R2
上の区間塊の面積を定義する集合関数が、有限加法族の上で完全加法的な測度となることの証明
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[
準備]
・舞台設定
R2 : 2つの「実数の全体の集合」Rの直積。すなわち、
R×R={ (x ,y ) |x ∈ R かつ y ∈ R }={ (x ,y ) | −∞<x<+∞かつ −∞<y<+∞ }
集合系(族)E : R2上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族)。
※区間塊Eは、R2の部分集合だから、Eは R2の部分集合系(族)となっている。
Ψ(I) : R2上の区間の面積を定義する集合関数Ψ。
すなわち、
type 1: 左半開区間(a, b] ={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b] ={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞) ={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数の全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちのR上区間の直積となるR2上区間Iに対して、
(i) I=(a, b]×(a', b'] (−∞< a< b<+∞, −∞< a'< b'<+∞)ならば、Ψ(I) =( b−a ) (b'−a' )
(ii) I=φならば、 Ψ(φ) = 0
(iii) Iが上記以外〜つまり、(−∞, b]×(a' , ∞)など非有界の矩形〜ならば、
Ψ(I) =+∞
※値域は、広義の実数R*上の区間[0, +∞]となる。
「広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。
・集合関数μの定義
Eに属す、すべてのEは、R2上の区間塊であるから、
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかのかたちの区間の直積の有限個の直和として表す
(=互いに素な有限個の「上記5タイプの区間の直積」へ分割する)
ことができる。
すなわち、
Eに属す、すべてのEには常に、
1以上の或る自然数nが存在して、
E= I1+…+In (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間の直積で、互いに素)
と表せる。※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
そこで、面積を定義する集合関数Ψを用いて、
μ(E)=Ψ(I1)+Ψ(I2)+…+Ψ(In)
と、 R2上の区間塊Eの面積を定義する集合関数μを定義する。
[μ( )の性質7]
R
2で定義された上記の実数値E-集合関数μは、
有限加法族(R2上区間塊をすべてあつめた集合)E上の完全加法的測度である。
すなわち、
条件1. すべての項が、R2上の有限加法族Eに属す(つまりすべての項はR2上区間塊)
条件2. すべての項が、互いに素である、
条件3. すべての項の(可算無限個にわたる)和集合unionも有限加法族Eに属す
(つまりすべての和もR2上区間塊)
を満たす任意の「可算無限個の集合列(区間塊列)」E1,E2,…をとれば、

が、R2で定義された上記の実数値E-集合関数μについて成り立つ。
3条件を満たす様々な区間塊列E1, E2, E3,…のうち、
(−∞, b]×(a' , ∞)、(−∞, ∞)×(−∞, ∞)など非有界の矩形や、これら非有界の矩形を含む区間塊が、
項としてエントリーされているような区間塊列E1, E2, E3,…に関しては、

となるのは自明。
・左辺=+∞。なぜなら…
区間塊列E1, E2, E3,…の各項は、区間塊の定義より、
type 1: (a, b]、 type 2: (−∞, b]、type 3: (a , ∞)、type 4: (−∞, ∞)、type 5: 空集合φ
の5タイプの区間の直積〜これら直積どおしは互いに素〜の有限個の直和として表せ、
E1, E2, E3,…の各項どうしも、条件2により、互いに素。
したがって、I1, I2, I3, I4,…を、上記5タイプいずれかの区間の直積とすると、
は、無限個の直和 I1+I2+I3+I4+…として表せる。
ゆえに、μの定義より、
=Ψ(I1) +Ψ(I2) +Ψ(I3) +Ψ(I4) +…
区間塊列E1, E2, E3,…の項のなかに、
(−∞, b]×(a' , ∞)、(−∞, ∞)×(−∞, ∞)など非有界の矩形や、これら非有界の矩形を含む区間塊
があるならば、
Ψの定義より、Ψは非有界の矩形にたいして、+∞をかえすから、
=Ψ(I1) +…++∞+…
Ψ( )は、−∞をとらないので、
広義の実数R*の演算規則(∀a∈R) ( a+(+∞) = (+∞)+a = ∞ )より、
=Ψ(I1) +Ψ(I2) +…++∞+…=+∞
・右辺=+∞
なぜなら、
I1=非有界の矩形 ならば、Ψ(I1) =+∞ だから、
I1を含む区間塊Ekに対して、
μ(Ek)=Ψ(I1) +Ψ(I2) +…+Ψ(In) =+∞+Ψ(I2) +…+Ψ(In)
Ψ( )は、−∞をとらないので、
広義の実数R*の演算規則(∀a∈R) ( a+(+∞) = (+∞)+a = ∞ )より、
μ(Ek)=Ψ(I1) +Ψ(I2) +…+Ψ(In) =+∞+Ψ(I2) +…+Ψ(In) =+∞
=μ(E1)+μ(E2)+…+μ(Ek) +…=μ(E1)+μ(E2)+…+∞ +…
μ( )は、−∞をとらないので(性質2)、
広義の実数R*の演算規則(∀a∈R) ( a+(+∞) = (+∞)+a = +∞ )より、
=μ(E1)+μ(E2)+…+∞+…=+∞
→盛田『実解析と測度論の基礎』2.9節補題2.7(3)、p.99最下行。=∞であれば主張は自明…
→志賀浩二『ルベーグ積分30講』5講ルベーグ外測度の劣加法性(p.34):有界な集合列についてだけ主張。
→伊藤『ルベーグ積分入門』II§4有限加法的測度,定理4.2十分性の証明第3段,p.21,5行目「両辺とも∞のこともある」
[
証明1]
背理法による証明→;盛田『実解析と測度論の基礎』3.1節補題3.1(3)(p.106); 補題3.1(3)の証明(p.108);
[
証明2] 伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19-22); 小谷『測度と確率1』補題4.1(p.42)。
Step1:設定
下記を満たす限りで任意のR2上の区間塊列を、E1 , E2 , E3 ,…とおく。…(1-1)
条件1. すべての項が、互いに素である、
条件2. すべての項の(可算無限個にわたる)和集合(互いに素だから直和とも言える)もR2上の区間塊である、
条件2により区間塊となるE1+E2+E3+…を、Eとおく。…(1-2)
Step2: μ(E)≦μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+… を示す
・E1 , E2 , E3 ,…の各々は、R2上の区間塊と設定したのだから、R2上の区間塊の定義より、
互いに素な有限個の下記5typeいずれかの区間の直積Injの直和として表される。
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
すなわち、
ある有限の自然数k(1)が存在して、E1=I11+ I12+ I13+…+I1 k (1)
ある有限の自然数k(2)が存在して、E2=I21+ I22+ I23+…+I2 k (2)
ある有限の自然数k(3)が存在して、E3=I31+ I32+ I33+…+I3 k (3)
: :
: :
: :
と表せる。…(2-1)
・μは有限加法的測度の一例であるから(∵μの性質3を見よ)、
有限加法的測度の性質であるところの有限加法性を満たす。
ゆえに、(2-1)より、
μ(E1)=μ( I11)+μ( I12)+μ(I13)+…+μ( I1 k (1) )
μ(E2)=μ( I21)+μ( I22)+μ( I23)+…+μ( I2 k (2) )
μ(E3)=μ( I31)+μ( I32)+μ( I33)+…+μ( I3 k (3) )
: :
: :
: :
…(2-2)
・(1-2)と(2-1)より、
E= E1+E2+E3+…={ I11+ I12+ I13+…+I1 k (1)}+{ I21+ I22+ I23+…+I2 k (2)}+{ I31+ I32+ I33+…+I3 k (3)}+…
ゆえに、
E⊂I11∪I12∪I13∪…∪I1 k (1) ∪I21∪I22∪I23∪…∪I2 k (2) ∪I31∪I32∪I33∪…∪I3 k (3) ∪…
を満たす。
この右辺の各区間Injは
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
のいずれかの直積である。
したがって、
{ Inj}は、区間塊Eを覆う「矩形の可算被覆」の一つになっているから、
このEと{ Inj}にたいして、「μ( )の性質6」を適用してよい。
μ( )の性質6より、
μ(E)≦μ( I11)+μ( I12)+μ(I13)+…+μ( I1 k (1) )
+μ( I21)+μ( I22)+μ( I23)+…+μ( I2 k (2) )
+μ( I31)+μ( I32)+μ( I33)+…+μ( I3 k (3) )
+…
この不等式の右辺は、(2-2)より、μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…と書きかえられるから、
μ(E)≦μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…
Step3: μ(E)≧μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+… を示す
・E1+E2+E3+…=Eと設定しておいたから、
任意の自然数pに対して、E⊃ E1+E2+…+Ep …(3-1)
(つまり、E=「E1 , E2 , E3 ,…の無限個の直和」だから、Eは「E1 , E2 , E3 ,…の有限個の直和」を内に含む)
・μは有限加法的測度の一例であるから(∵μの性質3を見よ)、
有限加法的測度の性質であるところの単調性・有限加法性を満たす。 …(3-2)
・(3-1)と、(3-2):μの単調性より、
任意の自然数pに対して、μ(E)≧μ(E1+E2+…+Ep) が成り立つ。
ゆえに、(3-2):μの有限加法性より、
任意の自然数pに対して、μ(E)≧μ(E1+E2+…+Ep)=μ(E1)+μ(E2)+…+μ(Ep) が成り立つ。
つまり、
μ(E)≧μ(E1)+μ(E2)+…+μ(Ep)
p→∞の極限をとれば、
μ(E)≧μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…
[と、書いてあるが、p→∞の極限をとっても、有限加法性とか保持されるのかなあ]
Step4: μ(E)=μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…となる。
Step2:μ(E)≦μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…、
かつ
Step3:μ(E)≧μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…
だから、μ(E)=μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…となる。
Step5: μ(E)=μ(E1)+μ(E2)+μ(E3)+…となることは、
R2で定義された実数値E-集合関数μが、有限加法族E上の完全加法的測度であることを意味する。
R2上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族) Eは、有限加法族である(∵)。
したがって、Step1で設定した任意のR2上の区間塊列 E1 , E2 , E3 ,…は、
条件1. すべての項が、R2上の有限加法族Eに属す
条件2. すべての項が、互いに素である、
条件3. すべての項の(可算無限個にわたる)和集合unionも有限加法族Eに属す
を満たす限りで任意の『集合Rの可算無限個の部分集合列』E1 , E2 , E3 ,…であり、
これに対して、Step4が成り立つ、すなわち

が成り立つから、
R2で定義された実数値E-集合関数μは、有限加法族E上の完全加法的測度である。
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