命に関わる頭痛(1)くも膜下出血(こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

命に関わる頭痛(1)くも膜下出血

命に関わる頭痛のうち、致命率の高さや、頻度から見て、くも膜下出血が最も重要です。

くも膜下出血とは

 くも膜下出血という病気の名前を聞いたことのある方も多いと思いますが、これは脳に出来た動脈のこぶ(脳動脈瘤)が破れて出血することで起こる病気です。くも膜とは脳全体をすっぽりと覆っている膜構造で、見た目がクモの巣を連想させるところから、くも膜と呼ばれています。脳表とくも膜との間のすき間をくも膜下腔と呼び、普段はこのくも膜下腔は脳脊髄液で満たされています。一方、脳の動脈はこのくも膜下腔の中を走行しており、ここに出来た動脈瘤が破裂した場合、くも膜下腔に沿って血液が拡がり、脳表のしわ(脳溝や脳槽)を埋め尽くします。あたかも血液の中に脳が浸ったような状態になるのです。これがくも膜下出血です。

高い致死率

 くも膜下出血は動脈性に激しく出血するため、一気に頭蓋内圧が上昇して、強烈な頭痛、意識障害などを引き起こします。時にはそのまま呼吸停止に至ることも稀ではありません。一旦くも膜下出血を起こせば、およそ3分の1の方は死亡し、たとえ助かっても半数の方は後遺症が残ると言われています。

くも膜下出血の頭痛

 典型的なくも膜下出血の頭痛は、突然金槌で頭を殴られたような頭痛といわれ、2~3秒で最高潮に達する、今まで経験したことのない様な激しい痛みであることが特徴です。ほとんどの場合意識障害を伴い、救急車で搬送されて医療機関を受診することになります。問題となるのは、出血量が少ないために、突発する頭痛のみで意識障害を伴わず、頭痛の程度も強烈ではなく、歩いて一般医療機関を受診する場合が少数ながらあると言うことです。この場合でも、くも膜下出血を見逃してしまうと、その殆どは再度出血して死亡等の重篤な結果を招くことになるため、確実に診断しなければなりません。

くも膜下出血の診断

 くも膜下出血の診断に最もよく使われるのは頭部単純CTですが、必ずしも100%診断できるわけではありません。出血量がごく少量であったり、出血から日数が経っていたりして、CTでは診断できないくも膜下出血も存在します。従って突発した頭痛の場合、CTでくも膜下出血の所見が認められなくても、臨床的にくも膜下出血の可能性がどうしても否定しきれない時は、CTよりさらに検出率が高いと言われるFLAIR 法MRIによるくも膜下出血の検索や、MRAによる脳動脈瘤の検索、場合によっては腰椎穿刺まで、念に念を入れて行っておく必要があります。