一般の有界集合上の2重積分 double integral     
       VII. 一般の有界集合上の累次積分      

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【文献】

 ・杉浦『解析入門I』IV章§9(pp.270-275.)
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』196-7
 ・高木『解析概論』8章93節(p.336.)
 ・黒田『微分積分』10章2節(354-5)
 ・和達『微分積分』140-4
 ・Lang, Undergraduate Analysis,theorem3.1(485-486.)。

定理:重積分の累次積分への還元可能条件            


【文献】
 ・杉浦『解析入門I』IV章定理9.8-3(p.271.)
 ・和達『微分積分』140-4
 ・Lang, Undergraduate Analysis,471-482

(舞台設定)
ψ1(x),ψ2(x):ψ1(x),ψ2(x)は (連続でなくてもよいが)[a,b]リーマン積分可能有界関数を表すとする。
        また、[a,b]上ψ1(x)≦ψ2(x) が成り立つとする。 
A :     Aは、R2上の点集合{ (x ,y ) | a≦x≦b, ψ1(x)≦y≦ψ2(x) }
       つまり、a≦x≦bの範囲で、ψ1(x)、ψ2(x)に挟まれた範囲
      を表すとする。
f(x,y) : ここでは、関数 f (x,y)として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
  f (x ,y ) がA上リーマン積分可能
 xを固定してyの関数となった f (x ,y )が、
 x[a,b]上のどんな値に固定しても 、[ψ1(x), ψ2(x)]上y方向に可積分
            すなわち、が存在する
 ならば
 x[a,b]上の固定位置と、y方向の積分値とを対応付けた関数  
  
 は、[a,b]可積分となって、
   
(証明) 杉浦『解析入門I』IV章定理9.8-3(p.271.)
仮定: f (x ,y )がA上リーマン積分可能 …(仮定1) 
   xを固定してyの関数となった f (x ,y )が、
   x[a,b]上のどんな値に固定しても 、[ψ1(x), ψ2(x)]y方向に可積分
            すなわち、が存在する   …(仮定2)
設定:Aを含む閉矩形K={ (x ,y ) | axb, cyd } (c≦ψ1(x)≦ψ2d)をひとつとる。
   つまり、閉矩形KA (設定1)
     (たとえば、下図緑部のように、閉矩形Kをとる)
      
   A上では  f (x ,y ) の値をとり、それ以外ではゼロをとる、閉矩形K上の関数f * (x ,y )つくる。 
   つまり、f * (x ,y ) f (x ,y ) χA(x ,y ) …(設定2)
本題:
(step1) (仮定1) f (x ,y ) がA上リーマン積分可能とは、定義より、
    f * (x ,y )閉矩形K上リーマン積分可能  
   となることだった。
(step2)  xを固定してyの関数となった f * (x ,y )について考える。
xを固定してyの関数となったf * (x ,y )は、
 x[a,b]上のどんな値に固定しても 、[ c,ψ1(x)]リーマン積分可能
   なぜなら、(設定2)より、 c y<ψ1(x)のとき常にf * (x ,y )=0  
                  
y=ψ1(x)のときf * (x ,y )= f (x ,y ) だから、
    [ c,ψ1(x)]f * (x ,y )は、y=ψ1(x)の一点を除いて、連続。
    よって、定理(閉区間上有限個数の点を除いて連続ならば可積分)より、
    f * (x ,y )は [ c,ψ1(x)]上可積分
xを固定してyの関数となったf * (x ,y )は、
 x[a,b]上のどんな値に固定しても 、[ψ2(x), d ]上でも、リーマン積分可能
   なぜなら、(設定2)より、ψ2(x) <ydのとき常にf * (x ,y )=0  
                
y=ψ2(x)のときf * (x ,y )= f (x ,y ) だから、
    
[ψ2(x), d ]f * (x ,y )は、y=ψ2(x)の一点を除いて、連続。
    よって、
定理(閉区間上有限個数の点を除いて連続ならば可積分)より、
    
f * (x ,y )は [ψ2(x), d ]リーマン積分可能
xを固定してyの関数となったf * (x ,y )は、
 x[a,b]上のどんな値に固定しても 、[ψ1(x),ψ2(x) ]上、リーマン積分可能。   
   なぜなら、ψ1(x)y≦ψ2(x)のときf * (x ,y )= f (x ,y )  ∵(設定2)
    よって、(仮定2)より、ψ1(x)y≦ψ2(x)f * (x ,y )リーマン積分可能
以上3点から、積分の区間加法性が成立し、
  xを固定してyの関数となったf * (x ,y )は、
  x[a,b]上のどんな値に固定しても 、
  [c,d]上y方向にリーマン積分可能で、…(step2-結論1)
   
          
          …(step2-結論2)
(step3)  step1での結論と(step2-結論1)から、矩形上の重積分の累次積分への還元可能条件が満たされるので、
  x[a,b]上の固定位置と、y方向の積分値とを対応付けた関数  
  
  は、[a,b]可積分となって、
   
(step4)一般の有界集合上の二重積分の定義を用いてstep3の結論を書きかえると、
   
(step5) step4の結論を、(step2-結論2)を用いて書きかえると、
   



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定理:連続曲線で囲まれた集合上での、連続関数の重積分は、累次積分に還元可能 

[吹田新保『理工系の微分積分学』196-7;高木『解析概論』8章93節(p.336.);
 笠原『微分積分学』7.2節[4]定理7. 20系2(p.264.);黒田『微分積分』10章2節(354-5);
 杉浦ほか『解析演習』IV章1.8系(1)(p.274.); Lang, Undergraduate Analysis,Example(486-487.)
 和達『微分積分』140-4;。]
(舞台設定)
ψ
1(x),ψ2(x):ψ1(x),ψ2(x) [a,b]上の連続関数を表すとする。
        また、
[a,b]上ψ1(x)≦ψ2(x) が成り立つとする。 
A :     Aは、R2上の点集合{ (x ,y ) | axb, ψ1(x)y≦ψ2(x) }
       つまり、
axbの範囲で、二つの連続曲線ψ1(x)、ψ2(x)に挟まれた範囲
      を表すとする。

    例1:
      
    例2: 
     
  f (x ,y ) : ここでは、関数 f (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
〇1 以上の設定下で、Aは面積確定。Aの境界は、面積ゼロ。 
以上の設定に付け加えて、 f (x ,y )がA上連続ならば、 
〇2 F(x)= 
    は、[a,b]上の連続関数。 [吹田新保『理工系の微分積分学』196]
〇3  (重積分の累次積分への帰着) 
〇4 [吹田新保『理工系の微分積分学』196-7;和達『微分積分』142;。]
 積分範囲A={ (x ,y ) | axb, ψ1(x)y≦ψ2(x) }を、
   [c,d]上の連続関数φ1(y)、φ2(y)を用いて、
   A={ (x ,y ) | cyd,φ1(y)x≦φ2(y) }
  とも表せるならば
    (累次積分の順序変更) 
(証明)
〇1 杉浦『解析入門I』IV章定理9.8-1,2(p.271.)を見よ。
   まずAの境界面積がゼロであることを示し、定理を使って、Aの面積確定を導出。 
〇2 吹田新保『理工系の微分積分学』196を見よ。 
〇3 [高木『解析概論』8章93節(p.336.);]
仮定: f (x ,y ) がA上連続 …(1) 
設定:Aを含む閉矩形K={ (x ,y ) | axb, cyd } (c≦ψ1(x)≦ψ2d)をひとつとる。
   つまり、閉矩形KA …(2)
     (たとえば、下図緑部のように、閉矩形Kをとる)
      
   A上では f (x ,y )の値をとり、それ以外ではゼロをとる、閉矩形K上の関数f * (x ,y )をつくる。 
   つまり、f * (x ,y )=  f (x ,y ) χA(x ,y ) …(3)
本題:
(step1) (1)(3)より、
    
f * (x ,y ) の不連続点は、A境界に限られ、
    
A境界以外の全ての点では、f * (x ,y )連続。 
(step2)  〇1より、A面積確定で、A境界面積ゼロ。
  だから、
閉矩形K上のf * (x ,y )の不連続点の集合は面積ゼロとなり、
  
定理より、f * (x ,y )閉矩形Kリーマン積分可能となる。
(step3)  xを固定してyの関数となった f * (x ,y )について考える。

   (3)より、
   ψ
2(x) <ydのときf * (x ,y )=0,
   ψ1(x)y≦ψ2(x)のときf * (x ,y )= f (x ,y )
   c y<ψ1(x)のときf * (x ,y )=0 
  
定理より、2変数について連続ならば、そこで各変数についても連続となるので、
  
step1より、xを固定してyの関数となった f * (x ,y ) の不連続点は、A境界に限られ、 
  
A境界以外の全ての点では、f * (x ,y )連続。 
  
xを固定してyの関数となった f * (x ,y ) にとっては、x[a,b]上のどんな値に固定しても
  
A境界=不連続点は、ψ1(x),ψ2(x)2点にすぎない。
  よって、
定理より、xを固定してyの関数となったf * (x ,y )は、

  x[a,b]上のどんな値に固定しても [c,d]y方向に可積分。 
(step4)  step2,3の結果から、矩形上の重積分の累次積分への還元可能条件が満たされるので、
  
x[a,b]上の固定位置と、y方向の積分値とを対応付けた関数  
  
  は、
[a,b]可積分となって、
  
 
(step5)一般の有界集合上の二重積分の定義を用いてstep4の結論を書きかえると、
   
(step6)   ∵区間加法性
          
               ∵ y<ψ1(x)のときf * (x ,y )=0
                 ψ
1(x)y≦ψ2(x)のときf * (x ,y )= f (x ,y )
                 y>ψ2 (x)のときf * (x ,y )=0
          
   となることを用いて、step5の結論を書きかえると、
   

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(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分、
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、IV章§9(pp.270-275.) n変数関数全般について。
杉浦光夫ほか『解析演習』東京大学出版会、1989年、IV章1.7-1.8(pp.273-275.)証明ナシ。
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、pp.196-7.
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、8章93節(p.336.)
笠原皓司『微分積分学』サイエンス社、1974年、7.2節[4]定理7.19 -20(pp.262-4.)。
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分』共立出版、2002年、第10章2節(p. 354.)。
Lang,Serge.Undergraduate Analysis(Undergraduate Texts in Mathematics),Springer-Verlag New York Berlin Heidelberg Tokyo,1983,Chapter 19. Multiple Integrals. (pp.468-482.)。
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp. 140-4;
小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、87-89. アイデアだけ。厳密な議論なし。