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2014/7/26 ★★★☆☆歌舞伎座 ”夏祭浪花鑑” ”正札附”
久しぶりに歌舞伎座へ。新しい歌舞伎座へは、一幕見席の観る手順が変わってしまったので、実は初めて。劇場があまりにも一代前と同じなので驚き!(笑)。
隈研吾さんに感謝!。
"正札附"は、右近と笑三郎の息がぴったりの踊りが良かった。
そして、"夏祭り浪花鑑"は、通しでの上演なので物語がわかりやすい。ただし結果的に残る印象は、海老蔵の奮闘公演という感じ。
義理の親殺しから、逃亡の大団円まで、人生の綾を感じさせる物語だが、海老蔵の凄み溢れる演技は、スカッと凄し!
ただし、どうも勘三郎のコクーン歌舞伎の、串田演出と笹野 義平次が、思い出されてしまう。あの爆発的な凄さに比べると、様式美の面白さという感じか。
*2003/6/21のコクーン歌舞伎
http://www.ne.jp/asahi/cyber/japanesque/kabuki_dairy_2003.htm
海老蔵よ、中車よ、まだまだ成長して、伝統と面白さの融合に期待!
2013/3/29 ★★☆☆☆ シネマ歌舞伎 ”法界坊 ”
歌舞伎座がいよいよ4/2新装開場するが、近くの東劇では”シネマ歌舞伎”全作品を5/10までかけて上映中。まさに最前列から見る、役者の表情の凄さも堪能できる。実際に見たことが無い演目や役者の確認もできる。
今回は勘三郎の平成中村座での”法界坊”を見た。今まで見たいみたいと思っていたが、ついに永遠に見逃してしまった演目。ただ正直に言って感想は、笑いに走りすぎ深堀が足りずという印象。ちょっと下品過ぎるかな。江戸時代の庶民の芸能という色を強くしたかったのかな。最後に、舞台の後ろが開き、緑の光が飛び込んで来たところだけは素晴らしかった。ということで、自分的には、実際に見に行かなくて良かった(苦笑)。
さぁ、次は何を見ようか! ”女殺油地獄”は凄まじく面白いに違いない!。
Cinema Kabuki
has a powerful point of view from the front row.
电影歌舞伎有一个强大的角度来看,从前排。
2012/10/27 ★★★★★ シネマ歌舞伎 ”籠釣瓶(かごつるべ)”
歌舞伎座が建て替え中で、歌舞伎欠乏症を感じる日々。歌舞伎座で何度も見て好きな籠釣瓶が、シネマ歌舞伎に。
愛想尽かしを言い放ち部屋を出ていく畳の擦り音も、恥と悔しさで泣いてドロドロ流れる体液も、迫るカメラが狂気をとらえた傑作
劇場よりもアップで迫ると、玉三郎、勘三郎、そして下男役の勘九郎、玉三郎をいたぶる権八役の彌十郎の演技が凄い。くっきりと性格が出ている。勘三郎の狂気は、羊たちの沈黙でアンソニー・ホプキンスが演じたハンニバル・レクターをも想像させる。
物語全体は、ピンクフロイドの”狂気(Dark
side of the
Moon)”の曲を思わせるというか、犯罪者の心理と背景も掘り下げるドラマ”相棒”のようなというか、善良な男が、女に恋し、愛想尽かしをされて、女を斬り殺す。
こんな物語を、美しく妖しく芸術にする歌舞伎。恐るべし!そして、歌舞伎 万歳!
2012/3/25 ★★★★☆ BS朝日 ”片岡仁左衛門の魅力”
BS朝日で、仁左衛門さんのドキュメンタリーが、約1時間30分にわたりあった。丁寧に作ってあり、見応えのある良い番組であった。
・義経千本桜の三段目”すし屋”の権太。家族の情を際立たせ、最期は自分の家族を犠牲にした義を父親に報告しようとした瞬間に、勘違いした父に殺されてしまう。
脚本を、現代の人にもわかりやすい様に、書き換えているんだね。凄いね。ここまで変えているとは、知らなかった。こだわりの人だ。
・評論家の”人気役者は、1.声、2.顔、3.姿 の3拍子がそろっている。仁左衛門はまさに揃っている”に納得。
また ”江戸は役者を見せる。上方は役と人を見せる”にもなるほど。
・戦後 歌舞伎が絶えたり、上演機会が少なく、東京へ出てきた時の、欠けた水入れを使っている姿に、仁左衛門の歌舞伎好きの原点を見た気がした。
素晴らしい番組に、スポンサーの大和ハウスにも感謝!そして、仁左衛門 歌舞伎をますます見たいと思わせる番組であった。
東銀座の”東劇”にてシネマ歌舞伎を見る。
正直に言って、演目としても少々地味かなと感じた。
”蜘蛛の拍子舞”は、遠目ではわからぬ蜘の微細な動きがわかるのは良い。実は、蜘蛛の脚がお茶目にきちんと動いているのだ。
最後の蜘蛛の巣ならぬ、白い飛び道具を玉三郎演じる女郎蜘蛛が投げるのも派手で良い。
次の”身替座禅”までに10分くらいの休憩がありました。
歌舞伎座だと、ザワザワと観客の話し声が余韻となるのですが、東劇という映画館だと、明るくなると夢から醒めてしまいます。
そこから、次の作品に没入するまでは、随分と違和感があった。
素にもどってしまうので、シネマ歌舞伎で2作品ある時は、休憩時間の照明や演出に工夫が必要だと思う。
”身替座禅”は、勘三郎の庶民性で見せてしまう作品。わかりやすい物語にわかりやすい演技。
歌舞伎の入門にぴったりかな。
個人的には、骨のあるストーリーのある見せる歌舞伎のシネマ歌舞伎化を期待!
2010/2/19 二月大歌舞伎
★★★★★ 勘三郎、玉三郎、仁左衛門 ”籠釣瓶花街酔醒(かごつるべさとのえいざめ)”
緊迫感の漂う舞台が、最初から最後まで続いた。
現代でも事件でありそうな恋の不条理。勘三郎の迫真の狂気の演技と、玉三郎の聖なる美が絡み合い最高。狂気と哀愁が切ない。
漆黒の闇から、三味線の囃子が流れ、いきなり光が灯ると、そこには吉原の桜が満開。
田舎商人の勘三郎が、花魁の玉三郎を見初める。恋する玉三郎を見受けしようとした夜に、間夫の仁左衛門に責められて、玉三郎は勘三郎を袖にして、振ってしまい、恥をかかせる。
そして4ヶ月後に、勘三郎が久しぶりに吉原を訪れる。玉三郎と二人きりになった瞬間に、玉三郎を切り捨てる。狂った目をして、逃げる玉三郎を殺してしまう。
最後の殺しの場面は、勘三郎が、玉三郎 八橋を切った後に、たっぷりと魅せる。
本物の蝋燭を手にしたまま女中を切り、”籠釣瓶は良く切れるなぁ”とうめく。
目をむき、刃に魅せられる。
また目を少し天を仰いだかと思うと、切った八橋が視界に入った瞬間に、一瞬だけ悲しそうな表情をする。
次の一瞬は狂気に戻る。
迫真の狂気の演技に、なぜか魅せられる。
2009/7/20 歌舞伎座 七月大歌舞伎
★★★★★ 市川海老蔵 ”夏祭浪花鑑”
”ライク・ア・ローリング・ストーン”の例えの如く、義の為に人生を狂わせる海老蔵の迫真の演技が凄し。Fantastic!
3連休の最後の日に、歌舞伎座の一幕観席は長蛇の列。前に並んでいたイタリア人と一緒に歌舞伎を見る。
●以前に見た コクーン歌舞伎 勘三郎の夏祭りとの比較:
・勘三郎の団七が町人の香りがするのに対して、海老蔵の団七は、若くエネルギーが有り余るが、義の感覚も持つ若者 という感じがする。
後半の義父の悪事を追うあたりから、海老蔵の畳み掛けるスピード感とエネルギーは凄い。そして、若いが故に、悩む姿も共感を呼ぶ。
・最後の義父を殺めてしまうシーン。勘三郎は義父と一緒に泥水の中に飛び込み大立ち回りを演じる。海老蔵は、川の中に義父を突き落とし、義父だけがドロドロのゾンビのようになり、執拗に海老蔵 団七を追う。いい男は、汗で濡れるのみ。しかし、義父を殺めてしまった後に、血を流すために、井戸の水を自ら全身に浴びる。何度も必死に浴びる。水もしたたる血走った良い男になる。
コクーン歌舞伎に対して、古典歌舞伎の今回は、舞台装置(勘三郎 コクーン歌舞伎は、最後にパトカーが出てきた 苦笑)やスピード感はゆったりしていたが、海老蔵の迫真の演技で、観客の心をわしづかみにしていた。
●イタリア人の反応:
・4年前に一度歌舞伎を観たことがあるとのこと。今回は2回目。
・一幕見席に、1時間前に並んだのに立見になったのに驚いていた。指定席も売切れだし。でも、今回滞在中に、もう一度見たいと言っていた。
・大向こう には興味深々。”Good
Job!”とか褒めているのか? と思っていたらしいが、屋号を呼ぶと知り、感心。
・義父を殺める最後のシーンは、外人には凄絶かなとも思ったが、食い入るように見て、終了直後は”Fantastic!”と叫んでいた。
なるほど、内容が凄絶でも、ストーリーと演技が素晴らしければ、ファンタスティックなのだと納得。
★イタリア人も見ていた歌舞伎本はこちら↓ 偶然ですが、私も読みました。索引があり便利です。
ということで、国を超え、凄みのある海老蔵の夏祭りであった。人生の不条理というか、儚さというか、Like
a Rolling stoneというか、そういうものも感じさせた。
海老蔵は、凄すぎる!
2009/4/23 歌舞伎座 四月大歌舞伎 ”曽根崎心中”
★★★★★ ”曽根崎心中”
藤十郎の曽根崎心中を、この4月は観るのが3回目。1、2回目に比べると、さらに凄みを感じた。と思ったら、翌日は ”曽根崎心中”
1,300回目。1,299回目の曽根崎心中は、77歳の藤十郎が、妖艶に見えた。
人生には色々”選択”を迫られる瞬間がある。女の脚に頬を寄せるか・・・短刀を抜くか・・・色々な選択が、人の人生を時に狂わせる・・・。
選択1:そもそもこの”曽根崎心中”は、長らく上演が途絶えていたが、1953年に藤十郎らが復活上演したもの。近松の作品とはいえ、心中もので、女の脚に頬を寄せるような、ある意味 危ない表現があるものを、良く復活したのだと思う。でも、このドロリトした男と女の関係は、大阪ならではの面があると感じる。
選択2:お初が、縁の下に潜む徳兵衛に脚を差し出すシーンが、2回ある。縁の下で、金を騙し取った男のいやみな声と、誠実な恋を語りキセルを握るお初の声は、徳兵衛にどう届いていたのか。一緒に死ぬという確認を、お初は脚を差し出すことで、2度する。そして、2回とも、徳兵衛は、その足をしっかりと顔を寄せ、ほお擦りをする。
選択3:最後に、二人で心中に向かいながらも、徳兵衛はなかなか踏み切れない。脇差の短刀を抜かせるのは、お初である。それを、徳兵衛は促されるままに受取り、最後のシーンへ。お初のまわりを回りながら、徳兵衛が短刀を振り上げたときに、フッと幸せそうに笑うお初。
選択 番外: この日の早朝、SMAPの草薙くんが、ミッドタウンの公園で裸で騒いだとのことで逮捕され、大きいニュースになった。お酒を飲んで、心の底にある何かを、彼は素直に吐き出そうとして、ルビコン河を渡るという選択をしたのかな・・・。
いずれにしろ、近松の完璧な脚本に、藤十郎が可愛さと妖艶さで、息をもつかせぬ世界を創っている。
(前回 太地喜和子の名前を出したが、お初のまなざしは、池波志乃 を今回は思い出した。)
2009/4 歌舞伎座 四月大歌舞伎
玉三郎の”廓文章”vs 藤十郎の”曽根崎心中”と上方の恋の対決。
私の評価は、藤十郎”曽根崎心中”の勝ち!
曽根崎心中は、面白さのあまり、2度も観てしまった。
★★☆☆☆ ”廓文章 吉田屋”
有名な夕霧と伊左衛門も勘当から、夫婦となるまでのハッピーな話。
玉三郎の夕霧と、仁左衛門も伊左衛門という豪華な組み合わせ。
奇しくも、2004年に当時の鴈治郎さんが伊左衛門を演じる”廓文章”を見ていた。
正直に言おう。
玉三郎も仁左衛門さんも、少し顔に皺もあるのが、前からのファンとしては辛い。
若さゆえの伊左衛門のアホなぼんぼんは若くなくてはいけない。
つれなくされて、心を惹こうとする夕霧は、クールに迫るなら、ゾッとするくらい美しくなくてはいけない。
そして、夕霧は、無表情な美しさを出すより、表情の端々には、オンナを感じさせた方が、惹かれるかな。
★★★★★ ”曽根崎心中”
お初天神にはお参りしたことがあるにも関わらず、人生初の”曽根崎心中”であった。
今は藤十郎さんだが、さすが鴈治郎さんの当たり役であり、これは凄い。
なんというか、今まで見てきた数々の歌舞伎の演目とは、どこか感じが、匂いが違うのだ。
自分は今まで、クールな美しさや凄みというものが、歌舞伎で好きだった。
でも、藤十郎の曽根崎心中は、
”ドロリ””べったり”とした、現実世界ではありえないが、心の奥底で惹かれるような男と女の物語なのだ。
筋書きは、
・騙されて金を奪われた男と、彼を想う女郎が、皆に2度も罵倒され、屈辱と金を返せない状況になる
・二人で心中を図り、男が女に刃を向ける
という話。
この ドロリとしているが惹かれる匂いはどこから来るのだろうか。
思い浮かぶことを記して見る。
ドロリ1:藤十郎 お初が、最初に登場する時の、着物の乱れた姿。オレンジと赤の着物が、見事にはだけている。
そして、ほろ酔いのお初は、天真爛漫に恋人の徳兵衛といちゃつく。
ドロリ2:藤十郎のお初が、頬の血色も良く、ぷっくらとして、色気があるのだ。
例えば、太地喜和子のような、可愛さと妖艶さと、自己破滅型も仄かに匂う美しさがあるのだ。
ドロリ3:縁の下から、男が女の足にすがりつくシーン。
罵倒されている男への愛の啖呵を切り、着物を裾をはだけて、男に足を差し出す。男はそれをかかえ、悔しさに耐える。
ドロリ4:心中のシーンでは、短刀を出しながら、心中をためらう男に、短刀を握らせる女。
そして、男が刃を振り上げた時に、女は仄かに微笑んでいるのだ。
近松の完璧な脚本と、藤十郎の天真爛漫で色香が漂い一途な女。
人生と、男と女は深い。
*おまけ:太地喜和子さんと、吉右衛門さんが共演する”藪の中の黒猫”も妖しく面白し。
2009/1/24 歌舞伎座 寿初春大歌舞伎 さよなら公演
歌舞伎座のさよなら公演の一ヶ月目。行きたい行きたいと思いつつ、やっと24日の土曜日に行けた。
見るのは大好きな演目の、”十六夜清心” と ”鷺娘”。今回 一幕で4階から見たが、オペラグラスを忘れたのが少々残念。
★★★☆☆ 十六夜清心
以前に 仁左衛門の清心と、玉三郎の十六夜 を見て、その仁左衛門の”悪”への変化にゾクリと来た”十六夜清心”。
今回は、菊五郎 清心に、時蔵 十六夜。
この演目は、毎日歩いている”稲瀬川”と、近くの”極楽寺”が出てくるので、身近である。こんなに不条理で色悪の演目が、家の近くを題材にしているのも、なにかの縁か(苦笑)。
菊五郎の清心は安心して見られますね。ただし、”だが待てよ・・・”の悪に豹変するところが、仁左衛門だと目に狂気が走っていたが、菊五郎だと普通の雰囲気が少し残るかも・・・。
それにしても、この不況に急速に覆われたグローバリゼーションの世の中で見ると、よくこのような、坊主が悪の盗人に変身し、”一人殺すも、千人殺すも・・・”なぞという乾いているが本質をついた言葉が、少々現実味を持って、肌寒く感じられる。凄い脚本である。おそるべし、河竹黙阿弥!
★★★★★ 坂東玉三郎 鷺娘
何度目であろうか。玉三郎の鷺娘を見るのは・・・。
青い蒼い粉雪の舞う舞台を観ながら、これを桜吹雪の舞う舞台で一度見たいと、なぜか思った・・・。そして、涙腺が弛んだ・・・。
出だしのところと、息絶える直前のところが、いつもよりも”よろめき”が多いような気がした。より瀕死の白鷺という感じがする。そして、最期の白い衣裳に変わる前に、一瞬 傘から真紅の着物で現れる部分が、いつもは傘から上に出るだけだが、今回は身体を横にも動かし、その真紅の血の滲むような想いが、ゾクリと伝わった。そして、涙腺が弛み、少々うるうる。
最期に、白鷺が粉雪の中でくるくるともがき苦しむ姿を見ながら、これを桜吹雪の中で狂うような演出も良いかなと、ふと思った。雪も桜も美しすぎる・・・。