[伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例3(pp.13-15) ;
高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3).]
(舞台設定)
R2 : 2つの「実数の全体の集合」Rの直積。すなわち、
R×R={ (x ,y ) |x ∈Rかつy ∈R }={ (x ,y ) | −∞<x<+∞かつ−∞<y<+∞ }
集合系(族) : R2上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族)。
※区間塊Eは、R2の部分集合だから、は R2の部分集合系(族)となっている。
Ψ(I) :R2上の左半開区間の面積を表す集合関数。
すなわち、
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] ={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちのR上区間の直積となるR2上区間Iに対して、
(i) I=(a, b]×(a', b'] (−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)ならば、Ψ(I) = (b−a) (b'−a')
(ii) I=φならば、 Ψ(I) =Ψ(φ) = 0
(iii) Iが上記以外〜つまり、(−∞, b]×(a' , ∞)など非有界の矩形〜ならば、
Ψ(I) =+∞
※値域は、広義の実数R*上の区間[0, +∞]となる。
「広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。
(定義:集合関数μ)
に属す、すべてのEは、R2上の区間塊であるから、
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちの区間の直積の有限個の直和として表す
(=互いに素な有限個の「上記5タイプの区間の直積」へ分割する)
ことができる。
すなわち、
に属す、すべてのEには常に、
1以上の或る自然数nが存在して、
E= I1+…+In (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間の直積で、互いに素)
と表せる。 ※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
例:下図緑の区間塊は、互いに素な、3個の、R2上の有界な左半開区間
I1=(a1 , b1] ×(c1 ,d 1], I2=(a2 , b2] ×(c2 ,d 2] , I3=(a3 , b3] ×(c3 ,d 3]
(a1 = a3, b1= a2= b3, c1= c2, d1= d2= c3)
の直和として表せる。
そこで、R2上の区間塊Eの面積を、
μ(E)=Ψ(I1)+Ψ(I2)+…+Ψ(In) (Ψ: 区間Iの面積を表す集合関数)
なる関数μで定義する。
※区間塊ですらないR上の集合一般の面積を測るためには、2次元ルベーグ測度。
(性質) (R2上の区間塊Eの面積を定義する)関数μ(E)は、以下の性質をもつ。
性質1.
定義域がR2の部分集合系(族) となるので、関数μ(E)は、R2で定義された
-集合関数となる。
値域は「広義の実数」R*上の区間[0,+∞]。
→なぜなら、任意のE∈に対して、μ(E)は左半開区間の面積を表す集合関数Ψの有限和。
集合関数Ψは、常に0≦Ψ(I)≦+∞だから。
広義の実数R*で定義された演算規則より、0≦μ(E)≦+∞ 。
※値域はあくまで「広義の実数」であって、実数ではない。
「広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。
性質2.
R2で定義された-集合関数μ(E)の定義域
は、有限加法族である。(∵)
性質3.
R2で定義された-集合関数μ(E)は、
上の有限加法的測度である。※なぜ?→証明
ゆえに、μは、上の有限加法的測度の性質を満たし、
n |
n | ||||
・有限加法性: | (∀E1,E2,…En∈![]() |
![]() |
Ei ) = |
![]() |
μ(Ei) ) |
i=1 |
i=1 |
・単調性: | (∀E1,E2∈![]() |
n |
n | ||||
・有限劣加法性 | (∀E1,E2,…En∈![]() |
∪ | Ei ) ≦ |
![]() |
μ(Ei) ) |
i=1 |
i=1 |
性質4. [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp.19-20);]
type 1: 左半開区間(a, b] (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちのR上区間の直積である限りで任意の区間Iと、
区間Iにたいして任意にとったα<μ(I)にたいして、
(a*, b* ]×(a'*, b'* ] (ただし−∞< a*< b*<+∞ , −∞< a'*< b'*<+∞ )
空集合φ
のいずれかのかたちをした、ある区間Jが存在し、
[J]⊂I かつ α<μ(J)
を満たす。
すなわち、
(a, b] , (−∞, b] , (a , ∞) , (−∞, ∞) , φのいずれかのかたちのR上区間の直積をすべて集めた集合系をI、
(a*, b* ]×(a'*, b'* ], φのいずれかのかたちをした区間をすべて集めた集合系をJとおくと、
(∀I∈I) (∀α<μ(I)) (∃J∈J ) ( [J]⊂I かつ α<μ(J) )
(詳細)
・Iが空集合φ以外のケース
(a, b] , (−∞, b] , (a , ∞) , (−∞, ∞)の直積である限りで任意の区間Iと、
このIにたいして任意にとったα<μ(I)に対して、
ある有界区間J=(a*, b*]×(a'*, b'*] (−∞< a*< b*<+∞, −∞< a'*< b'*<+∞)
が存在して、
[J]=[a*, b*]×[a'*, b'*]⊂I かつ α<μ(J) =(b*−a*) (b'*−a'*)
を満たす。
・Iが空集合φのケース
区間I=φ と、区間I=φにたいして任意にとったα<μ(I)=μ(φ)=0に対して、
J=φは、[J]⊂ I=φ かつ α<μ(J) を満たす
性質5. [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(p. 20); 小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)。]
R2上の任意の区間塊E と、Eにたいしてとった任意のα<μ(E)にたいして、
ある有界な区間塊Fが存在して、
[F]⊂E かつ α<μ(F)
を満たす。
( ∀E∈ ) ( ∀α<μ(E) ) (∃F∈
) ( [F]⊂E かつ α<μ(F) )
※なぜ?→証明
※活用例→性質6の証明
性質6. [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp. 20-21) ; 小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)。]
R2上の任意の区間塊E と、この区間塊Eを覆う任意の「矩形の可算被覆」{In}に対して、
μ( )は、次の不等式を満たす。
∞ | |||
μ(E) ≦ |
![]() |
μ(In) |
|
n=1 |
つまり、 μ(E)≦μ(I1)+μ(I2)+μ(I3)+… が成り立つ。
※R2上の任意の区間塊E が、非有界である場合
∞ | |||
μ(E) = |
![]() |
μ(In) = ∞ |
|
n=1 |
となるが、この、等号「=」は、広義の実数R*で定義された演算規則「∞=a+∞」の意味での等号「=」であって、
実数の枠内で普通にいう等号「=」の意味でではない。
※ただし、ここでいう、Eを覆う「矩形の可算被覆」とは、
次の2条件を満たす可算無限個の「2次元ユークリッド空間R2上の矩形の列」{ I1 , I 2 , I 3 ,…}を指す。
(条件1) 矩形の列の要素I1 , I 2 , I 3 ,…はすべて、以下のいずれかのかたちのR上区間の直積であること。
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] ={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
(条件2) Eを被覆すること、つまり、
( | ∞ |
)⊃ E | ||
∪ | In | |||
n=1 |
|
を満たすこと。
性質7. [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);高木『解析概論』113節 (pp.422-3);長さに限定.]
R2で定義された-集合関数μ(E)は、有限加法族
上の完全加法的測度となる。
※なぜ?→証明
※活用例:R2上の任意の集合のルベーグ外測度
→集合関数 →集合論目次 →総目次 |
[伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例3(pp.13-15) ;高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3).]
(舞台設定)
R2 : 2つの「実数の全体の集合」Rの直積。すなわち、
R×R={ (x ,y ) |x ∈Rかつy ∈R }={ (x ,y ) | −∞<x<+∞かつ−∞<y<+∞ }
集合系(族) : R2上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族)。
※区間塊Eは、R2の部分集合だから、は R2の部分集合系(族)となっている。
f1 (x)、f2 (x) : R上の実数値関数(つまり、f1,f2: R→R)で、R上単調増加関数。以下のΦに組み込まれる。
Φ(I) : R2上の区間の面積を一般化した集合関数。
すなわち、
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] ={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちのR上の区間の直積となるR2上の区間Iに対して、
(i) I=(a, b]×(a', b'] (−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)ならば、Φ(I) ={ f1 (b)−f1 (a) } { f2 (b')−f2 (a') }
(ii) I=φならば、 Φ(φ) = 0
(iii) Iが上記以外(つまり、(−∞, b]×(a' , ∞)など非有界の矩形)ならば、
Iに含まれる任意の区間J=(a, b]×(a', b'](−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)に対して、
Φ(I) = sup {Φ( J ) }= sup { { f1 (b)−f1 (a) } { f2 (b')−f2 (a') }}
※f1 (x)= f2 (x)= xとしてf (x)を組み込んだΦ(I)= (b−a) (b'−a')が、
「R2上区間(矩形)Iの面積」Ψ(I)。
(定義:集合関数μ)
に属す、すべてのEは、R2上の区間塊であるから、
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちの区間の直積の有限個の直和として表す
(=互いに素な有限個の「上記5タイプの区間の直積」へ分割する)
ことができる。
すなわち、
に属す、すべてのEには常に、
1以上の或る自然数nが存在して、
E= I1+…+In (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間の直積で、互いに素)
と表せる。 ※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
例:下図緑の区間塊は、互いに素な、3個の、R2上の有界な左半開区間
I1=(a1 , b1] ×(c1 ,d 1], I2=(a2 , b2] ×(c2 ,d 2] , I3=(a3 , b3] ×(c3 ,d 3]
(a1 = a3, b1= a2= b3, c1= c2, d1= d2= c3)
の直和として表せる。
そこで、面積を一般化した集合関数Φを用いて、
μ(E)=Φ(I1)+Φ(I2)+…+Φ(In)
と、関数μを定義する。
このうち特に、f1 (x)= f2 (x)= x として Φ(I)=(b−a) (d−c)とした際のμ(E)は、
R2上の区間塊Eの面積となる。
(性質) 上記のとおり定義された関数μは、以下の性質をもつ。
性質1. 定義域がR2の部分集合系(族) となるので、関数μは、R2で定義された実数値E-集合関数となる。
性質2. R2で定義された上記の実数値-集合関数μの定義域
は、有限加法族である。(∵)
性質3. R2で定義された上記の実数値-集合関数μは、
上の有限加法的測度である。
※なぜ?→証明
性質4. [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);高木『解析概論』113節 (pp.422-3);長さに限定.]
R2で定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族
上の完全加法的測度となるとは限らない。
R2で定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族
上の完全加法的測度となるための必要十分条件は、
Φ(I)に組み込まれている単調増加関数f1 (x)、f2 (x)がR上右連続であることである。
すなわち、以下の命題P⇔命題Q1かつ命題Q2。
命題P: R2で定義された上記の実数値-集合関数μは、有限加法族
上の完全加法的測度。
命題Q1: Φ(I)に組み込まれている単調増加関数f1 (x)がR上右連続。
命題Q2: Φ(I)に組み込まれている単調増加関数f2 (x)がR上右連続。
※面積は、f1 (x)= f2 (x)= xとしたときのΦ(I), μ(E)だったが、f1 (x)= f2 (x)= xはR上右連続だから、
R2上の区間塊Eの面積は、有限加法族(R2上の区間塊上)の完全加法的測度となる。
※なぜ?→証明
→集合関数 →集合論目次 →総目次 |