片頭痛の薬[急性期治療薬](こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

片頭痛の薬(急性期治療薬)

 片頭痛治療薬は、使用する目的によって発作頓挫薬(抑制薬・頓服)・予防薬(発作予防薬)・その他の薬剤の3つに大きく分けることができます。急性期治療に使われるのは、発作頓挫薬とその他の薬剤の一部です。発作頓挫薬は片頭痛が起こったときに使用して、痛みを鎮める薬で、薬物治療の中心・基本となる薬です。発作頓挫薬には、①消炎鎮痛剤②トリプタン製剤③エルゴタミン製剤の3つがあります。

①消炎鎮痛剤

 いわゆる痛み止めのことで、イブプロフェン・アセトアミノフェン・ロキソプロフェン・インドメタシン・ジクロフェナック・アスピリン・ナプロキセン・ザルトプロフェン・セレコキシブ・メロキシカムなどの各製剤やその他の合剤があります。市販の鎮痛剤もこの中に含まれます。幼小児や高齢者の片頭痛ではトリプタン製剤よりも消炎鎮痛剤の方が有効とする報告もあり、幼小児の片頭痛ではアセトアミノフェン・イブプロフェンが第一選択薬となります。また冠動脈疾患や脳血管障害の関連から、トリプタン製剤が使いにくい高齢者でも、消炎鎮痛剤が第一選択薬となり、副作用で特に問題になるのは、アスピリン不耐症と胃腸障害です。特にアスピリン不耐症は重要で、重症喘息の既往、嗅覚低下・副鼻腔炎の有無に注意します。

②トリプタン製剤

 片頭痛では脳を包む硬膜の血管が拡張して、頭痛を引き起こすことが知られていますが、トリプタンは頭蓋内血管および血管周囲にあるセロトニンの受容体に選択的に作用し、これらの血管を収縮させて片頭痛の痛みを鎮めます。トリプタンは現在、片頭痛治療の第一選択薬です。なおトリプタン製剤と消炎鎮痛剤の同時服用は問題有りませんが、トリプタン製剤と下のエルゴタミン製剤は同時服用できません。

③エルゴタミン製剤

 エルゴタミンもトリプタン同様、血管を収縮させる血管収縮剤です。トリプタンができる以前は、片頭痛治療薬の中心的存在でした。服用により悪心・嘔吐を来しやすいこと、頭痛が起こってからでは効きにくいため、トリプタン製剤ができた現在では適用が限られますが、作用時間が長いこと、長期間使っても効果が低下しにくいといった特徴があります。通常、作用を増強するためにカフェインとの合剤の形で使用します。上のトリプタン製剤と同時に服用することはできません。もし併用するときは、相互に24時間以上の間隔をあけて服用することになっています。

 発作頓挫薬の使い方で、最も問題になるのは、発作頓挫薬はあくまで頓用薬であって、これらの薬剤を慢性的に服用する状況や、常用せざるを得ない状態では、様々な弊害が生じてくるという点です。特に問題となるのは、これらの薬を常用することで起こる薬剤の使用過多による頭痛(薬物乱用頭痛)や、常用している薬の血中濃度が下がるとリバウンドで頭痛が起こる、急性期頭痛治療薬乱用中止後の反跳頭痛(薬物離脱頭痛)などがあります。それぞれの薬について、問題となる服用頻度・服用パターンはおおよそ決まっていますので、医師の注意を守って服用します。

その他の薬剤

 片頭痛に随伴する、悪心・嘔吐の治療や、消化管運動を改善し、上記発作頓挫薬の吸収を良くするといった働きを期待して、ドンペリドン・メトクロプラミドなどの制吐剤を併用することがあります。制吐剤は消炎鎮痛剤やトリプタン製剤などと、同時併用や相前後して服用することが可能です。また消炎鎮痛剤の作用増強を目的にカフェインを加えたり、ステロイドを併用することもあります。