片頭痛の予防治療(こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

片頭痛の予防治療

 片頭痛治療の中心は、頭痛発作が起こったときに、屯用薬を用いて、頭痛を速やかに消退させることです。それに対して片頭痛の予防治療は、一定期間毎日薬(予防薬)を服用することで、片頭痛発作を起こりにくくする治療です。一般的には、屯用薬による治療がうまく行くように、補助するような役割があります。

予防治療の適応

  • 1.片頭痛発作の頻度が多い場合

    発作頻度が毎週1~2回を超えるような場合や、一度発作を起こすと、常に重積状態になるような場合などに予防治療を考慮します。

  • 2.屯用薬を中心とした治療がうまくいかない場合

    有効な屯用薬が見つからない場合や使用禁忌などで屯用薬が使えない場合、片頭痛発作が常に睡眠中から起こって服用タイミングが取りにくい場合、前庭性片頭痛や典型的前兆のみで頭痛を伴わない発作など、通常の頓用薬の効果が期待できない発作などに予防治療を考慮します。

  • 3.特殊なタイプの片頭痛の場合

    脳幹性前兆を伴う片頭痛(以前の脳底型片頭痛)や片麻痺性片頭痛など特殊な非定型片頭痛では予防治療が薬物療法の中心になります。

  • 4.慢性片頭痛や変容性片頭痛・薬物乱用頭痛の場合

予防治療に使われる薬剤

  • 1.カルシウム拮抗剤

    代表薬は塩酸ロメリジンで、副作用が少なく忍容性が高い。その他群発頭痛で使われるベラパミル塩酸塩は片頭痛予防薬としても使われます。

  • 2.抗うつ剤

    代表薬は塩酸アミトリプチリンで、有効性は高いが、副作用もやや多め。主な副作用としては、眠気、口渇、便秘、排尿困難など。その他塩酸ミルナシプラン、デュロキセチン塩酸塩を使用することもあります。

  • 3.抗けいれん剤

    代表薬はバルプロ酸ナトリウムで、副作用としては胃不快感・眠気・肝機能障害などがあげられる。その他、トピラマートも一部で使用されている。

  • 4.β-ブロッカー

    代表薬は塩酸プロプラノロール、酒石酸メトプロロール、アテノロール、塩酸アロチノロールで、気管支喘息には禁忌。主な副作用は徐脈、血圧低下など。

  • 5.その他

    漢方製剤(呉茱萸湯・五苓散など)や小児ではシプロヘプタジンなどが使われることがあります。その他降圧剤のカンデサルタンには片頭痛予防効果が示されています。

予防薬投与の実際

 予防薬は屯用薬と違って、片頭痛発作があってもなくても、一定期間毎日服用を継続しなければなりません。なぜ頭が痛くない時も薬を飲む必要があるのか、治療の目的と方法を充分理解してから投与を開始します。
 一般的に期待される予防治療の効果は、頭痛程度の軽減や頭痛頻度の減少~消失です。効果不十分の場合は予防薬を2剤以上併用することもあります。不具合がなければ予報薬は最低3ヶ月以上継続投与した後、頭痛の状況を見ながら減量・中止を考慮します。原則として継続投与6ヶ月を超えた場合は一旦減量・中止するか、他剤への変更を検討します。最低3ヶ月間投与する理由は、1~2ヶ月で投与を中止すると、短期間で元の状態に戻る例が多いと指摘されているからです。また予防薬投与中に片頭痛発作が起った場合は、あらかじめ決めておいた屯用薬(鎮痛剤やトリプタン製剤など)を用いて対処します。