小児の片頭痛[特徴と診断](こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

小児の片頭痛(特徴と診断)

 「こどもに片頭痛なんてあるんですか。」という質問を受けることがありますが、小児にも成人と同様に、片頭痛と思われる発作性頭痛が認められます。ただ現在使用されている国際頭痛分類では、頭痛の拍動感や体動による悪化、光過敏や音過敏、悪心嘔吐の有無が片頭痛の診断基準として挙げられているため、表現力の乏しい低年令児の場合、片頭痛と診断できないことがあります。一般的には、家族(特に母親)への問診を通して、光過敏や音過敏、体動による頭痛の悪化を確認し、5才前後から片頭痛と診断できるこどもが散見されます。

 小児片頭痛の典型的な臨床像は、「それまで元気に遊んでいたこどもが、急にゴロゴロ(時にしくしく泣いていたり)して遊びたがらない。聞いてみると頭が痛いと言う。顔面蒼白だったり、気分不良を訴えたり、大丈夫かなと思っていると、2時間程して気がつくといつの間にかまた元気に遊んでおり、ケロッとしてもう何ともないと言う。以上のようなエピソードが何度かあって、ひょとしたら仮病じゃないかと疑われていたりする。」というようなものです。さらに頭痛に伴って嘔吐する、テレビの音を小さくしてくれと訴える(音過敏)、部屋の電気を消して欲しいと訴える(光過敏)、振動が頭に響く等の症状が確認できることもあります。

小児片頭痛の診断

 小児片頭痛の診断に際しては、上記の様な発作性頭痛のエピソードを最も重視します。さらに頭痛に伴う悪心嘔吐や音過敏・光過敏・体動による悪化の有無が症状としては重要です。また血縁者(特に母親)の発作性習慣性頭痛の有無(要するに頭痛持ちかどうか)も参考になります。
 一方頭痛の拍動感は、訴えない例やはっきりしない例も多く、余り参考にはなりません。また頭痛の部位も小児では両側や真ん中と表現する場合も多く、片側性頭痛でなくても片頭痛を否定する根拠にはなりません。
 成人の片頭痛と比べた小児片頭痛の最も大きな特徴は、頭痛持続時間の短い例が多いことで、現在の国際頭痛分類では、片頭痛と診断できる頭痛の持続時間は、成人が4時間以上なのに対し、小児では2時間以上からとされています。その他成人の片頭痛と比較して、典型的前兆を伴う片頭痛が少ないこと、脳幹性前兆を伴う片頭痛の比率が高いこと、前駆症状や随伴症状にふらつきやめまい、めまい感を伴う例が多いことをあげる研究者もいます。診断に際しては、脳腫瘍や急性副鼻腔炎など二次性頭痛を否定するための画像診断、さらに場合によってはてんかん性頭痛との鑑別で必要な脳波検査などを適宜組み合わせます。

特殊な小児片頭痛および小児片頭痛に関連した疾患

 特殊な小児片頭痛として、国際頭痛分類にはありませんが、小児の片頭痛様発作に一過性の錯乱状態を伴う錯乱型片頭痛が知られています。発作時には脳波異常を伴い、てんかん性頭痛(単純部分発作・自律神経発作)との鑑別が問題になります。
 また国際頭痛分類では、片頭痛に関連する周期性症候群として、周期性嘔吐症候群、腹部片頭痛、良性発作性めまい、良性発作性斜頚が取り上げられています。これらの疾患は小児期に多く見られ、片頭痛の頭痛以外の表現型、すなわち脳の片頭痛性興奮が頭痛以外の形で表出したような疾患概念と考えられています。