Cyber Japanesque

 私が歌舞伎を観たのは、オペラよりも数年後、市川猿之助さんから始まりました。

 傾く(かぶく)が語源で、歌・舞・伎が見事に当てはまったその世界、私にとって如何なる存在でありましょうか。

  私の日記より歌舞伎関連を抜粋

なかなか先達も多いですし、幅広く深い世界なので、自分なりに解体・再構成をしてから、少しずつ先に進みます。

荒唐無稽さや豪快な自由奔放さと共に、妖しいまでに美しい情念の世界を秘めた不思議な空間。しばしその世界に浮世の様々な雑念を忘れて浸る快楽。そんなものが、私なりに系統的に記せればと思います。

PR 演劇チケットなら@電子チケットぴあ が便利です!


●歌舞伎の観方における一考察:

 歌舞伎という観る際に、人により見方が異なる。それは、人によりということもあれば、その人の感情及び体調により変わることがある。例えば私がこのHPで記している印象と、新聞等での批評、そして渡辺保さんや利根川裕さん等の一家言ある方とは、同じ演目でも評価が大幅に異なる。その際の評価の差がどこから生まれてくるかを考えてみると、その舞台をみる視点・切り口の差が、結果としての評価の差を大きく出している様に思える。こんな式は成り立つまいか。

  歌舞伎舞台の印象・評価 = 自分の状態 × 時間の観点 × 場の観点 

○時間軸:

瞬間モード 例えば荒木が篠山が切り取るように瞬間の美を愛でる
演目全体モード その舞台の進行から変化を読み取り感じる
歴史比較モード XX代目と比較して・・・と過去の名優との比較で味わう

○場の軸:

フェティッシュモード オペラグラスで一人の役者の顔や手先のさばきまでを注目し官能を味わう
役者モード 主役と準主役級の名の通った役者の立居振舞いを堪能する
舞台モード 味ある脇役から、長唄等の音楽までを総合評価する

○自分の状態:

没入派 とにかく感情移入、舞台にジャックインして楽しむ派
批評派 論理的、分析的に舞台をみて楽しむ派

今後、もう少しこの仮説を考えて見るが、皆さんの意見も聞きたいのぉ。


★★☆☆☆ "歌舞伎の名セリフ  粋でいなせなニッポン語" 中村勘太郎  光文社カッパブックス

 流行である齋藤孝氏の"声に出して読みたい日本語"では、もうちょっと取り上げられてもいいのではと常々思っている私の溜飲をさげる本。2002/8/30発刊の本ですが、勘太郎がこんな新書を出しているとは露知らなんざ。コンセプトは良し。

 いきなり"しかし、待てよ・・・今日十六夜が身を投げたも、またまたこの若衆の金を取り殺したことを知ったのは、お月様と俺ばかり・・・"という十六夜清心の出だしは、ちょいと難しいかもしれない。確かに解説文を読むと、2002/3月の歌舞伎座の舞台で、仁左衛門さんに毎日殺されて川に投げ込まれたのが印象的ではあるが・・・。殺されながらも、一緒にセリフを唱えているらしい事が、微笑ましい。

 第二章の"LOVE 愛さずにはいられない"では、阿古屋から、四谷怪談から、鳴神から、忠臣蔵の"色にふけったばかりに・・・"から、籠釣瓶まで、結構良い言葉が揃っている。第三章の"世間と人情"では、一本刀土俵入"の"姐さんに、せめて見てもらう駒形の、しがねえ姿の横綱の土俵入りでござんす"という言葉もいいな。けっこう長めのセリフも入っているところがいいな。セリフの解説は、勘太郎の本音トークっぽく書かれているが、多少脱線気味のところもあり。

 最終章の"番外編 勘太郎訳白波五人男"は、思いっきりカタカナで無理やり現代の茶髪若者風に書いているので、卒倒しないように・・・笑。一度読むのは面白い。

 まあ、こういう本を勘太郎の名前で出すところは意味があると思う。これで、歌舞伎ファンが増えて、声に出して味わわれると良い。カラオケとは違うこの心地よさを、女性も味わうと、身体で歌舞伎が好きになる。 アイディア賞、努力賞の一冊である。

 

★★★★☆ "スターウォーズ エピソードU" 

 公開翌日にニューヨークのヒルトンホテルの隣の映画館で、深夜の1:30からの回がやっと取れ、スターウォーズの新作を観る。

 アメリカ人の映画の見方って、なぜこんなにも大騒ぎをしながら見るのかという位に、おおはしゃぎをしながら見るんだねぇ。アナキン・スカイウォーカーがアナキン姫に初心(うぶ)に迫るシーンでは大笑いをするは、ヨーダが剣を持って戦うシーンでは拍手喝さいだし・・・。これは、ビデオでは味わえないエンターテイメントというか、スポーツというか。ちなみに、歌舞伎も、私の知る限り 1)演技中に掛け声が掛かる、2)上演中に食事を食べ飲みながら見ても許される、という稀有の演劇であることを考えると、江戸時代にこのアメリカ人のように大騒ぎをしながら楽しんでいたのだろう。そういう意味では、スポーツ観戦も同じだね。

 立ち回りでは、悪のドゥーク伯爵に、アナキン・スカイウォーカー、師匠のオビ=ワン、そのまた師匠のヨーダ、と次々に光る剣であるライト・セーバーを用いて戦うさまは、猿之助歌舞伎の大団円のようである。というか、それを越えるほどの、これでもかという戦いっぷり。ヨーダがかわいらしく、しかしシャープに切れよく戦う様は、必見である。二刀流もあるぞ。黒澤映画好きのルーカスが、面目躍如である。

 さて、スターウォーズシリーズも、1から6まで、あと3が欠けるのみである。瀬戸内寂聴さんの歌舞伎の"光源氏"シリーズがどこまで続くかわからぬが、次をファンに期待させるシリーズである。筋の荒唐無稽さでは、スターウォーズに歌舞伎も負けていないぞ。

 このスターウォーズが凄いと思うのは、そのマーケティング戦略である。ちなみに前回の"スターウォーズ エピソードT"は、歴代4位の興行成績と10億ドルを稼ぎだしたらしいが、ビジネス的には成功ではなかったらしい。玩具は25%が売れ残り、エピソードTをキャンペーンに使ったケンタッキー・フライドチキンやピザハットは、その期間中客足が落ちたらしい。Tの失敗を、脚本家の招聘、ダークな雰囲気と勧善懲悪の戦いシーンを増やし、むやみなキャラクタービジネスは控え、ネット上のファンを招待したり・・・と各種手を尽くしているらしい。歌舞伎も大相撲のようにならぬよう、マーケティングの努力をを怠らないで欲しい。

 さて、私はスカッと楽しめたが、興行成績はどうなるであろうか。 歌舞伎好きのあなたも、ちょっと見てみれば・・・・如何!?

 

★★★★☆ 東京ディズニー・シー  マーメイド・ラグーンシアター  アンダー・ザ・シー

 東京ディズニー・シーに初めて行って参りました。ディズニーシー自身は、江ノ島と江ノ電と湘南が3倍位 がんばればこうなるな、という感じでした。非常にリアルでしたが、岩肌も磯の香りも本物の方が勝っています。しかし、あの統一感は見習うべきものがあります。湘南の開発も、古きよきものは残し、オールド鎌倉エリア、七里ガ浜ウォーターフロント、江ノ島ミステリアスアイランド・・・と地域毎で統一性を持つべきだと思います。それが、活性化につながるでしょう。

 さて、アトラクションは1時間待ちは当然、2時間待ちのものもありましたが、あの行列さばきのすばらしきマジックと、内容の趣向をこらした度肝を抜く演出で、どれも楽しかったです。その中でも、地下の王国 マーメイド・ラグーンシアターのミュージカル「アンダー・ザ・シー」は凄かった。歌舞伎も見習うと参考になると思われる、各種"ケレン"と"傾き(かぶき)"に満ちておりました。ストーリー自身は、人魚のアリエルが、人間世界に興味を持ち、海の魔女アースラにそそのかされて人間になろうと迷うが、海の仲間たちが引きとめ、仲良く暮らす、というシンプルなもの。

 人魚が舞台に置いてある宝石箱からワイヤーで引上げられながら登場したあとは、ずうっと宙乗りで空中演技なのですよ。その宙乗りのワイヤーを吊るしている機械も、前後に動くだけではなく、回転させることもできる。ワイヤーにつるされた棒を腰につけている人魚は、空中で前回り、後ろ回りを自由自在に行うので、その動きのパターンの多さは、想像を絶します。猿之助に是非対抗してほしいものです。

 もう一つは、下の写真左にある伊勢海老の扱いです。黒子ならぬ赤いぴったりのスーツをつけた操り師が、海老のはさみを棒で両手でコントロールする。明らかに人が操っているのがわかるのですが、その動きの大きさと熱心さに、いつしか自然な動きに見えてきてしまいます。操り師も、歌を大きく口をあけて一緒に歌っていたのは、逆に人手コントロールをアピールする方法としては良いと感じた。

 ということで14分の本当に短いストーリーはたわいも無いミュージカルでしたが、この これでもか、これでもかという空中演技は、お客を楽しませるという意味で、また現代の舞台装置だとここまでできるという意味で、歌舞伎も参考になると思いました。歌舞伎ファンの皆様も、ディズニーシーへ行かれた時には、お見逃し無く。現代の猿之助 千本桜 ここにあり!という感じです。

 

20020216_HASEUME.JPG - 50,252BYTES20020216_HASEUME.JPG - 50,252BYTES20020216_HASEUME.JPG - 50,252BYTES

 

 

 

 

 

 

 

 

★★★☆☆ BRUTUS 2000/11/1号 "なぜ、ナニ? タカラヅカ"

 歌舞伎ファンが、目の端で密かに意識をしている集団とは、やはりタカラヅカとそれをとりまくファンであろうか。BRUTUSが白とピンク基調のど派手な表紙と共に宝塚特集を送り出したので、読む。娘役の檀れいさんがインタビューに答える。「男の子に生まれていたら?」「歌舞伎役者。市川猿之助さんに弟子入りしたいです。」やはり、向こうも歌舞伎を意識していたか。"花の業平"なんかの着物を着ての王朝ものもやっていますし、各組の紹介によると"雪組"というのが、「日本ものにつよい雪組」らしい。沖田総司や坂本竜馬を当たり役にしている絵麻緒ゆうさんは、随分と凛々しいお顔立ちである。玉三郎さんの中性的な美しさに対して、女性が中世的な魅力で男性を演じるのも、少なくとも写真では素敵である。実際の舞台は見たことが無いのでわからんが、一度は見てみたいですねぇ。

 しかし、歌舞伎も見習うべきなのは、宝塚の持つシステム(仕組み)であろう。育成システムとしては、宝塚音楽学校という入口で、20倍の選抜を行って、そしてその狭き門をくぐった者をさらに徹底的に育てる点。一般公募で、かつこれだけの選抜をすれば逸材が育つはずである。そして、今年の1/1にできたという東京宝塚劇場。紙面で見る限り、赤絨毯にシャンデリアに2階席からも舞台がきちんと見え、そしてオペラライクなオペラの生演奏。これだけの仕掛けを、民間企業が作り上げている。ハードだけでなく、花・月・雪・星・宙と五つの組をきちんと運営している点。そして、国から補助金をもらわなくとも、きちんと株式会社でビジネスとして成り立つ点。ブロードウェイなんかは、結構投機的なハイリスク・ハイリターンなビジネスであることを考えても、優れていると思う。親から子へ、宝塚ファンが引き継がれるような、ファン管理も工夫がありそうだな。

 というわけで、東銀座を一度お休みして、機会があれば日比谷を訪ねますか!? 歌舞伎も育成システムとファン管理等を工夫し、ますますあちこちで一座・劇団が活躍できるとよいのぉ。

 

★★★★☆ 「ザ・歌舞伎座」 篠山紀信&坂東玉三郎

 悔しいが、上手いぜぃ 紀信さんよ! 歌舞伎座を8 × 10(エイト バイ テン)という大きなカメラで撮っている。しかも、三階 上手客席という舞台に対して斜め遥か上より広角レンズで狙うことにより、スケールの大きい異次元さを醸し出している。対象も、役者を捉えている写真集は数あれど、"歌舞伎座"という(やかた)を主役としている写真集も珍しいのではないか。既に過去の遺産となった寺社などではなく、生きた役者と観客と裏方さんが躍動している館である。私も普段から歌舞伎座にはお世話になっているが、この写真集を見ると、足を踏み入れる事のできない部分の大きさ、そして歌舞伎という大衆芸能を支える為に、建物も人も巨大なシステムとして成り立っているということがひしひしと伝わってくる。舞台下の"奈落"から、楽器が主役の"御簾(みす)"の中から、裏方さん用の"お風呂"から、かつらを一心不乱につくる"床山さん"の部屋から、(ふんどし)一丁で宙返りを練習する"とんぼ道場"から・・・これらの建物と人とが全て有機的に絡み合い、一つの舞台が出来てくると思うと、あれだけ長い間大人を熱狂させつづけてきた歌舞伎ほどおもしろさの秘密が、少しはわかる気がする。一朝一夕には成し得ない、貴重な日本の財産ですよ、歌舞伎は。そしてこういうものにクールな写真でアプローチし、そして玉三郎に解説を喋らせた篠山紀信の作戦勝ちです。脱帽です。

 この濃密な内容で、しかも普段我々が目にする事の無い秘密があきらかになっていて、この写真の質とボリュームで3,000円は超お買い得です。

 加賀見山で宙をゆるゆると舞っている猿之助、歌舞伎座の屋根で目をむく髭づらの新之助、奈落の底の剥き出しの鉄骨の間で艶やかに佇む玉三郎、の写真が特に素敵だな。

 

★★★★☆ BRUTUS 2000/12/1号 "歌舞伎ブギウギ"

 「ブギウギ」という言葉遣いに編集長の扇子、ではなかったセンスの年齢を感じさせるが、T2張りのメタリックな團十郎の表紙から、何か期待させる怪しい雰囲気。

 勘九郎さんへの法界坊インタビューはまず予想された内容として、"加トちゃん & 染ちゃん"、"寿司屋の新之助""歌舞伎題材のマンガ劇画"など、斬新である。イイゾ、イイゾ、カブイテイルゾ! 

 染五郎の酔った禿げちゃびん姿など、清楚なファンが見たら卒倒ものだ。頬を真っ赤に染めて、ちょび髭をつけ、よろける姿は、でもまだ年季がもう少しいるか。でも、アラーキーの写真集を出すのみならず、この見上げた度胸は素晴らしい。あとは役者としての凄みがあれば、最高だ。

 劇画も、歌舞伎の題材を今風のコミックにすると、スケベイな猥雑さが良いぞ。三島の「近代能楽集」を思い出させるが、籠釣瓶、かさねなど、疾走感がありGood。

 おまけに玉三郎さんの真っ向勝負の写真までついている。阿古屋、藤娘、籠釣瓶の八つ橋、そして鷺娘と豪華組み合わせ。個人的には、八つ橋が一番良いぞ。12月の京都 南座で上演されるのがうらやましいぞ。

 視点が斬新。でも、これを読めば歌舞伎に興味を持つ人も増えるはず。これは、ピチピチ跳ねる、永久保存版本である。でかした、BRUTUS!

 

PR 演劇チケットなら@電子チケットぴあ が便利です!

それでは・・・ご期待を。


[Cyber Japanesque Home]