sareen Jurer
[2] Sugar Plum
[3] The Two Lonely People
[4] T.T.T. (Twelve Tone Tune)
[5] Quiet Now
[6] Up With The Lark
[7] How Deep Is The Ocean
[8] Blue Serge
[9] Nardis
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Eliot Zigmund (ds)
「I Will Say Boodbye」などと同じくエディ・ゴメスとエリオット・ジグムンドとのトリオ編成による、バンクーバーのオイル・キャン・ハリーズというクラブにおける発掘ライヴ音源(元はラジオ放送用とのこと)。一部音の乱れ、音場の変動があり、高音の抜けが少し悪いところもあるけれど、十分鑑賞に耐える音質。エヴァンスのライヴ・アルバムの中には、やたら速いテンポで雑に聴こえるものもあるけれど、この日はテンションが高すぎることも低すぎることもなく、リリカルと称されるエヴァンスのプレイが堪能できる。エディ・ゴメスのツッコミもそれほど激しくなく(魅力的とは言い難いアルコ弾きソロはあるけれど)、通して聴いて良い意味で安定感のある、エヴァンスならでは美しさを備えた演奏で、近年のスタジオ盤発掘にあったようなリハーサル的なムードも皆無。名演集と言えるほど良いところだけを集めたライヴ盤ではないとはいえ、普段着のエヴァンス・トリオを捉えた良い演奏集ということは言えると思う。曲も同ラインナップの他アルバムと被りは少なく、肩肘張らず、それでいて聴き応えのあるライヴ盤としてエヴァンスのファンも納得のクオリティではないだろうか。(2021年7月18日)

I Will Say Goodbye

曲:★★★☆
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1977/5/11-13

[1] I Will Say Goodbye
[2] Dolphine Dance
[3] Seascape
[4] Peau Douce
[5] Nobody Else But Me
[6] I Will Say Goodbye (take 2)
[7] The Opener
[8] Quiet Light
[9] A House Is Not A Home
[10] Orson's Theme
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Eliot Zigmund (ds)
70年代のエヴァンスの中では人気の1枚。なるほど、エヴァンスのピアノは繊細で美しくリリカル、そしてエヴァンス・トリオの中で最も安定感を誇ったメンツであるだけに、その質は保証されている。硬い音色のゴメスのベースと地道なジグムンドの組み合わせは確かにバランスが良く、安心して聴ける。約3ヶ月後に録音した「You Must Believe In Spring」と路線は同じで、夜のBGMとしてしっとり聴くスタイルがハマってしまうところがこのアルバムの良さでもあり、物足りなさでもある。影響を与えた後輩ハービー・ハンコックの[2]を取り上げているのは興味深いけれど有名曲は少なく地味な印象。[5]と[10]にボーナス・トラックを配するという荒業、そして[6]はボーナストラックではなくあえて2テイクを収めるという構成が違和感なくまとまっているのは、全体に演奏が平板だからとも言え、最初から最後まで「睡眠前のBGM」のトーンで貫かれている。質の高さは評価できても、初期のエヴァンスにあった瑞々しさは普遍的な円熟味へと変化し、各メンバーの絡みはほとんどなく、アクやクセ、スリルを望む向きにはあまり面白くない。ここはひとつ心地よいピアノ・トリオ・ジャズとして安楽に聴くのが正しいかと。(2011年3月27日)

You Must Believe In Spring

曲:★★★☆
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1977/8/23-25

[1] B Minor Waltz (For Ellaine)
[2] You Must Believe In Spring
[3] Gary's Theme
[4] We Will Meet Again ( For Harry)
[5] The Peacocks
[6] Sometime Ago
[7] Theme From M*A*S*H

Bonus Tracks
[8] Without A Song
[9] Freddie Freeloader
[10] All Of You
Bill Evans (p)
Eddie Gomez (b)
Eliot Zigmund (ds)
繊細でリリカルと一般的に言われるエヴァンスらしさを味わうならこのアルバムは最適な1枚。激しいツッコミがウリのエディ・ゴメスもここでは抑え気味にサポート、それでもここぞというところではやってくれているというバランス感覚も吉と出ているし、エリオット・ジグムンドの繊細なサポートも格調高さを助長している。僕のようなエヴァンスにさほど熱心でない聴き手だと、ライヴで定番となっている曲を何度も聴くのはあまり面白くないもので、その意味でもこのアルバムは新鮮味もあっていい。ピアニストとしての基本は変わらないまま生涯を終えたと思っているエヴァンスではあるんだけれど、やはり初期と比べるとフレーズの紡ぎ方はやや変わってきていて、晩年はよりピアニストとしての表現が強くなり、ベースとドラムへの依存度が低くなっていったように思う。もちろんそのピアノの美しさはエヴァンスでしか表現できない美しさがあることは認めるものの、僕はジャズの枠でそのピアノ表現をしていたところにエヴァンスの面白さがあると思っているだけに少々物足りなさを感じてしまう。あくまでもピアノが中心で、ベースとドラムが追随する形態はキース・ジャレットのスタンダーズ・トリオにとても良く似ていて面白くない。いや、こちらが先だからキースに与えた影響が大きいというか、キースのトリオのスタイルがちっとも新しくなかったことを思い知らされるというべきか。尚、ボーナス・トラックは少々趣が違っているため全体のバランスを崩している感は否めない。(2012年8月26日)

The Paris Concert Edition One

曲:★★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1979/11/26

[1] I Do It For Your Love
[2] Quiet Now
[3] Noelle's Theme
[4] My Romance
[5] I Loves You Porgy
[6] Up With The Lark
[7] All Mine (Minha)
[8] Beautiful Love
Bill Evans (p)
Marc Johnson (b)
Joe LaBarbera (ds)
通称、ラスト・トリオと呼ばれるこのメンツをエヴァンスはいたくお気に入りだったらしいということで聴いてみた。う〜む、でこもれはほとんどエヴァンスのピアノ・ソロではないか。実際ベースとドラムは休んでいる時間が多く、稼動中のサポートぶりもただ追随するのみ、ソロを取る場面はあっても三者が絡み合うシーンはなく、ビル・エヴァンス・トリオと言えばインタープレイという先入観があるとかなり肩すかしを食らう。トリオとしての緊密度が高いようには感じないし、サポートが控え目ゆえに、このベーシストとドラマーに実力があるのかどうかさえ判りにくい。逆の観点から、エヴァンスのピアノが聴ければ良いという向きには、一般にイメージされている通りのリリカルで繊細なタッチで貫く上品なアルバムとして悪くないに違いない。ラスト・トリオのアルバムを他に聴いていないので結論付けるつもりはないものの、少なくともこのアルバムではトリオとしては面白みやジャズ的なスリルは薄く、そこが評価の分かれ目になりそう。(2012年9月8日)