欧州委員会農業総局  2000年7月13日
活性成分ペルメトリンのレビュー・レポート
2000年7月13日
植物健康に関する常任委員会で不認可を決定


情報源:European Commission
Directorate General for Agriculture
DG VI-B.II-1 6522/VI/99-Final, 13 July 2000
Review report for the active substance permethrin
in support of a decision concerning the non-inclusion of permethrin as active substance in Annex I to Directive 91/414/EEC and the withdrawal of authorisations for plant protection products containing this active substance
http://ec.europa.eu/food/plant/protection/evaluation/existactive/list1-23_en.pdf

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年5月28日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/eu/eu/pesticides/000713_permethrin.html

訳注:本報告書は、2009年3月16日に立ち上げられた欧州連合(EU)の農薬データベース(EU Pesticides database)を検索して得ました。EUではこの報告書が示す通りペルメトリンは水生生物に有害であることが主たる理由で2000年7月に不認可になっています。しかし日本では登録されており、またアフリカなどでマラリヤ対策の蚊帳にペルメトリンを練りこんだ農薬蚊帳(住友化学のオリセット)が使用されています。当研究会は有害な農薬蚊帳をやめて、十分に効果のある普通蚊帳に切り替えかえるべきとする運動を支援しています。


 2000年7月13日に植物健康に関する常任委員会は、ペルメトリンを理事会指令91/414/EEC の Annex I に含めないことに関する決定を支持し、この活性成分を含む植物防疫製品(訳注:農薬のこと)の認可を取り消すことを最終決定した。

1. 再評価プロセスでとられた手順

 このレビュー・レポートは、この物質を理事会指令91/414/EEC の Annex I に含める可能性という観点をもって、植物防疫製品(訳注:農薬)の上市に関する指令 91/414/EEC 8(2)項に規定されている既存の活性成分のレビューのための作業プログラムという脈絡で実施されたペルメトリンの再評価の結果として作成された。

 規則(EC) No 1972/992で最新更新されている理事会指令91/414/EEC 8(2)項に参照されている作業プログラムの第一段階の実施のための詳細規則を規定している欧州委員会規則 (EC) No 451/2000(1) は、再評価を実施するにあたり従わなくてはならない手続きに関する詳細な規則を規定している。ペルメトリンは、この規則でカバーされる既存の90の活性成分の一つである。

 規則(EEC) No 3600/92の4項に従い、1993年7月30日に ACI International、1993年7月26日に Elf Atochem、1993年9月27日に FMC Europe NV、1993年7月23日に Helm AG、1993年7月21日に B.V. Luxan、1993年7月23日に Marubeni UK plc、1993年7月14日に Mitchell Cotts Chemicals Ltd.、1993年7月26日に United Phosphorus、993年7月27日に Zeneca Agrochemicalsga が 活性成分ペルメトリンを理事会指令の Annex I に含めることを確実にしたいという希望を欧州委員会に届け出た。

 規則(EEC) No 3600/92の4項に従い、欧州委員会は、規則(EC) No 2230/95(4)で最新更新されている規則(EEC) No 933/94(3)によってアイルランドを届け出者によって提出された書類一式に基づきペルメトリンの評価を実施するための加盟国報告者(rapporteur)として任命した。同じ規則の中で、欧州委員会はさらに、規則(EEC) No 3600/92 6(2) で要求される書類一式の加盟国報告者への提出及び、さらなる技術的及び科学的情報に関する他の組織への提出について、届出者の提出期限を1995年4月30日と決めた。

 ゼネカ・アグロケミカルズ(Zeneca Agrochemicals)社だけが実質的に完全な書類一式を加盟国報告者に提出した。他の届け出2社のSanachem International 及び United Phosphorous はペルメトリンに関連するわずかなデータだけを提出した。第三者組織によって規則 (EEC) No 3600/92の期限内にさらなる情報が提出された。

 規則(EEC) No 3600/92 7(1)項にしたがい、アイルランドは1998年6月10日に欧州委員会に、指令 Annex I にペルメトリンを含める可能性に関する勧告を要求された通り含めて、調査報告書(以後、モノグラフ)を提出した。

 規則(EEC) No 3600/92 7(3)項にしたがい、欧州委員会はそのモノグラフを主データ提出者であるゼネカ・アグロケミカルズとともに、全ての加盟国に対し1998年12月15日に協議用として送付した。

 規則(EEC) No 3600/92 5(6)項にしたがい、主データ提出者ゼネカ・アグロケミカルズは1998年11月26日に加盟国報告者及び欧州委員会に対してペルメトリンの支持をEUピアレビュー・プログラムから公式に撤回することを通知した。Sanachem International(当初は ACI Internationaを通じて届け出た)はダウ・アグロサイエンス社(Dow AgroSciences Limited)によって買収されていたが、ダウ社は加盟国報告者にペルメトリンを指令 Annex I に含めることを支持するどのようなリソースをも約束しないと通告した。また、第三の届出者であるUnited Phophorousは加盟国報告者にもはやペルメトリンを含めることを支持しないと通告した。

 規則(EEC) No 3600/92 7(3)項にしたがい、書類一式とモノグラフは、加盟15か国からの専門家が参加する植物健康に関する常任委員会に最終検証のために提出された。この最終検証は1999年3月から9月まで実施され、2000年7月13日の常任委員会の会合で最終決定された。

2. このレビュー・レポートの目的

 背景文書及び付属書を含んでこのレビュー・レポートは、指令 91/414/EEC Annex I にペルメトリンを含めないことに関する指令2000/817/ECの支持の下に、作成され、最終決定された

 規則 (EEC) No 3600/92の 7(6) に従い、加盟国はこのレビュー・レポートを関心ある組織による協議(訳注:パブリックコメントのこと)のために、あるいは彼等の特定の要求に応じて、利用可能にするであろう。さらに、欧州委員会は、このレビュー・レポート(背景文書は含まずに)のコピーをこの規則の4(1) にしたがい、全ての操業者にこの活性成分について知らせるために送付する。

3. 指令 91/414/EECでの全体的な結論

 評価からの全体的な結論は、指令 91/414/EEC の Annex II 及び Annex III に規定される要求、特に環境的運命と水生生態系におけるこの物質の生態毒性に関する要求を満たすためには不十分であるということである。

 入手可能な情報及び提案された使用条件に基づき、ペルメトリンに暴露する水生生物へのリスクは除外することができないということが結論付けられた。提出された情報に基づいて実施された評価からの結論では、当該活性成分を含む植物防疫製品(農薬)で一般的に理事会指令91/414/EEC の 5 (1) (a) 及び (b)で規定される要求を満たすことを期待されるもの存在しない。

 効率的な代替を見つけるための研究がなされているが、適切なリスク削減措置が取られるなら林業におけるペルメトリンの限定された使用は許されるであろうことを示す技術的証拠が提供されている。
 水生生物への潜在的なリスクを最小とするために、緩衝帯が散布地帯と地表水との間に設けられるべきことが加盟国報告者によって提案されている。

 全ての届出者がEUピアレビュー・プログラムにおけるペルメトリンの支持を公式に撤回したという事実を鑑みて、補足データを作成する必要はなく、この活性成分を指令91/414 の Annex I に含めることは考えられない。



化学物質問題市民研究会
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