Rock Listner's Guide To Jazz Music


関連アルバム

ビル・ブラッフォード関連は活動内容を反映してジャズ・ドラムの項目に配置しています。


McDonald And Giles

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
関連度:★★★☆
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1970/May-July

[1] Suite In C
[2] Flight Of The Ibis
[3] Is She Waiting?
[4] Tommorrow's People-Children
                                    Of Today
[5] Birdman
Ian McDonald
 (g, p, org, sax, fl, clarinet,
  zither vo, sundries)
Peter Giles (b)
MIchael Giles (ds, vo)

Steve Winwood
  (org, pinao solo [1])
Mitchael Blakesey (tb [4])
Moke Gray
 (horn and string arrange
 [1] [5])
キング・クリムゾンを脱退したイアン・マクドナルドとマイケル・ジャイルズにピーター・ジャイルズを加えた3人による唯一のアルバム。鉄壁のリズム・セクションをバックに従えて、フルート、サックス、アコースティック・ギター、ピアノまでをこなすイアン・マクドナルドのマルチ・プレイヤーぶりが際立つ。クリムゾンとの最大の違いは曲調で、ここで聴かれるある種牧歌的なムードは、狂気感漂うカオスを求める人には優しすぎると受け止められる可能性があるものの、その演奏はスリリングそのもの。サウンド面ではメロトロンではなく本物のストリングスを使っているところも特徴。[3]は"Cadence And Cascade"の元メロディとクレジットされているのは「In The Wake Of The Poseidon」のこの曲のクレジットにマクドナルドの名前がないことに対するささやかな抵抗か。それにしても、ここでもマイケル・ジャイルズのドラムは素晴らしい、いや、凄まじい。アルバムじたいの完成度が極めて高いのは、演奏家としてだけでなく音楽家としてのマクドナルドの才能によるものと言えるだろう。このアルバムには「In The
Wake Of Poseidon」で失われた部分が確かにある。「In The Court Of The Crimson King」と合わせて聴くと、どの部分をフリップが担っていてどの部分をマクドナルドが担っていたのかがよくわかる。(2006年7月22日)

Dedicated To You, But You Weren't Listening
                                      / The Keith Tippett Group

:★★★★★
演奏:★★★★★
関連度:★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1971/unknown

[1] This Is What Happen
[2] Thoughts To Geiff
[3] Green And Orange Night Park
[4] Gridal Suite
[5] Five After Dawn
[6] Dedicated To You,
    But You Weren't Listening
[7] Black Horse
Elton Dean (ato/saxelo)
Mark Charig (cornet)
Nick Evans (tb)
Gary Boyle (g)
Keith Tippett (p, elp)
Roy Babbington (b)
Neville Whitehead (b)
Robert Wyatt (ds)
Bryan Spring (ds)
Phil Howard (ds)
Tony Uta (conga, cow bell)
キング・クリムゾンのアルバム「In The Wake Of The Poseidon」「Lizard」に参加しているキース・ティペット自身のグループによる2ndアルバム。メンバーのニック・エヴァンスも「Lizard」に参加しているし、マーク・チャリグはそれに加えて「Islands」と「Red」にも参加している。ブリティッシュ・フリー・ジャズ系と言われているこのグループ、[1]が始まると、それこそホンダのクルマのCMに使われてもおかしくないんじゃないかと思えるようなスタイリッシュなジャズ・ロックが聴こえてきて、「ふ〜ん、こんな音楽なんだ」と予想を裏切られる。マーク・チャリグのシャープなソロをたっぷりフィーチャーし、ティペットのピアノ・ソロは前衛度もなくオーソドックス。しかし[2]以降でこのグループの本性が出てきてフリーキーな演奏が続く。その[2]で、ティペットは"Cat Food"のようなちょっとセシル・テイラーっぽいパーカッシヴかつアブストラクトなピアノを聴かせ、ルバート(テンポがはっきりしていない)での導入部から、アップテンポなフォー・ビートへとなだれ込む曲の展開はなかなかカッコイイ。[3]以降もフリーっぽい演奏が中心でアブストラクトなソロがフィーチャーされている。黒っぽさはゼロだし、ここにメンバーの2名が参加しているソフト・マシーンよりもずっと聴きやすく、演奏には熱がこもっている。[4]などは晩年のコルトレーンのようなサウンドに聴こえなくもない。あと出番は少ないけれどギターがなかなかワイルドでこれがいい。この種の音楽は保守的なジャズ・ファンには見向きもされないだろうし、ロック・ファンにとってはジャズ色が強すぎるため、広く支持されたとは言えないけれど、メンバーの実力は確かでサウンドのまとまりも良く、質の高いジャズ・ロックが堪能できる。ロックもジャズも楽しめる人には是非一度トライしてもらいたいアルバム。ロジャー・ディーンのジャケットも秀逸。(2006年8月9日)

Live In Boston / U.K.

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
関連度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1978/9/11

[1] Alaska
[2] Time To Kill
[3] The Only Thing She Needs
[4] Carrying No Cross
[5] Thirty Years
[6] Presto Vivance
   /In The Dead Of Night
[7] Caesar's Palace Blues
John Wetton (vo, b)
Alan Holdsworth (g)
Eddie Jobson (violin, key)
Bill Bruford (ds)
英国最後のプログレッシヴ・ロック・グループとして伝説化されているこのグループに僕はあまりシンパシーを感じていない。ファースト・アルバムはなんといっても贔屓にしているビル・ブラッフォードがいるし、ジョン・ウェットンの声も、エディ・ジョブソンのキーボードも、アラン・ホールズワースのギターもそれぞれに魅力を感じることができるにもかかわらず、ピンと来ない。プログレ風の展開を持ちながら、ジョブソンのサウンドによる叙情性に頼った「曲全体を聴かせる」コンセプトが、演奏をこじんまりとしたものにさせているように感じさせるからだと思っている。むしろ、セカンド・アルバムの「Danger Money」の方がある種突き抜けた力強さがあっていい。・・・といったところが僕のU.K.観だった。そして突如リリースされたオリジナル・メンバーによるこのライヴ・アルバム。これがイイ。予想外にイイ。まず、録音状態がこの時代の発掘モノとしてはイイ。好みもあるかもしれないけれど、会場(拍手の感じから狭そう)の反響音がなくマイクのすぐ近くで音を拾っている感じのダイレクトな録音によって演奏が実に生々しい。おまけに各楽器のバランスが良く4人の音が確実に耳に入ってくる(ウェットンのベースもブンブン聴こえる)。スタジオ盤を凌駕する迫力ある音だけでなく演奏もライヴらしい熱さ(特にホールズワースのギターは縦横無尽)があって、これがU.K.の実力だったのかと思い知らされる。U.K.のベストは間違いなくコレ。(2008年9月22日)

Live At Jazz Cafe / ProjeKct One

曲:★
演奏:★★★★☆
関連度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1997/12/1-4

[1] 4 i 1
[2] 4 ii 1
[3] 1 ii 2
[4] 4 ii 4
[5] 2 ii 3
[6] 3 i 2
[7] 3 ii 2
[8] 2 ii 4
[9] 4 i 3
Robert Fripp (g)
Trey Gunn (warr guitar)
Tonny Levin (stick, b, synth)
Bill Bruford (ds)
CDショップで普通に買えたProjeKct One唯一のアルバム(現在は廃盤)。97年12月1日〜4日まで、ProjeKct Oneはロンドンのジャズ・カフェで毎晩2ステージをこなした。曲名は前から順に、何日目、何ステージ目、何曲目を意味している(実は間違っていることが全曲公開された後に判明)。ほとんどリハーサルもやらずに臨んだとされている通り極めて自由度の高い、そして完全に即興で演奏されていたことがこのプロジェクトの売り。通常の曲の枠組みなど眼中にない自由な演奏を楽しむという意味では高得点を与えられるものの、自由度が高く、4人で演奏するとなると曲の中である種規則的な決まりごとを作ってそこにアドリブが乗ってくるというパターンになり、その結果、色彩感はモノトーン、解りやすいメロディや曲の展開といったものが一切なく、かなり硬派な演奏になる。サウンドは結構アグレッシヴで、ブラッフォードが珍しくバス・ドラムの目立つロック色が強いフィーリングで叩いていることや、ポップなテイストを持つエイドリアン・ブリューがいないことがこのサウンドに至った要因となっている。緊張感はかなりのもので、このままクリムゾンにこのフィーリングが受け継がれることを期待したんだけれど、結果はご存知の通りで、このアルバムを含めてアコースティック・ドラムを志向していくブラッフォードとフリップの考え方の違いから分裂してしまった。同時期に進行していた他のProjeKctシリーズは、マステロットの機械的な電子ドラムを採用したもので、リズムの柔軟性に乏しいのに対して、こちらはフリー・ジャズの手法をクリムゾン流に料理したと言って良い内容で。今は、DGM Live! で4日間すべて(<DGM Live!> Jazz Cafe, London, England)が公開されているので全貌を知りたい人は是非トライを。(2007年5月5日)

A Scarcity Of Miracles / Jakszyk, Fripp and Collins

曲:★★★
演奏:★★★☆
関連度:★★
評価:★★★
Released in 2011

[1] A Sacarcity Of Miracles
[2] The Price We Play
[3] Secrets
[4] This House
[5] The Other Man
[6] The Light Of Day

DVD sound format:
MLP Lossless
 96KHz/24bit 5.1ch Surround
MLP Lossless
 96KHz/24bit 2ch
DTS
 96KHz/24bit 5.1ch Surround
LPCM
 96KHz/24bit 2ch
Jakko M Jakszyk (g, vo, key)
Robert Fripp
          (g, soundscapes)
Mel Collins(as, ss, fl)
Tony Levin (b, stick)
Gavin Harrison (ds)
フリップ抜きのトリビュート・バンド、21st Century Schizoid Bandでギターとヴォーカルを担っていたジャッコ・ジャクジクと、かつての盟友であるメル・コリンズとの連名で、King Crimson Projectというサブタイトルを冠した、フリップ久々のグループ名義によるスタジオ録音。キング・クリムゾンとしての活動が音楽的に煮詰まっているために、こういう人選で別の路線をやってみようと思ったのは自然なことだったのかもしれない。透き通るようなクリアなサウンドと、非常に落ち着いた曲で占められており、激しさやスリルを求める向きには合わない作風。また、ジャッコのヴォーカルは穏やかでぼんやりした歌い方に終始しているため、ソフトで穏やかな、ともすれば環境音楽的なものにすら聴こえる。しかし、そこはフリップが作る音楽。暗いムード、サウンドスケープやギターのフレーズは紛れもないフリップの個性で貫かれており、そこにコリンズのクールなサックス(主にソプラノ)が重なる。以前のProjeKctシリーズや、ガン、マステロットがいたころのクリムゾンにあった静かなパートでの即興的な演奏がムードとしては近い。トニー・レヴィンの安定してハイレベルなベース&スティックさばき(?)もクリムゾン的なサウンドを連想させる。静かでアダルトなサウンドでありながらにBGMにはまったく向いていないところもフリップらしい。個人的には、表面的に穏やかでありながらリラックスには向いていない、真剣に耳を傾けると聴きどころがあるんだけれど聴き流すと退屈なこの音楽は、今後もあまり聴こうと思わないような気がする。尚、DVD-Audio盤は音質も、巧みにリアチャンネルに音を割り振ったサラウンドの作りこみも素晴らしく、アンビエントなサウンドをより深く堪能できるのでリスニング環境がある人は是非聴いていただきたい。他に、[5]を除く全曲の別ミックス(特に印象が変わるほどじゃない)、プロモーション・ビデオ(!)や[3][4]の素材となるフリップ&ジャッコのデュオ・パフォーマンスなどのオマケも収録。(2011年6月26日)