凸関数 convex function : トピック一覧

・定義:凸集合 
・定義:凸関数(下に凸)/凹関数(上に凸) 
・定理:凸性と微分/凹性と微分/凸不等式・Jensen(ジェンセン・イェンセン)の不等式/相加相乗平均不等式/Hölder (ヘルダー)の不等式 

総目次

定義:凸集合 convex set

  [ 高橋『経済学とファイナンスのための数学』p.67; 奥野鈴村『ミクロ経済学pp.265-266] 

 ・「集合A凸集合である」とは、
  集合Aに含まれる任意の2点を含む線分が、必ず集合Aに含まれるということ。 
 ・すなわち、 
   「集合A凸集合である」とは、
     n次元数ベクトルx,x' に対して、
      x,x'A ⇒ {αx+(1−α) x'αR, 0≦α≦1 }A 
     が成立するということ。 

 へこみがない図形をイメージせよ。 
  

定理:凸集合の分離定理・分離超平面の定理 separating hyperplane theorem 

  [ 高橋『経済学とファイナンスのための数学』p.67; 奥野鈴村『ミクロ経済学』pp.268-270]   
 

定義:凸関数(下に凸な関数) convex function   

 [高橋『経済学とファイナンスのための数学』67;奥野鈴村『ミクロ経済学』273;小平『解析入門I』138-140。] 

【おおまかな考え方】 

 関数のグラフの上方が凸集合になれば、
  すなわち、関数のグラフからどんな2点を選んで線分をつくっても、関数のグラフよりも上方にくれば、
 その関数凸関数と呼ぶ。

【きっちり定義すると】 

  f (x) が「閉区間I凸関数である」「閉区間Iである」とは、 
 I属す2点x1,x2と、実数0≦α≦1を、どのようにとっても常に、 
  f (αx1+(1−α) x2 )≦αf (x1)+(1−α) f (x2 )  
 が成立することをいう。 
 また、 
  f (x) が「閉区間I狭義に凸 strictly convex である」  
    「閉区間Iで強い意味で凸 convex in the strong sense である」とは、  
  I属す2点x1,x2と、実数0≦α≦1を、どのようにとっても常に、
   f (αx1+(1−α) x2 )<αf (x1)+(1−α) f (x2) 
 が成立することをいう。

【解説】

 [小平『解析入門I』138]  
   
 関数y =f (x)のグラフから2点A( x1, f (x1) ),B( x2, f (x2) )を選ぶ。 
 すると、線分AB上の任意の点Pの座標は、
 任意のα(0≦α≦1)を用いて、
 P x2−α(x2x1),f (x2)−α( f (x2)f (x1)  
 すなわち、  
 Pαx1+(1−α)x2,αf (x1)+ (1−α) f (x2)  
  →もしわからなければ、
   『高等学校数学I新訂版』啓林館 
    第6章平面図形と式・第2節平面上の座標「2点PQm:nに分ける点の座標」(p.156)
    を見よ。. 
 この点Pと同一x座標のy =f (x) 上の点Qの座標は、当然、 
 Qαx1+(1−α)x2f ( αx1+(1−α)x2 )  
 線分ABがグラフより上にあるということは、 
 線分AB上の任意の点Pが、同一x座標のy =f (x) 上の点Qより上にあるということに他ならない。 
 さらに、このことは、
  [線分AB上の任意の点Py座標]≧[この点Pと同一x座標のy =f (x) 上の点Qy座標] 
  すなわち、
  任意のα(0≦α≦1)に対して、 
        f (αx1+(1−α)x2 )≦αf (x1)+(1−α)f (x2)  
  が成り立つことに他ならない。  


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定義:凹関数(上に凸な関数) concave function   

[高橋『経済学とファイナンスのための数学』p.67; 奥野鈴村『ミクロ経済学』273;小平『解析入門I』138-140。] 

【おおまかな考え方】 
 関数のグラフの下方が凸集合になれば、その関数凹関数である。
  すなわち、
 関数のグラフからどんな2点を選んで線分をつくっても、関数のグラフよりも下方にくれば、
 その関数凹関数と呼ぶ。

【きっちり定義すると】 
 f (x) が「閉区間Iで凹関数である」「閉区間Iでである」とは、 
 Iに属す2点x1,x2と、実数0≦α≦1を、どのようにとっても常に、 
  f (αx1+(1−α) x2 )≧αf (x1 )+(1−α) f (x2 )  
 が成立することをいう。 
 また、 
 f (x) が「閉区間Iで狭義に凹 strictly concave である」  
     「閉区間Iで強い意味で凹 concave in the strong sense である」とは、  
 Iに属す2点x1,x2と、実数0≦α≦1を、どのようにとっても常に、  
  f (αx1+(1−α) x2 )>αf (x1 )+(1−α) f (x2 )  
 が成立することをいう。  

 ※f (x)(あるいは狭義に凹)であることは、 
  −f (x)(あるいは狭義に凸)であることに他ならない。 

【解説】 [小平『解析入門I138]  
   凸関数の定義についての解説を見よ。
 

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定理:凸と微分の関係   

                       [吹田新保『理工系の微分積分学』57-58;小平『解析入門I』138-140。] 

 1.閉区間Iで連続、Iの内部で微分可能な関数f (x)が、 
  閉区間Iで凸であるための必要十分条件は、 
  導関数f ' (x) がI内部で増加であることである。 
  導関数 f ' (x) がIで狭義増加であるならば、
  f (x) は、閉区間Iで狭義に凸である。 

 2.閉区間IでC2である関数f (x)が、    
  閉区間Iで凸であるための必要十分条件は、 
  第二次導関数f '' (x) がIで、f '' (x)≧0となることである。 
  第二次導関数f '' (x) がIで、f '' (x)>0となるならば、 
  f (x) は、閉区間Iで狭義に凸である 

 3. 関数f (x)微分可能な凸関数であるとき、  
  曲線y= f (x)はその曲線上の接線の下側にはでない。  

 (証明) [吹田新保『理工系の微分積分学』57-58;小平『解析入門I138-140。]  

定理:凹と微分の関係   

                        [小平『解析入門I』138-140。] 
1.閉区間Iで連続、Iの内部で微分可能な関数f (x) が、 
  閉区間Iで凹であるための必要十分条件は、 
  導関数f ' (x) がI内部でつねに減少であること。 
  導関数f ' (x) がIでつねに狭義減少であるならば、
  f (x) は、閉区間Iで狭義凹。 
2.閉区間IでC2である関数f (x)が、    
  閉区間Iで凸であるための必要十分条件は、 
  第二次導関数f '' (x) がIでつねに、f '' (x)≧0となることである。 
  第二次導関数f '' (x) がIでつねに、f '' (x)>0となるならば、 
  f (x) は、閉区間Iで狭義に凸である

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定理:凸不等式・Jensenの不等式(1)  

                 [吹田新保『理工系の微分積分学』58; 高橋『経済学とファイナンスのための数学』p.89;]
 f (x) は、区間Iで凸とする。  
 任意数列{x1, x2, …, xn} Iと、  
   
 を満たす正数列{α12, …,αn }に対し、  
   
 が成り立つ  
 f (x)閉区間Iで狭義に凸であるならば、   
 等号は、 x1= x2= …= xn のときのみ成り立つ。
 (証明) [吹田新保『理工系の微分積分学』58]     

定理:凸不等式・Jensenの不等式(2)積分版  

                             [高橋『経済学とファイナンスのための数学』90;]  
 f (x) は、区間Iで凸とする。ψ(x) は、積分可能な関数であるとする。  
 このとき、 
   
 が成り立つ  
 (証明) [吹田新保『理工系の微分積分学』58]  

定理:相加相乗平均不等式  

  相加相乗平均不等式
 (等号は、 a1= a2= = an のときに限る) 
(証明) [吹田新保『理工系の微分積分学』59]  指針:凸関数 f (x)=− log x に、凸不等式を適用して導出。 

定理:ヘルダーHölderの不等式  

 1/p+1/q=1,  p,q>1のとき、 
  
 (証明) [吹田新保『理工系の微分積分学』59]  
 

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reference

高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.67-70定義;p.89:Jensen不等式.
奥野正寛、鈴村興太郎『ミクロ経済学』岩波書店、1985年、pp.265-270;273-274。
小平邦彦『解析入門I』岩波書店、2003年 pp.138-140。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年。pp.56-59.
高橋陽一郎『岩波講座現代数学への入門:微分と積分2』 岩波書店、1995年、pp.10-11:Jensenの不等式。
高木貞治『解析概論 改訂第三版』岩波書店、1983年、p. 52-54.
杉浦光夫『解析入門』岩波書店、1980年、p.76;102.  
吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 微分・積分 新訂版』啓林館、pp.85-86.
小林道正『Mathematicaによる微積分』朝倉書店、1995年、pp.36-40.神谷和也・浦井憲『経済学のための数学入門』東京大学出版会、1996年、pp.118-120;281.
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984,pp.337-352.
Fischer,Emanuel.Intermediate Real Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Heidelberg Berlin,1983, pp.340-377.
本格的な多変数関数の凸解析については、以下を参照せよ。
Rockafellar, Convex Analysis, Princeton UP, 1970.
布川昊,谷野哲三,中山弘隆『線形代数と凸解析』コロナ社、1991年。
→[トピック一覧:凸関数]
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