小児の片頭痛[治療と予後](こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

小児の片頭痛(治療と予後)

 成人と同様に小児の場合も、片頭痛による苦痛を緩和すること、および日常の活動が片頭痛の影響を受けないようにサポートすることを目標に治療を行います。具体的には、頭痛で学校に行けない、早退する、嘔吐する、寝込んで勉強やクラブ活動に支障を来すと言った状態に対し、片頭痛誘発条件の回避と治療薬の投与が行われます。

急性期治療薬(片頭痛が起こったとき頓用する薬)

 小児片頭痛の急性期治療の第一選択薬は鎮痛解熱剤であるアセトアミノフェンとイブプロフェンです。これら2剤はランダム化比較試験で小児片頭痛に対する有効性が認められています。
 トリプタン製剤に関しては、8才以上の小児でスマトリプタン点鼻液の有効性が認められていますが、それ以外の経口トリプタン製剤に関しては、今のところ小児に対する有効性は証明されていません。ただ経口トリプタン製剤が有効な小児例は明らかに経験され、小児での特別な副作用の報告もないため、アセトアミノフェン・イブプロフェンでコントロールできない場合に、使用を考慮します。その場合、年令12才以上・体重40kg以上は成人と同じ量、年令8才以上~12才未満・体重25kg以上~40kg未満は、成人の半量が処方量の目安です。残念ながら8才以上で有効とされたスマトリプタン点鼻液は、製剤の構造上半量使用ができないので、12才以上・体重40kg以上の小児のみで使用可能となります。
 悪心嘔吐には、制吐剤を使用しますが、片頭痛の悪心嘔吐に対し、一般的なドンペリドンやメトクロプラミドの効果は限定的なので、五苓散製剤や抗ヒスタミン系の制吐剤を考慮します。

予防治療薬

 小児の片頭痛に対する予防治療に関しては、今のところ確立された考え方はありませんが、経験的には有効と考えられています。報告例において、年長児ではトリプタノール、年少児ではシプロヘプタジンがよく使用されていますが、日本では副作用の少なさ、忍容性の良さからロメリジンを第一選択薬とする専門家もいます。またバルプロ酸の有効性を示唆する報告も散見されますが、至適投与量・投与期間など今後詰めるべき問題も多く残されています。

小児片頭痛の予後

 これまで片頭痛は体質による頭痛で、生涯にわたって形を変えながら発作性頭痛が続くという考え方が一般的でした。小児の場合、片頭痛症状は徐々に変化して20才前後までに、成人のパターンになるとされています。それに対し2006年10月に発表された、11才~14才の小児片頭痛患者55例を10年間観察したイタリアからの報告では、10年後も変わらず片頭痛だったものが41.8%、一方38.2%では片頭痛が寛解し、20%は変容性片頭痛になっていました。このことは小児片頭痛の4割近くは将来寛解する可能性があるということを示しています。ただし同じ論文の中で、前兆のある片頭痛は寛解しなかったこと、10年後も片頭痛が続くかどうかの最も有力な予測因子は、片頭痛の家族歴であったことも示されています。注目すべき報告といえるでしょう。