EHN 2011年8月10日
殺虫剤混合成分の毒性は
各成分の合計であることを細胞研究が発見


情報源:Environmental Health News, August 10, 2011
Toxicity of insecticide mixture is sum of its parts, a cell study finds
Synopsis by Tamara Tal

http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/2011/07/pyrethroids-increased-toxicity/

オリジナル論文:
Cao, Z, TJ Shafer, KM Crofton, C Gennings and TF Murray. 2011. Additivity of pyrethroid actions on sodium influx in cerebrocortical neurons in primary culture Environmental Health Perspectives http://dx.doi.org/10.1289/ehp.1003394.
http://ehp03.niehs.nih.gov/article/info%3Adoi%2F10.1289%2Fehp.1003394

訳:安間 武(化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2011年8月12日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/
ehn_110810_toxicity_of_insecticide_mixture.html


 以前の動物研究を確認するげっ歯類の細胞研究によれば、広く使用されている一般的な神経細胞を標的とするピレスロイド系殺虫剤は、各化学物質成分自身の毒性より大きな毒性を持つ。

 食用穀物に使用されている11種の同じような作用を持つ殺虫剤の混合物は、個々の化学物質の個別影響の合計と同等の影響をマウスの脳細胞に一斉に及ぼすことができ、同時に、現実世界の曝露を模したレベルでテストされた11種のピレスロイド系殺虫剤が細胞中の電子チャネルを過剰に刺激し、最終的にはそれらの害虫を殺すことを大学と政府の研究者等のチームが報告している。

 この研究は、普通の殺虫剤が同じ標的細胞に集中して高い毒性を生成することを初めて示したという点で重要である。科学者らはこの種の増大した毒性を”加算的”と呼ぶが、それは混合物が個別の毒性影響の合計に等しくなるからである。

 ピレスロイドは、3,500種以上の登録製品中に見られる合成殺虫剤であり、その多くは家庭で、ペットに、そして農業用に使用されている。これらの殺虫剤は、除虫菊に見られる天然の毒素の効果を模して設計されている。

 ピレスロイド殺虫剤は、昆虫害虫と人に同じように作用して有毒である。それらは、ニューロンとして知られるある種の脳細胞中にあり、電位開口型ナトリウムチャネル(voltage-gated sodium channels)(訳注1)と呼ばれる活性な電子チャンネルを標的にする。これらの化学物質は本質的に細胞中に移動する電子信号を増幅する。これらの化学物質の過剰な活性化はニューロンの機能を変化させ、最終的には標的とする害虫を全身麻痺させ、死に至らしめる。

 米クレイトン大学と米環境保護庁の研究者等が、マウスの脳細胞を収集し、それらにピレスロイドを単独又は混合で曝露させた。彼等は、多種のピレスロイドの複合影響がそれらの個別の影響の合計に等しいかどうかをテストすることを望んだ。彼等は人間ではどのようなことが起きるのかを理解するために、マウスの神経細胞を使用した。

 研究者等は、細胞チャネルに影響を及ぼす個々の化学物質の能力に相違があることを発見した。7種類が強い影響を引き起こし、2種類のピレスロイドが中程度の反応を示し、2種類は何も影響を示さなかった。あるひとつの既知の阻害物質が活性ピレスロイドの反応を阻止した。同時に、これらは活性化学物質が同じ標的を持っていることを確認した。

 研究者等が、11種全ての成分に同時にニューロンを曝露させたときに、混合物の複合影響は、個々のピレスロイドの影響の合計に等しかった。

 この研究は、ピレスロイド混合物は脳細胞中にある電子チャネルに集中することによって加算的毒性を生成するという広くいきわたっている仮説を確認した。

 テストされた次のピレスロイド系成分は、主に食用穀物の害虫管理(control pests)に使用されている。デルタメトリン(deltamethrin)、β-シフルトリン(β-cyfluthrin)、シペルメトリン(cypermethrin)、ペルメトリン(permethrin)、ビフェントリン (bifenthrin)、エスフェンバレレート(esfenvalerate)、λ-シハロトリン(λ-cyhalothrin)、テフルトリン(tefluthrin)、フェンプロパトリン(fenpropathrin)、レスメトリン(resmethrin)、S-ビオアレトリン(S-bioallethrin)


訳注1:電位開口型ナトリウムチャネル


化学物質問題市民研究会
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