Cyber Japanesque  2000年5月〜2000年10月 日記帳


2000/10/23

 今日は、仕事の合間を縫い、やっと10月歌舞伎座 芸術際へ。"骨寄せの岩藤"の大詰を観て参りました。

 猿之助さんの小気味良いテンポとノリが、スカッと爽快。今回の舞台は、いつにも増して口跡が良いような気がしました。くっきりと四階まで語りが伝わってきました。いつもながら、猿之助さんが悪婆の岩藤役で、美しい尾上役の玉三郎を、いたぶる様にいじめる所がうまいですねぇ。普通ならば、笑也さんがいじめられるのだろうが、今回は玉三郎。赤と白を着物と打掛で鮮やかに作り出す気品ある玉三郎。猿之助の、ねちねちとした声質と語り口調が上手いのですよね。独特で好きです。玉三郎、ついによよっと泣き崩れる。

 岩藤の霊が出てきて、舞台が暗転してからの場面では、せっかく舞台装置そのものを金色の屏風や襖から、すすけたものにしているのに、意外とあっさり終わってしまったのは残念。猿之助ファンとしては、巨大ながま蛙蜘蛛が出てくる事を、身体が自然に期待してしまう(笑)。

 その後、仁木弾正ならぬ望月弾正の捕り物帖の場面では、急・緩・急というリズムにより、最後の実際に剣を合わせ、梯子を使ったシーンが、よりスピーディに見える。見得の場面での、猿之助さんの口からもれる「ぬうぅっ・・・」という気合の声が、こちらまで拳に力が入ってしまう。役者の中で、ここまで声を立てながら、見得を行う人もいないだろう。ここまで肉体に力を入れるから、瞬時にストップモーションで、劇場の空気を自分に引き寄せることができるのだろう。

 ということで、大詰めは一時間のみの為、もっと見たいというフラストレーションも残しつつ、猿之助一家の南春夫の如くのお客様への挨拶にて、今月の観劇はおしまい。

 毎月 観たいみたいと思いながら、月末近くにやっと時間がとれ、いそいそと会社帰りに出かけ、観てしまうとその演目をもう一度観たくなるという悪循環ですね。次回からきちんと月初から行こうと誓う。しかし、来月は、国立で幸四郎&染五郎の"桜姫東文章"のみならず、浅草で勘九郎&橋之助の"法界坊"と、おもしろそうな演目が目白押し。どうしようかいなぁ・・・(悩)。


2000/10/14

 最近の近況を少々。皆様の和風生活の少しでも参考になると いとうれし・・・(笑)。私の渋谷探索記なり。

渋谷 ブックファースト

 暫くぶりに若者と大人のメルティング・ポット 渋谷へ足を運ぶ。時間があったので東急本店の向かいにある"ブックファースト"という本屋へ。6フロア、70万冊もあるらしぞ。店内は綺麗&おしゃれにまとまっている。傾向としては、ポップで若者向きか。青山ブックセンターの対抗馬!?

 地下一階 アート&ホビーの所も充実している。市川新之助の写真集 "新生"もなぜか5冊も並んでいたぞ。

 圧巻は、二階のサブカルチャーのコーナー。サブカルで一つのコーナーを作り、明確に書店案内にも記載をするとは、良い度胸だ(笑)。並んでいる本は、背表紙だけでも、毒々しい色使いで怪しげ。と言っても、私も思わず一冊買ってしまったが。書名は秘密(苦笑)。

 

異端の華道家 中川幸夫

 そこで、BT(美術手帳)という雑誌をパラパラとめくっていて、衝撃を受けた。

 何か牛肉でも縄で結んだ気色の悪い現代アートだなあ、と以前もどこかで目にして思っていたものが、実は"5000本の薔薇の花びら"を固めた作品だと知った時。"ひらく"という作品。

 良く見ると、デロリとした赤さは、薔薇の妖しい魅惑の集積か。良く見ると、僅かだが赤い汁もしたたっている。エロチシズムが漂う。

 しかし、5000本の薔薇の花びらを山の様に積む事により、まず"魔の山"という作品を作り、それを凝縮させ"ひらく"という作品にする。いけばなという世界でも、ここまで革命を起こせるとは・・・創造的破壊という衝撃を、久々に味わいました。

 

●まんが喫茶:

 以前から一度行ってみたかったのですが、最近インターネットも導入され、機能強化が図られているというマンガ喫茶へGO。ブックファーストの並びのビル 7Fか8Fにあった。

 店内に入ってサービスの多岐さに目を見張る。選択は、インターネット or DVD、一人席 or ペアシート。飲み物はフリー。マンガは、インターネットやDVDが備え付けられている席で読むというもの。24H。パーテーションで高く区切られたデスクに、リクライニングチェア。

 清潔感溢れ、健康的。安全。いやあ、おどろきました。これならば、ここで仕事ができるかもしれない。外出先でデスクトップマシンを使いたいときにKinko'sに行く事があたが、こちらの方が飲み物もあるしベターだ。

 うーん、渋谷という街は、人の欲望を、大規模商業化することで低廉な価格で提供していきますね。おそるべし。

 私は最近源氏物語がマイブームなので、大和わきさんの"あさきゆめみし"を読んでおりました。

 

*なお、ちょっと砕けた文章になったのは、ブックファーストで 小学館文庫「日記のお手本」で荒木経惟の日記を読んだせいなり。


2000/10/1

 オリンピックの喧騒も今日でおしまい。

 秋の夜長に、最近見つめたWeb上の和のエッセイでおもしろいものを紹介する。

 まず、京都の芸妓さんへのインタビュー。 「日本で初めて花柳界でホームページを持った芸妓さん!

 京都 宮川町でお茶屋さん&置屋さんも営む芸妓の小糸さんへ、Boook.comがインタビュー。なんと、彼女のHPを見て応募してきた舞妓さんもいるとのこと。インタビュー自身は短くて物足りないが、この小糸さんのHPがなかなかおもしろい。お座敷遊びのポイントなどの廓の基礎知識はもとより、彼女の後援会「京の花街ネットワーカー後援会」の誠意と愛嬌溢れる活動がすばらしい。着物姿の芸妓さんよりPCを習う姿なんて、ほんまユニークどすな。これを、一昨年に実行なされたとは、なかなかのものです。私も、着物か浴衣か作務衣を必着という条件で、Web教室でも開いてみようかしらん(笑)。また、東京アメリカンクラブで在日米国婦人達へ講演した文章は、簡潔に京の花街の歴史とルールと心意気が記されていて参考になります。花街のもてなしの特徴は、「非日常的」であることです。 」と、コンセプトが明確なのもプロ意識に溢れています。

 二つ目は、そんな舞妓さんへの変身企画。「本場・京都で舞妓さんになるっ!

 Boook.comの3人の女性記者が京都へ乗り込み、変身体験。鬢付け油を塗るところから始まり、緊張感から、終了後の散策での高揚感まで、素直に女性の心が綴られています。確かに京都に行った時に、「舞妓変身スタジオ」なるものを何箇所か見ました。結構プランが充実しており、修学旅行生向けのグループ向けで少々リーズナブルなセットまでありました。女性記者達が変身後、散策をしていると、学生から外人から次々と一緒に写真に入ってくれるようせがまれるくだりは、おもしろいです。それに舞いあがり、「えろう気持ち良うおしたえ! 」という感想に結びついて行く。こうして女性は美しくなっていくのか。うーん、私は芸妓さんになって黒系の渋い着物を羽織って変身してみたいのだが、男の人は受け入れてくれるのだろうか。そんじょそこらの現代女性よりは、おんならしい仕草は可能かもしれないが・・・(苦笑)

 三つ目は、趣向を変えて拝観記。「e見仏記

 こちらは、Hot Wiredで、みうらじゅんいとうせいこうという濃い二人が、新幹線で吉野山まで怒涛の仏廻りに出かけるという企画。「ガラスケースの中にあるのが小ぶりの金剛蔵王権現木像。鎌倉時代、源慶作だそうだ。右手と右足を上げる蔵王スタイルはそのままだが、左肩にかけた布や腰布に残る彩色が派手で、どこかに女性性が感じられる。蔵王権現のプリミティブな暴力性がないのは、内側に貴族の姿が幾つも描かれた厨子のせいでもあるだろう。」「江戸期に作られたことをあとで知ったが、確かに江戸時代独特のマンガ的なヒーロー像である。とにかく突飛で、ありがたみより徹底的な驚かし、きわもの趣味寸前のケレン味にあふれている。」というような、岡本太郎の作品を鑑賞しているかの様なストレートな意見。このような仏像の見方もあるのだと、安心させ気づかせてくれる内容。そうだよね、仏像といえども各時代の最高の芸術家が命をかけて取り組んでいるのだから、こちらも枯れた心ではなく、正面から身体で受け止めて良いのだよね。みうらじゅんの最後の言葉が蔵王権現について、、「これならヤングにも人気出るよ。俺、長谷寺の十一面とか奈良の大仏見たときくらい感動してる。東南アジアの人も理解するよ」とうことなので、次回 近くの長谷寺の観音様も正面から睨んでみることにしよう。

 以上、三者三様のアバンギャルドなWebエッセイでなかなかおもしろし。

 


2000/9/25

 一週間に二回 歌舞伎座一幕見席へ「魚屋宗五郎」を観に行く。圧巻なのは、やはり自由奔放な勘九郎さんの演技でしょう。なんと言っても林家三平師匠を彷彿とさせる酔っ払いの演技と、藤山寛美の松竹新喜劇を思い出させる皆でのワイガヤ。劇の出だしは、杉良太郎もどきのきりっとした二枚目で出てくるのですがね。四階からオペラグラスで勘九郎さんの表情を追うのですが、徐々に酔っ払い気持ちが大きく陽気さも混ざってくるシーン、妹を手討ちにされた悲しみのなかでの過去を懐かしむ高笑い、そしてカラッとしているが哀切をどこか帯びた酔っ払いの小唄。どれも魅入ってしまう表情の作り方で、こちらに感情が伝わってくる。うーん、この洒脱さと、適度な笑いを誘い、そしてどこか悲しみと狂気を含んだ演技は、当代では誰も真似できない境地ですね。

 決して派手ではなく、どちらかというと地味な小品ではありますが、勘九郎Worldのおかげで、時間を忘れて楽しませてもらいました。

 ところで、宗五郎の女房役の福助さんであるが、私が観ている中では初の汚れ役というか老け役というか、要するに美しいお姫さまでは無かった。そして驚いたのは、声の出し方である。少々鼻にかかっただみ声の様な声で、お歯黒で顔色も黒ずんでおり、でも気丈な女房役を熱演しておりました。


 

2000/9/8

 週刊朝日で、松本幸四郎さんが林真理子と対談しているのを立読みした後、家に帰ってまたまた'たけしの誰でもピカソ'で幸四郎さんを見る。

いやあ、人として親として仕事人としてカッコ良すぎますね。

 夢の仲蔵を日生劇場で演じていますが、私は知りませんでしたが仲蔵さんとは江戸時代の歌舞伎役者の様ですね。それ故劇中劇のようであり、テレビで一部を見ても矢の根などの一番おいしい部分が盛り込まれている。團十郎との確執も、華を添えているとのこと。

 彼の「演劇としての歌舞伎」をやりたいという言葉は、一面で正しそう。確かにブラウン管に映し出されるシェークスピア四大悲劇の場面、特にオテロや、ラ・マンチャの男などでの演技は、「カリスマ」という言葉を使って説明していたが、エネルギーと汗がほとばしり、声を振り絞る場面が続く。対して、歌舞伎は様式美が全面に出すぎていると、感じているようだ。ストーリーを理解させ、その筋に観客を没入させ、そして間断無く緊張感を維持し、美以外のメッセージを心の中に残すような、"演劇"という面があるのもすばらしい事。若い人には、そちらの方が良いだろう。そういう意味で、こだわって欲しいアプローチである。

 でも、映像で見せられると、彼の静と動の両方とも演じ分けられるというのは、まさしくプロ中のプロですね。今までカッコ良すぎて敬遠していた面はありますが、松本幸四郎 さすがの役者です。おそれいりました。

 TV中の彼の宙をさす時に、ピンと人差し指が伸びていたのは美しかったですし、少々小声でたんたんと話しながら、観客の注意を呼び込む語り口はさすが。

 仕事人のカッコ良さという意味では、彼を目指したいですね。誰か「あなたも幸四郎に似ている」なぞと言ってくれないかしらん(笑)。今度機会を作って彼の舞台に行ってみよう。


2000/8/18

 今週は2回 歌舞伎座へ四谷怪談 一幕見席へGO!

 いやあ、一幕見席の四階席も込んでいました。立ち見でびっしりでした。特徴的なのが、茶髪やストリート系のような若い男女も多い事。歌舞伎座に茶髪を複数名見るなんて、初めての経験。コクーン歌舞伎の観客を引き連れているのか? いつもとは違う若い客層が入る事は、喜ばしい事ではあるのだろう。四階の見世物小屋の雰囲気が漂う所に、薄闇の中、ヤマンバどもが徘徊するのも、こりゃ一興か!

 勘九郎さんや八十助さんに福助さんもよいけれども、なんと言っても橋の助さんの伊右衛門が極めつけでしょう。色悪の持つ、妖しい魅力。いつぞや誰かの解説で、伊右衛門は実は心底の悪ではなく、伊藤家に引き込まれていったに過ぎないという内容を読んだことがある。しかし、きちんと伊右衛門は悪になりきり、お岩の亡霊とも正面から対峙し続ける。こいつは、心底 悪党なのですよ。そして、まっすぐな悪だからこそ、滅んで行く美学がある。

 伊藤家の娘との祝言の前に、お岩に質草を出すようせびるシーンなんざ、刀をお岩の胸倉に突っ込み、ぐいぐい圧力をかけたかと思うと、次の瞬間 バタンと刀で床を叩き、いじめる憎々しい動作。お岩の子の美しいべべを取り上げ、くるりくるりと廻しながら、お岩の手から奪ういやらしい仕草。 橋の助の浮世絵の中から浮き出てきたような歌舞伎役者顔が、引き立つ一瞬。

 コンビニエントな恋の時代に、これでもかとおどろおどろしい怨念というものの味わい深さを、こってりと表現していると思う。でも、現代人の私としては、ここまでの色恋沙汰にはまるのは現実的に無理でしょうが。しかし、こういう深みのある人間関係の世界もあこがれますね。茶髪の世代は、この作品をどう見たのですかね・・・(謎)

 あと残り上演は一週間であるが、橋の助を必見!おもわず、ニヒルに目元涼しく、肩が少々上がりますぜぃ。

 


2000/8/13

 昨日は東京湾大華火に行って参りました。10代中〜後半の女の子の、約3割は浴衣を着ていたのではないか。視覚的効果(=つい眼が行ってしまう事・・・笑)も含めると、浴衣で一杯であった。その中でも、髪を丸く上げて、薄い青の硝子の簪(かんざし)をしていた女の子が印象的であった。浴衣の子は花火にはたくさんいるけれども、あの簪はお祖母さんの心づけか、粋で美しかったなあ・・・。すりガラスの様で、涼感あふれる白いうなじとの組み合わせが絶品であった。(嘆息・・・ちょっとフェティッシュが入っているか・・・苦笑)

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・それでは、それでは、関西旅行の続きを少々・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 祇園の街並み、そして白川の辺(ほとり)も散策するが、途中雷雨に遭う。大正カフェを模したお店で昼食をとるが、町屋造りを残しつつ、家の中をきれいに改装しており、こういう努力は大切だと思う。雨が小ぶりになったので、再度散策。残念ながら舞妓さんには会えず。

 京都 南座から喧騒の四条通りと、一歩入った祇園の街並みの対比が印象的。でも、少々京都は車が多すぎますね。良いスポットは多数あるのだから、車の流量制限なんてやってみては如何?

 一路甲子園へ。我が母校が61年振りに甲子園に出るというものだから、仕事を投げ打って来たのですよ。高校野球なんて、小学・中学の頃にテレビで見たっきりですね。もちろん、実物の甲子園を見るのも初めて。試合開始が4時過ぎであったので、まだ暑さに耐えられる。いきなり相手がPL学園ということで、この組合せの妙に神を恨むか。

 懐かしい顔顔を見つつ、アルプススタンドの一番前で観戦。いやあ、いきなりエラーをしてくれ、微笑ませてくれます。PLは、こんな弱小チームにでもきちんと送りバンドで攻めてくるのはさすがです。高校に校歌があったことすら忘れていたが、皆での応援も楽しいもの。神宮での早慶戦の様に、肩を組んで若き血を歌えるような攻撃のシーンは皆無でしたが、非常に楽しい時間でした。

 でも今回甲子園を体験して分かりました。技術的に言えば、これはプロにかなうべくも無く、別に国民が大騒ぎをして見るものでもないと思います。オリンピックでのキューバや大リーグを見るのが正しいと思います。一方で、地域コミュニティとしては重要なイベントですね。これは、出場している学校や地域に対して、自分自身が何かの能動的な行動をとりきちんとフィードバックがあり、という良い関係があったところに対して「思い入れ」というものが発生し、その思い入れを持って応援するのは、楽しいということです。そういう意味では、地域で開催されている花火の様に、こじんまりとささやかな共同体で楽しむのがよろしいかと思います。 (村上龍の「希望の国のエクソダス」を読んだ後なので、少々理屈っぽく)

 


2000/8/10

 昨日は、日帰りで京都 祇園&大阪 甲子園という組合せの強行軍を実施。でも、非常に楽しかった。

 まず、京都駅の相変わらずの壮大な空間を堪能。Cafeで浮遊感を楽しむ。リキテンスタインの広告が、異空間のワンポイントアクセントであろうか。でも、和服の女性も3名見る。

 バスで清水寺へ。バス通りは、渋滞で、単なる雑然とした醜い街。

 清水寺の坂を上がり、勘九郎が思わず見得を切った舞台に立つが、さすがに観光客の多さに見得は切れない(笑)。でも、高校の頃に訪ねたときには空中回廊の様な印象があるが、今となっては意外と世俗から近く、底も見えるものでした。清水寺までの茶碗坂というのも、人も少なく、多くの清水焼の店や工房があり、良いですね。

 三年坂、二年坂を歩き、ねねの道を歩き、祇園へ。この坂界隈は、小奇麗で、小じゃれた和風の店が並びますね。さすがに、鎌倉よりも道の長さと店の数が違う。京都に軍配が上がる。でも、この洒落かたは、きちんと観光客の需要に応えた市場原則を感じます。

 祇園は、甲部歌舞練場(女紅場)をまず訪れる。最初は隣のJRAの建物かと思ったのだが、風格のある意外や意外、大きい3or4階建ての建物。裏口から入っていき、「ここが都踊りの場所か・・・」などと感慨にふけっていると、「何か用ですか!」と注意を受ける。きりっとした、女性の叱責は、それはそれで気持ちの良いもの。

・・・・・・・・・・・続きはまた次回・・・・・・・・・・・

 


2000/7/25

 いやあ、本当に久しぶりに会社帰りに歌舞伎座に行って参りました。めくるめく、非日常の気持ち良い世界に、時を費やしたのでありました。

 猿之助の連続30年、猿之助130年記念ということで、夜は宇和島騒動でございました。この日の失敗は、オペラグラスを持っていかなかったことです。一幕見席では、貸してはもらえません。ちなみに私の目は、裸眼で0.05、眼鏡をかけても両目で0.8程度と言う視力であり、さすがに四階席からは顔は見えなかったので、声で役者を判断しておりました。

 顔や仕草の詳細は見えませんが、声と身体から発するエネルギーは、悪者 源五郎役の右近が際立っていました。いつもの誠実な右近さんではなく、声にドスといやらしさの効いた迫力ある右近。花道の気風の良い見得なんざあ、思わず私も真似をしたくなるような爽快さでありました。

 爽快さと言えば、養老の滝での、本物の水を使った大滝での立ち回りも、凄いぞ。この日はサミットの後のせいか、三階席にやたらに外人の一行が多かったが、彼らのHARAKIRIにより赤い血が滝にとうとうと流れ出ずるシーンは、どう映ったのであろうか。最初は拍手もなく唖然とした様子であった彼らも、しまいには拍手喝采でありました。スプラッターと当初は映ったかも。でも、そんな毒々しさを吹き払うような、凄絶爽快な猿之助の演技でありました。

 いよいよ明日は千秋楽となってしまいますが、これはお勧めですよ。暑い夏の一服の清涼剤として、あなたにお薦めします!!


2000/7/9

 最近の雑誌や新聞から。

 「芸術新潮」:最新号は、桂離宮の特集。そちらの端正な写真はさておいて。都知事 石原慎太郎さんへのインタビュー有り。小説家、芸術愛好家でもある彼への、財政困窮中の都政への少々意地の悪い質問。恵比寿の東京都写真美術館は、一人あたりの入場料800円の所、入館者一人あたりにすると17,000円も維持費がかかっているらしい。確かに、写真美術館、現代美術館、江戸の展示館と、建物などの箱は素晴らしいですよね。ハードだけに積極投資する日本の悪政の見本か。でも、石原さんの弁が奮っている。「今後は、写真家は館長になってはいけない。館長は経営者でなければ。牛尾さんに頼んだが、残念ながら多忙で断られた・・・」 そうだよ、おもしろい・人を感動させる → 人数が集まる * 正当な対価を払ってもらえる → 集客情報を分析しさらに良い企画を考える、というサイクルを作らなければ。 加えて、国として保護すべきと決めた日本の文化に対しては、ソフト面(作品、人、団体)に限定して、土木建設にまわす公共投資の数十分の一を、国が投資する、ということが必要ではないか。

 「エスクァイア」:最新号は「ハワイに住んでみる?」という特集。表紙が、プール・白いデッキチェア・そしてその向こうに青い海、とコンピュータとマネーのジャングルに疲れた心には、砂漠のオアシスの様な写真。気づいたら手に取り、財布を開いていた(苦笑)。私はハワイには、ハワイ島とマウイ島しか行った事が無く、皆が行くオアフ島はまだ見ぬ土地。ということで、人気(ひとけ)の少ないハワイしか知らないという前提で書く。エスクァイアの特集と過去の経験からすると、日本で言うと北海道のスケールや自然と、湘南の落ち着いているが洒落た面もある'海辺'が合わさったようなところですな。確かに良いところ、天国に近い島々ですよね。エスクァイアに、SBCウォーバーグの企画室長や物理学教師が、日本からハワイに移住して、そこで金融やインターネットのビジネスを行っている記事が載っているけれども、彼らの気持ちが理解できる。私も東京に住んでいたら、エクソダスを真剣に考えていたかも。でも、今朝の台風一過の由比ガ浜の情景も、靄に包まれた浜が素敵だったぜぃ。

 7/5の日経夕刊 あすへの話題: ドナルド・キーンさんの「日本には素晴らしい文化があるのに、日本人男性が自国の文化にあまり関心を示さない事は残念である」という言葉から「文化力の凄さ」という事を端的に説いている。おもしろいのは、例えスラムの一室に住んでいても、野の花を摘んで活(い)け、古新聞に「無心」とか「日々是好日」と書いて掛け、番茶で来客をもてなすことはできると言う。その時、その一室は閑寂な禅庵となる、と言う。確かに禅とか利休系の文化の原点って、このようなシンプルライフにあるのだよね。なかなか鋭い指摘で、はっとさせられた。日本文化は多様で切り口がたくさんあるので、おもしろいなぁ。


2000/7/2

 私事ですが、ずうっとビジネス面とシステム面の構築に関わっていた、セブンドリーム・ドットコムというサイトを、7/1にリリースしました。いやあ忙しかった。本当は二日に一回の本HPの更新も、最近は週に一回まで落ちていましたが、やっと仕事も一段落する予定です。

 皆様のご参考までに、少々"和風愛好家の皆様へ"という切り口で、サイトの解説を致しましょう。

・トップページ: http://www.7dream.com

・絶対お得:

 セブンイレブンが近くにある方は、セブンイレブンでの支払い・受取を指定すると、手数料が無料です。CDを携帯からも購入できます。もちろん、レシートに書いてあるセブンイレブンの電話番号を打ち込むと、携帯電話からお店の指定も出来、手数料がお得。 品物も、CD9万枚から、大人の為のカタログハウス(通販生活)の製品まで、幅広く取り揃えています。じっくりと製品解説もお読みください。等々・・・・。

・和風の使い方例:

 まず渋いのは、篆刻(てんこく)セット 。時間が有るときに、自分オリジナルの印を刻むのは如何!?

 次に、切れ味鋭いであろう、正広の包丁で、厨房で遊ぶのはどうか。

 トップページ 上にある総合検索で「端唄」と入れると、31商品が紹介されます。普通のレコード店では手に入らないCDを買って聞くのもオツなもの。

 浴衣を着て、花火にお出かけ、なんていうもの風流なもの。

 

ということで、楽しんで、そして、買うてくれると いと うれし!!


2000/6/3

 最近 超・超・超 仕事が多忙である。土曜日までも仕事が結構あるし、日中の激務とストレスで、その後は脳死状態である。さすがに、鎌倉から東京までの通勤が辛く思えるときも有り、たまに東京に泊まってしまい睡眠時間を確保したりもしている。ということで、仕事のピークが続く7月10日頃まで、2日に一回の更新改め、週2回の更新と、ペースを落とします。悪しからず。ご容赦。

 ということで、踊りの稽古もサボりサボっており、小説を読む気力も減退しつつあるのですが、今日新聞2紙の誌面上素敵な和風特集を見たので報告を。2人の巨人、宮本武蔵とイサム・ノグチ。

 宮本武蔵は、朝日新聞6/4の日曜版に「枯木鳴鵙図」。今まで私は剣豪の宮本武蔵が、これほどの水墨画の名人とは知らなんだ。水辺の茂みから伸びる一本の枯れ枝に、眼光鋭い鵙(もず)が留まる。そして、あっと思わせるのは、その枯れ枝を、一匹の虫(青虫であろうか)が這い登るのである。この虫の運命や如何に! 

 構図が凄いですね。剣豪というのは、動体視力はもちろん非常に優れているのでしょうが、一瞬のうちに自分の周囲の状態を、必要な情報のみきっちりと把握する力というものも優れているのですね。映画T2で、ターミネーターが赤外線視覚モードで、夜中に人やバイクを捕捉し、さらに焦点を合わせて情報処理する場面があったが、宮本武蔵の様な傑物の頭の中の情報処理回路を覗いて見たいものだ。昔のSF映画 ブレイン・ストーム(だったと思う)であったように、他人の体験を、脳から情報をインプットすることにより追体験する、という時に、この武蔵は面白そうである。

 以前、吉川英治の宮本武蔵はそのおもしろさに一気呵成に読んだ記憶があるが、今度は エネルギーのある時に「五輪書」でも読んでみるか。

 イサム・ノグチは、日経新聞6/4の、先週に引き続く見開き2ページの連載。ノグチの作品というと、札幌のモエレ沼公園に度肝を抜かれた記憶があるし、また魯山人の伝記なんかを読んでいると、新婚生活時にしばらく滞在していた、ということしか知らない。 あまり"和"という感じはしませんね。

 記事を読んでいてなるほどと思ったのは、石彫作りで、当初は自分の意図する形にこだわったが、そのうちに石に手を入れるのが減ったという。「僕に石が話し始めるんですよ。その声が聞こえたらちょっとだけ手助けをしてあげるんです」という境地に達したらしい。

 西欧の彫刻家:自分の内部の声を彫り込んだ ←→ノグチ(日本の彫刻家):素材である石の声を聞く。

 あまり二元論で片付けるのは良くないが、自然を生かし、自然に同化する、和風の特徴を理解する重要なポイントだと思う。

ということで、貴重な休日、長谷から材木座まで海岸を散歩し、光明寺の枯山水と蓮池を堪能した後、新聞記事のなかなか鋭い論評に満足した一日であった。

 これで、皆様から激励メールでももらえると、もっと元気が出たりして・・・(苦笑)


2000/5/16

 今日は、普通の日記らしい日記を書いてみたい。(いつも何か特別なイベントのレポートなので、何もなかった日を記すのはきっと初めてである)

 今日は火曜日であるが、仕事の休みを取れた。ゴールデンウィークも土曜日も働き詰のため、何ヶ月ぶりかのスケジュールの無い休日。

 結論は、湘南鎌倉の休日はとても心地よく楽しい

 まずは江ノ電 長谷駅の周りを散策する。意外だったのは、長谷駅から大仏にいたる道が、平日並みに混んでいる事。理由は、遠足や修学旅行生で溢れているため。小学生、中学生が、次々にぞろぞろと歩いている。なるほど、企業の保養所は減りつづけていると近所の食事屋の人は嘆いていたが、学生は訪れるのですね。お金をあまり使わないところは、店にとっては辛いところでしょうが。しかし、混んでいるのは大仏への道だけなのは残念。他にも、お寺なり海なり、もっと素敵なものはたくさんあるのに。

 本音を言うと、鎌倉の大仏というのは、私的には、★★☆☆☆ 位です。境内には大仏以外の趣のあるものはありませんし、花も特に美しいものはありませんし。強いて言うと、大仏の胎内を見学できるところが魅力でしょうか。胎内も明るく、秘密めいた所は微塵もありませんが。公明正大すぎるお寺であり、やはりTypical観光地なのだと思います。

 長谷の黒田陶器という、陶器屋さんに入ってみる。新作の陶器、普通の積まれた陶器が並んでいるのは新鮮。そうだよね、こういう本来有るべき一般の人が食器として使う陶器を、なにげなく並べて扱っている専門店って目にしなくなりましたよね。スーパーや百貨店で皆買うようになっているのかもしれませんね。黒田陶器にならんでいた、信楽のご飯茶碗に心惹かれる。

 海沿いを七里ガ浜まで歩く。晴れた初夏で、適度に風があるので、Tシャツが身体にベタツクことなく、テクテクと歩くのも心地よい。ウォーキングとでも言うと、身体にもよさそうである。休日はサーファーで一杯の稲村ガ崎も、今日は誰一人としてサーフィンをしていない。バイクで来ている若者が数名いるのみ。この静かな海こそが、リゾートっぽくて良い。しばし海を一人占め。

 七里ガ浜の帰りに、以前から寄ってみたかったBarを訪れる。よく雑誌に店内から海を見ているショットは載るのだけれども、店名と場所は店の希望により掲載しませんと、心そそられる但し書きのついている店。きっとここだろうとあたりを付け、店内へ。

 ここに書いても人が大挙して訪れるわけではないから書いてしまうが、稲村ガ崎の海沿い1Fにある"Taro's"というCoffee Shop。(そういえば、先日 長谷のみとめ商店という、ピクルスの素を自家製販売していたり、世界から塩や醤油を取り揃えている店に行ったら、ゴールデンウィークの前半にテレビで紹介されたら、2倍なんていうものではきかないお客さんが訪れ、あっというまにテレビで紹介された商品が品切れになってしまったと言っていました。)入ると、これはハーレーでも似合いそうな髭が素敵なマスターが迎えてくれました。他に客は、これもヘミングウェイの「老人と海」に出てきそうな外人男と若い女性のカップルと、近くの4人組み。黒いバーカウンターと薄暗い店内が、外の光りの明るさと対照的で美しい。海を見ながらのビールは、最高である。光りも夕方になってきて、少々赤みがかった光線が美しい。鎌倉という語感よりも、湘南という言葉が似合いそう。これで、134号線の車の量が減れば、完璧であったが。

 Taro'sは、夜10:00までやっているそうなので、今度は夜に来てみるか・・・湘南の夜を味わえるかもしれない。

 


  [Cyber Japanesque Home]