Cyber Japanesque 浮世絵 "10分でわかるはじめての浮世絵"

 最近、浮世絵に出会いました。初心者からみた浮世絵の楽しみ方を綴りたいと思います。あなたも一緒に新しい世界を覗いてみませんか。


●浮世絵を気軽にいつでも見られる美術館:
    浮世絵は、専門店もありますが、アットホームな常設美術館もあります。おそらく、東京と大阪に1つずつしかないと思われる。
    東京と大阪の対比も面白し。しかし、どうして東京と大阪は同じものを作っても、こうテイストが違うのか・・・静謐vs.笑い 笑。

   ○東京: ★★★☆☆ ”礫川(こいしかわ)浮世絵美術館”:
     地下鉄 春日駅か後楽園駅からすぐ。マンションの5Fにある。
     医学博士の松井さんという方の浮世絵コレクションを飾ってある完全な私立の美術館。
     マンションの部屋を改造しているので、美術部屋という感じ。所蔵は2000点あり、毎月 展示は入れ替えているとのこと。
     静謐で真面目な雰囲気。ゆっくりと丁寧に鑑賞できる。

東京 大阪

   ○大阪: ★★★★☆ ”上方 浮世絵館”:
     道頓堀の法善寺 門前という、味わいのある場所。建物の概観は、なぜか宮崎アニメ風。法善寺横丁なのに少々もったいない。
     館内は螺旋階段に作品が展示されている。上方歌舞伎役者中心の展示ということで、コンセプトが明確で、見ていても楽しい。
     歌舞伎役者の”目”の演技も、なぜかナニワで見ると、活き活きとして楽しい。
     最上階には、定期的に浮世絵作成の体験コーナーをしているエリアもある。
     凄いと思ったのは、見終わった後の、和風小物も売店。実は売店に一番 気合を感じた(苦笑)。さすが”儲かりまっか”の国だ!?
     

●浮世絵との出会い: ストップモーションとそぎ落としの美学

 仕事の帰りに本の街 神保町を散策していると、目に浮世絵画廊 "恵比寿ギャラリー"という文字が目に入った。仕事の気分転換をしたかったのもあるが、なぜか引き寄せられ、ビルの2階へ。

 その時に店の奥から私の目に飛び込んだのは、名取春仙の忠臣蔵五段目 斧定九郎の浮世絵であった。(正確に言うと、大正期に入ってから、製作のコンセプトを変えて浮世絵と同じ技法を駆使して作られるようになった版画があり、これは「新版画(しんはんが)」と呼ばれている。) 日記にも書いているが、海老蔵の定九郎の妖しき美しき "色悪"に魅せられ、既に4度ほど見ている演目。その瞬間の定九郎が、私の目の前にいる。しかも、歌舞伎のような一瞬ではなく、くっきりと描かれた浮世絵はじっといくらでも見られる。歌舞伎の見得というストップモーションを、さらに長くした感覚である。しかも、歌舞伎と同じ"削ぎ落とし"の美学を感じる。シンプルだからこそ、意図が伝わり、迫力が増す。淡々と見ているふりをしていたが、実は脳天を鋼で叩かれたようなショックを受けた。凄い世界だ!

●その作られ方: コラボレーションの妙。そして芸術と職人芸の融合の面白さ。職人達の姿を思い浮かべ、作品を味わおう!

 一般には"市井の人々を描いた多色刷りの木版画"のことを言うらしい。

 凄いと思うのは、"絵師"、"彫師"、"摺師(すりし)"と"板元(はんもと)"のコラボレーションであるということだ。版元というのは、製作総指揮をとり、今で言う出版社のようなもの。 浮世絵の作者というと、私には北斎とか歌麿という"絵師"の事が頭に浮かぶが、作品の出来としては、この4者によりレベルが決まるらしい。普段 印刷物に慣れてしまっている私たちにとっては、浮世絵を前にした時に、その美しさを当たり前だと思ってしまうが、印刷技術の無い時代に、4者のコラボレーションでできていると感じて見ると、その緻密さ、美しさに、技術的にも感動してしまう。芸術としての面白さと、職人芸としての面白さがミックスされている。

 *私にとって、絵師の印象が強烈なのは、杉浦日名子さんの"百日紅"という、葛飾北斎と娘のお栄の日常を綴った本の味わいが好きだったせいもあるだろう。この本は漫画ながら、江戸時代の淡々とした職人の日常と、時に粋な生き方を示す、名作だと思う。

 

●歴史と作品: 歌舞伎の雰囲気は、国芳や豊国三代が良さそう。Wikipediaの情報も充実していて必見

 浮世絵というと、江戸時代という印象が強いが、明治時代にも大量に作品が作られているらしい。昭和の作品もある。(正確には、大正以降は、新版画。)現在も残っているのが、明治時代の作品が多いという理由もあるのであろうが。その後、印刷や写真の普及により、彫師、摺師という職人さんが減ったのであろう。

 写楽、歌麿、広重という大家も良いのだろうが、身近に作品が買えるしレベル高そうなのは、国芳(くによし)や豊国が良さそう。

 国芳だと、Wikipediaのライブラリの国芳が充実している。歌舞伎の役者絵もあるし、人が集まり顔を形作るような洒落た!?作品「みかけハこハゐがとんだいゝ人だ」もあり。(浮世絵情報の厚みは、Wikipediaは凄いですね。脱帽)

 歌舞伎の役者絵だと、歌川豊国の三代目 "豊国三代"が、作品も豊富で、臨場感があり良いですね。3枚綴りの作品も多数あるが、劇場の横のワイドさを、上手く表現している。

 大正、昭和だと、美人画の伊東深水の作品もけっこうありそう。あの淡い色使いと細やかな絹のようなタッチの、着物や浴衣美人画が、自分のものにすることができるとは! でも、さすがに少々高いですが(苦笑)。

 

●価格: 浮世絵はストック型の和風三昧である。毎月1枚、そして四季を味わうことも十分可能である

 驚いたのは、十分に堪能できる作品が、意外とリーズナブルな価格で買えるのだということ。海外のクリスチャン・ラッセンとかの怪しく強引な版画販売手法を考えれば、誠実な世界である。もちろん広重なんかの数百万円の作品もあるが、歌舞伎ファンにはたまらない、豊国三代の歌舞伎絵で1〜2万円で手に入る。国貞の天保の市川海老蔵も3万円程度である。

 名も知れぬ作家になると、3000円くらいから恵比寿ギャラリーさんには、わんさかあった。とすると、カレンダーの様に毎月1枚購入し部屋を飾るとか、四季に合わせて作品を自分の部屋で楽しむというライフスタイルも可能である。まさに和風に浸る生活。素晴らしいではないか。

 歌舞伎鑑賞や日本舞踊を踊るというような"フロー型の和風三昧"に比べて、浮世絵を楽しむのは"ストック形和風三昧"であり、今まで私の中には無かったパターンである。浮世絵を買って、鑑賞して、資産にもなる。一石三丁である。

 (なお、私が恋した定九郎は、8万円であった。歌舞伎一幕見のようなわけには行かない。ということで、和風を楽しむ軍資金作りのために、"和風プチ資産形成"を始めることにしました。その模様をブログに綴ります。ネットや株で儲かったら、定九郎を私のものに・・・・そして、和風を楽しむ軍資金作りのノウハウを、皆様に公開します(笑)。 乞う、ご期待! 定九郎、待っていろよ・・・・)

 

●海外での評価: ゴッホからドビッシーまで浮世絵の影響を受ける。こんな素晴らしい遺産を、楽しまない手は無いでしょう!

 浮世絵は、日本よりも海外の方が、評価されている世界かもしれない。例えば"歌麿"をWikipediaで検索すると、日本版はA4 1ページ分未満の説明に対して、英語版はA4 3ページ分もある。(2006/10/28現在)。 

ゴッホやマネなどの印象派の画家だけでなく、私の好きなドビッュシーの"海"は、北斎の海の浮世絵に触発されたらしい。

 そして、神保町には、海外のバイヤーが歩いているらしい。日本人も、浮世絵を楽しみましょう。そして、失われぬよう、散逸せぬよう、保存の愛着を持ちましょう。浮世絵は、石油と同じで、在庫が限られているのですから。

 

 *なお、この浮世絵の解説は、恵比寿堂ギャラリーの店主さんより聞いた話に、私の経験や感想を加えて書いています。 恵比寿堂ギャラリー店主さんのお勧めは、「図説 浮世絵入門」。

 恵比寿堂ギャラリーの店主さんは、美術館等で販売されている、「首都圏美術館ガイド」(月刊)に「浮世絵いろは」も連載されています。

 

*インターネットで、浮世絵や美術品を選べるサイトもあります↓


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