慢性硬膜下血腫(こばやし小児科・脳神経外科クリニック)

脳神経外科パンフ集

慢性硬膜下血腫について

慢性硬膜下血腫とは

 中年以降の特に男性で、頭部を打撲した患者さんの場合、常に考慮しておかなければならない病気に、慢性硬膜下血腫という病気があります。
頭部を打撲して、1~3ヶ月後に半身麻痺や見当識障害などの症状が出現してきて、頭部CTを撮影すると、硬膜下腔に貯留した血腫液と、その血腫によって圧排された脳が見いだされるといった病態です。
 原因ははっきり分かっていませんが、発症には年齢や性別の関与が大きく、若年者より高齢者、女性より男性に好発します。厄介なことに、将来慢性硬膜下血腫を発症するかどうかは、受傷時に頭部に加わった外力の大きさや、受傷直後の頭部CTから予測することは出来ません。軽く頭を打って、すぐに撮影した頭部CTでは何も異常を認めず、症状も見られなかったにもかかわらず、1~2ヶ月後には慢性硬膜下血腫ができて手術を要することがあります。

慢性硬膜下血腫の症状と治療

 症状は年齢によって違いがあり、比較的若年者の場合は、頭痛が前景に立ちますが、中高年では半身麻痺などの症状が主体になる場合が多く、時に一見認知症(痴呆)を思わせるような見当識障害など(ただし本当の認知症と違って急性に発症する)が目立つ場合などもあります。
 慢性硬膜下血腫による麻痺は一般に軽いものが多く、利き手側であれば、箸を使って食事をする際、ぽろぽろこぼすことが目立つようになったり、上手に字が書けなくなったといったような訴えが多く、下肢であればいつも同じ側のスリッパが脱げるとか、ちょっとした段差で、いつも同じ側の足が引っかかるといった程度です。また高齢者で、最近急に行動や言動がおかしくなったといって、家族に連れられて来院し、原因として慢性硬膜下血腫が見つかることもしばしば経験されます。
 治療は、自然治癒が期待できる場合もありますが、脳の変形が強い場合、すでに症状が出ている場合には、手術が必要になります。手術の成績は一般に良好で、通常は術直後から麻痺や見当識障害、頭痛等の症状は消失する場合が殆どです。

慢性硬膜下血腫を念頭に置いた頭部外傷後の注意点

 中年以降の特に男性が頭部を打撲した時、受傷後4週間程してから頭部CTを調べてみると、受傷直後にはなかった、硬膜下液貯留や少量の血腫が認められる場合があります。その時はたとえ症状がなくても、以後頭部CTにて定期的に経過観察を行い、もし症状が出現したり、血腫の進行性増大が見られたならば、早めに手術を行うといった対策が必要になります。また逆に、この時点で硬膜下腔の拡大等の徴候が出ていなければ、その後慢性硬膜下血腫になる可能性は、非常に少ないと判断できるでしょう。いずれにしても、頭を打ってから1~3ヶ月して、上で述べたような症状が出てきた場合は、慢性硬膜下血腫の可能性を疑って、頭部CTを撮影してみる必要があります。