EHP 2006年9月号 サイエンス・セレクション
家庭での殺虫剤ピレスロイドの使用は
子どもへの食物以外からの暴露源


情報源:Environmental Health Perspectives Volume 114, Number 9, September 2006
Science Selections
Pyrethroids in the Home
Nondietary Pesticide Exposure in Children
http://www.ehponline.org/docs/2006/114-9/ss.html#pyre

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2006年9月6日
このページへのリンク
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehp/06_08_ehp_Pyrethroids.html


 農薬ピレスロイドは通常の農業でしばしば使用されるので、人々は日常的に食物中の残留農薬に暴露している。有機リン系農薬への同様な暴露は、23州における年齢が3〜11歳までの子どもの農薬暴露調査である”子ども農薬暴露調査”の報告書にすでに記述されている。しかし有機リン農薬とは異なり、ピレスロイドは住宅での使用も許可されている。この調査からの最新の発見によれば、ピレスロイドの住宅での使用は、食物経路よりもっと顕著なこの種の農薬暴露源であるように見える。[EHP 114:1419?1423; Lu et al.]

 一般的によく使用されていた有機リン系農薬の住宅での使用が廃止されて、ピレスロイドの家庭での使用が増加している。成分と用量によっては、ピレスロイドは神経系発達への影響、ホルモンかく乱、がんの誘発、及び免疫系の低下をもたらすかもしれない。

 2003年の夏に採取されたサンプルを使用して、エモリー大学と米疾病管理予防センター(CDC)の研究者らは、子ども達それぞれについて連続15日間、尿中のピレスロイド代謝レベルを測定した。1〜3日と9〜15日の二つの期間、子ども達は従来の農法で栽培した穀物を摂取した。4〜8日の間は、果物、野菜、パスタ、シリアル(穀物食品)のような植物性食物を有機農法によるものに替えた。

 15日間全体の尿サンプル採取期間に、最も支配的な代謝物質は、ペルメトリン、シペルメトリン、及びデルタメトリンの非特異性代謝物である PBA であった。PBA は、サンプルの82%で検出され、最も高い中央値 0.45μg/L を示した。ペルメトリン、シペルメトリン、及びシフルトリンの代謝物である trans-DCCA 及び cis-DCCA もまた全てのサンプルのそれぞれ71%及び35%に共通に検出された。cis-DCCA の濃度は定量化するには低すぎ、trans-DCCA の中央値濃度は 0.38 μg/L であった。シフルトリン由来の代謝物 FPBA とデルタメトリン由来の DBCA はわずか2%のサンプルから検出されただけであった。

 各食物摂取期間の代謝物を比較したが研究者らは明白な傾向は見いださなかった。しかし、農薬ピレスロイドを使用していると報告している家族の7人の子ども達は、PBAと trans-DCCA のレベルが他の子ども達より有意に高く、FPBA 含有サンプルの大部分及び DBCA 含有サンプルの全てを占めた。興味あることには、年長の子ども達は年少の子ども達より高い暴露を受けていた。一般的には年少の子ども達の方が口にものをもっていったり、床で遊んだりするので暴露が高いが、この調査では年長の子ども達はピレスロイドが使われているかもしれない運動施設で時間を過ごしていた。

 研究者らは、有機リン系農薬の場合には有効であった有機食物摂取の方法だけでは、子ども達のピレスロイド暴露を劇的に減らすことにはなりそうもないと結論付けた。ピレスロイドの住宅での使用制限と子ども達の散布領域への接触を防ぐことが、これらの農薬暴露を減らす最良の方法のように見える。

ジュリア R. バーネット(Julia R. Barrett)


訳注
■ピレスロイドとは(渡部和男 氏のホームページより)
http://www2.sala.or.jp/~bandaikw/archiv/pesticide/insecticide/pyrethroid/pyrthidx.htm
 ピレスロイドを含む農薬は安全であると、一般に宣伝されている。例えば、「除虫菊(シロバナムシヨケギク)の花に含まれる殺虫成分、ピレトリン類及びこれと化学構造のよく似たピレトリン類似の合成化合物の総称で、極めて微量で昆虫に対して速効性である一方、温血動物の体内では速やかに解毒されるため安全性が高い」といった説明がされている。
  しかし、ピレスロイドは除虫菊から抽出されるピレトリンに似ているが、より有毒で、長い分解時間を持つように設計されている。  ピレトリンを含むシャンプー吸入による突然の気管支痙攣による死亡例報告のほか、発達中の神経系(胎児、幼児)、神経系(成人)、免疫系、内分泌系への影響などが問題になる。


化学物質問題市民研究会
トップページに戻る