片頭痛は社会活動や日常生活の妨げになることが多いため、片頭痛による苦痛を緩和することと、社会活動や日常生活が片頭痛の影響を受けないようにサポートすることを目標に治療を行います。
一般的に片頭痛患者の多くは、小児期から40才代位までに初回発作を起こし、その後70才頃まで片頭痛発作を繰り返します。その間、頭痛の程度や頻度は決して一定ではなく、様々に変化して行くことが知られています。多くの患者で小児期の片頭痛は程度が軽かったり、持続が短かったりしますが、思春期以降中高年過ぎるまでの頭痛が最もひどく、中高年を過ぎる頃から以前ほどつらい思いをしなくなるのが一般的な傾向です。また次第に症状が変化して後頭部が慢性的に凝ったような持続的な鈍痛が中心になる場合(変容性片頭痛)もあります。
片頭痛が10年くらいのスパンで変化するのは普通ですし、それ以外にも一過性に頭痛頻度の増減や、持続時間の変化、それまで効いていた薬が効かなくなったり、一週間くらい毎日頭痛が続く重積発作になったり、女性の場合、妊娠で殆ど発作が起こらなくなったり、逆に出産後はひどい発作が起こるようになったりといった変化がしばしば見られます。
頭痛に変化が見られた場合、必要であれば画像診断を含めて原因を検索するとともに、治療内容をこれらの変化に合わせて細かく修正していく必要があります。
片頭痛の発作を何度も経験すると、人それぞれ発作を引き起こす誘発刺激が何となく分かってくることがあります。
例えば寝不足や寝過ぎ、昼寝の後(睡眠パターンの変化)、人込み、雨が降る前やまぶしい光を浴びた時、空腹や特定の食品(アルコール・チョコレートなど)、特定の薬(ニトロ製剤やトコフェロール製剤など)、気温・気圧・天候の変化、香水・タバコなどの匂い、ストレス、緊張が解けてホッとした時、スポーツの後などです。
誘発刺激がはっきりしていて、有効な回避方法がある場合は回避するように心がけます。なお具体的な対応方法については医師にご相談ください。
現在片頭痛治療の中心はお薬による治療です。薬物療法はその目的によって3つに大きく分かれます。
ボツリヌストキシンの頭皮注射、心臓卵円孔のカテーテル閉鎖、抗帯状疱疹ウィルス薬等の有効性が報告されていますが、いずれも現在のところ一般的な治療法とはなっていません。