住宅消毒の危険−都市部の女性の殺虫剤への曝露
情報源:Environmental Health Perspectives
Volume 110, Number 5, May 2002
The Hazards of Cleaning House
Urban Women's Exposure to Pesticides
By Luz Claudio
http://ehpnet1.niehs.nih.gov/docs/2002/110-5/ss.html
掲載日:2002年5月5日



 都市部の残留農薬の問題を論ずることは、意外に思うかも知れないが、農業地帯での農薬に対する問題点がより明確になるかもしれないという意味で、重要なことである。
 子どもの環境健康コロンビア・センターのロビン・ワイアット等の報告書(EHP110:507-514)によれば、殺虫剤の使用及びその残留物がニューヨーク市のマイノリティ居住地域で広く見られる。

 コロンビア・グループによれば、殺虫剤の使用とそれによる空中の残留物がニューヨーク市のマイノリティ居住地域に住む妊娠中の女性の家にも広く蔓延していることがわかったた。彼らはニューヨーク市のハーレム、ワシントン・ハイツ、及びサウス・ブロンクスに住む316人のアフリカ系アメリカ人とドミニカ人の女性に関する調査結果を報告している。
 彼女たちに、妊娠期間中に過ごした家屋の荒廃状態、見かけた害虫、害虫駆除の方法についての質問をした。72人の女性には妊娠3カ月目の連続2日間、大気中の21種類の殺虫剤及びその分解物質を検出できるモニターを身につけてもらった。

 その結果、殺虫剤の使用と殺虫剤への曝露は調査対象者の間で広く見られた。質問書に答えた314人の妊婦のうち、85%が妊娠期間中に家で害虫駆除が行われたと答えた。3分の1以上の妊婦は殺虫剤を害虫駆除業者に散布してもらったと答えた。その他、よく使われる駆除方法は粘着捕虫、ゲル、毒入り餌等であった。缶入スプレーは害虫駆除を行った人々の31%が使用していた。9%の人々は禁止されている殺虫剤、テンポ(ピレスロイド)とトレスパシトス(アルディカーブ)を使用していた。これらの殺虫剤は害虫駆除の需要がある多くの地域の街頭で不法に販売されていた。
 これらの地域においては害虫の侵入の多くは家屋が荒廃していることに起因するようである。害虫駆除は家屋の荒廃の程度に応じて行われており、この調査が行われた地域に広まる共通の問題である。

 大気分析モニタのテストを行った72人の女性すべてのサンプルから殺虫剤が現出された。4種類の殺虫剤すなわち、有機リン農薬クロルピリホス、同ダイアジン、カルバミン酸プロポクサル、及び殺菌剤オルトフェニルフェノール(OPP)がすべてのサンプルから検出された。他の4種類の殺虫剤、ピレスロイド系トランスペルメトリン、ピペロニル・ブトキシド(ピレトリンへの曝露指標剤)及び有機塩素系DDTは低濃度で検出された。

 吸入された殺虫剤に比例して他の媒体、例えば皮膚接触や食物、等を通じて取り込まれる殺虫剤の量が加算される。
 この調査により、いくつかの殺虫剤の混合物が都市部マイノリティ女性が吸入する空気中から検出され得ることがわかった。混合殺虫剤の毒性については、ほとんど分かっていないので、このことは重要である。

 この調査は、より規模の大きなプロジェクトの一部であり、そのプロジェクトは彼女たちの子どもたちが成長した時に殺虫剤への曝露の影響が子どもたちの学習能力等に与える影響を評価しようというものである。
 動物実験から得られた多くの研究によれば、殺虫剤は脳の機能と構造に対し明かな影響を与えている。
 妊娠中の女性を対象に殺虫剤への曝露を評価し、その後、彼女らの子どもたちをフォローして調査するというこのプロジェクトから、殺虫剤が子ども達に与える影響に関する重要な情報が得られるであろう。

(訳: 安間 武)


化学物質問題市民研究会
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