Rock Listner's Guide To Jazz Music


Keith Jarrett


Life Between The Exit Signs

曲:★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1967/5/4

[1] Lisbon Stomp
[2] Love No.1
[3] Everything I Love
[4] Margot
[5] Love No.2
[6] Long Time Gone
   (But Not With Drawn)
[7] Life Between The Exit Signs
[8] Church Dreams
Keith Jarrett (p)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds)
キース初のリーダー・アルバムは無難にピアノ・トリオ編成。しかしながら全曲オリジナルで演奏もフリーが見え隠れする無難とは程遠い自由奔放さ。そんなオリジナル曲にフリーな演奏でも、攻撃性はなく、どこか穏やかささえ感じるところがチック・コリアとの大きな違いで、音楽じたいはまだそれほど尖っていないので、そういう意味では聴きやすいかも。ちなみに唸り声もこのときにはまだ入っていない。マイルス・グループに加入する前でまだ素朴でありつつ、既にどこか病んでいる個性は既にここでも十分に聴き取れる。(2017年2月2日)

Somewhere Before

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1968/8/30,31

[1] My Back Pages
[2] Pretty Ballad
[3] Moving Soon
[4] Somewhere Before
[5] New Rag
[6] A Moment for Tears
[7] Pouts' Over
   (And the Day's Not Through)
[8] Dedicated to You
   (Cahn, Chaplin, Zaret)
[9] Old Rag
Keith Jarrett (p)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds)
この当時のレギュラー・メンバーであるヘイデン、モチアンとのピアノ・トリオによるライヴ。熱気は感じないものの、既存のジャズ・ピアノ・トリオとは異質の世界でキース流のジャズが展開されている。当然、演奏はフォービートではなくグルーヴ感が皆無な中で自在に展開され、ややポップなところを含めてキースならではの個性がよく出ている。個人的にはこの時期のキースが一番音楽的にストレートで個性も発揮していた時期じゃないかと思う。まだナルシストぶりもやや控えめであるという点で、スタンダーズを除くアルバムの中ではキース初心者に一番向いているアルバムなのかもしれない。(2017年8月23日)

Restoration Ruin

曲:★★
演奏:★★
ジャズ入門度:★
評価:★
[Recording Date]
1968/Date Unknown

[1] Restoration Ruin
[2] All Right
[3] For You And Me
[4] Have A Real Time
[5] Sioux City Sue New
[6] You're Fortunate
[7] Fire And Rain
[8] Now He Knows Better
[9] Wonders
[10] Where Are You Going?
Keith Jarrett
(vo, harmonica,
recorder, ss, g, bongo,
tambourine, ds, p, org,sistra)
すべての楽器をこなしている意欲作。と言いたいところだけれど、内容はマスターべション的で音楽の質も低い。特に調子っパズレのヴォーカルはまともな音感がある人になら苦痛にしかならないだろう。音楽はジャズでもなんでもなく、フォーキーなポップス歌集。コレクター以外は聴く必要なし。なんじゃこりゃ。(2017年2月2日)

El Juicio (The Judgement)

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1971/7/8,9,15,16

[1] Gypsy Moth
[2] Toll Road
[3] Pardon My Rags
[4] Pre-Judgement Atmosphere
[5] El Juicio
[6] Piece for Ornette (L.V.)
[7] Piece for Ornette (S.V.)
Dewey Redman (ts)
Keith Jarrett (p, ss, fl)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds)
ヘイデン、モチアンとのトリオにデューイ・レッドマンが加わり、アメリカン・カルテットがここから始動することになる。しかし、ここははじめの一歩、後のカオスでアグレッシヴな音楽にはなっておらず、これまでのピアノ・トリオにデューイ・レッドマンがゲスト参加しているかのよう。そのデューイのプレイもオーソドックスで後の毒っ気はまだ出ていない。メンバーが被っているから仕方がないとはいえ、オーネット・コールマンの音楽との近似性が色濃く(まあ、曲名に出てきているくらいですから)、言い換えるとオリジナリティという意味ではまだ発展途上の印象。それでもスティール・ドラムやパーカッションからソプラノ・サックスまでこなし、ラテンっぽくやってるのにちっともラテンのノリになっていない[5]あたりなどにキースらしい独りよがりなところも出ている。唸り声もこのあたりから意図的に出し始めているんじゃないだろうか。(2018年9月6日)

The Mourning Of A Star

曲:★★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1971/7/8,9,16, 8/23

[1] Follow the Crooked Path
   (Though It Be Longer)
[2] Interlude No. 3
[3] Standing Outside
[4] Everything That Lives Laments
[5] Interlude No. 1
[6] Trust
[7] All I Want
[8] Traces of You
[9] The Mourning of a Star
[10] Interlude No. 2
[11] Sympathy
Dewey Redman (ts)
Keith Jarrett (p, ss,
 tenor recorder,
 steel drum, ds [3], conga)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds)
「El Juicio」と録音日の多くが被っているだけに音楽的な方向性は同じ。キース流に崩れたジャズになっているとはいえ、表現はより広がっている印象で、典型的なフリー・ジャズ、キース流ポップ・ジャズ、インタールードで出てくるパーカッション・パフォーマンスなど適度にバラエティに富んだ内容になっている。なんとなく、やりたいことが少しずつ見えてきました的な、グループ音楽の芽生えのようなものを感じさせるため、初期作品の中では一番楽しめるように思う。不思議なことに演奏のテンションが、多くのオーネット・コールマンのアルバムと共通している感じで、それはヘイデンとモチアンの存在感が大きいということなのかもしれない。この時期のアルバムとしてはピアノの演奏が耳に残る(ような気がする)ところも特徴か。(2020年9月17日)

Hamburg '72

曲:★★
演奏:★★★☆
ジャズ入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1972/6/14

[1] Rainbow
[2] Everything That Lives Laments
[3] Piece for Ornette
[4] Take Me Back
[5] Life, Dance
[6] Song for Che
Keith Jarrett (p, ss. fl, per)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds)
2014年に発掘された、当時のトリオによるライヴ。既にスタンダーズ・トリオの活動を終了し、特別ファンでもない僕からはセミ・リタイア状態のように見えるキース、2010年を過ぎてからは過去音源の発掘に関心が向かったのか、突如リリースされたのがこのライブ盤。[1]は普通のピアノ・トリオ演奏でキースの美しいピアノの響きを味わえる。以降はしかし、ピアノの出番は減り、フルートやソプラノ・サックスを多用、野心溢れていたころのキースのパフォーマンスを楽しめる。録音状態の影響か、サウンドはどこかクールな感触、しかし内面から湧き出る情念のようなものも感じられる演奏で、後のアメリカン・カルテット的な要素もあり、この3人でのスタジオ録音諸盤とは感触がやや違っているところが聴きどころか。ピアノ・トリオとしてのキースを期待する人にはやや物足りないかもしれない。(2018年10月21日)

Fort Yawuh

曲:★★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1973/2/24

[1] (If The) Misfits (Wear It)
[2] Fort Yawuh
[3] De Drums
[4] Still Life, Still Life
[5] Roads Travelled, Roads Veiled
Dewey Redman
(ts, Chinese musette,
                       maracas)
Keith Jarrett (p, tb, ss)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds, per)
Danny Johnson (per)
スタンダーズ・トリオからキースに入り、その後遡ってマイルス・グループでの活動に触れると、その両者にあまり接点を見出すことができないし、個人的にはそのどちらも感動を覚えるほど気に入っているわけでもなかった。特にスタンダーズ・トリオはインプロヴィゼーション主体の例外的な一部アルバムを除いて、トリオとしての可能性の追求や音楽性の探求といった意欲を感じさせないところに退屈さを感じていた。とはいってもキースのピアノの感性には唯一無二のものがあることはもちろん認めていて、才能に恵まれた人がイージーなピアノ・ジャズを好む多くの人を対象に小手先でアルバムを量産(なにせ殆どがライヴ録音ですから)しているというところにネガティヴな印象を持ってきた。そんなに嫌なら聴かなきゃいいのに、次に食指を伸ばしたのがこのアメリカン・カルテットの作品。何が驚いたってキースがソプラノ・サックスも演奏していること、しかもサウンドの重要な一要素になっていること。もちろんキースのピアノがグループの核になっていることに間違いはないんだけれど、スタンダーズやソロでのピアノよりも内面から湧き出るものを感じるし、それがデューイ・レッドマンのフリーキーかつ時にリリカルなサックス、ヘイデンの繰り出す骨太なベース・ラインとモチアンの多彩なドラムと交わることで他に聴いたこともないフリー・スタイルの音楽に昇華しているところが素晴らしい。ライヴなだけに演奏の生々しさも魅力。ここにはまさに自分の音楽を探求しているキースがいる。でも、スタンダーズ・トリオの安楽さだけが好き人はたぶんこのカルテットは忙しい騒音にしか聴こえないに違いない。(2006年12月9日)

Death And The Flower

曲:★★★☆
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★★★
[Recording Date]
1974/10/9
1974/10/10

[1] Death And The Flower
[2] Prayer
[3] Great Bird
Dewey Redman (ts, per)
Keith Jarrett
    (p, ss, osi ds, fl, per)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds, per)
Guilherme Franco (per)
尺八のようなフルート演奏からパーカッションが打ち鳴らされる冒頭のこのムードはかなり無国籍風でとてもジャズ系の音楽とは思えない。ベースが絡んできてもパーカッションは鳴り止まずムードが高まってきたところに、キースのピアノがようやく、そして徐々に食い込んでくる。ピアノのスタイルは既に確立されていて良くも悪くも普通のジャズにはほど遠い。そのキース独特のピアノに、デューイ・レッドマンの実に普通の音色とフレーズが重なると電子楽器を使ってもいないのにフュージョンっぽい雰囲気に。その後、ベース・ソロなどが入ってもキースのピアノは個性を主張し続け、後半はいかにもキースらしいリズミカルなリフレインに乗ってグループ全体で推進して行く。形式に囚われていないとはいえフリー・ジャズのようなアブストラクトな演奏ではなく、あくまでも整然と展開される22分超の[1]はキースでなければ成し得ない世界を表現。[2]はリリカルなキースのピアノを中心としたトリオ演奏。[3]はレッドマンのテナーに、オーバー・ダビングされたキースのソプラノ・サックスも絡み、2本のサックスとピアノが流れるようなテーマを奏でてパーカッションに彩られた単調なビートで進む。自由でありつつもどこか統制の取れたアメリカン・カルテットのキースはピアニストとして、音楽家として無限の可能性に満ちていたと感じさせる。正直なところ近年のキースよりも遥かにクリエイティヴ。泥臭さもなく、音自体は明快でありながら一筋縄では行かないオリジナリティ。それでも決して難解ではなく、しかしスタンダーズ・トリオの心地良さだけが好きな人には不向きなキース・ワールド全開な好盤。(2006年12月12日)

The Koln Concert

曲:★
演奏:★
ジャズ入門度:★
評価:★
[Recording Date]
1975/1/24

[1] Koln, January 24, 1975 Part I
[1] Koln, January 24, 1975 Part IIa
[1] Koln, January 24, 1975 Part IIb
[1] Koln, January 24, 1975 Part IIc
Keith Jarrett (p)
キース・ジャレットというピアニストは、良くも悪くも本質的にはジャズ・ピアニストではないと思う。それを確信させてくれたのがこのアルバム。名作の誉れ高いこの即興演奏に、しかし僕は何も感じない。好きとか嫌いとか、合うとか合わないとか、わかりやすいとか難解とか、美しいとか泥臭いとか、とにかく一切何も感じない。これだけ絶賛されているアルバム、きっと何かあるはずなんだけれども僕に受け止める感性がないらしく、右から左へ素通りしてしまう。だから批判的な感情も特にない。ここにあるのはキース印の純度100%ピアノ。楽しむ感性があるかどうか。それに尽きる。(2006年11月26日)

The Survivor's Suite

曲:★★★☆
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1976/Apr

[1] Survivor's Suite: Beginning
[2] Survivor's Suite: Conclusion
Dewey Redman
 (ts, Chinese musette,
                        maracas)
Keith Jarrett (p, tb, ss)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds, per)
Danny Johnson (per)
キースはやっぱりアメリカン・カルテットがいい。そう思わせてくれたアルバム。曲はたった2曲で、それぞれ27分と21分という長尺演奏。フォー・ビートが出てくるわけはなく、良くも悪くも普通のジャズとは異次元のキース・ワールドが展開されている。しかもそれがグループとしてしっかり表現されているところが素晴らしい。メンバーがキースをよく理解しつつ個々の演奏を高いレベルで表現できていること、その中で繰り広げられるキースのピアノがまた美しく流麗に響くこと、そしてそのバランスの良さと相乗効果こそがこのカルテットの真骨頂。もちろんフリーキーな演奏も[2]で抜かりなく披露して美しさだけがこのカルテットの持ち味ではないことも提示。後半で響くキースのソプラノ・サックスがまたエモーショナルで美しく、このアルバムのハイライトになっている。76年ともなると録音も良く、パーカッションの細かい音までが効果的に響くところもカルテットの魅力を底上げしている。(2009年5月16日)

Eyes Of The Heart

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1976/May

[1] Eyes Of The Heart
   (Part One)
[2] Eyes Of The Heart
   (Part Two)
[3] Encore (a-b-c)
Dewey Redman (ts, per)
Keith Jarrett (p, ss)
Charlie Haden (b)
Paul Motian (ds, per)
アメリカン・カルテット最終作は、フレゲンツ・コルンマルクト劇場でのライヴ録音。キースが主役でありつつも独自の一体感を持っていたこのカルテットは、しかしここではキースのソプラノ・サックスやピアノが音楽の中心となっていて、他のメンバーは追随するに留まっているように感じる。中盤からフォービートで進む[3]は、ベースがいかにもヘイデンらしい、躍動感とは異質の刻み方で、独自性があるといえばあるんだけれど、各人がそれぞれ思い思いに演奏していて、それを一体感がないと感じるか、自由度が高いと取るかは利き手次第か。ピアノも全体的に単調でソロに近いムード。カルテットとしてのまとまりが弱く、グループの終焉をに押せているように感じてしまう。考えてみれば5年も活動していればいくらこのメンツでも煮詰まってくるのも仕方のないところ。その後のキースの活動状況にあまり面白みを感じない僕にとって、このアルバムこそはクリエイティヴな音楽家としてのキース・ジャレットの終わりということになるのかもしれない。(2010年5月5日)

My Song

曲:★★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1977/Nov

[1] Questar
[2] My Song
[3] Tabarka
[4] Country
[5] Mandala
[6] The Journey Home
Keith Jarrett (p)
Jan Garbarek (ts, ss)
Palle Danielsson (b)
Jon Christensen (ds)
キース・ジャレットはなぜこんなに人気があるのか。巷の意見を要約するとどうやらその美しいメロディに魅了されている人が多いらしい。なるほど、それならマンネリ化したスタンダーズ・トリオが支持されるのも理解できる。確かにキースのピアノには独特のトーンとムードがあって美しさもある。そのナルシスティックなピアノに魅力を感じることができればキース・ファンになれる。このアルバムは、通称ヨーロピアン・カルテットの人気盤。キース・ファンを十分に満足させるメロディアスかつ美しいピアノに、ヤン・ガルバレクの透明感あふれるサックスが加わることで全体に綺麗な音世界を作り上げることに成功している。ジャズの典型的なフォーマットであるカルテットでオーソドックスに演奏しているにもかかわらず、黒人ジャズのような泥臭さ、熱さや刺激というものは皆無。初心者ジャズ・ファンが求めている「知的でオシャレ」な要望にバッチリ応えてくれる。僕は基本的にこの種の安楽さは好きではないんだけれど、パターン化したスタンダーズ・トリオのようなイージー感やマンネリ感もなくイージー・リスニングに陥る手前で踏みとどまっているところに価値を感じる。(2007年12月16日)

Sleeper

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1979/4/16

Disc 1
[1] Personal Mountains
[2] Innocence
[3] So Tendor

Disc 2
[1] Oasis
[2] Chant Of The Soil
[3] Prism
[4] New Dance
Keith Jarrett (p, per)
Jan Garbarek (ts, ss, fl, per)
Palle Danielsson (b)
Jon Christensen (ds, per)
「My Song」の安楽キース・ミュージックは、それなりに価値を感じつつも特に感銘を受けることなく、すぐに中古盤屋へ直行。ヨーロピアン・カルテットは「特に聴かなくて良いグループ」として僕の中では位置づけられた。そのヨーロピアン・カルテット、79年の中野サンプラザ公演の音源が2012年になって突然リリースされた。この日の音源は「Personal Mountains」として89年にリリースされているそうで、本作は曲目にダブりはあっても演奏はすべて未発表のものばかり。ある書評によると、キース自身がテープを聴きなおして「これは凄い」と言ったとかで、めでたく音源化されたらしい。本質的に「My Song」と大きく変わるとは思わないけれど、何しろ曲の尺が長く "New Dance" を除き10分超、"Personal Mountain"は21分、"Oasis"は28分となっていては演奏の自由度は大きく拡大。そうなれば、スタジオ盤になかった表現の幅の広さを持ってくるのは必然である。叙情的なガルバレックのテナーも時には声を荒げるシーンもあり、フルートではアメリカン・カルテット的なムードまで醸し出す。ベースとドラムはそれほど感心しないけれど、キースが自由に表現するためにはあまり出過ぎない方がむしろ都合が良い。曲が長いだけにやや冗長なところもあるとはいえ、時にフリーな展開にもなるライヴこそがこのグループの本質のように思えるし、少なくとも現在のスタンダーズ・トリオよりクリエイティヴで音楽としての面白みもある。アンコール時の日本的手拍子もライヴ盤らしい雰囲気。特筆すべきは79年とは思えないほど録音状態が良く、ベースの音も厚みがしっかりあるところ。こういう音源なら、掘り出してどんどん商品化してもらいたい。(2012年9月16日)

Standards Vol.1

曲:★★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★☆
評価:★★★
[Recording Date]
1983/Jan

[1] Meaning Of The Blues
[2] All The Things You Are
[3] It Never Entered Mind
[4] The Masquerade Is Over
[5] God Bless The Child
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
現代のジャズ・ピアニストとして最も人気があるキース・ジャレットがその大衆的ともいえる人気を決定的にしたのがピアノ・トリオによるスタンダード集、第一弾の本作。もともとキースは、既存のジャズとは異質のスタイルを持ち、自由な演奏を持ち味としている。そして、ゲイリー・ピーコックとジャック・デジョネットはフリー・ジャズを通過してきた人。そんなメンバーでスタンダードをやってしまったというのがこのアルバムの聴きどころ。彼ら自身の過去をそのまま出すことはなく、解りやすく尖ったところがない、しかしキースならではの語彙で演奏されているところが支持された理由でしょう。それまでのキースのキャリアを考えると面白い試みであることには間違いないけれど、その後20年以上も続くなんて誰も予想できなかったに違いない。最近のスタンダーズ・トリオと比べると各人の距離感が微妙に遠いところが今となっては新鮮かも。(2006年11月18日)

Changeless

曲:★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★
評価:★★☆
[Recording Date]
1988/10/14 [1]
1987/10/11 [2]
1987/10/9 [3]
1987/10/12 [4]

[1] Dancing
[2] Endless
[3] Lifeline
[4] Ecstacy
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
スタンダーズ・トリオによるオリジナル曲を集めたライヴ盤。スタンダード演奏にあまりシンパシーを感じていない自分でも楽しめるかもと考えて入手。先に聴いていた「Inside Out」や「Always Let Me Go」のように即興的な演奏を期待していたら、質はかなり違っていてジャズでありながらジャズの匂いがほとんどしない、キースのピアノがドンと中心に座った純度100%のキース・ミュージック。トリオとしての攻防は希薄で、あくまでも美しいピアノを中心とした静かなキース・ワールドが展開される。そういう意味では「The Koln Concert」をトリオでやってみました、という感じもあり、僕にはちょっと辛い。マンネリ化した現在のスタンダーズ・トリオのような小手先でやっている感じはないところはいいんだけれど、これはほとんどキースのソロ。(2008年2月2日)

At The Blue Note The Complete Recordings

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1994/6/3-5

Disc 1
[1] In Your Own Sweet Way
[2] How Long Has This Been Going On
[3] While We're Young
[4] Partners
[5] No Lonely Nights
[6] Now's The Time
[7] Lament

Disc 2
[1] I'm Old Fashioned
[2] Everything Happens To Me
[3] If I Were A Bell
[4] In The Wee Small Hours
                          Of The Morning
[5] Oleo
[6] Alone Together
[7] Skylark
[8] Things Ain't What They Used To Be

Disc 3
[1] Autumn Leaves
[2] Days of Wine and Roses
[3] Bob-Be
[4] You Don't Know What Love Is
[5] When I Fall in Love

Disc 4
[1] How Deep Is The Ocean
[2] Close Your Eyes
[3] Imagination
[4] I'll Fall In Love Too Easily
[5] The Fire
[6] Within
[7] Things Ain't What They Used To Be

Disc 5
[1] On Green Dophin Street
[2] My Romance
[3] Don't Ever Leave Me
[4] You'd Be So Nice
                     To Come Home To
[5] La Valse Bleue
[6] No Lonely Nights
[7] Straight, No Chaser

Disc 6
[1] Time After Time
[2] For Heaven's Sake
[3] Partners
[4] Desert Sun
[5] How About You?
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
ニューヨークのブルーノートには2008年に一度行ったことがある。ジャズ・ファンがマンハッタンを訪れたら行っておきたいと思わずにはいられない有名クラブではあるけれど、席が狭くて料理が不味い、しかも値段はマンハッタンのジャズクラブで随一、オーディエンスの多くは観光客ということもあって、個人的には印象が良くない。ハッキリ言って、音楽を真剣に聴きたいという人にはヴィレッジ・ヴァンガードや、出演者のレベルが落ちるもののスモールズやスモーク、美味しい料理も味わいたいという人ならジャズ・スタンダードの方が断然お勧め。では、ブルーノートの魅力は何かと言うと、普段はホールで演奏する超有名・人気ミュージシャンをブッキングし、いつもは遠くからしか見れない彼らを間近で見せることにある。このボックスセットは、ジャズ界でもトップクラスの人気を誇り、ホールクラス以外では演奏しないキース・ジャレットが、ブルーノートに出演した94年6月3日から5日、各日2セットずつのライヴを完全収録したもの。スタンダードを中心に自作曲もところどころ織り交ぜ、2度演奏しているのは "Partners" "No Lonely Nights" "Things Ain't What They Used to Be" の3曲だけという幅広さ。キースのスタンダーズ・トリオは音源化されているものが多すぎて似たようなライヴばかりで、その安易さに否定的な僕は、実はこのボックスセットの存在を知らなかった。さて、クラブでのスタンダーズ・トリオはどんなものなんだろうと興味津々で聴いてみた。結果は・・・これは素晴らしい。クラブならではの自由度の高さ、クラブならではの緊密なインタープレイ、クラブならではタイトな音響に加えて3日2セット公演ならではの選曲の面白さ。これはキースにとって褒め言葉にならないかもしれないけれど、畏まったホールでは味わえない如何にもジャズらしいムードに溢れている。94年ということでまだスタンダーズ・トリオのマンネリ感がなくその演奏は瑞々しい。スタンダーズ・トリオによるスタンダード演奏は、この箱さえあれば他は何もいらない。(2018年11月14日)

Whisper Not

曲:★★★★
演奏:★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1999/7/5

Disc 1
[1] Bouncing With Bud
[2] Whisper Not
[3] Groovin' High
[4] Chelsea Bridge
[5] Wrap Your Troubles In Dream
[6] Round Midnight
[7] Sandu

Disc 2
[8] What Is This Thing Called Love
[9] Conception
[10] Prelude To A Kiss
[11] Hallucinations
[12] All My Tommorrows
[13] Poinciana
[14] When I Fall In Love
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
一時期体調を崩していたキースが復帰した後、フランスでのライヴを収録したボリュームたっぷりの2枚組。長く続くスタンダーズ・トリオのスタイルはここで完成している。しかし、このトリオの実力を考えた場合、超有スタンダードの解釈に意外性が少ないように思えてどうにも安易な印象が拭えない。演奏の水準が高いのは間違いないんだけれどさほど強烈な個性があるわけでもなく、型をはみ出ることなく、ただ心地良く聴けるだけのもので終わってしまっている。耳に馴染んだ曲をこのトリオが演奏するだけで気分が良くなるという人はもちろんOKなんだろうけれど、それほど絶賛されるほどのものかというのが正直な感想。つまり僕にとってはちょっと贅沢なBGM以上のものではない。フリー・ジャズを通過してきた3人がスタンダードを演奏するという意外性をもう少し見せてほしいと思うのは贅沢な要望なんだろうか。ジャズを広く聴いてきた人ならば、キースがジャス・ピアニストとしては異端児であることは誰にでもわかることで、そんな異端児がジャズ・スタンダードを演奏し、ジャズ・ファンに広くウケているという妙な現象に気持ち悪さを感じずにはいられない。以降現在に至るまで、一部例外を除いてスタンダード集ばかり、しかもライヴ・アルバムばかりを、パソコンで3分で作りました的なジャケットでリリースし続けているキースは本当にクリエイティヴなミュージシャンと言えるんだろうか。(2006年11月17日)

Inside Out

曲:★★
演奏:★★★★☆
ジャズ入門度:★
評価:★★★★
[Recording Date]
2000/7/26
2000/7/26

[1] From The Body
[2] Inside Out
[3] 341 Free Trade
[4] Riot
[5] When I Fall In Love
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
僕はキング・クリムゾンのファンで、自分が幼少の頃に活動していたいわゆる第三期のメンバーのフリー・インプロヴィゼーションを学生時代から愛好していた。そんな自分が31歳を過ぎたある日、新聞の新譜紹介に掲載されていたこのアルバムが目に止まった。ピアノ・トリオによるインプロヴィゼーションであると書いてあり、なんとなくジャズが気になり始めた頃でもあって聴いてみることに。つまり僕にとって初めて買ったジャズのアルバムが本作というわけで、何度も聴いては「ふ〜ん、ジャズのインプロってこういうふうなんだ」と思ったものです。確かに3人によるインタープレイは緊張感があり、しかし当然といえばそれまでのこととはいえ、ここにはロック系のインプロのようなノイジーな刺激はなく、その代わりにピアノの繊細で美しい響きとそのピアノを中心にベースとドラムが絡みつくというこれまでに聴いたことのないスタイルのインプロがあった。時間を経て、そしてさまざまなジャズを聴いた今、キース・ジャレットというピアニストはいわゆる黒人中心のモダン・ジャズのスタイルとは距離を置いた独自の感性を持った人であることが解り、実はこのアルバムはそんなキースの本質を捉えたレギュラー・トリオによる素晴らしいパフオーマンスの逸品だということを理解できるようになった。曲と呼べるものではないため解りやすいメロディーが少ないとはいえ、ピアノの音は綺麗だし一般にイメージされているフリー・ジャズとはまた違う聴き易さがあるから、この種のフリーな演奏に親しむ入り口としてもいいかも。いや、キースの個性が色が出すぎているからそうとも言えない?(2006年11月17日)

Always Let Me Go

曲:★★
演奏:★★★★★
ジャズ入門度:★
評価:★★★★★
[Recording Date]
2001/4/23
2001/4/24
2001/4/30

Disc 1
[1] Hearts In Space
[2] Thie River
[3] Tributarise
[4] Paradox

Disc 2
[5] Waves
[6] Facing East
[7] Tsunami
[8] Relay
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
前作「Inside Out」同様にインプロヴィゼーションを集約した2枚組。2001年の日本ツアーではインプロヴィゼーションとスタンダードを織り交ぜて演奏し、日によってその比率が大きく異なっていたとのことでこのアルバムは前者だけに絞ってパッケージしたものらしい。「Inside Out」は収録時間の都合で一部の曲はフェード・イン/アウト処理がされていたけれどここでは合計132分、余すことなくたっぷりと聴くことができる。冒頭から、スタンダード演奏とは明らかに異なった緊張感溢れるムードで各メンバーの小刻みな応酬が始まり、そのままスリリングなインタープレイが続くと後半はフォー・ビートになだれ込む展開がドラマチックな32分にも及ぶ [1]、キースの美しいピアノ・ソロによる小曲[2]、そのムードを引き継ぎながら呪術的なドラムとベースが加わっていく[3]まで一気に演奏される(観客が拍手を入れるタイミングを見つけることができない状況だったらしい)。曲が長いだけあって自由度という意味では前作よりもスケールアップ、それでいながら飽きさせないのは絡みが緻密で3人の技量が優れているからに他ならない。以降も現代音楽調から明るめのシンプルなリフが続く演奏まで、幅広く表現するキースのピアノを中心に、ピーコックとデジョネットが負けじと柔軟に対応、その緊密な絡み方、展開のさせ方が実に素晴らしい。当然聴きやすくはないけれど、このアルバムはこのトリオの実力をまざまざと見せつけた傑作だと思う。ただし、歓声を聞く限りオーディエンスの反応は正直な喝采と何だかわからないけど凄そうだからという無理やりな喝采が交錯しているように感じる。2004年の来日公演ではスタンダードばかりが演奏されてずいぶんウケていて、そこで思ったことは、日本におけるキースの人気はその耳当たりの良いスタンダードなんだなということ。以降、このインプロ路線での活動がされなくなってしまった理由はわからないけれどマンネリ化したスタンダーズ・トリオの気分転換で終わったのだとしたらとても残念。(2006年11月17日)
家のオーディオ機器をグレードアップしたのを機に改めてじっくり聴きなおしてみた。このトリオはインタープレイが売り物であるものの、中心にあるのはあくまでもキースのピアノであって、ベースとドラムはピアノに合わせて演奏しているだけの標準的なピアノ・トリオの在り方にすぎないという思いを強くした。一方で、常に一定以上の距離を保ちつつ、近づきそうで近づかない、離れそうで離れない微妙な距離感の伸縮が他にない魅力なんだということもよくわかった。スタンダード集にはその距離感の振幅がないのがつまらないと思えてしまうということも。(2007年10月6日)

Yesterdays

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
2001/4/30
2001/4/24 [9]

[1] Strollin'
[2] You Took Advantage Of Me
[3] Yesterdays
[4] Shaw'nuff
[5] You've Changed
[6] Scrapple From The Apple
[7] A Sleepin' Bee
[8] Smoke Gets In Your Eyes
[9] Stella By Starlight
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
「Always Let Me Go」のときと同じく2001年日本ツアーの音源で、こちらは本来の(?)スタンダード曲を集約したもの。実際にはひとつの公演の中でインプロものと混ぜて演奏されたらしいんだけれど、そのギャップは大きく、こうやってスタンダードだけ聴くとスリルのないマッタリ系のパフォーマンスに終始してしまう。物足りないと文句を言いつつ聴いてしまうのもスタンダーズ・トリオの魔力なのか気がつけばCDラックに何枚もあるところが自分でも怖い。逆に言えばこのような美しさを持ち、上質な演奏を聴かせるピアノ・トリオというのは意外とないという事実が浮き彫りになる。シンプルな編成ゆえにやはりピアニストに突出した完成と個性がないとピアノ・トリオは維持できないわけで、やはりこのトリオにはそれなりの価値があるんだなあと改めて思ってしまう。録音は相変わらず素晴らしく、キースのピアノの透明感ある響きとピーコックのベースの厚み、デジョネットの小刻みな動きを余すところなく伝えてくれる。個人的には[3][5]の美しさと[4]のお茶目な遊び心がお気に入り。でもやっぱり贅沢なBGM的なところはあって、気持ちを落ち着かせたいときのためのアルバムになってしまっている。(2009年6月21日)

The Out-of-Towners

曲:★★★☆
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
2001/7/28

[1] Intro-I Can't Believe That
            You're In Love With Me
[2] You've Changed
[3] I Love You
[4] The Out-of-Towners
[5] Five Brothers
[6] It's All In The Games
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
発展性を放棄したその在り方に否定的ではありつつ、スタンダーズ・トリオの素晴らしさをそれなりに認めている僕ではあるけれど、インプロ系の「Inside Out」や「Always Let Me Go」は、聴くのに緊張感を強いられるのもまた事実。やはりたまにはリラックスしてこのトリオを聴いてみたいという気になってしまう。そうは言ってもあまりに有名な曲ばかり収録されているアルバムだとイージーすぎて物足りない。つまりキースらしさが出ていてイージーでなく聴きやすいというのは実にないものねだり的な要求を満たすものはないのかと、なったときに、このアルバムはなかなか良い選択。スタンダード中心ではあるけれど、超有名曲は[3]くらいでそれほど馴染みの深い曲を選んでいないところが良く、演奏も長めで自由度もそこそこあっても楽しめる。近年のキースのアルバムの特徴である、ホールの響きを排除して各楽器の音を至近距離に捉えた生々しい録音も良い。正直言ってスリルもなく薄味、特に喝采に包まれるピアノ・ソロ[6]はそんなに素晴らしいだろうかとは思うものの、ちょっと贅沢なBGMとして聴く分にはまずまずの好盤。(2010年12月31日)

Up For It

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
2002/July

[1] If I Were A Bell
[2] Butch & Butch
[3] My Funny Valentine
[4] Scrapple From The Apple
[5] Someday My Prince Will Come
[6] Two Degrees East,
    Three Degrees West
[7] Autumn Leaves
[8] Up For It
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
もう、さんざん貶してきたんだからスタンダーズ・トリオなんて聴かなくてもいいじゃないかと言われそうだけれど、ついつい手が伸びてしまったのは大幅値引きされていたから。ところが聴いてみるとこれが意外とイイ。有名な曲がたくさん入っているから聴きやすいというのが第一の理由かもしれない。そう言ってしまうと新鮮さなんて期待するもんじゃないということになってしまうわけだけれど、まあその通り。全体に活気ある演奏が多いのも聴いていて気分がいい理由かもしれない。そんなわけでキースのうなり声も全体のムードを表して陽気に聴こえてしまう。[7] は、なんだビル・エヴァンスが最初に演ったスタイルをキース風に焼きなおしているだけじゃないか、なんて悪態をつきながら聴いていると後半はいかにもキース的、そしてスタンダーズ・トリオ定番的に発展させていてスリリング。期待値を高く設定しなければ実に良いアルバム。(2009年6月21日)

Somewhere

曲:★★★★
演奏:★★★★
ジャズ入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
2009/7/11

[1] Deep Space/Solar
[2] Stars Fell On Alabama
[3] Between The Devil
                   And Deep Blue Sea
[4] Somewhere/Everywhere
[5] Tonight
[6] I Thought About You
Keith Jarrett (p)
Gary Peacock (b)
Jack DeJohnette (ds)
現時点ではスタンダーズ・トリオの最後にリリースされたアルバム。内容はこれまでと特に大きな違いはなく、キース味のマッタリしたピアノ・トリオ。[4]は同じリズムでひたすらユルユルマッタリが続く20分間。これ、ベースとドラムは楽しいんだろうか?えっ?曲の後の歓声は結構大きいじゃないか。僕にはサッパリわからない。いや、アルバム全体としてはいつものスタンダーズ・トリオで悪いわけじゃない。思えば、キースを初めて聴いてから既に15年が過ぎていて、キースのスタンダーズ・トリオに抱いていた「前衛系演奏者がマッタリとムード・ジャズをやっている」という印象の基本は変わらないものの、歳をとったせいか、そういうマッタリも悪くないなと思えるようになってきて気軽に楽しめる。強いていえばバーンスタインの曲を採り上げていることがトピックか。(2019年2月9日)