米化学会2006年8月16日ウェブ掲載論文アブストラクト紹介
多成分同時分析手法を用いた
第1回全国託児所環境健康調査からの農薬測定

ニコル S. ツルブ(米EPA国立暴露研究試験所)ら
Web Release Date: September 6, 2006 )

情報源:Environ. Sci. Technol., ASAP Article 10.1021/es061021h S0013-936X(06)01021-2
Web Release Date: September 6, 2006
Pesticide Measurements from the First National Environmental Health Survey of Child Care Centers Using a Multi-Residue GC/MS Analysis Method
http://pubs.acs.org/cgi-bin/abstract.cgi/esthag/asap/abs/es061021h.html

Nicolle S. Tulve,* Paul A. Jones, Marcia G. Nishioka, Roy C. Fortmann, Carry W. Croghan, Joey Y. Zhou, Alexa Fraser, Carol Cave, and Warren Friedman#

National Exposure Research Laboratory, U.S. Environmental Protection Agency, MD-E20504, Research Triangle Park, North Carolina 27709, Battelle Memorial Institute, 505 King Avenue, Columbus, Ohio 43201, U.S. Army Center for Health Promotion and Preventive Medicine, Environmental Medicine Program, Attn: MCHB-TS-EMP, Bldg E-1570 Stark Road, Aberdeen Proving Grounds, Maryland 20101-5403, Westat, Inc., 1650 Research Boulevard, Rockville, Maryland 20850, U.S. Consumer Product Safety Commission, 4330 East West Highway, Bethesda, Maryland 20814, Office of Healthy Homes and Lead Hazard Control, U.S. Department of Housing and Urban Development, 451 7th Street, SW, Washington, DC 20410

訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2006年9月8日
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http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/acs/060908_acs_pesticide_child_care_centers.html


概要
 米住宅都市開発省は米消費者製品安全委員会及び米環境保護庁(EPA)と協力して、任意に選択した全国の認可を受けた託児所において鉛、アレルギー物質、及び農薬を測定することによって、6歳以下の幼児の環境を特性化した。

 Multi-stage sampling with clustering 手法を用いて、全米の一次サンプル30単位の中から168の託児所を選択した。託児所は電話インタビューにより調査参加の承諾を得た。農薬、鉛、及びアレルギー物質が現場の作業者により各託児所の複数の場所で採取された。現場の試料採取は2001年2月から10月まで実施された。屋内表面(床、テーブル、椅子)からからのふき取り試料と土壌試料が採取され、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS) を用いた多成分同時分析手法により分析された。

 質問票への回答に基づけば、ピレスロイドが最も一般的に託児所で散布されている農薬であった。託児所の63%が農薬散布をしていると報告したが、それらの各託児所で使用されている農薬の数は1〜10までの範囲であり、年間の使用回数は1〜107の範囲であった。

 多数の有機リン系及びピレスロイド系農薬が屋内の床ふき取り試料の中から検出された。クロルピリホス(0.004-28 ng/cm2)、ダイアジノン(0.002-18 ng/cm2)、cis-ペルメトリン(0.004-3 ng/cm2)、及び trans-ペルメトリン(0.004-7 ng/cm2) が67%以上の託児所で検出された。(訳注

 いくつかの農薬では床と他の表面の残留農薬の間に関連性が存在したが(p範囲:0.0001〜0.002)、床と土壌、及び土壌と他の表面との間の関連性は低かった。

 地域的分析では、4つの国勢調査区域において農薬負荷の平均レベルには差異がなかった(0.08 < p < 0.88)。
 調査の結果は、託児所で農薬に暴露する可能性があることを示している。


訳注:日本での状況

  • クロルピリホス:有機リン系殺虫剤
    建築基準法で「居室を有する建築物には、クロ ルピリホスを添加した建材の使用を禁止」
    シロアリ防除用は業界が自主的に使用中止
    農業・樹木用:使われている

  • ダイアジノン:有機リン系殺虫剤
    農業用、衛生害虫用として使われている
    EPAは室内(2002年)及び非農耕地用(2004年)で使用禁止
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_00/00_12/00_12_05_epa.html
    http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_04/04_09/04_09_30_EPA_Press.html
  • ペルメトリン:ピレスロイド系殺虫剤
    農業用、衛生害虫用として使われている。環境ホルモンの疑いあり。EPAは、発がん性の恐れあり。


化学物質問題市民研究会
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