一般の有界集合上の2重積分 double integral     
         V. 有界集合上の重積分の性質

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総目次

【文献】

 ・杉浦『解析入門I』IV章§9(pp.257-259.)
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』194

定理:線形性 


【文献】
 ・杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)証明付
 ・吹田新保『理工系の微分積分学』194:証明ナシ


(舞台設定)
 A : Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f (x ,y ) , g (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y ) , g (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
 h : 定数をhh1h2で表す。  
(本題)
1. f ( x ,y ) が有界な点集合A上リーマン積分可能ならば
  h f ( x ,y )も有界な点集合A上リーマン積分可能となって、
   
2. f ( x ,y ) , g (x ,y ) が有界な点集合A上リーマン積分可能ならば
  f ( x ,y ) ± g (x ,y )も有界な点集合A上リーマン積分可能となって、
   
3. f ( x ,y ) , g (x ,y ) が有界な点集合A上リーマン積分可能ならば
  
h1 f ( x ,y ) ± h2 g (x ,y )有界な点集合A上リーマン積分可能となって、
   
(1.証明) [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)]  
設定:Aを含む閉矩形Kをひとつとる。つまり、閉矩形K A.
仮定:f (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定1
本題:  仮定1 を定義にしたがって、書き下すと、
  f (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分 …仮定1'
 仮定1'と閉矩形上の重積分の線形性より、hf (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分
 これを、一般有界集合上の重積分定義を用いて言いなおすと、
 hf (x ,y )は、A上リーマン積分可能となる。 
 
  
      ∵一般有界集合上の重積分定義にしたがって閉矩形上の重積分に帰着。
  
     ∵閉矩形上の重積分の線形性 
        ∵一般有界集合上の重積分定義
(2.証明) [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)]  
設定:Aを含む閉矩形Kをひとつとる。つまり、閉矩形K A.
仮定:f (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定1
   g (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定2
(step1)  仮定1、仮定2を定義にしたがって、書き下すと、
  f (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分 …仮定1'
  g (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分 …仮定2'
 仮定1'、仮定2'と閉矩形上の重積分の線形性より、
 f (x ,y ) χA(x ,y ) ±g (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分
 
f (x ,y ) χA(x ,y ) ±g (x ,y ) χA(x ,y ) = {f (x ,y )±g (x ,y ) }χA(x ,y ) だから、
 {
f (x ,y )±g (x ,y ) }χA(x ,y )は、閉矩形K上可積分となり、 
 これを、一般有界集合上の重積分定義を用いて言いなおすと、
 f (x ,y )±g (x ,y )は、A上リーマン積分可能となる。 
(step2)
 
  
      ∵一般有界集合上の重積分定義にしたがって閉矩形上の重積分に帰着。
  
     ∵閉矩形上の重積分の線形性 
        ∵一般有界集合上の重積分定義

定理:可積分関数の積 

 [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)証明付;吹田新保『理工系の微分積分学』194:証明ナシ]
(舞台設定)
 A : Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f (x ,y ) , g (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y ) , g (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
 f ( x ,y ) , g (x ,y ) がそれぞれ有界な点集合A上リーマン積分可能ならば
 その積 f ( x ,y ) g (x ,y )も有界な点集合A上リーマン積分可能となる。     
(証明)  [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)]  
設定:Aを含む閉矩形Kをひとつとる。つまり、閉矩形K A.
仮定:f (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定1
   g (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定2
本題:  仮定1、仮定2を定義にしたがって、書き下すと、
  f (x ,y ) χA(x ,y )閉矩形K上可積分 …仮定1'
  g (x ,y ) χA(x ,y )閉矩形K上可積分 …仮定2'
 仮定1'、仮定2'と閉矩形上可積分な関数の積も閉矩形上可積分だから、
 {f (x ,y ) χA(x ,y ) }{g (x ,y ) χA(x ,y )}閉矩形K上可積分
 {f (x ,y ) χA(x ,y ) }{g (x ,y ) χA(x ,y )} = f (x ,y ) g (x ,y ) χA2(x ,y ) = f (x ,y ) g (x ,y ) χA (x ,y )だから、
 f (x ,y ) g (x ,y ) χA (x ,y )は、閉矩形K上可積分となり、 
 これを、一般有界集合上の重積分定義を用いて言いなおすと、
 f (x ,y )g (x ,y )は、A上リーマン積分可能となる。 



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定理:積分の単調性 

 [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.);吹田新保『理工系の微分積分学』194:証明ナシ]
(舞台設定)
 A : Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f (x ,y ) , g (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y ) , g (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
 f ( x ,y ) , g (x ,y ) がそれぞれ有界な点集合A上リーマン積分可能で、
 有界な点集合Aにおいては常に、f ( x ,y ) ≧ g (x ,y ) が成り立つ 
 ならば
   
 なお、 等号になるのは、f ( x ,y ) = g (x ,y ) である場合のみ。 
(証明) 
設定:Aを含む閉矩形Kをひとつとる。つまり、閉矩形K A.
仮定:f (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定1
   g (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定2
   Aにおいては常に、f ( x ,y ) ≧ g (x ,y )  …仮定3
本題:  仮定1、仮定2を定義にしたがって、書き下すと、
  f (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分 …仮定1'
  g (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分 …仮定2'
 仮定1'、仮定2'、仮定3から、
  閉矩形K上、f ( x ,y ) χA(x ,y ) g (x ,y ) χA(x ,y )  …仮定3'
 仮定1'、仮定2'、仮定3'と閉矩形上の積分の単調性から、
    
 これを、一般有界集合上の重積分定義を用いて言いなおすと、
   


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定理:積分の三角不等式 

 [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)証明付;吹田新保『理工系の微分積分学』194:証明ナシ]
(舞台設定)
 A : Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f (x ,y ) : ここでは、関数f (x ,y )として、Aの上で定義された有界関数のみを考える。
(本題)
 f ( x ,y ) がA上リーマン積分可能ならば
   
(証明) [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)] 
設定:Aを含む閉矩形Kをひとつとる。つまり、閉矩形K A.
仮定:f (x ,y )がA上リーマン積分可能 …仮定1
本題:  仮定1を定義にしたがって、書き下すと、
  f (x ,y ) χA(x ,y ) 閉矩形K上可積分 …仮定1'
 仮定1'と閉矩形上の積分の三角不等式から、
     
 一般有界集合上の重積分定義を用いて左辺を言いなおすと、
   
 ここで、|f (x ,y ) χA(x ,y ) ||f (x ,y ) ||χA(x ,y ) |=|f (x ,y )|χA(x ,y ) ()を用いて右辺を書きかえると、
   
 一般有界集合上の重積分定義を用いて右辺を言いなおすと、
   



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定理:積分の第一平均値定理 

 [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)証明付;高橋『経済学とファイナンスのための数学』定理3.8.1(p. 108)。]
(舞台設定)
 A : Aは、R2上の有界な点集合を表すとする。
 f(x ,y ) : ここでは、関数f(x ,y )として、Aで定義されたリーマン積分可能有界関数のみを考える。
 m、M :Aでのfの下限をm、上限をMであらわす。
       すなわち、Aにおいてm≦f(x ,y )≦M
(本題)
〇1
Aが面積確定ならば
 
を満たすλが存在する。 
要するに、
        
〇2
f(x ,y )がA上連続であるという条件を加えると、
 
を満たす点P( s , t )Kが存在する。 

 

(証明) [杉浦『解析入門I』IV章8節定理8.3(p.257.)]  

(reference)

日本数学会編集『岩波数学辞典(第三版)』 岩波書店、1985年、202項積分法(pp.520-525)→リーマン積分、
杉浦光夫『解析入門I』東京大学出版会、1980年、pp.257-259.(n変数関数全般について)
吹田・新保『理工系の微分積分学』学術図書出版社、1987年、第7章3節(p. 194).
高木貞治『解析概論:改訂第3版』岩波書店、1983年、第8章92節p. 332.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、第3章3.8節I(p. 108)。
黒田成俊『21世紀の数学1:微分積分』共立出版、2002年、第10章2節(p. 354.)。「このように定義された積分について線形性等の性質が成り立つのも今までと同様である」の一分だけで片付けている。
和達三樹『理工系の数学入門コース1:微分積分』岩波書店、1988年、pp.138-9. アイデアだけ。厳密な議論なし。
小形正男『理工系数学のキーポイント7:多変数の微分積分』岩波書店、1996、87-89. アイデアだけ。厳密な議論なし。