設定 |
・R上の区間塊Eに長さを与える関数μ(E)は、以下の舞台設定上で定義される。 ・R :実数の全体の集合R={x|−∞<x<+∞ }であるが、 ここでは特に、1次元ユークリッド空間の意味ももたせる。 ・集合系(族) ![]() ※区間塊Eは、Rの部分集合だから、 ![]() ・Ψ(I):直線の長さを定義する集合関数Ψ。 すなわち、 (i) I=(a,b] (−∞<a<b<+∞) ならば、Ψ(I)=b−a (ii) I=φ ならば、 Ψ(φ) = 0 (iii) I=(−∞,b], (a,∞), (−∞,∞)(−∞<a,b<+∞) ならば、Ψ(I)=+∞ ※値域は「広義の実数」R*上の区間[0,+∞]となる。 |
[文献]・伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例3(pp.13-15) ;・盛田『実解析と測度論の基礎』3.1節補題3.1(p.106); ・高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3). |
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定義 |
(定義:集合関数μ)・![]() type 1: 左半開区間(a,b]={x|a<x≦b} (ただし−∞<a<b< +∞), type 2: (−∞,b]={ x|x≦b } (ただし−∞<b<+ ∞)、 type 3: (a,∞)={ x | a<x } (ただし−∞<a<+ ∞)、 type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R type 5: 空集合φ の5タイプの区間の有限個の直和として表す (=互いに素な有限個の上記5タイプの区間へ分割する) ことができる。 すなわち、 ![]() 1以上の或る自然数nが存在して、 E= I1+…+In (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間) と表せる。 ※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。 ・そこで、直線の長さを定義する 集合関数Ψを用いて、 μ(E)=Ψ(I1)+Ψ(I2)+…+Ψ(In) と、関数μを定義する。 このμ(E)は、きれぎれの直線Eの長さの和となる。 ※区間塊ですらないR上 の集合一般の長さを測るためには、1次元ル ベーグ外測度。 |
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性質 |
上記のとおり定義された、R上の区間塊Eに長さを与える関数μ(E)は、 以下の性質1、性質2、性質3:有限加法的測度、性質4,性質5,性質6、性質7:完全加法性を有する。 |
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性質1 |
・定義域がRの部分集合系(族) ![]() ![]() 値域は「広義の実数」R*上の区間[0,+∞]。 →なぜなら、任意のE∈ ![]() 集合関数Ψは、常に0≦Ψ(I)≦+∞だから。 広義の実数R*で定義された演算規則より、0≦μ(E)≦+∞ 。 ※値域はあくまで「広義の実数」であって、実数ではない。 「広義の実数」では、実数における演算が拡張されているので(特に+∞について)注意。 |
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性質2 |
・Rで定義された上記の実数値![]() ![]() |
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性質3 |
・Rで定義された上記の実数値![]() ![]() ※なぜ?→証明 ゆえに、μは、 ![]()
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性質4 |
・ type 1: 左半開区間(a,b] (ただし−∞<a<b<+∞), type 2: (−∞,b] (ただし−∞<b<+∞)、 type 3: (a,∞) (ただし−∞<a<+∞)、 type 4: (−∞, ∞) type 5: 空集合φ のいずれかのかたちである限りで任意の区間Iと、区間Iにたいして任意にとったα<μ(I)にたいして、 type 1: 左半開区間(a*,b*] (ただし−∞<a*<b*<+∞), type 5: 空集合φ のいずれかのかたちをした、ある区間Jが存在して、 [J]⊂I かつ α<μ(J) を満たす。 すなわち、 (a,b] (−∞,b] (a,∞) (−∞, ∞) φのいずれかのかたちをした区間をすべて集めた集合系をI、 (a*,b* ] φのいずれかのかたちをした区間をすべて集めた集合系をJとおくと、 (∀I∈I) (∀α<μ(I)) (∃J∈J ) ( [J]⊂Iかつα<μ(J) ) [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp.19-20);] (詳細) |
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性質5. |
・R上の任意の区間塊E と、Eにたいしてとった任意のα<μ(E)にたいして、 [F]⊂E かつ α<μ(F) を満たす有界な区間塊Fが存在する。 ( ∀E∈ ![]() ![]() ※なぜ?→証明 ※活用例→性質6の証明 |
[文献]・伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(p. 20);・小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)。 |
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性質6. |
・R上の任意の区間塊E と、 この区間塊Eを覆う任意の「区間の可算被覆」{In}に対して、 μ( )は、次の不等式を満たす。
※R上の任意の区間塊E が、非有界である場合 (たとえば、(−∞,b] , (a,∞) とその直和や (−∞,∞) )
この等号「=」は、 広義の実数R*で定義された演算規則「∞=a+∞」の意味での等号「=」であって、 実数の枠内で普通にいう等号「=」の意味でではない。 ※ただし、ここでいう、Eを覆う「区間の可算被覆」とは、 次の2条件を満たす可算無限個の「1次元ユークリッド空間R上の区間の列」 { I1 , I2 , I3 ,…} を指す。 (条件1) 区間列の要素I1 , I2 , I3 ,…はすべて、 以下のかたちの区間のいずれかであること。 type 1: 左半開区間(a,b] = { x | a<x≦b } (ただし−∞<a<b<+∞), type 2: (−∞,b] = { x | x≦b } (ただし−∞<b<+∞)、 type 3: (a, ∞) = { x | a<x } (ただし−∞<a<+∞)、 type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R type 5: 空集合φ (条件2) Eを被覆すること、つまり、
※なぜ?→証明 ※活用例→性質7の証明 |
[文献]・伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2証明内(pp. 20-21) ;・小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72)。 |
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性質7. |
・Rで定義された上記の実数値![]() ![]() ※なぜ?→証明 ※活用例:R上の任意の集合のルベーグ外測度、 |
[文献]・伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);・小谷『測度と確率1』補題4.1(p.72); ・高木『解析概論』113節 (pp.422-3);長さに限定. |
→集合関数 →集合論目次 →総目次 |
[伊藤『ルベーグ積分』I予備概念§3点関数と集合関数:例3(pp.13-15) ;高木『解析概論』113節Euclid空間区間の体積(pp.421-3).]
(舞台設定)
R :実数の全体の集合。すなわち、R={ x| −∞ < x < +∞ }
集合系(族): R上の区間塊として考えられ得るものすべてを集めてきた集合系(族)。
※区間塊Eは、Rの部分集合だから、はRの部分集合系(族)となっている。
f (x) : R上の実数値関数(つまり、f: R→R)で、R上単調増加関数。以下のΨに組み込まれる。
Ψ(I) : 直線の長さの一般化である集合関数Ψ。
すなわち、
(i) I=(a, b] (ただし−∞< a< b<+∞)ならば、 Ψ(I) = f (b)−f (a)
(ii) I=φならば、 Ψ(φ) = 0
(iii) それ以外ならば、Iに含まれる任意の区間J=(a', b'] (ただし−∞< a'< b'<+∞)に対して、
Ψ(I) = sup { Ψ( J ) }= sup { f (b')−f (a') }
※f (x)= xとしてf (x)を組み込んだΨ(I)が、一般に「左半開区間Iの長さ」と呼ばれるもの。
(定義:集合関数μ)
に属す、すべてのEは、区間塊であるから、
type 1: 左半開区間(a, b]={ x | a<x≦b } (ただし−∞< a< b<+∞),
type 2: (−∞, b]={ x | x≦b } (ただし−∞< b<+∞)、
type 3: (a , ∞)={ x | a<x } (ただし−∞< a <+∞)、
type 4: (−∞, ∞)=実数全体の集合R
type 5: 空集合φ
の5タイプの区間の有限個の直和として表す(=互いに素な有限個の上記5タイプの区間へ分割する)
ことができる。
すなわち、
に属す、すべてのEには常に、
1以上の或る自然数nが存在して、
E= I1+…+In (ただし、I1,…,Inは、上記5タイプいずれかの区間)
と表せる。 ※自然数nは1以上とわざわざことわったのは、E= I1というケースも当然ありうるという意味。
そこで、直線の長さの一般化である集合関数Ψを用いて、
μ(E)=Ψ(I1)+Ψ(I2)+…+Ψ(In)
と、関数μを定義する。
このうち特に、f (x)= x として Ψ (I)= b−aとした際のμ(E)は、きれぎれの直線Eの長さの和となる。
(性質) 上記のとおり定義された関数μは、以下の性質をもつ。
性質1.
定義域がRの部分集合系(族) となるので、上記の関数μは、Rで定義された実数値
-集合関数となる。
性質2.
Rで定義された上記の実数値-集合関数μの定義域
は、有限加法族である。(∵)
性質3.
Rで定義された上記の実数値-集合関数μは、
上の有限加法的測度である。
※なぜ?→証明
性質4. [伊藤『ルベーグ積分』I-§4有限加法的測度:定理4.2(p.19);高木『解析概論』113節 (pp.422-3);長さに限定.]
Rで定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族
上の完全加法的測度となるとは限らない。
Rで定義された上記の実数値-集合関数μが、有限加法族
上の完全加法的測度となるための必要十分条件は、
Ψ (I)に組み込まれている単調増加関数f (x)がR上右連続であることである。
すなわち、以下の命題P⇔命題Q。
命題P: Rで定義された上記の実数値-集合関数μは、有限加法族
上の完全加法的測度。
命題Q:Ψ(I)に組み込まれている単調増加関数f (x)がR上右連続。
※長さは、f (x)= xとしたときのΨ(I), μ(E)だったが、f (x) = xはR上右連続だから、
R上の区間塊(きれぎれの直線)Eの長さは、有限加法族(R上の区間塊上)の完全加法的測度となる。
※なぜ?→証明
※活用例:R上の任意の集合のルベーグ・スチルチェス外測度、
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