Cyber Japanesque

 鎌倉に住んでいる私でも、やはり京都は気になります。JR東海のプロモーション戦略には敬服ものですが、きちんと街づくりを考えている部分も確かにあると思います。異邦人の私が、その京都の魅力と秘密にせまります・・・。関西や京都の方々、及び京都ファンの方々からの、"私の好きな京都エッセイ"や"京都の風景写真"を募集しております。よろしゅう。

KYOTO_BOOK.JPG - 5,267BYTES ★★★★★ "京都、大人の修学旅行" 山下祐二 * 赤瀬川源平

 本当に星の数ほどある京都本の中で、実は私が京都観光の参考にしているのが、この妙な大人が二人、学ランを着ている本である。

 いいね、心からの好奇心と、素直な感動の心と、実証主義に基づいた、小気味良い文章。

"日本の作品は、西洋の作品に比べて、弱い部分があるから、こちらが見る力を出してはじめて作品の力が返ってくる" なるほど良いポイントをついている。そして、実際にカメラを片手に、自由奔放な京都見学が始まる。

二条城はゼネコン若社長の狩野探幽の作品であるし、長谷川等伯はウィンドウズに対するマッキントッシュのようなものだと言う。東寺では、仏像が多数並ぶ講堂を"筋肉隆々のヤツがいっぱいいるし・・・選手の控え室のみたいな、汗くささが充満している"と評する。清水寺は、"進化のすべてがわかるガラパゴス諸島"と言い、でも実は国宝が少なく、朝日新聞社の「日本の国宝」だと東寺が三冊あるのに対して、清水寺はその他の巻に写真が一つだけと、指摘する。

全てがこんな調子だが、本や写真をみるだけで満足をしないで、大胆で意味不明な言葉を読んだ後に、きちんと自分の眼と足と肌で京都の各寺社を見る、というのがお勧めである。


  3月 京都・花灯路

  4月 都をどり

  7月 祇園祭

  銀閣

  哲学の道


 ★★★★☆  祇園祭

  祇園祭りは一ヶ月なれど、実は鉾(ほこ)が隊列を組んで動くのは、山鉾巡行の一日だけなのである。地域コミュニティの強さと確かさを感じた祭りである。

 ついに念願の祇園祭りを観に行く。7/1〜7/29までと書いてあるので、毎日盛大な祭りが開かれているのかと思っていた(笑)。まるで、ディズニーランドのエレクトリカル・パレードが毎日行われるように、熱海の花火が夏はずっと行われるように、さすが京都は毎日大祭りかと勘違いをしておりました。今年は17日(木)が"山鉾巡行"ということで、32台の"鉾"と"山"がパレードをなす日。12日はその鉾の組み立て開始の日のようだ。(そうすると、7/1から11日まではいったい何をしていたのだろうか・・・?) 午前中から雨模様ではあったが、各地域の衆が半被や作業着を着て鉾作りに勤しんでいる。建物の2階や3階から木組みの梯子をかけて、鉾の上部を組み立てている。鉾は、重量で12トン、高さは鉾の屋根まで8メートル、鉾の頂点まで17〜25メートル、囃子方で40人ほど乗るというのであるから、なかなか迫力のあるトロイの木馬(?)である。そうして、作っていく時に、15から30人くらいの衆がゆったりと一緒に作業をし、浴衣姿の女性陣や親子が見守る様は、"地域コミュニティ"なんていう言葉を思い浮かべてしまった。低年齢層の残虐な反抗が話題になるこの頃であるが、この地域の老若男女の結びつきは、人の心と精神の荒みを防ぐに違いない。

 さあ、15時頃は、順次各所の鉾が動かされる。さすがにその周りは、人だかりができる。鉦(かね)を中心とする、まさに"祇園囃子"がゆるやかな興奮を人に呼び覚ます。ぐらりと動き始める。一般に見ている人も、綱を持ち引っ張ることが可能の様だ。私も綱を手に取る。仄かな一体感が身体に広がる。ビルの谷間になっており、電信柱と電線に触れそうになりながら進むのは少々寂しい気はするが、これが32台もつながると勇壮であろう。

 今日の蒸し暑い夏の一ヶ月を、高揚感に包まれつつ、隣人一同で元気に過ごそうという工夫と心意気が、ここには感じられる。

0712_GION_KANHOKO1.JPG - 23,038BYTES 0712_GION_KANHOKO1.JPG 函谷鉾(かんこほこ):四条通烏西入。350年ぶりに新調された前懸とのこと。

 0712_GION_KIKUSUI1.JPG - 25,693BYTES 0712_GION_KIKUSUI1.JPG 0712_GION_KIKUSUI1.JPG 0712_GION_KIKUSUI1.JPG 0712_GION_KIKUSUI1.JPG 菊水鉾(きくすいほこ):室町通四条上。午前中に懸命な構築作業の結果、15時過ぎにぐらりとその巨体を試しに動かす。圧倒的な迫力と粋。

0712_GION_MINAMIKANNON1.JPG - 24,015BYTES 0712_GION_KANHOKO1.JPG 0712_GION_MINAMIKANNON3.JPG - 23,106BYTES 南観音山:新町通錦小路上。加山又造の絵が乗っているらしい。"山"は上に松の木をつけているが、それを持ち上げる瞬間。着物のお姐さんも、皆で引っ張る。

0712_GION_NIWATORI1.JPG - 24,781BYTES 0712_GION_NIWATORI1.JPG 0712_GION_NIWATORI1.JPG 0712_GION_NIWATORI1.JPG 0712_GION_NIWATORI1.JPG鶏鉾(にわとりほこ):室町通四条下。ビルの谷間で、道路の片側を通行止めにして、作っていました。


★★★★☆  都をどり

 念願だった"都をどり"を4/29に観て参りました。事前に電話で予約をして、郵便局で振込みをして、その日を心待ちに待つ。そしてそう その日は、京都の空は晴れ渡り、少々暑さまでを感じる日でした。

 祇園の町をあげて"都をどり"という雰囲気が漂う。お茶券付きだったので、まず右手の入り口に入る。お茶はどのようにいただくのか、興味深々。何回廻すのか、心の準備をする・・・・笑。待合室には、多くの人とお土産屋。何か熱気を感じるぞ。庭に出て、素敵な日本庭園を見ることもできる。庭に出ると、歌舞練場の建物の趣がよろし。

 お茶は、"點前"の女性が真中に座り、"ひかえ"の女性が道具を持ってきたり、お茶を運んだり。 お茶の際には、最前列に座ると、舞子さんよりお茶がもらえる。2列目以降の人たちは、たくさんいる女中さんにお茶を置かれ、終わり。お饅頭とお抹茶をいただきました。 工夫1:そして、お饅頭を載せていた、祇園の紋章入りのお皿は、お持ち帰り。年によりデザインが異なるんだろうかと、来年も再度お茶を飲み、確認をしたくなる・・・苦笑。

 さあ、また素敵な庭を眺めながら、いざ舞台へ。"都をどりはヨイヤサァ"という、出だしの一瞬を聞きたくて、来たようなものだから、手に汗を握り、出だしの一瞬を待つ。長唄衆に続き、東西より 踊り子衆が登場。 出だしの一声は、・・・・頭の中でイメージをしていた出だしと異なった。もう少し、声明のようなイメージを期待していたのだが・・・。工夫2:毎年 構成が変わり、唄も振り付けも新作なので、"都をどりはヨイヤサァ"という部分も異なるのだろうか。

 工夫3:今年は、京都で開かれた"第三回世界水フォーラム"にちなんで、踊りの中の各景色とも"水"をモチーフにしているそうである。来年は何をテーマにするのだろう。

 踊りについては、普段歌舞伎の男による踊りを見ているせいか、坂東流と井上流の差なのか、随分とその柔らかさが気になる。少々、フニャフニャした印象。

 第五幕の"石山寺源氏の面影"は、白い衣装を来た源氏は、新之助が思い出される。六条の御息所、葵の上、藤壺、若紫と、次々に女性との思い出が絵巻物のように続く。この幕は良いなぁ・・・確かに源氏を女性が演ずると、そこはかとない色気がありますね。宝塚の面白さとは、このようなものかと、しばし想いを馳せる・・・。

 踊り自身も、このころから、その柔らかさに違和感を抱かず、柔らかさが心地よく感じられる。そして、第六幕の"秋景色清水寺"では、幕が上がった瞬間、紅葉の紅と黄の目もくらむような鮮やかさに、場内がどよめく。ここら辺から、陶酔の世界へ。素直に第八幕の"今は昔 醍醐の花見"まで、楽しみました。

 ということで、舞台は1時間、お茶からだと1.5時間の短い時間でしたが、一年に一回の春の楽しみとしては、よくできていると思う。文中の工夫にも記したが、また来年来たくなる様な工夫が随所に施されているのも感心。商売も上手し! でも、楽しいからOK。いつか、夜のお座敷も訪れるぞと、心に誓うのであった・・・笑。

*その後、みゆきさんより都をどりに関しての情報をいただきました。 「あのお皿は毎年変りません。下の売店で売ってもいます。色が5色くらいあるようです。何色でした?私あと「白」が欲しいんですよね。串団子をいただくときはあのお皿を使うことにしています。なんとなくいい感じです。ちなみにお饅頭も毎年変りません。お抹茶の銘も忘れちゃったけど、確か毎年変らなかったような・・・。都踊りはよいやさあも毎年同じ気がします。」 お教えいただき、ありがとうございました。来年は別の色をGetしよう(笑)。

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★★★★☆  銀閣寺   (特別拝観は2003/3/21〜2003/5/11)

 初めて訪れた銀閣寺ですが、幸運なことにこの日から特別拝観の始まり。

 銀閣寺は侘び寂びと、思いっきりのアバンギャルドが同居している不思議な空間である・・・私はそこに海と富士への憧れを見た・・・

 50メートルの竹垣の参道を抜けるrと、渋い銀閣の建物が目に入る。建物の後ろからのせいか、ほころびが目に付く。ううむ、侘び寂びすぎる・・・・。と思いきや、次に円錐状の富士のような白砂でできたオブジェ"向月台(こうげつだい)"に度肝を抜かれ、波模様であるが、波がいやに際立って高い"銀沙灘(ぎんしゃだん)"に驚きを隠せない。うーん、まるで箱根彫刻の森に来た様な錯覚をおこさせる、アバンギャルドなオブジェ群である。そして、実にシンプルな佇まいの国宝 東求堂の白壁に、池の波紋があたり、光が揺れる。

 一見すると不可思議な乱れた個々の作品の乱立なのだが、パンフレットに銀閣の2階から庭を眺めた写真が載っていたのだが、そうするとちょうど向月台の向こうに果てしない海 銀沙灘だ広がり、さらに池とその波紋と建物が広がるのである。 鎌倉住まいの私は、京都を少しだけめぐり、その大きさと計算された佇まいと商売っ気の上手い出し方に、かなわないと打ちのめされていたのだが・・・海と江ノ島とその向こうに佇む富士山を本物で眺められる鎌倉も、海という景色だけは勝ったと密かに思った・・・。(笑)

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 さて、9:55になりいよいよ特別拝観が始まる。 2003年 特別拝観の一番乗りは、何を隠そうこの私である! と気持ちよく入る。1,000円と2,000円のコースがあり、私は2,000円を選ぶ。 (ただし、後述するように、1,000円コースでいいと思うし、1,000円コースは是非体験すべし!) 10人くらいになるまでちょうと待ち、与謝蕪村の襖の部屋で、解説の始まり。お寺の中で、いきなり酒に酔った仙人を弟子が介抱している絵、しかもそんな仙人が4人位いるぞ。なんという大らかさ(笑)。左隣の部屋には、やはり与謝蕪村の襖絵、右隣には池大雅の襖絵。池大雅の絵も、武士がマスターすべき4つの芸"琴棋書画"の絵なんだけれども、端に大きく自分の好きな"釣り"の絵が描いてあるぞ。おいおい(笑)。(下記参照)

 そして、特別拝観の一行は、隣の国宝 東求堂へ。"四畳半"の原点といわれるそうなのだが、その間に入る前に、なんと国宝の椅子に座れる!!!(下記 国宝に座り ご満悦の一行・・・笑) いやぁ、私も座りましたが、晴れた日に 国宝に座り 気持ちよきかな。その後、2,000円コースの人のみ、"弄清亭"という建物で 奥田元宋という画家の絵を見られるのだが、これは正直に言って色鮮やか過ぎて、今ひとつでした。 まあ、秋の湖畔を描いた作品に、障子を開けて日の光を入れた瞬間の、燃え出でるような輝きは良かったかな。

 ということで、蕪村の絵を20センチくらい間近で見られるし、国宝に座れるしで、解説つきの特別拝観は、ええのぉー。お勧めです。

 なお、苔に邪悪度をつけて、英語の解説つきで展示しているのも、お茶目でしょうか。うーむ、日本人の外国人も、新旧取り混ぜて楽しめるのが、銀閣でございます。Bravo!(2003/3/21訪問)

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★★★★☆  哲学の道 〜 南禅寺 三門 

 さて、銀閣を出て、快晴の下 ふらりふらりと哲学の道を歩きました。見方によっては何と言うことはない川沿いの小道ですが、西田幾多郎先生も思索をされたというと、厳かになる・・・笑。 途中で着飾ったお嬢さんの艶やかな姿を眺め、野村美術館で茶器を愛で、若王子神社でお弁当を食べ、南禅寺まで春のうららを歩きました。若王子神社では、子供たちが仲良く参詣していましたが(下記参照)、ソロバンの玉ででできたお神輿があるのが、ふとここは大阪の商人の街中かなと思わせました。それとも、ここらへんに、京都のビジネス達人達の奥深さがあるのか・・・。

 南禅寺 三門では、当然 石川五右衛門の如く22メートルの門に上がり、"絶景かな、絶景かなぁ"と見得を切ります。猿之助さんの三門上での見得の写真も飾ってありました。うーむ、鎌倉 光明寺の門の上も高いが・・・やはり南禅寺には負けました。荘厳だね。

 というわけで、清水寺からねねの道へ下る道も良いですが、銀閣から南禅寺さんへの哲学の道は、あまり商売っ気がなくて、ほのぼのとしてお勧めです。

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★★★★★ 京都・花灯路  2003/3/7〜3/18

 底冷えのする京都の夜を、静かな光と、華やかな空気と、様々な音のサウンドスケープが包み、私は1200年の旅に出た 

 最近仕事で京都に出張の機会が増えたのだが、以前より駅に"だれと歩こう、春の宵"という素敵なパンフレットが置いてあり、気になっていた企画。たまたまこのイベントの初日に京都にいましたので、一人で出かけました(笑)。

 拝観は通常夕方には終わってしまい、仕事帰りの拝観は難しいのだが、このように18時から22時の企画というのはいいですね。きっと底冷えのする季節ですし、観光客が桜の前は少ないので、企画されたイベントだと思います。私は歩きながら、なぜか札幌の雪祭りを思い出していました。あの、"深々"とした雰囲気に似ていますね。そうすると、そのうちに、札幌の雪祭りが、大通り、真駒内の2会場に、すすきのが加わったように、京都市内を2箇所、3箇所と拡大されていくのでしょうか。でも、それに値するイベントだと思いました。

 清水寺は、243年ぶりという"奥之院御本尊御開帳"が良いですね。蝋燭の灯に浮き上がり、きれいに陰翳の影を作る数々の仏像。優しさと怖さの乱立。そんな中で一番印象的だったのは、順路の上からギロリと睨む"雷神"がいいぞ。高い屋根に映された影と、その爬虫類のような獰猛な顔つきは、なかなか迫真にせまる。

 さて、そして意外なほど素晴らしく感じたのが、道すがら聞こえる音。 清水寺の声明(?)の荘厳な調べ、道すがらでは"火の用心・お囃子組"というハッピを着た子供たちが拍子木を叩きながら声をだして歩く・・・。そして、円山公園では、威勢のよい和太鼓の勇壮な連打。暗闇の中だからこそ、耳が研ぎ澄まされ、音に敏感になるのだろうか。悠久の時を重ねてきた建造物を見ながら、石畳を歩き、様々な音に包まれながら歩くと、本当に1200年の時空をタイムスリップしていくような、不思議な浮遊感に包まれた。

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