一般の有界集合上の2重積分 double integral     
        V. 有界集合上の重積分の性質(2)      

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定理:面積0の集合上の積分            

【文献】

 ・杉浦『解析入門I』IV章8節命題8.4(p.258.)証明付
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』194:証明ナシ


(舞台設定)

 A : Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。



 f (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
 Aの面積が0ならば、f (x ,y ) はA上可積分で、
    
 これを、定義にしたがって、書き下すと、閉矩形KA として、
 Aの面積が0ならば、 f(x ,y ) χA (x ,y) 閉矩形K上可積分で、 
    
(証明) [杉浦『解析入門I』IV章8節命題8.4(p.258.)]  
  

定理:

 [杉浦『解析入門I』IV章8節命題8.2(p.257.)証明付;吹田新保『理工系の微分積分学』194:証明ナシ]
(舞台設定)
 A : Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
f (x ,y ) がA上積分可能ならば
f (x ,y ) は、Aに含まれる任意の面積確定集合B上積分可能


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定理:積分範囲加法性

[杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.5(p.258.)証明付;吹田新保『理工系の微分積分学』4〇(p.194):証明ナシ]
(舞台設定)
 A ,B: A,Bは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y )として、AB上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
〇1 f (x ,y )がA上リーマン積分可能、かつf (x ,y )がB上リーマン積分可能、かつ、(AB)の面積=0
   ならば
   f (x ,y )がAB上リーマン積分可能となって、
   
〇2 A,Bが面積確定、(AB)の面積=0、かつ、f (x ,y )がAB上リーマン積分可能  
   ならば
   f (x ,y )がA上リーマン積分可能、かつf (x ,y )がB上リーマン積分可能となって、
   
(証明〇1) [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.5(p.258.)、命題8.2-2(p.257.)]
仮定:f (x ,y )がA上リーマン積分可能 …(仮定1)
   f (x ,y )がB上リーマン積分可能 …(仮定2)
   (AB)の面積=0 …(仮定3) 
設定:ABを含む閉矩形K={ (x ,y ) | a≦x≦b, c≦y≦d }をひとつとる。
   つまり、閉矩形K AB …(設定1)
   AB上ではf (x ,y )の値をとり、それ以外ではゼロをとる、閉矩形K上の関数f * (x ,y )をつくる。 
   つまり、f * (x ,y )= f (x ,y ) χAB(x ,y ) …(設定2)
(step1)  
 定義関数の性質より、 χAB(x ,y ) =χA(x ,y)χB(x ,y)χAB(x ,y)
 この両辺に、f * (x ,y )をかけると、  
    f * (x ,y )χAB(x ,y ) = f * (x ,y )χA(x ,y)f * (x ,y ) χB(x ,y)f * (x ,y ) χAB(x ,y) 
(step2)  
左辺:f * (x ,y )χAB(x ,y )= f * (x ,y ) 
  なぜなら、
    
f * (x ,y )χAB(x ,y )
    = f (x ,y ) χAB(x ,y ) χAB(x ,y ) ∵設定2: f * (x ,y )= f (x ,y ) χAB(x ,y ) 
    
= f (x ,y ) χAB(x ,y )  ∵定義関数の定義より、χAB(x ,y ) χAB(x ,y )=χAB(x ,y ) 
    
= f * (x ,y )  ∵設定2: f * (x ,y )= f (x ,y ) χAB(x ,y ) 
右辺第1項: f * (x ,y )χA(x ,y)
      = f (x ,y ) χAB(x ,y ) χA(x ,y)   ∵設定2: f * (x ,y )= f (x ,y ) χAB(x ,y )  
      
= f (x ,y ) χ(AB)A (x ,y )     ∵定義関数の性質: χAB(P)=χA(P) χB(P) 
      
= f (x ,y ) χA (x ,y )  
右辺第2項: f * (x ,y ) χB(x ,y)
      = f (x ,y ) χAB(x ,y ) χB(x ,y)   ∵設定2: f * (x ,y )= f (x ,y ) χAB(x ,y )  
      
= f (x ,y ) χ(AB)B (x ,y )     ∵定義関数の性質: χAB(P)=χA(P) χB(P) 
      
= f (x ,y ) χB (x ,y )  
右辺第3項: f * (x ,y ) χAB(x ,y)
      = f (x ,y ) χAB(x ,y ) χAB(x ,y)   ∵設定2: f * (x ,y )= f (x ,y ) χAB(x ,y )  
      
= f (x ,y ) χ(AB)(AB) (x ,y )     ∵定義関数の性質: χAB(P)=χA(P) χB(P) 
      
= f (x ,y ) χ(AB) (x ,y )  
(step3)  Step2の結果を用いて、step1の結論を書きかえる。
   f * (x ,y ) = f (x ,y )χA(x ,y)f (x ,y ) χB(x ,y)f(x ,y ) χAB(x ,y) 
(step4)  (仮定1) (仮定2)を、定義にしたがって、書き下すと、
    f (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分 (仮定1' )
       すなわち、
         
        が存在する。
    f (x ,y ) χB(x ,y ) 閉矩形K上可積分 (仮定2' )
       すなわち、
         
        が存在する。
   となる。
   また、(仮定3)と、定理より、
    f (x ,y ) は(AB) 上可積分で、
     
   さらに、定義にしたがって、書き下すと、
    f(x ,y ) χAB(x ,y) が閉矩形K上可積分 
         
   となる。 
(step5) step4により、矩形上の2重積分の線形性が成立し、
    
  も、閉矩形K上可積分となって、
   
   
  step4でだったから、
   
   
  step3の結論を用いて左辺を書きかえると、
  
(step6)
  (設定2)を振り返ってみると、step5の左辺は、一般の有界集合AB上の積分の定義にほかならない、 
  また、step5の右辺第1項は、一般の有界集合A上の積分の定義
     step5の右辺第2項は、一般の有界集合B上の積分の定義にほかならない。
  したがって、    
  f (x ,y )はAB上リーマン積分可能となって、
   
   
  


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定理:積分範囲に関する有限加法性 

 [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.6(p.259.)証明付;吹田新保『理工系の微分積分学』問4(p.194:証明ナシ]
R2上の有界な有限個の点集合A1,A2,An面積確定
AiAj面積=0(i≠j)

有界関数f (x ,y )がA1A2An 上積分可能

ならば

定理: 

[杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.6系2(p.260.)証明付;]
(舞台設定)
 A: Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f (x ,y )、g (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y ) 、g (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
〇1  f (x ,y ) ≠g (x ,y ) となるA上の面積がゼロならば、
    すなわち、B={(x ,y )∈A|f(x)≠g(x)} の面積がゼロならば、
  f (x ,y ) がA上可積分⇔f (x ,y ) がA−B上可積分⇔g (x ,y ) がA−B上可積分⇔g (x ,y ) がA上可積分 
〇2 f (x ,y ) ≠g (x ,y ) となるA上の面積がゼロ
      すなわち、B={(x ,y )∈A|f(x)≠g(x)} の面積がゼロ
  かつ、 f (x ,y ) 、g (x ,y )がA上可積分ならば、
    

(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分、
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、pp.257-259.(n変数関数全般について)
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、第7章3節(p. 194).
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、第8章92節p. 332.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、第3章3.8節I(p. 108)。
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分』共立出版、2002年、第10章2節(p. 354.)。「このように定義された積分について線形性等の性質が成り立つのも今までと同様である」の一分だけで片付けている。
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp.138-9. アイデアだけ。厳密な議論なし。
小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、87-89. アイデアだけ。厳密な議論なし。