頭部打撲(こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

こどもが頭を打った時の注意

 こどもは危険を察知する能力が不十分で、体の割に頭が大きく、転んだときに手が出なかったりするので、頭を打ってしまうことがあります。その際、次に挙げる1~7のような症状があれば、すぐに脳神経外科のある医療機関を受診する必要があります。

  • 1. 元気がなく、ぼんやりしていてすぐに眠ってしまう(意識障害がある)。
  • 2. 吐き気や嘔吐が起こる。気分が悪く食事をとろうとしない。
  • 3. たんこぶでは説明のつかない頭痛を訴える。
  • 4. 会話がおかしい(会話の内容が混乱している、健忘がある)。
  • 5. けいれんやひきつけが起こる。
  • 6. 片側の手足の動きが明らかに悪い、しびれ(麻痺)を訴える。
  • 7. はじめ軽度だった上記症状が、次第に悪化する。

 実際受傷直後からこの様な症状が続けば、救急車を呼ぶ人も多く、病院に行くかどうか判断に迷うことは少ないと思われます。

 それに対して問題になるのは、打った後の様子がいつもと変わらない場合です。なぜ特に症状がないのに問題があるのでしょうか。それは受傷後しばらくは症状がないのに、少し時間が経ってから頭痛や、嘔吐、意識障害などが出てきて致命的となる場合があるからです。これは急性硬膜外血腫などで見られる現象で、頭蓋内出血といっても出血源は脳を包む硬膜や骨折部であって、脳自体ではありません。脳自体には損傷がないので、たとえ頭の中で出血していても、血の固まり(血腫)が大きくなって、脳を圧迫するようになるまでは、何も症状が出ないのです。

 症状がない時期にもCTを撮影すれば、鋭敏に出血を検出することができるので、脳神経外科医は受傷直後であれば、積極的にCT撮影を行います。ただ小さなこどもは、じっと出来ないので、鎮静なしでCTを撮ることは極めて困難です。そこで症状のない元気な乳幼児の場合は、まず簡単に撮れる頭の骨の写真を撮ります。これで明らかな骨折を認めれば、万難を排してCT撮影をしなければなりません(通常薬を使って無理矢理眠らせます)。逆に異常がなければ、次に述べる経過観察を行うことになります。

経過観察のポイント

 まず理解しておくべき原則は、このような出血の始まりはあくまで受傷時点と言うことです。後から突然出血が始まるわけではありません。従ってもし出血があって、その勢いが激しければ、受傷後短時間(1~3時間)で症状が出現しますし、逆に受傷後無症状が長く続いているということは、出血していない可能性が高いことを意味します。このことから受傷後最初の1~3時間は特に注意する必要があり、6時間、12時間さらに24時間と時間が経っても元気なら、安心して良いと言うことになります。その際、乳幼児では症状がわかりにくいので、

  • 1. 機嫌がよい。
  • 2. ミルクの飲みや、摂食量に変化がなく、普段通り。
  • 3. 元気に遊んでいる。
  • 4. 周囲に対する、こどもらしい注意や関心が充分ある。

といった状態が続いていれば、問題ないと考えて良いでしょう。逆に、最初に挙げた1~7のような症状が、途中から出てきた場合は、速やかに救急車で、手術の可能な脳神経外科を受診しなければなりません。

 頭を打った後、特に普段と変わりなく、症状のないこどもの大多数は、実際何の問題もありません。従ってむやみに恐れることなく、普段通りの生活をさせてみて、冷静にこどもの状態が普段と違わないか観察することが、結果的にはこどもを守ることになると言えます。