「片頭痛」は正式な疾患の名前で、単に頭の片側が痛いという意味ではありません。典型的な片頭痛は「普段は何ともないが、時々頭痛の日が巡ってきて、その時治療がうまくいかないと、動き回るのがつらい、じっとしている方が楽といったタイプの頭痛」です。
近年片頭痛の病態の解明には大きな進歩があり、片頭痛は何らかの条件や刺激(例えば寝不足、人込み、悪天候、日差し、気温の変化、月経など)が引き金になって、三叉神経核をはじめとした脳の様々な部位の興奮や、脳を包む硬膜に分布する三叉神経末端からの神経ペプチドの放出が起こり、放出された神経ペプチドによる硬膜動脈の拡張や硬膜の炎症が、特有の頭痛を引き起こしているということが分かってきました。つまり片頭痛は反応性に起こる機能的な脳の変化を背景として、頭痛などの症状が引き起こされる神経疾患であると考えられるようになってきたのです。
一方誘発刺激を受けると誰でも片頭痛発作を起こす訳ではないことから、片頭痛の人は頭痛を誘発する刺激に対して、脳が非常に反応しやすい体質(脳の過敏性)を元々持っていると考えられるようになってきました。この体質は残念ながら時に(4割~6割)遺伝傾向もあって、親兄弟など血縁者間で片頭痛の人が集まりやすいことがわかっています。最近はこの様な脳の過敏性や、神経疾患としての病態に基づいて片頭痛を治療するお薬が使われるようになって、以前に比べて格段にうまく片頭痛をコントロールできるようになってきました。
片頭痛の診断は詳細な問診が中心になります。症状は年令による変化を中心に個人差や前兆の有無、随伴症状を含め多彩ですが、以下のような比較的特徴的な症状を検討して判断します。
CT・MRで片頭痛を診断することはできませんが、症状として片頭痛が起きる脳動静脈奇形やCADASIL、MELASといった先天性疾患、急性副鼻腔炎・脳腫瘍・くも膜下出血など頭痛と関連する疾患などを否定するために、初めて片頭痛と診断する時や、これまでの頭痛と違う頭痛や頭痛の変化を訴えて受診されている場合を中心に、画像診断では少なくとも何も異常がないことを確認する必要があります。