Environmental Toxicology 2011年8月24日
胎内でのペルメトリン曝露は、
マウス胎仔の脳の血管系発達と
成長後の行動に影響を及ぼす

アブストラクト

情報源:Environmental Toxicology, August 24, 2011
Prenatal exposure to permethrin influences vascular development of fetal brain
and adult behavior in mice offspring
Satoshi Imanishi1, Masahiro Okura1, Hiroko Zaha1, Toshifumi Yamamoto2, Hiromi Akanuma1, Reiko Nagano1, Hiroaki Shiraishi1, Hidekazu Fujimaki1, Hideko Sone,*1
曽根秀子(国立環境研究所環境リスク研究センター)
1:Health Risk Research Section, Center for Environmental Risk Research, National Institute for Environmental Studies 16-2, Onogawa, Tsukuba, Ibaraki 305-8506, Japan
2:Laboratory of Molecular Recognition, Graduate School of Nanosciences, Yokohama City University, 22-2 Seto, Kanazawa-ku, Yokohama 236-0027, Japan
Article first published online: 24 AUG 2011
DOI: 10.1002/tox.20758
http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/tox.20758/abstract?globalMessage=0&systemMessage=Wiley+Online+Library+will+be+disrupted+8+Oct+from+10-14+BST+for+monthly+maintenance

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年10月7日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/env_toxicology/110824_permethrin.html


 ピレスロイドは、最も広く使用されている殺虫剤のひとつであり、新生仔ラットの脳に酸化ストレスを引き起こす神経毒性影響を示す。しかし、胎仔の脳の血管系の発達、中枢神経系の発達、及びその後の成獣の行動に及ぼすペルメトリンへの胎仔期曝露の影響については、まだほとんど分かっていない。
 本研究では、ペルメトリンへの胎仔期曝露による胎仔の脳の大脳動脈の発達、新生仔の脳の神経伝達物質、及び成長後の自発運動(locomotor activities)への影響が調査された。
 ペルメトリン(0, 2, 10, 50, and 75 mg/kg)が妊娠日齢10.5日目に妊娠ラットに1回、経口投与された。ペルメトリン処理された胎仔の脳は、短い血管、毛細血管数の増加、ある場合には、ウィリス動脈輪(circle of Willis) 領域にある前交通動脈(anterior communicating arteries)の連携が不十分という血管系形成の改変を示した。
 ペルメトリンへの胎仔曝露は、脳の真ん中にある大脳新皮質(neocortical)及び海馬(hippocampus)の厚さを改変し、出生後7日のマウスのノルエピネフリン (norepinephrine)(訳注1)及びドーパミン(dopamine)(訳注2)のレベルを著しく増加させた。
 自発行動については、観察びん(viewing jar)及びオープンフィールドテスト( open-field test)(訳注3)を用いた起立能力テストは、8週齢及び12週齢のオスのマウスのそれぞれについて、起立能力と自発運動の著しい低下を示した。
 この結果は、ペルメトリンへの胎仔期曝露は、血管系の発達の改変を通じて、脳の不十分な発達をもたらすかもしれないことを示唆している。


訳注1:ノルエピネフリン (norepinephrine)
ノルアドレナリン - Wikipedia
シナプス伝達の間にノルアドレナリン作動性ニューロンから放出される神経伝達物質や、副腎から血液に放出されるホルモンとして機能する。また、ストレス・ホルモンのうちの1つであり、注意と衝動性 (impulsivity) が制御されている生物の脳の部分に影響する。

訳注2:ドーパミン(dopamine)
ドーパミン - Wikipedia
中枢神経系に存在する神経伝達物質で、アドレナリン、ノルアドレナリンの前駆体でもある。運動調節、ホルモン調節、快の感情、意欲、学習などに関わる。セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミンを総称してモノアミン神経伝達物質と呼ぶ。

訳注3:オープンフィールドテスト
Panlab/Open-Field test

■農薬蚊帳関連情報
■ピレスロイド/ペルメトリンの有害性に関する研究情報


化学物質問題市民研究会
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