Rock Listner's Guide To Jazz Music


Studio Album


In The Court Of The Crimson King

曲:★★★★
演奏:★★★★☆
入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1969/July-Aug
Released in 1969

[1] 21st Century Schizoid Man
[2] I Talk To The Wind
[3] Epitaph
[4] Moonchild
[5] The Court Of
                 The Crimson King

<40th Anniversary Bonus Track>
[6] Monnchild (2009 full version)
[7] I Talk To The Wind
   (duo version)
[8] I Talk To The Wind (alt mix)
[9] Epitaph (backing track)
[10] Wind Session
[11] 21st Century Schizoid Man
     (inst)
[12] I Talk To The Wind
                (studio run through)
[13] Epitaph (alt version)
[14] Monnchild (take 1)
[15] The Court Of
        The Crimson King (take 3)
Greg Lake (vo, b)
Robert Fripp (g)
Ian McDonald
(reeds, woodwind, vibes,
        key, mellotron, vo)
MIchael Giles (ds, vo)
Peter Sinfield
       (words, illumination)

Produced by
             KING CRIMSON
インパクトのあるジャケット(アナログ盤は迫力あったなあ)の印象からキング・クリムゾンの代表作といえばこのファースト・アルバム。しかし、たったの5曲にもかかわらず通して聴くとこのグループの実態が実に掴みづらい。卓越した演奏力、構成力と狂気を感じさせる曲調がなんといっても強烈な[1]で衝撃を与えると、[2]でいきなりシンプルで牧歌的なムードになる。次の[3]ではメロトロンが下世話なまでに叙情的に響き渡って盛り立てる。個々の曲の完成度は高いのにまとまりがない。幻想的に始まる[4]では途中から無調音楽的な即興で、ますますわけがわからない。最後にまた雄大にメロトロンが鳴り響きドラマチックに終わるものの、その前の[4]後半の即興パート(というよりただの音)が延々と続くところで僕は集中力が切れてしまう。従ってアルバム1枚としての流れや完成度という意味で決して質が高いとは思わない。とはいえ、グレッグ・レイクの艶のあるヴォーカル、正確で手数が多く骨太な推進力を持つマイケル・ジャイルズのドラムが出色で、あらゆる要素を詰め込んだ[1]だけで名盤の域にあることは事実。もちろん、69年という時代にこの前衛性と独自性は驚くべきこと。長い歴史を誇るクリムゾンの中では実は異色の1枚。イアン・マクドナルドの才能が炸裂している点でも貴重。(2006年7月15日)

<40th Anniversary Edtion>
かねてからアナウンスされていた DVD-Audio盤がついにリリースされた。今や完全に廃れたDVD-Audio規格で何を今更という感もなきにしもあらず。しかしながら、結論から言うとパッケージ全体として手抜きがないのはさすが。CD盤はオリジナル・マルチトラック・マスターからの2009年リミックス。オリジナル・マスターテープが発見されたときにリリースされたファイナル・バージョンよりも更に音質向上。変に現代風な音作りになっていないのも好感が持てる仕上がり。まだまだ音質向上の余地があったのだと感心するけれど、感動的に音楽の聴こえ方が変わるほどではないということも一応言っておきたい。
そしてやはりメインは DVD-Audio盤。通常のDVDプレイヤーでも再生可能なDTS 5.1chおよび24bit/48KHz LPCM、DVD-Audioでのみ再生できる音源として24bit/48KHz 5.1ch、24bit/96KHz 2chロスレスを収録。いずれもCDより遥かにスペックが高いだけに音質は当然史上最高レベル。5.1chリミックスは、オリジナル・マルチトラック・マスターからミックスしただけあって音のひとつひとつがクリア、また2chミックスダウン時に埋もれた(あるいは省かれた)と思われる音が聴こえてくる。楽器の分離が優れているのはもちろんのこと、音場感を出すことに執心したと思われる音作りが秀逸で、このアルバムのサウンドが持つ独特の響きが見事にリニューアルされており、その仕上がりは実に丁寧。普通のDVDプレイヤーで再生できるDTS 5.1chでもその面白みはしっかり楽しめるけれど、音の鮮明度はDVD-Audioの方がやはり上。DVD-Audioというと何やらハードルが高そうに感じられるけれど、そう高価でないプレーヤーもあるので、興味がある人、ある程度の音響環境を持っている人にはお勧めしたい。
2ch音源は2009年リマスターと2004年リマスターの収録で前者の方が音の分離が少し良い一方でリミックスではないので音の感触が違うわけではない(もちろんCDよりはベター)。
貴重なところでは69年7月5日ハイドパーク公演の映像が収録されていて、少年の面影を残すグレッグ・レイクの動く姿が見れるのには感激するものの、お世辞にも良いとは言えない映像と音が巧みに編集された作りで鑑賞向けではない。
ボーナストラックはそれほど興味深いものはなくレア感も薄いのでディープなマニア向け。[6]は即興部分がより長くなっているだけ。[7]はオリジナル・テイクとまったく違う演奏なのでそれなりに貴重。[8] はフェードアウト前にフリップのソロが聴けるくらいでそれほど変わりなし。[9]は単なるカラオケ版でフェードアウトしないところがちょっと興味をそそる程度。[10]は"Schizoid Man"の冒頭の「ブオ〜ン」のところの元になったセッション。[11]は<Club 12> Live In Hyde Parkのボーナス・トラックのようなカラオケ・バージョンではなく、ギター、ベース、ドラムだけのトリオ・バージョンで完成度を求めて聴くものではないものの、音を彩っていた部分を排除したことでより却って3人の演奏の凄味がわかる。[12]はギター、ベース、ドラム、フルートのみでシンプルに演奏された素のテイク。曲そのものが持つ骨格がわかって意外と面白い。[13]は別テイクでヴォーカルがないこと以外はさほど変化はないと思わせておいてエンディング間際にフリップのギターが入り、フェードアウトなしで終わらせて少しだけオッと思わせる。[14]はギターのサウンド・エフェクトを削除、後付けのインプロ部分もなく幻想的なオリジナルよりもシンプルな曲として聴ける。[15]はギター、ベース、ドラムだけのインスト・テイク(フルートのソロのみそのまま)。
(2009年12月27日)

In The Wake Of The Poseidon

曲:★★★★★
演奏:★★★★
入門度:★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1970/first half
Released in 1970

[1] Peace - A Begining
[2] Picture Of A City
[3] Cadence And Cascade
[4] In The Wake Of Poseidon
[5] Peace - A Theme
[6] The Devil's Triangle
[7] Peace - An End

<40th Anniversary Bonus Track>
[8] Groon (2010 Mix)
[9] Peace - An End(alternate mix)
[10] Cadence & Cascade
     (Greg Lake guide vocal)
DVD bonus track
[1] Cat Food (single version)
[2] Groon single b side
[3] Cadence & Cascade
   (Unedited master)
[4] Cadence & Cascade
   (Greg Lake guide vocal)
[5] Cadence & Cascade
   (Instrumental)
[6] Groon (take 1)
[7] Groon (take 5)
[8] Groon (take 15)
[9] The Devil's Triangle (Rehersal)
[10] Peace - A End(alternate mix)
Greg Lake (vo)
Robert Fripp
(g, mellotron & devices)
Peter Giles (b)
Michael Giles (ds, vo)
Keith Tippet (p)
Mel Collins (sax, fl)
Gordon Haskell (vo [3])
Peter Sinfield (words)

Produced By
   Robert Fripp
   and Peter Shinfield
衝撃のパフォーマンスを見せた第一期キング・クリムゾンは69年12月にあっけなく解体。しかし、契約の都合があったのか新メンバーを加入させ、さらには去ったはずのグレッグ・レイクやマイケル・ジャイルズまでを呼び戻して制作されたのがこのセカンド・アルバム。「In The Court Of The Crimson King」があまりにも有名であるがために影が薄いこのアルバムではあるものの音楽的な路線としてはまったく同じなので、1stアルバムのサウンドが好きな人なら聴いて損はない。ただし制作の背景が影響しているのか、メンバー・チェンジの影響なのか、音楽の完成度やまとまりという点でやや劣るのは確か。また、[1]は中間部が"21st Century Schizoid Man"に似すぎているところももう少しなんとかならなかったんだろうかと思ってしまう。[5]ではキース・ティペットのセシル・テイラー風ピアノが前作と違う雰囲気を出していて、現代にも通じる加工食品を皮肉った歌詞の内容と合わせて面白い。ちなみに[4]はグレッグ・レイクの歌い出しの部分から、全日空のCMで使われていたことがあった(まだ僕が「宮殿」しか聴いていなかった時期)。中国への旅行を促すイメージ的なもので、エキゾチックな映像美と絶妙なマッチングを見せていた音楽に画面には「Music by King Crimson」の文字。当時、すぐにCDショップに走ったことは言うまでもない。尚、同じ時期の「McDonald And Giles」も合わせて聴くと、このアルバムがフリップ主導で作られたこと(言い換えると失われたイアン・マクドナルドの才能)がよくわかる。(2006年7月22日)

<40th Anniversary Edtion>
通常の DVDプレイヤーでも再生可能な DTS 5.1chと24bit/48KHz LPCM、DVD-Audioでのみ再生できる音源として 24bit/48KHz 5.1chと24bit/96KHz 2chロスレスを収録。他のアルバムと同じ仕様。

「In The Court Of The Crimson King」とほぼ同じ構成のパッケージ。スティーヴン・ウィルソンのニュー・ミックスは、いかにも、という感じのわざとらしさがなく、しかしより繊細な音まで聴けるという仕上がりであり、これさえあれば良いんだけれど、オリジナル・ミックス(30周年記念のリマスター)も念押しとして収録されている。それにしても5.1chミックスはここでも素晴らしい。音の粒立ちはもちろん、広がり感が必要なところと収束させるところの使い分けが見事、[1]はまさにその素晴らしさが体験できる格好のサンプル。全体にサラウンドへの音の散らし方も絶妙。2ch Mixも、同時収録されているオリジナル・ミックスより音がワンランク上。

DVD bonus trackについて。
[1] は尻切れトンボのシングル・バージョン、
[3] は開始前のスタジオ・チャットから始まり、フェードアウトせずに最後まで収録されている。[4] はグレッグ・レイクのガイド・ヴォーカルによるもので、レイクが好きな人には嬉しいが、個人的にはハスケルの頼りないヴォーカルの方が好ましい。またフルートが入っておらず、フリップのアコギも微妙に違っているように聴こえる。このバージョンはDGMからフリー・ダウンロード可能。[5]はアコギではなくエレキ・ギターで演奏されるヴォーカル抜きのインスト。[6]-[8]はまだまだ緩く時間を持て余している感じもあるTake 1から徐々に完成度を高めていく過程を楽しむ企画。Take 5でもだいぶ演奏はできてきているがTake 15は当然より本テイクに近い。いずれにしてもあの凄い本テイクはここまで録音を重ねてようやく完成したものだとよくわかる。[9]はリハーサル・テイクで演奏は違っているとはいえ、音の加工が少なく恣意的に盛り上げていないことを除けば本テイクとムードはそれほど変わらない。ただし、後半は独自の展開を見せている。[10]は音質を向上させたスティーヴン・ウィルソンとフリップによる別ミックス。曲も後半が長く、エフェクトを少なめにしてより生々しい仕上がりになっていてこの曲の素の良さを伝えている。曲が始まる前、終わったとの音も収録。途中にピアノが明確に聞こえてくるところも大きく違う。

「Sailors' Tale Box」について。
40周年記念版CDのボーナストラックにあった[8]がカットされていて、こちらはブルーレイに収録されている。
(2018年9月11日)

Lizard

曲:★★★
演奏:★★★
入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1970/Aug - Sep
Released in 1970

[1] Curkus
[2] Indoor Games
[3] Happy Family
[4] Lady Of The Dancing Water
[5] Lizard
 a) Prince Rupert Awakes
 b) Bolero - The Peacock's Tale
 c) The Battle Of Glass Tears
 d) Big Top

<40th Anniversary Bonus Track>
[6] Lady Of The Dancing Water
                               (alt take)
[7] Bolero (from Frame by Frame)
[8] Circus (studio run through
   with guide vocal from original
   session)
Gordon Haskell (vo, b)
Robert Fripp
(g, mellotron, key
                 & devices)
Andy McCulloch (ds)
Peter Sinfield
          (words & pictures)

Robin Miller
       (oboe, cor anglais)
Mark Charig (cornet)
Nick Evans (tb)
Keith Tippet (p, elp)
Mel Collins (sax, fl)
John Anderson (vo on
Prince Rupert Awakes)

Produced By
   Robert Fripp
   and Peter Shinfield
クリムゾン史上、最も軽視されていると思われるアルバム。前作と比較するとすべてにおいてメンバーの技量落ちは否めない。そのメンバーもなんとかかき集めてとりあえず形にしましたという印象を受けるので評価が低いのも仕方のないところ。その分を、フリー・ジャズ系のキース・ティペット・グループの力を借りてスタジオ録音ならではの作り込みによってこの作品のレベルを押し上げることに成功している。そんな制作背景から、もっともライヴがイメージできない、そして実際にライヴをやっていない時期の作品ではある。[1]-[4]は従来の路線を狙っているものの完成度はイマイチ。アナログでいうB面すべてを使った[5]がハイライトで、なのにここでジョン・アンダーソンを起用していしまうところにフリップのハスケルに対する信頼度の低さが見えてしまう。英国ロック・グループらしいサウンドとフリー・ジャズの導入に依然として魅力はあるものの、良い成果に結びつかなかった過渡期の作品というのは言い過ぎだろうか。(2006年7月19日)

<40th Anniversary Edtion>
3枚目の40周年記念版に選ばれたのは意外にも「Lizard」。CDは2009 New Stereo Mixで収録。現代的な厚みのある音作り。レベル感としては抑えてあるけれどディープ・パープルのスタジオ盤リミックスと同じような変化で個人的には少し違和感があってあまり好みではない(その後、聴いているうちにこちらが良いと思えるようになった)。

DVD は「In The Court Of The Crimson King」と同じく、通常のDVDプレイヤーでも再生可能な DTS 5.1chと24bit/48KHz LPCM、DVD-Audio でないと再生できない 24bit/48KHz 5.1chと24bit/96KHz 2chロスレスという構成。

5.1ch化は非常に丁寧かつ緻密に行われており、オリジナル・アルバムでは切り捨てられたと思われるあらゆる音をマルチトラック・マスターテープから拾い上げることで色彩感が劇的に向上。フリップのリズム・ギターやアコギにおける仕事ぶり、メロトロンやキーボード系の多彩な音色、管楽器系の生々しさ、細かく配されたの効果音を明確に感じ取ることができて、「Lizard にはこんなにいろんな音が入っていたんだ」と唸ってしまう。音の分離が良いだけでなく、サラウンドならではの音場感の作り込みにも力が入っていて2chとは異次元の音世界が展開される。いや、「Lizard」に込められていた音は2chでは表現しきれないほど多種多彩だっということを思い知らされる、と言った方が正しいのかもしれない。音質ももちろん史上最高。今回のDVD-Audio化の立役者=ミックス&リマスターを担当したエンジニア、スティーヴン・ウィルソンは「Lizard」愛好家で、自分なりにマルチ・チャンネル化のビジョンを持っていたとのことで、演奏だけではなくエンジニアリングにおいても、情熱と愛情は音楽に魂を吹き込むことができるんだということを教えてくれる。このようにDVD-Audioというフォーマットをフルに生かしたパッケージは Lizard の格を確実に上げたと言って良い。まさに音楽の聴こえ方が変わる進化。尚、2chはCDと同じニュー・ミックス(音質
は当然こちらが上)とオリジナル・ミックスの両方を収録。

ボーナストラックは控えめ。[6]はアコースティック・ギターなしで更にシンプルかつリラックスしたムードが漂う好仕上がり。[7]はトニー・レヴィンのベースに差し変わっている「Frame By Frame」ボックスのバージョン。[8]は以前 DGM Live! で公開されていた70年9月11日の音源と同じ。

「Sailors' Tale Box」について。
40周年記念版CDのボーナストラックにあった  [8]がカットされていて、こちらはブルーレイに収録されている。
(2018年9月11日)

Islands

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★☆
評価:★★★★★
[Recording Date]
1971/Jul - Oct
Released in 1971

[1] Formentera Lady
[2] Sailor's Tale
[3] The Letters
[4] Ladies Of The Road
[5] Prelude: Song Of The Gulls
[6] Islands

<40th Anniversary Bonus Track>
[7] Islands (studio run through
             with oboe prominent)
[8] Formentera Lady (take 2)
[9] Sailor's Tale
   (alternate mix/edit)
[10] A Peacemaking Stint Unrolls
[11] The Letters
           (Rehearsal/outtake)
[12] Ladies Of The Road (Robert
   Fripp & David Singleton remix)
DVD Bonus Tracks
Route to Islands
[1] Picture Of A City
   (Islands lineup Rehearsal)
[2] Sailor's Tale
   (Islands lineup Rehearsal)
[3] Islands (fragment: Robert Fripp
   reference casette-mellotron
   on vibes setting)
[4] Formentera Lady (rough mix)
[5] Sailor's Tale (rough mix)
[6] Drop In (early reheasal
                   by Islands line up)
[7] The Letters(Live at Plymouth)
[8] Sailor's Tale
   (Live at Zoom Club)
Additional tracks: assorted ladies
[9] Ladies Of The Road (Robert
   Fripp & David Singleton remix)
[10] Ladies Of The Road(Tale 5)
[11] Formentera Lady (Take 1)
[12] Formentera Lady (Take 3)
[13] Formentera Lady (Take 4)
Boz Burrell (vo, b)
Robert Fripp
  (g, mellotron, Peter's
   Pedal Harmonium,
   sundry implements)
Mel Collins (sax, fl, vo)
Ian Wallace (ds, vo)
Peter Sinfield
 (words, sound, visions)

Keith Tippet (p)
Paulina Lucus (ss)
Robin Miller (oboe)
Mark Charig (cornet)
Harry Miller
       (string bass)

Produced by
             KING CRIMSON
冒頭から弦楽器の生音で静かに始まる。このラインナップのライヴ音源も現在では数多く出回っており、その本性を知ることができる今となっては実はこのスタジオ盤こそが異色であることがわかる。ここでは素のバンドに加え、ピアノ、管楽器、弦楽器を加えることで創作された唯一無二の世界が展開されている。[1]のエキゾチックなムードも、後半の静謐なムードもメンバー以外の演奏に負うところが大きい。元来ワイルドな演奏を持ち味とするこのメンバーが、サポート・メンバーの力を借りて美しさまで醸し出すことに成功したところがこのアルバムの聴きどころ。もちろん良く聴けば本質的な部分はライヴと共通していて大きく乖離しているということではないこともわかる。[1]は生のストリングスでエキゾチックに流れるようなムードが続くと、いつの間にかそれが[2]のテーマを奏で始め、細かいシンバル・ワークでジャズの香りを漂わせた変拍子リズムが始まりオリエンタルなムードへと展開。この流れは完璧。オーボエと生の小編成オーケストラのみによる美しい[4]は次曲につながるプレリュード、そして、その[5]の静謐な美しさは特筆モノで終盤のコルネットのオブリガートがまた非常に効果的で静かに気持ちを昂ぶらせる。尚、[5]終了後のリハーサル音は、最初にCD化された際にカットされていた部分で、24ビット・リマスターの紙ジャケ・シリーズで復刻。それまでは「Frame By Frame: The Essential King Crimson」でしか聴くことができないものだった。(2006年7月15日)

<40th Anniversary Edtion>
Bonus Trackのボリュームが膨大。
CD収録分について(これらはDVDにも収録)。
[7] アイランズのストリングスとオーボエ部のみの演奏。軽くドラムが添えられる。[8]フリップのカウントから始まる別テイク。緩いと言えば緩いが、もともと掴みどころのない曲なので浮遊感を増している。収録はベースが入る手前まで。[9]中間の静寂部から。メロトロンがより強力に鳴り、フリップのカッティンはかなり長く持続する別ミックス。エンディングはピタっと止めてここではフリップのギターを外している。[10]このラインナップ版"Groon"のような曲かと思っていると、なんと次期ラインナップの曲である"Larks' Tongues In Aspic Part I"のフレーズが飛び出し、その後はサックスも加わってくるという、未発表曲。これはリハーサル・レベルでも楽しめる。[11]はリハーサルテイク。演奏は中間部だけ。DVD版だと音が驚くほど鮮明で新鮮に聴こえる。[12]はかなり恣意的に低音の厚みを加え、装飾音が明瞭さを増した別ミックス。コーラスも強調されている。別ミックスとするならこれくらいやってもいいかもしれない。DVDではCDのボーナス・トラックがAlternate Albumのメニューに入っているのに、この曲だけはラフ・ミックスに挿し代わっていてこちらは微妙に演奏が違っていて完成度が低い。CDと同じものはDVDではassorted ladiesのメニューに入っている。

DVD Bonus Tracks について。
[1]はアイランズ期ラインナップのリハーサルで完奏。演奏そのものは緩い。[2]は中間のスローな部分のみで、メル・コリンズがフルートでアドリブを取っている。[3]は説明どおり、フリップがメロトロンにヴィブラフォンをサンプリングした音で機材調整として軽く弾いてみたという感じの31秒。[4]は本テイクとまったく違っていて、ピアノが目立つより穏やかな仕上がり。後半のストリングスがなく淡々とコリンズのフルートが続く。そしてそのままアルバムと同じように [5] へのつながる。フリップのギター抜きの演奏で代わりにピアノが控えめに鳴っている程度なので、リズムの動きがわかり易く、穏やかな仕上がりになっている。[6]はかなり荒っぽいリハーサル・テイク。[7]は71年5月11日 Plymouth のライヴでコレクターズ・クラブ14でリリース済み。[8]は71年4月12日の音源でこちらもコレクターズ・クラブ(ダウンロード版)でリリース済み。ただし、この[7][8]はデイヴィッド・シングルトンによるリマスターが施されており、音は良い。[9]はCD収録のものと同じ。[10]はリハーサルに近いような緩くもラフな仕上がり。完成度が低くても本テイクとまったく違うので新鮮な気持ちで聴ける。[11]-[13]は、こちらもベースが入るところの手前までの部分。まだまだ手探り感がかなり強いし、ヴォーカルも不安定。こういうステップを経て本テイクに至ったという舞台裏を見る楽しみがある。

2ch音源はCD、DVD-Audioともに2010年ステレオ・ミックスで、あえてわざとらしい現代的な音作りはしていないところには好感が持てる。今まで目立たなかったフリップのギターの音が耳に入ってきたり、反対にあそこで出ていた音が引っ込められていたりするけれど、曲の印象を変えるほどではなく、総合的にはクリアさが増した好仕上がり。それでも気に入らない人に備えて、オリジナルミックスも収録するという念の入れようなのでオリジナル志向の方も安心されたし。

5.1chは特別強調してはいないものの、しっかりと効果が出ているというバランスで音の回し方も絶妙。音そのもののリアリティが高いこともあって従来のCDとは次元の違う音世界を堪能できる。オリジナルのムードを壊さずにサラウンドの良さを引き出す40周年記念シリーズの良さが堪能できる。

「Sailors' Tale Box」について。
40周年記念版CDのボーナストラックにあった[7]-[12]がカットされていて、こちらはブルーレイに収録されている。
(2011年11月6日)

Larks' Tongues In Aspic

曲:★★★★☆
演奏:★★★★
入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1973/Jan - Feb
Released in 1973

[1] Larks' Tongues In Aspic Part I
[2] Book Of Saturday
[3] Exiles
[4] Easy Money
[5] The Talking Drum
[6] Larks' Tongues In Aspic Part II

<40th Anniversary Bonus Track>
[7] Larks' Tongues In Aspic Part I
   (Alt mix)
[8] Book Of Saturday (Alt take)
[9] The Talking Drum (Alt mix)
DVD Bonus Tracks
[1] Larks' Tongues In Aspic Part I
   (Alt mix)
[2] Book Of Saturday (Alt take)
[3] Exiles (Alt take)
[4] Easy Money (Jamie Muir solo)
[5] The Talking Drum (Alt mix)
[6] Larks' Tongues In Aspic Part II
   (Alt mix)
[7] Easy Money (Alt take)
John Wetton (vo, b)
Robert Fripp
   (g, mellotron, devices)
David Cross
   (violin, ,viola, mellotron)
Bill Bruford (ds)
Jamie Muir (per, allsorts)

Produced by
             KING CRIMSON
第三期キング・クリムゾンのデビュー作。ドライでハードなギター・サウンドに、クリス・スクワイアに匹敵する極太のベース・サウンド、複雑なリズムを創出するドラムとパーカッションというのがこの時期の特徴で、実際に聴く前の僕の予備知識もそんな感じだった。当時、ハード・ロック小僧だった僕は、かなり期待して聴いた結果・・・「そんなにハードじゃないし、静かな曲が多くてあまり面白くない」と思ってしまった。静かな曲が多いと言っても、それ以前のクリムゾンにあった叙情性もない。その落胆は、クリムゾンを聴くことをやめてしまい他のグループに目が行くようになってしまったほど。ここにある曲は後にライヴでも多く演奏されているけれどそれと聴き比べると迫力がないし、更にジェイミー・ミューア在籍時のライヴ音源と比較すると、少なくともこの時点ではスタジオで緊張感を作ることができなかったのかと思ってしまう。(2006年7月22日)

<40th Anniversary Edtion>
ボーナストラックは、Alt mixとなっているものはミックスだけでなく、編集も変えているが詰めが甘い印象。Alt takeはこちらもやや詰めが甘く、特にヴォーカルがまだ模索中という印象(あるいは仮入れのガイド・ヴォーカルか)。DVDの[6]でイントロ前でフリップがリフできっかけを作っているところは、スタジオで聴いている気分になれて嬉しい(ただし、クロスのパートはカットされている)。DVD-Audioの仕様はこれまでと同で、通常のDVDプレイヤーでも再生可能な DTS 5.1chと24bit/48KHz LPCM、DVD-Audioでないと再生できない24bit/48KHz 5.1chよ24bit/96KHz 2chロスレスという構成。
実はこのラインナップのアルバム全体に言えることだが、従来のステレオ再生においてサウンドの作りとして立体感があまりないと思ってきた。それがこのアルバムのDVD-Audioを聴くと、根本的に考えが変わってしまう。SEや広がりを感を必要とするときの音場の作り方はサラウンドでないと表現できないと断言できるほど異次元。大雑把に言うと、演奏の基本となる音はフロントに任せ、埋もれがちなバッキングやオブリガード、静かなピアノ(が入っていたことに今更気づいた)やアコギの音をサラウンドに持ってくることで、演奏のすべてが容易に見通せるようになっている。特にミューアの活躍を余すところなく聴かせているところは特筆モノ(更に"Easy Moneyのミューア・パートだけのトラックがあるので仕事ぶりがよくわかる)。ブラッフォード、ウェットン在籍時のクリムゾンと言えば、自由度と爆発力がウリのライヴバンドという評価が一般的で、異論を唱える人は恐らくいないはず。その観点でこのアルバムは物足りないと僕は25年くらいずっと思ってきた。でもこのDVD-Audioを聴いて完全に考えが変わってしまった。それはライヴバンドとしての魅力が再現できているという意味ではない。こちらの勝手な思いと正反対にスタジオ・アルバムとして大変緻密にできていることが嫌でもわかるのである(そう思った後で解説を読むとプロデューサーのスティーヴン・ウィルソンは、他の40th Anniversaryではオリジナルの忠実性を基本にしていたが、このアルバムでは気迫を注入したと語っている)。このページの評価の★は、あくまでも音楽の内容を評価して付けている。だからDVD-Audioで聴いたからと言って変えたりはしていない。サラウンドはあくまでも演出のひとつと思っていたから変わることがなかった。しかし、このアルバムのDVD-Audioは詰め込まれたサウンドをすべて放出しており、音楽の本質まであぶりだしている。もちろん、ステレオ音源をどう聴いていたかは人それぞれなので、すべてのリスナーに当てはまると言うつもりはないけれど、僕にとってはオーディオが音楽の聴こえ方まで変えてしまう稀な例になった。よって評価は、CDのときの★★☆から変更。尚、CD盤でも採用されているNew Mixは現代的にクリアで厚みのあるサウンドになり、音質向上が目覚しい。また、コレクターズ・クラブで音源は公開されているビートクラブの映像が見れるのは感涙モノで、ブラッフォードがミューアの型破りなパフォーマンスに影響を受けて後に引き継いだことがよくわかるし、即興集団のありのままの姿を堪能できる。それにしてもこんな演奏をテレビで放送してた72年というのはなんといい時代だったんだろう。(2012年11月4日)

<Complete Studio Recordings Box Set>
そして結局、15枚組のボックスセットも購入してしまった(ライヴ音源については、Collector's Clubの項目に記載)。Disc 10がこのボックス最大の目玉。曲名は "Keep That One, Nick" で、CD収録時間ギリギリの80分、レコーディング・セッションの断片がたっぷりと収録されていて、セッションの会話にところどころ出てくる「ニック(録音管理係)、今のは保存しておいてくれ」という言葉がそのままタイトルになっている。没テイクの寄せ集めには違いないとはいえ、実験的に演奏しているところまでCD収録時間一杯余すところなく収録されており、即興性がウリであるはずのこのグループにおいて、このアルバムがさまざまな演奏を積み重ねてできあがったことがよくわかる。本採用テイクよりハードでラフに演奏されているところを含め、グループの素の姿を思う存分堪能できるマニアには嬉しい蔵出し音源集。ボックスセット1万円前後のプライスを適正と思えるかどうかの判断は、このディスクに価値を見出せるかどうかに尽きると思う。 Disc 15は、基本的に音楽を聴くためのディスクをブルーレイでパッケージングしているところが目新しい。DTS-HD Master Surroundでの収録は、DVD-Audioのロスレスと音質レベルの違いは感じない。共に可逆圧縮であるため音質差がないのは理論的には当然といえば当然。これは事実上消滅したと言われるDVD-Audio再生機器を持っていないリスナーへの配慮なのかもしれない。あとこのDisc 15には、UK盤、US盤それぞれのレコード音源を起こしたものまで収録している。このボックスセットは 「Lark's Tongues In Aspic Complete Recordings」というタイトルが付いているが、ジェイミー・ミューア在籍時音源のコンプリート版と呼ぶ方がむしろ適切な、第3期クリムゾン初期ラインアップの集大成と言えるだろう。(2012年12月30日)

Starless And Bible Black

曲:★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1973/10/23 [3]
1973/11/15 [6]
1973/11/23 [4] [5] [7] [8]
1974/Jan [1] [2] [4]
Released in 1974

[1] The Great Deciever
[2] Lament
[3] We'll Let You Know
[4] The Night Watch
[5] Trio
[6] The Mincer
[7] Starless And Bible Black
[8] Fracture

<40th Anniversary Bonus Track>
[9] The Law Of Maximum
                      Distress: Part 1
[10] Improv: The Mincer
[11] The Law Of Maximum
                      Distress: Part 2

[12] Dr. Diamond
[13] Guts On My Side

<DVD bonus track>
Live At Volkshaus, Zurich
(73/11/15)
[1] Lament
[2] The Night Watch
[3] Fracture
[4] The Law Of Maximum
                      Distress: Part 1
[5] Improv: The Mincer
[6] The Law Of Maximum
                      Distress: Part 2

Additional Tracks
[1] Easy Money(SW Remix 5.1ch)
[2] We'll Let You Know(Unedited)
[3] Dr. Diamond
[4] Guts On My Side
[5] The Night Watch
   (7 inch Single Edit)
[6] The Night Watch
   (7 inch Single Edit-Mono)
[7] Radio Spot (30 Seconds)
[8] Radio Spot (60 Seconds)
Video Contents
[1] Easy Money
[2] Flagged Dusty Wall Carpet
John Wetton (vo, b)
Robert Fripp
   (g, mellotron, devices)
David Cross
   (violin, mellotron, key)
Bill Bruford (ds)

Produced by
             KING CRIMSON
「Larks' Tongues In Aspic」に物足りなさを感じたにもかかわらず、懲りずにしばらく間をおいて聴いたのがこのアルバム(学生時代の話です)。さほど期待していなかったこともあってか、[1]からの異様なテンションに、ただただ圧倒されてしまったことを思い出す。その緊張感は最後まで持続されていて「世の中にこんなに凄い演奏があったのか」と思わせるのに十分なものだった。フリップのギターはよりヘヴィに、そして神経質な歪みを伴い、クロスのバイオリンが緊張感を増長し、ブラッフォードは鋭い変拍子を次々に繰り出し、ウェットンは図太いベースでサウンドに厚みを加える。この第3期スタジオ盤三部作の中では最も緊張感に溢れた演奏が聴けるのが本作。いや、これほど緊張感に支配された音楽はそうはない。それもそのはず、[3][5]-[8]は実はライヴ。前作でのスタジオ録音でポテンシャルが発揮できていないとフリップ自身が感じていた可能性もあり、ライヴで十分に完成度の高い演奏をしていたからこそ、このような手法を取ったのではないかと想像する。聴き易さは皆無ながら緩みのない緊張感溢れる演奏を求める人には、このランナップの中では断然このアルバムがお勧めできる。尚、ライヴ曲のオリジナル音源は以下のアルバムで聴くことができる。
[3]は <DGM Live!> Apollo, Glasgow, Scotlandなど(73年10月23日)
[4]のイントロ、[5][7][8] は「The Nightwatch」
(2006年7月23日)

<40th Anniversary Edtion>
DVD-Audioの仕様はこれまでと同じ。5.1chミックスはサラウンド・チャンネルに音を多めにこぼすバランス。ドラムとベースはフロントに置き、効果音的な使い方をされているもの、たとえばフリップのオーバー・ダビングしたギター、クロスのヴァイオリン、ブラッフォードのパーカッションが主にサラウンドに振られており、フリップはこの振り分け方に対して「前線部隊」「後方部隊」という呼び方をしている。このアルバムは個人的にはあまり5.1ch化に向いていないと思っていたんだけれど、これまでサラウンド化されてきたアルバムよりもリア・チャンネルへの振り分けが恣意的に思えるのは、もともとライヴ音源が多くてマスターテープのトラック数が少なく、そういう手法しか取れなかったからのように思える。とはいえ、音の分離を楽しむというサラウンドの目的は十分に達成していて、リア・チャンネルへの依存が高すぎると思うかどうかは聴く人次第かもしれない。

ビデオは例によってレア。73年6月25日、ニューヨーク、セントラルパークでのライヴで、音源としても DGM Live! で公開されていないもの。カメラ・アングルと音は時代相応に悪いけれど、画質は時代相応よりもいい。"Easy Money"とそれに続インプロの2曲のみとはいえ、動画そのものが貴重で思わず見入ってしまう。ボーナストラックが、基本的には既存のライヴ音源ばかりなのは物足りないが、基本的にはライヴであるこのアルバムの生い立ちを考えると仕方がないかもしれない。

[9]-[10]はLive At Volksaus, Zurich, Novemebr 15th 1973の音源。<Club 41> Live in Zurichで公開済みのものを部分収録。この日の音源は音質良好で、しかし"The Mincer"の部分だけが音が劣化した別マスターを使用、つまり欠けた部分をブートレグで補う処理がされていた。ここであえてその部分を収録している理由は正直なところよくわからない。うまくつなげてある編集の妙を聴いてくれということか。いずれにしても新鮮味がない。

[12]はRichard Club, Atlanta, Georgia, June,23rd,1973の音源で DGM Live! で公開済みのもの。ただし、デイヴィッド・シングルトンとフリップによるレストレーションのおかげか、この日の音源全体に出ていた「ブーン」という低周波ノイズは軽減されている。[13]は唯一の未公開音源、そして未公開曲。74年3月19日イタリアでの録音。ウェットンのヴォーカル入りで、クリムゾンにしては異例にポップでわかりやすいことに驚く。これならU.K.のアルバムに入っていてもおかしくないと思わせる。ただ、それほどで良い曲というわけでもない。また音質もオーディエンス録音ブートレグにしては良好というレベル。

DVDに収録されているAdditional Tracksについて。
"Easy Money"はライヴ・アルバム「The Nightwatch」収録ソースをスティーヴン・ウィルソンが5.1ch化したもの。"We'll Let You Know"の未編集バージョンはボックスセット「The GreatDeciever」や<DGM Live!> Apollo, Glasgow, Scotlandで既発。"The Night Watch"のシングル・エディットは冒頭を荒っぽくカットしているだけ。ラジオでかけてもらうにはこんなものまで用意しなくてはならなかったということか。アルバム宣伝用、ラジオ・スポッ
トは、むしろこんな音楽をラジオで宣伝していたことじたいが今となっては笑える。

<STARLESS>

第三期クリムゾンのアーカイヴ・ボックス最終章。CD 27枚、DVD-Audio 2枚、Bru-ray Audio 2枚という構成は過去最高のボリューム。しかしながらこの箱シリーズ、音源の最終的な仕様(仕上げ)が微妙に違っているところが一貫性がないというか、サービス精神が旺盛というのか、なんとも微妙なところではある。このボックスのセールスポイントと思われる点は以下の通り。
[A] ブルーレイは音質良好ライヴ音源のべ7公演をハイレゾ化、うち、3公演はコンセルトヘボウの音源違い(旧ミックス、新ミックス、ラジオ放送)で、74年4月29日のピッツバーグは3曲のみの収録。映像集はフランス・テレビのものは「Red」、セントラルパークのものは「Larks'Tongues In Aspic」の40周年版に収録済み。
[B] ブルーレイ収録音源が一部4.0chされている。
[B] 完全未公開ライヴ音源が5公演。
[C] 既発公演分もすべてリマスター化などが施され音質向上。

というわけで、ポイントとして挙げると少ない。しかし、これまでのボックスと比べると大きく良心的になっているところがある。ひとつは基本的にライヴ音源はサウンドボード録音のみにしていることで、オーディエンス録音のものはボーナス・ディスクと名付けて別扱い(ブックレットに記載されず別の厚紙に収納)にしていること。もうひとつは、これまでの箱では既存音源の音質には手が入っていない、または手を入れてあってもほとんど変化が感じられない程度だったものが、このボックスでは程度の差こそあれ音質の向上を実感できるリマスタリングが施されていること。そういう意味で従来音源を持っている人にも価値がある。

ブルーレイ収録ハイレゾは以下の通り。

【Bru-ray Disc 1】
・Apollo, Glasgow, Scotland(24/192)
・Volkshaus, Zurich, Switzerland(24/192)
・Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands
(24/96、2014ミックス)
・Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands
(24/96、放送音源ミックス)
・The Night Watch 1997 Stereo Mix
(24/96、ただしアップサンプリングとクレジットされている)
【Bru-ray Disc 2】
・Elzer Hof, Mainz, Germany(24/96)
・Concertgebouw, Amsterdam, Netherlands
(96/24、2014ミックス、ラジオ放送ミックス)
・Stanley Theatre, Pittsburgh, USA 74/4/29 (24/96)

Bru-ray Disc 1は収録時間の都合なのか73年10月23日のグラスゴーは、"Fracture" "Lament" "Exiles" がカットされ、またどういうわけか曲順が変更されている。11月15日チューリッヒは "The Night Watch" をカット。また、この日の音源は"The Mincer"が欠けていることで有名だけれど、今回のCDとブルーレイではスタジオ音源に差し替えたバージョンを採用している(DVD-Audioは40周年記念版と同じくブートレグ・ソース)。
Bru-ray Disc 2は、4.0マルチチャンネルも収録していることがトピック。ただし、コンセルトヘボウは7曲のみ、4月29日の音源は4曲のみというやや中途半端な収録。尚、サラウンドについては音源によって仕上がり具合が違う。Mainz は Several Tapes からのミックスとクレジットされており、恣意的なリアへの楽器の音の振り分けは行っておらず、残響やメロトロンの音をリアに音をこぼしている仕上がりで、コンサートホール的な響きを楽しめる。言い換えると、ソリッドで塊感のある音像が好みなら2chステレオの方が良い。コンセルトヘボウ音源はオリジナル・マルチトラックからの4.0ch化で、ホールの響きよりも楽器の響きを上手くリアに振っていて演奏の臨場感、実体感が高く素晴らしい仕上がりになっている。全曲でないのが非常に残念。ピッツバーグはソースは明らかにされておらず Mainz と似た傾向に仕上がっている。
CDのライヴ音源はCollector's Clubの項目に詳しくは書いているので、ここでは補足のみを。Disc 26 [4] 73年11月15日アトランタの音源は40周年記念の DVD-Audio収録と同じもの。[5]-[7] は、このボックスのDisc 4で施された [1]-[3]の[2] Mincer のスタジオ・バージョンに差し替えた部分を、コレクターズ・クラブ Vol.41 と同じくブートレグ・ソースの状態で収録したもの。[8]-[10]は、サウンドボード音源で既知の74年3月30日Mainzの音源(クレジットの日付は10月6日と誤記)で、これまで未公開だったコンサート終盤音源2曲(3曲あるが"Easy Money"は重複)を収録。ただし、 Bootleg Only Sourceとクレジットされていて音質は悪い。(2014年11月16日)

Red

曲:★★★★★
演奏:★★★★☆
入門度:★★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1974/Jul-Aug
1974/6/30 [4]
Released in 1974

[1] Red
[2] Fallen Angel
[3] One More Nightmare
[4] Providence
[5] Starless

<40th Anniv. Bonus Track>
[6] Red (trio version)
[7] Fallen Angel (trio version)
[8] Providence (full version)
[9] A Voyage To The Centre
                    Of The Cosmos

Video Content
[10] Larks' Tongues In Aspic PtI
[11] The Night Watch
[12] Lament
[13] Starless
John Wetton (vo, b)
Robert Fripp (g, mellotron)
Bill Bruford (ds)

David Cross (violin)
Mel Collins (ss)
Ian McDonald (as)
Robin Miller (oboe)
Mark Charig (cornet)

Produced by
             KING CRIMSON
デヴィッド・クロスが脱退して3人になった第3期キング・クリムゾンの最終作。このアルバム発売後にイアン・マクドナルドを加えた4人での活動が計画されていたにもかかわらず、フリップは解散を宣言し70年代のクリムゾンは終焉を迎える。前作とは異なり、ライヴ音源は[4]のみで、このスリリングなインプロのオリジナルは「The Great Deceiver」Disc 1 [7] や「Road To Red」ボックスのPalace Theatre, Providence, RI音源で聴くことができる(よってクロスのクレジットが入る)。他の曲はスタジオ録音で[5]を除いて新曲のため、このメンバーによる[1][2][3]のライヴ演奏は残されていない模様。メル・コリンズ、イアン・マクドナルド、マーク・チャリング、ロビン・ミラーといったかつての共演者達のサポートを受けることにより本来のハードなサウンドに多彩さと控えめな叙情性もプラスされ、高次元でバランスしているところがこのアルバムの最大の魅力。ツアーでもよく演奏されていた[5]は、メル・コリンズのソプラノ・サックスが究極にリリカル、特にクライマックスのスリルといったらない。荒々しさを損なうことなく完成度を高めたスタジオ録音ならではの名演。70年代クリムゾンを総括する一大傑作。(2006年7月25日)

<40th Anniversary Edtion>
CDはリマスター、リミックスなしと残念な仕様。それでも音が良くなっているのはHQCD(国内盤のみ)だからか?DVD-Audioは同時発売2作と同じく、通常のDVDプレイヤーでも再生可能なDTS 5.1chと24bit/48KHz LPCM、DVD-Audio でないと再生できない音源として24bit/48KHz 5.1chと24bit/96KHz 2chロスレスを収録。

5.1ch サラウンド化は音の振り分け、サラウンド感の作りはやはり丁寧でその面白みを十分楽しめる。フリップのリズム・ギターが聴きとりやすいだけでなく、さまざまな音を余すことなく捉え、しかも巧みに各チャンネルに散らしている。[2]ではこれまで省いていたコルネットの音を残していたり、[5]の後半のフリップのギターがかなり強調されていたり従来の2chと明確に違うところもある。 ただし強いて言うなら、同じ手法で作られている「In The Court Of Crimson King」「Lizard」ほど音楽の聴こえ方が変わったと言えるほど感動の底上げは大きくない。それはこのアルバムの持っている音楽の本質がそういうものだということだと思う。5.1ch化に対応できないという意味ではなく、フリップ、ウェットン、ブラッフォードを核にしたこのラインナップのソリッドな音楽は2chでもその凄味が十分に発揮されているということに他ならない。それでも、先に書いた通り5.1ch化に手抜きは一切なく、完成度は申し分ないし、素晴らしい仕上がりなので聴く価値は当然ある。 尚、この「Red」ではDVD-Audio収録の2chも特別な施しがないため音質向上だけが価値となる。

ボーナス・トラックについて。[6]はオリジナルにあったギターのオーヴァーダビング部分を排除、シンプルな構成で聴ける分、曲のカッコよさを再認識できる。[7]も同様の志向、しかしこちらはオーヴァーダビング部分を多く残しているだけに却って中途半端。エンディングまで聴けることが、ささやかなな喜び。[8][9]はボックス・セッ「Great Deciever」で既に公開されているライヴで[8]は[4]のオリジナル音源、即ちフル・バージョン。

CD盤を含む2ch音源に手がかけられていない不足感を穴埋めするのが74年3月22日のライヴ映像。この時代特有の妙な映像処理を覚悟してもいても、その多用ぶりはかなり鬱陶しい。それでも、今まで写真でしか見たことがなかった若き日のこの4人が動いているというだけで感動できる。みんな若い!カッコいい!既に引退したブラッフォードはこの映像を観て「恥ずかしい」と言っていたが、その気合いの入った太鼓叩きの姿が一番輝いている。
(2009年12月27日)

<Road To Red>

DGMでライヴ・アーカイヴのリリースを加速させる一方で近年(2012年〜)力を入れはじめているのが箱物シリーズ。「Larks' Tangues In Aspic」に続き「Red」版が登場した。「Red」レコーディングに至るまでの直前、74年春の北米ツアーのライヴ音源をアーカイヴするという趣向から「Road To Red」と名付けられている。CD、DVD、Blu-ray合わせて24枚組というボリュームは、しかし既に「Great Deciever」やDGMでリリースされている音源との重複がかなりある。では、これまでにお布施してきたマニアにとってこのボックスの買い要素はどんなところなのか。大きく分けて5点あると考える。

[A] 「Red」2013 mix と 2009 Surround mix 96KHz化
[B] 「USA」2013 mix
[C] 未発表ライヴ音源(4公演分)
[D] DVD、Bru-rayのハイレゾ音源
[E] 長文ブックレット、ポスター、小物類(チケットやホテルで書かれたセットリストメモのレプリカなど)

DVD-Audioがメインだった一連の40周年記念版は、同梱のCDでも新しいミックスが施されていた。しかしどういうわけか「Red」のみ従来盤のままのCDを同梱(あれ?なら不要だったのでは・・・)。当時はリミックスの必要性がないと判断したと言われているが、カタログの5.1ch化を次々と進めていた繁忙期だけに「今回はまあいいか」的な見送りだったと想像する。あるいはこの「Road To Red」のような形で次の機会があることがそのときから企画されていたのかもしれない。その[A]は他の40周年記念版の新ミックスと基本的には同じ方向性で仕上がっている。全体に音のトゲがなくなり、音の重なりが滑らかになったことで各楽器の見通しが良くなった。また、この新ミックスシリーズの慣例通り、楽器の基本的な音量バランスは変えず、それでいながらこれまで埋もれていた音が聴こえてくるところもいくつかあるという作りになっている(2009年サラウンドミックスにおいて"Fallen Angel"の3分00秒あたりでコルネットのソロが終わったあとの更にもうひと吹きが掘り起こされていたが今回の2013 mixでも採用)。音場もやや広くなったように感じる。この方向性は近年の一般的なハイレゾ音源やリマスター盤のトレンドにおいても同傾向でもあり、それはデジタル化された音源をどうまとめあげるかという技術が成熟されてきたことを意味しているような気がする。尚、2009 Surround mixは40周年記念版ではサンプリング周波数が48KHzだったものがブルーレイ収録では96KHzへと地味にスペックアップしている。

やや物議を醸し出しているのは [B]。少し音質向上しているのは歓迎、ただし音のバランスが大きく異なっており2005 mix(=DGMで公開された"Asbury Park")よりもベースの音量をかなり抑える傾向になっている。ウェットンのブリブリ唸るベースを好む人には残念な変更で、代わりにバンド・サウンド全体の見通しが良くなったというメリットはあるものの、やはり従来盤を好む人が多いような気がする。

ライヴ音源集は、既存音源で音があまり良くないものは手が施されて少し良化が見られる。元から音が良かったものはそのまま。一方で、内容はほとんど変わっていない。新たな未発表音源 [C] はすべてサウンドボード音源を基本にしており、最良とまでは言わないが音質は良好。すべて頭切れや尻切れとなっており、1ステージの疑似体験として聴くのはちょっと厳しい内容の音源集という感じのものが多く、これまでにリリースされてこなかったのもきっとそのあたりが理由と思われる。パフォーマンスはもちろん素晴らしいものの、既出の音源と較べて特別に優れているというわけではないので、とにかく全部聴いてみたいというマニア以外にはなくても良いと思う。(各音源ごとのコメントはCollector's Clubに記載)

[D]の内訳は以下の通り。

【DVD (DVD-Audioではない)】
・Asbury Park (2013 Mix) LPCM Stereo (24bit/96KHz)
・Asbury Park (2005 Mix) LPCM Stereo (24bit/48KHz)
DGM Liveで公開されたもののハイレゾ化
・USA (30th Anniversary) LPCM Stereo (24bit/48KHz)
既発CDのハイレゾ化
・USA (Original UK Vinyl Transfer)
LPCM Stereo (24bit/96KHz)

【Bru-ray Disc 1】 (すべて24bit/192KHz)
・Stanley Warner Theatre, Pittsburgh, PA
・Massey Hall, Toronto, Ontario
・Penn State University, University Park, PA
・Palace Theatre, Providence, RI

【Bru-ray Disc 2】
・Asbury Park (2013 Mix) LPCM Stereo (24bit/192KHz)
・Asbury Park (2005 Mix) LPCM Stereo (24bit/48KHz)
DGM Liveで公開されたもののハイレゾ化
・USA (30th Anniversary) LPCM Stereo (24bit/96KHz)
既発CDのハイレゾ化
・USA (Original UK Vinyl Transfer)
LPCM Stereo (24bit/96KHz)
・Red (2009 Surround Mix) LPCM & DTS 5.1 Surround
40周年記念版と同じミックスもの
・Red (30th Anniversary) LPCM Stereo (24bit/96KHz)
初CDS化時音源のハイレゾ化
・Red (2013 Mix) LPCM Stereo (24bit/96KHz)

DVDは、ブルーレイ盤と同一音源からの選択でスペックダウン音源しか収録していない(DVD-Videoの限界か?)のでブルーレイ視聴環境がある人には不要に思える。コレクターズクラブで公開されている音源のBru-ray Disc 1は音質が良いものから選んでいる。

その興味深いハイレゾ音源について。その前に僕はハイレゾ音源のスペックによる音質向上には懐疑的なスタンスであることを最初にお断りしておく。ハイレゾ音源の中には明らかに音質向上していることを実感できるものはあるものの、それは音源化するときのプロセスにCDとの違いがあり、その過程の違いが音質差となっているのではないかと考えているからである(要はマスタリングやミックスまで変えているのではないかと思うようなものがある)。純粋に192KHz/24bitなどのスペックの違いが、曖昧な人間の耳にわかるような違いをもたらすとは思っていない。

このボックスのブルーレイに収録されているハイレゾ音源を何曲か聴き比べてみた結果、ほとんどCDと変わらないというのが僕の結論である。厳密に聴き比べるとわずかに変わっている「ような気がする」程度の違いはある。ただ、その違いは良いか悪いかという次元ではなく「違っているだけ」の差だと思う。最良の形で音源を手元に置いておきたいという方であれば持っていても良いかもしれない。

[E] はオマケ類が好きな人はいいかも。僕は正直関心ないけれど、これだけの価格のものへのサービス精神と受け止めれば納得できる。(2013年11月9日)

Discipline

曲:★★★☆
演奏:★★★☆
入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1981/4/3-4/12
Released in 1981

[1] Elephant Talk
[2] Drame By Frame
[3] Matte Kudasai
[4] Indiscipline
[5] Thela Hun Ginjeet
[6] The Sheltering Sky
[7] DIscipline
[8] Matte Kudasai (alt version)
   (30th Anniversary Edition Only)

<40th Anniversary Bonus Track>
[8] A Selection Of Adrian's
                          Vocal Loop
[9] The Sheltering Sky (alt mix)
[10] Thela Hun Ginjeet (alt mix)
Additional Tracks
[1] A Selection Of Adrian's
                          Vocal Loop
[2] The Sheltering Sky (alt mix)
[3] Thela Hun Ginjeet (alt mix)
[4] The Terrifying Tale Of
                Thela Hun Ginjeet
[5] Elephant Talk 12" Dance Mix
Album Rough Mix
[1] Discipline
[2] Thela Hun Ginjeet
[3] Matte Kudasai
[4] Elephant Talk
[5] The Shltering Sky
[6] Frame By Frame
[7] Indiscipline
Video
[1] Elephant Talk
[2] Frame By Frame
[3] Indiscipline
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g)
Tonny Levin (stick, b)
Bill Bruford (ds)

Produced by
   KING CRIMSON and
   Rhett Davies
81年にロバート・フリップは、エイドリアン・ブリュー、トニー・レヴィン、ビル・ブラッフォードというメンバーでディシプリンというグループを結成する。その後、15回のギグを経てキング・クリムゾンに改名したということはよく知られるところ。フリップがなぜクリムゾンの名前を引っ張り出す気になったのかはわからない(ブラッフォードによるとギャラもオファーも倍増したとのこと)けれど、本来違うグループとして結成されたためにその音楽性はこれまでとかなり異なるのは確かで、このグループをクリムゾンと認めないという声が少なからずある理由もわかる。サウンドの特徴は歪みの少ない2本のギターが細かい反復リフで複雑に絡み合い、スティックによる柔軟なベースラインとシンセドラムを使ったマルチな打楽器音が融合しているところにある。ブリューの持つ独特なポップ・センスが色濃く出ているのも大きなポイント。でも、実は初めて聴いたときにはまったく何も感じなかった。特に[6]は眠気すら誘う退屈さ。80年代クリムゾンは聴かなくてもいいいやと感じたことを思い出す。そして今も本作をあまり聴くことがない。しかしそれはこのラインナップに魅力がないからではなく、実はライヴの方が断然素晴らしいことが後にわかってしまったから。このグループの真価が知りたければ、公式ライヴ盤にしてこのラインナップの魅力が全開の「Absent Loves」を聴くことをお勧めしたい。

<40th Anniversary Edtion>
DVD-Audioは、通常の DVDプレイヤーでも再生可能な DTS 5.1chと24bit/48KHz LPCM 2.0ch、DVD-Audioでのみ再生できる音源として24bit/96KHzロスレス5.1chと24bit/96KHzロスレス2chを収録。2chは2011年ミックスと合わせて30周年記念リマスターのオリジナル・ミックスも収録。

5.1chは、当然音の分離が極めて良く、混濁しないひとつひとつの音を楽しめる。正直なところこのアルバムはサラウンドに向いてないのではないかと予想していたけれど、反響音を散らすだけでなく、フリップとブリューのギターをうまく振り分けることに主に活用されており、「2人のギタリストがいるグループ」となったクリムゾンをより深く楽しめる。それでも無理やりサラウンド効果を狙った音の振り分けをしていないところが好印象で、サラウンドによって2chでは聴き取れなかった音のひとつひとつを楽しんでほしいという基本的な狙いをもって企画されているこのシリーズの良さはしっかりと出ている。

Rough Mixは微妙なミックス違いでそれほど違わない低完成度版。新ミックスとは更に別のSteve Wilson Mixは音のバランスは変えずにクリアで明瞭さを狙ったという通りの仕上がり。フリップのコメントどおり、聴き比べればブラインドで違いがわかる。できればこのミックスでCDも作り直してもらいたいと思うけれど、それは次の企画ということか。"Thela"はカウントから入ってヴォーカル抜き、エンディングはフィードバックの余韻まで。"Terryfying Tale Of"はトーク部分の元ネタから始まって演奏が被さる構成。演奏そのものも違う。

ビデオはレア。Elephant Talkは口パクながら、他の2曲はテレビ番組出演時の生演奏。こんなのをテレビでやっている英国というのは本当にいい国だと思う。
(2011年11月6日)

<On (and off) the Load 1981-1984>
ボックスセット収録の40周年記念版は、従来の単体版と音源としての違いはない(と思う)。ただし、ボックスセットのDVD-Audioディスクは、単独40周年記念版よりもLPCM Lossless Stereoをスペックダウン(96KHz→48KHz)させている(96KHz音源はブルーレイに収録されているので些細な話ではありますが)。

追加されているコンテンツについて、「Beat」「Three Of A Perfect Pair」期の音源もまとめて以下に記す。

Disc 2は81年12月18日、国際ホールでの初来日ステージ。このときの日本ツアーはまとめてDGM Live!で公開済み(僕は未聴)で、この日のみ本ボックスのCDとして収められている。音質はオーディエンス録音としては良好な部類。演奏は82年以降のものと比べると幾分ラフで、そのまだ熟しきっていないところが聴きどころか。観客からの「Andy!」という掛け声に「Wrong Band?」と応えるブリューや、ところどころ聴こえる観客の話し声につい笑ってしまう。
Disc 4はClub32「Live In Munich」と同じ音源でリマスターを施して(6曲は新しいソースから採用とコメントあり)おり、音質はワンランク向上している。
Disc 5はClub21「Champaign-Urbana Sessions」と同一音源。こちらもリマスタリングが施され音質は少し向上している。
Disc 7,8は「Absent Lovers」のリマスター。リリースが比較的新しいこともあってか劇的な音質向上は感じない。それでも、角が取れて聴きやすい最近のてれんどに則ったリマスタリングが施されている。内容は言うまでもなく素晴らしい。
Disc 16は、まだDisciplineというグループ名だったこのメンツのデビュー・ギグを記録したClub11「Live At The Moles」と同一音源。元々オーディエンス録音で音質が悪いソースだが、幾分音が良くなって聴きやすくなっている。
Disc 17は、DGM Live!で配信済み82年8月26日Frejusと同じ音源。しかし、どういうわけだか曲順を大幅に入れ替えてある(既発音源が恐らくは実際の曲順)。音質は一皮むけたと言って良いレベルで向上している。
尚、[16][17]はボーナス・ディスク扱いでCDケースではなく厚紙に差し込んで収められており、豪華ブックレットにも内容については触れられていない。

これ以外に、スタジオ盤3部作のレコーディング・セッションからそれぞれ抜き出して編集したDisc 9があり、「Larks' Tongues In Aspic」ボックスの"Keep That One, Nick"、THRAKボックスの"JurassiKc THRAK"と同じ趣向の、Larks' Tongues In Aspic Part III版 "Are You Recording Gary?" (既に"VROOOM VROOOM"の中間部が演奏されていたりする)の他、各アルバムごとのセッション音源を1曲に編集(こちらは演奏が止まったり会話が入ったりしない)したトラックが3曲収録されている。音源の目新しさという意味では本ボックスの目玉ディスク。全体的にリハーサルのような演奏でテンションも高くないため、何度も繰り返して聴きたいとは思わないものの、あそこは裏でこんな演奏をしていたんだ的な楽しみ方ができる。
(2016年12月18日)

Beat

曲:★★★★
演奏:★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
Unknown
Released in 1982

[1] Neal And Jack And Me
[2] Heartbeat
[3] Satori In Tangier
[4] Waiting Man
[5] Neurotica
[6] Two Hands
[7] The Howler
[8] Requiem
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g)
Tonny Levin (stick, b)
Bill Bruford (ds)

Produced by
            Rhett Davies
前作以上にブリューのポップ・センスがより濃くなった80年代クリムゾン2作目。前作を聴いて、もういいやと思った80年代クリムゾン。しかし、「Frame By Frame: The Essential King Crimson」Disc 2に入っていた本作の曲でこのラインナップはただの技術偏屈で奇妙なポップ・グループでないことがわかって、やはり一通り聴いてみなくては、となった。[5]はフォービート・ベースラインでアグレッシヴに進みながらも、ロックしているカッコよさが出色。後にライヴでも演奏されているけれど、ライヴではこのスタジオ・バージョンのムードを再現できていない。[8]は徐々に盛り上がり、狂乱のエンディングを迎える即興演奏で演奏技術と想像力の高さを見せつける。ポップな[1][2]も秀逸でわずか35分強の収録時間ということもあって意外とアッサリ聴ける佳作。(2006年7月25日)

<On (and off) the Load 1981-1984>
本当は1969年のデビューから起算した企画だったものが40th Anniversary Edition、しかし、一作ずつ手がけているうちに気がつけば47年が経過、フリップは40周年記念版という名前は一連のシリーズの便宜上の名前だとのコメント(言い訳?)をしている。そしてこの「Beat」と「Three Of A Perfect Pair」はディシプリン期を総括するボックスセット「On (and off) the Load 1981-1984」と同時発売となったため、僕は40周年記念版は所有していない。ボックスセットのディスクも同じ 40th Anniversary Edtion と銘打ってあるため、恐らく、単独版とボックス収録ディスクとの内容の差分はないと思われる(わざわざ手間を掛けて些細な違いを作ってまでして両方買わせようとしないんじゃないかと・・・)。
"Requiem"は4分長いエクステンデッド・バージョンに差し替えて収録。ただし、このエクステンド・バージョンは冒頭のフリップのサウンドスケープ部が長いだけで特に感動はない。ボーナストラックとしては"Abesent Lovers(Studio take)"というインストを追加。それほどテンションが高いわけではなく幾多あるリハーサル音源よりはまとまっているかな程度の完成度。

【DVD-Audio:】
アルバム本編:
5.1 DTS (DVD-videoでも再生可)
5.1 LPCM(24bit/48KHz)
LPCM Stereo(24bit/48KHz) (DVD-videoでも再生可)
MPLS Lossless Stereo(24bit/48KHz)
その他コンテンツ:
30thアニバーサリー・リマスター(30周年記念盤と同じマスターのもの)
オルタネイト・アルバム(ミックスやエフェクト、編集が一部異なる。"The Howler"はヴォーカル抜き。)

ボーナストラック:
(1) Abesent Lovers(Studio)
(2) Neal Jack And Me (alt take)
(3) Absent Lovers (Live)

ビデオ・コンテンツ:(LPCM Stereo 24/96、LPCMサラウンド)
(1) Heartbeat(Promotion Video)
(2) Waiting Man(Live)
(3) Heartbeat(Live)
(1)はこの時代としてはがんばって作った、しかし今となっては少々気恥ずかしいプロモ・ビデオ。(2)(3)は82年9月29日ミュンヘンのライヴから2曲。

【Blu-ray】
DVD-Audioの内容に加え、82年9月29日のLive At Alabamahalle 6曲(DVDに加えて4曲)の映像(LPCM 24bit/48KHz)を収録。
(2016年12月18日)

Three Of A Perfect Pair

曲:★★★☆
演奏:★★★★
入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
Unknown
Released in 1984

[1] Three Of A Perfect Pair
[2] Model Man
[3] Sleepless
[4] Man With An Open Heart
[5] Nuages
(That Which Passes, Passes Like
Clouds)
[6] Industory
[7] Dig Me
[8] No Warning
[9] Larks' Tongues In Aspic Part III
[10] The King Crimson Barber Shop
[11] Industrial Zone A
[12] Industrial Zone B
[13] Sleepless (Tony Levin Mix)
[14] Sleepless
      (Bob Crearmountain Mix)
[15] Sleepless (Dance Mix)
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g)
Tonny Levin (stick, b)
Bill Bruford (ds)

Produced by
             KING CRIMSON
アナログで言うA面[1]〜[4]にポップな曲を集め、B面[5]〜[8]に難解系の曲を集める形を取った80年代最後のアルバム。ブリューのポップ・センスと複雑な曲の混在したところは前作同様の方向性。また、質も同じレベルをキープ。とはいえ、このラインナップの真価はライヴにあり、スタジオ録音ではこじんまりした演奏になっているところを好きになれるかどうかが試される。ボーナス・トラックについて。[10] はトニーのお遊びアカペラ・コーラス。[11][12]はダブル・トリオ期のインプロ・パートに差し替えても問題ないと思える実験的かつスリリングな演奏。[13]-[15]は各ミックスをどうぞお楽しみくださいという感じで、[15]がもっとも時代を感じさせていて面白いかと。
(2006年7月25日)  

<On (and off) the Load 1981-1984>
30周年記念盤とはボーナストラックが異なっており、3バージョンあった"Sleepless"はカット、代わりに"Robert's Ballad" "Shidare Zakura"という曲が追加されている。一見、従来と同じ曲かと思う"Indutrial Zone"は"A"と"B"がそれぞれ1:45→3:15、4:33→5:34になり、15:50の"C"が追加されている。

【DVD-Audio】
アルバム本編:
5.1 DTS (DVD-videoでも再生可)
5.1 LPCM (24bit/48KHz)
LPCM Stereo(24bit/48KHz) (DVD-videoでも再生可)
MPLS Lossless Stereo(24bit/48KHz)
DVD-Audioのみに収録されているボーナストラックはなし。

その他コンテンツ:
30thアニバーサリー・リマスター(30周年記念盤と同じマスターのもの)
"Sleepless" プロモーション・ビデオ

【Blu-ray】
DVD-Audioの内容に加え、84年モントリオール公演の「Absent Lovers」5.1 DTA-MA (24bit/96KHz)、LPCM surround & Stereo (24bit/96KHz)音声+「Three Of A Perfect Tour Live In Japan」5.1 DTA-MA (24bit/96KHz)、LPCM surround & Stereo (24bit/96KHz)の映像を収録。「Live In Japan」は編集前の単独別カメラ、別日の映像も収録している(音声はLPCM 24bit/48KHz)。
メイン・コンテンツの音声はこちらも5.1 DTS-MA (24bit/96KHz)、 5.1ch & 2.0ch LPCM (すべて24bit/96KHz)でDVD-Audioよりもハイスペック。尚、「Absent Lovers」の5.1chはスタジオ盤ミックスのような音の明確な振り分けはなく、リアに残響感を補足する仕上がりになっているので過度な期待はしない方が良いかもしれない。
(2016年12月18日)

VROOOM

曲:★★★★
演奏:★★★★
入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1994/5/4-7
Released in 1994

[1] VROOOM
[2] Sex Sleep Eat Drink Dream
[3] Cage
[4] Thrak
[5] When I Say Stop. Continue
[6] One Time
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g, soudscape)
Trey Gunn (stick)
Tonny Levin (stick, b)
Pat Mastelotto (ds)
Bill Bruford (ds)

Produced by
   KING CRIMSON
   and David Botttill
過去のグループとしてキング・クリムゾンに熱中していた僕にとって復活は衝撃のニュースだった。そして発表されたこのミニ・アルバムは更に衝撃的だった。それはヘヴィでノイジーでアブストラクトな第3期クリムゾンのようなサウンドで、6人の演奏の絡み方がそれまでに聴いたことがないものだったから。リアル・タイムでこの素晴らしいメタリック・クリムゾン・サウンドに接することができることに興奮したことを思い出す。しかもエイドリアン・ブリューの「リハーサル・テープにすぎない」というコメントを聞いて、これからの発展性にワクワクしたことも思い出す。今、改めてこのアルバムを聴くと煮詰めが不足していてラフであることがよくわかる。しかし、それは決してネガティヴな意味を持つというわけではなく、むしろグループ誕生直後の生々しい姿として大いに魅力がある。「THRAK」に
収録されなかった[3][5]パフォーマンスも素晴らしい。(2006年7月20日

THRAK

曲:★★★★★
演奏:★★★★
入門度:★★★★☆
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1994/10/24-11/19
1994/11/27-12/4
Released in 1995

[1] VROOOM
[2] Coda: Marine 475
[3] Dinosaur
[4] Walking On Air
[5] B'Boom
[6] THRAK
[7] Inner Garden I
[8] People
[9] Radio I
[10] One Time
[11] Rado II
[12] Inner Garden II
[13] Sex Sleep Eat Drink Dream
[14] VROOOM VROOOOM
[15] VROOOM VROOOOM: Coda
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp
 (g, soudscape, mellotron)
Trey Gunn (stick, vo)
Tonny Levin (b, vo)
Pat Mastelotto (ds)
Bill Bruford (ds)

Produced by
   KING CRIMSON
   and David Botttill
ミニ・アルバム「VROOOM」の制作から南米ツアーを経て録音されたダブル・トリオ唯一の正式なスタジオ・アルバム。「VROOOM」と4曲が重複しているけれど短期間のツアーで培った経験をもとにすべてレコーディングし直しており別アルバムとして仕上がっている。一聴してわかるのは「VROOOM」よりも遥かに作り込まれていることで、完成度という点では明らかに上、ただしどちらがスリリングと思うかは意見が分かれるでしょう。このアルバム制作までの短期間で進化を遂げていることは非常によくわかる。ただし、後のライヴ音源を聴くとこれでもまだ発展途上という感じがする。曲によっては各メンバーの楽器の音を左右にハッキリ分けているので誰がどの音を出しているのかが分かりやすくなってる。"VROOOM"をわざわざ[1][2]のように曲としては分割したり、再録曲の演奏もコンパクトにしたり、短い曲を挿入したりと1曲を長く見せないような気遣いがあるのは「長い曲をダラダラと演奏する時代遅れのプログレ」という印象を払拭するためのようにも見える。(2006年7月28日)

THRAKボックスについて。

【Disc 1: JurassiKc THRAK】
スタジオ・アルバム「THRAK」レコーディング・セッションのテープを編集して作り上げたもので、67分で1トラックというところも含め「Larkls' Tongues In Aspic」ボックスに収録されていた"Keep That One, Nick"の「THRAK」版と言えるもの。あるパートを部分的に演奏しているだけのところなどは「こんな音出していたのか」と気づける部分もあってそれなりに面白い。収録曲のセッションと会話が入り混じった構成で曲は部分的に再生されるだけであるため、鑑賞物として聴くのはちょっと厳しい。ところどころ悪ふざけしているところもあり、そこも含めてレコーディング中の雰囲気を味わえる。

【Disc 2: Maximum VROOOM】
既に廃盤になっているミニ・アルバム「VROOOM」と、コレクターズ・クラブとしてリリースされていた「VROOOM sessions」から7曲を選んで加えたもの。リマスタリングにより音質は向上。「VROOOM Sessions」収録曲は会話部分がカットされていたりするなど微妙に編集されていて、通してアルバムで聴ける形で構築しなおしている。

【Disc 3: THRAK original mix (2002 remaster)】
表題の通りの2002年に発売されたリマスター版。アナログで発売されたことがないのに当時は紙ジャケットでも発売されていた。初版マスターよりは少し音質向上。

【Disc 4: ATTAKcATHRAK】
初出音源。95年、96年のツアーで演奏された"THRAK"の即興部分をつなぎあわせて作ったもので、そう聞くと思い出すのが今ではマニアの間でジョーク扱いされている「THRaKaTTak」(廃盤)。コンセプトは同じだと思って間違いない。ただし「THRakaTTak」はリズムのない、ヒュイーンなどの音を中心とした抽象的なパートがメインで「幽霊屋敷のBGM」と言われたのに対し、全体にスリリングなパートが増えて起伏を与えている分、通して聴いても集中力を保ちやすい仕上がりになっている。

【Disc 5: THRAK 2015 mix】
スティーヴン・ウィルソンが手がけてきた一連の40週年リミックスは、当時のアルバム作成時には時間的、技術的、能力的な制約でできなかたものを丹念に仕上げ直したと言うことができるのに対してフリップとジャッコが手がけたこの「THRAK」のリミックスはコンセプトが異なる。ミックスの基本方針からして違っていて、ブラッシュアップではなく別物として作成されている。全体的に、左右のチャンネルをうまく使い分けて各楽器の聴こえ方が明瞭になっていて、特にドラムでそれが顕著になっている。そういう意味では、確信犯的に違和感があることを承知の上で左右で楽器をクッキリ分けていたオリジナル・ミックスの"VROOOM"(当時はビートルズ・ミックスなんてフリップは呼んでいたっけ)は、今回はむしろ左右の分離感を和らげて自然な仕上がりにしていてアルバム全体の統一感が出た。"Coda Marine 475"のカウントダウン・アナウンスが最初から聞こえるようになっていたり、ヴォーカルのエフェクトが大きくなっていたりという変更もある。94年、ミニ・アルバム「VROOOM」に狂気し、繰り返し聴いたにもかかわらず、フル・アルバムの「THRAK」を聴いてみたら意外と面白くないなあと当時の僕は思っていた。作り込まれたが故に何かを失ってしまったように感じていた。しかし、2015ミックスは結果的に音の見通しが良くなり、埋もれ気味だった各プレイヤーの音が聴き取れるようになっただけでなく、ライヴ感が出て演奏のダイナミズムを取り戻したように思う。

【Disc 6: Byte-Size THRAK】
ざまざまな形で地味に発表されつつも発売されなかった別バージョン、ライヴ・バージョン中心のおまけ的なディスク。コレクターズ・クラブ「Nashville Rehersal」から3曲、そして知る人ぞ知る日本では発売されなかったミニ・アルバム「Sex Sleep Eat Drink Dream」に収録されていた"Silent Night"(フリッパートロニクスによる"きよしこの夜")も収録されている。

【Disc 7-8: Kcensington THRAK】
クレジットでは95年ロンドンでのライヴ音源と書かれているものの日付の記載はなし。聴く限りは95年5月17日と18日の音源を組み合わせているようだ。"Frame By Frame"演奏後のMCがだいぶカットされるなど微妙に編集もされてもいる。このロンドン公演は過去にDGMで公開済みで今回は新ミックスとクレジットされているが、これが大幅に音が磨き上げられていて今まで聞こえてこなかった音がこれもあれもと聴こえてくるほどのかなりの音質向上。Blu-rayで5.1ch化もしているように、本気でミックスダウンし直していることがよくわかる。

【Disc 9-10: New YorKc THRAK】
コレクターズ・クラブ初期の音源「On Broadway」、その後別フォーマットで「VROOOM VROOOM」としてリリースしたニューヨークのライヴ音源。どちらも1ステージ通しの収録ではなく、曲順が入れ替えられていたり欠けていたりした部分があったものの、今回スッキリとフル・コンサート形式でまとめた。こちらもリマスタリングにより音質は向上している。

【Disc 11-12: AzteKc THRAK】
これも「VROOOM VROOOM」で発表済みの96年メキシコでのライヴ音源をフル・コンサート化。リマスタリングにより音質が向上している。Disc 13、14はブルーレイと収録内容が重複している。

【Disc 15: Blu-ray Disc One】
このボックス・セットの目玉的なディスク。ブルーレイDisc Oneは音源のみの収録。初期のアルゼンチンでのライヴ音源である「B'Boom」以外はボックス収録のCDと同一ソース(ただし、24/48化されている)なので以下、注目すべきコンテンツのみについて触れる。
[1] THRAK 2015 mix
2chのリニアPCMでも聴けるが、もちろん5.1ch音源がトピック。2chステレオの拡張版的な仕上げではなく完全に5.1chのための新規ミックスになっていて、あんな音やこんな音が、それこそ2chステレオには埋もれていた(あるいは入っていなかった)音までもが加勢して圧倒的なサウンドの洪水に浸ることができる。それはやり過ぎと言えるほどの音の振り分け方で「せっかく6人分の音が一杯入っているんだからこのくらい大胆にやらないと」という開き直りのようなものすら感じさせる。これまで聴いてきた2chステレオとは別種のものとして楽しむ音源。
[2] ATTAKcATHRAK
Disc 4と同じソースをサラウンド化。ライヴ音源がソースでオリジナルマスターのチャンネル数が少ないと思われるため、[1] ほど大胆なサラウンドの振り分けを行っていないものの、こちらもマルチ・チャンネルの威力をまざまざと見せつける面白さ。音の分離は当然2chステレオの比ではなく、これもたっぷり楽しめる。
[3] THRaKaTTak
以前リリースされた"THRAK"のインプロ部分を延々とつなげた、マニアの間ではある意味ジョークの一種として捉えられている音源の収録。2chのみで24/96化されているとはいえ、CDフォーマットではこのボックスに収録されていない。単体CDでは既に廃盤なので気軽にリッピングできないのは不親切に思える。

【Disc 16: Blu-ray Disc Two】
[1] Live At The Warfield Theatre
初出の映像付きライヴ映像か?Youtubeでティーザー映像として公開されていたとの情報もあるが真相は不明。マルチチャンネルと2chで収録。1ステージフルではなく"Red"から始まる構成になっているのはその前の段階で何か問題があったからなのか?パフォーマンスはとても良いものの、画面は暗くぼんやりしていて映像として優れているとは言い難い。カメラ台数が1台のみで、Youtubeによくある素人撮影ライヴ映像に近い匂いすら感じるほど作品臭がない。1台カメラゆえに全体を捉えたショットが多くなり、プレイヤーの手元の動きを追いたい人には面白くないものの、誰がどこでどんな音を出しているのかを俯瞰できるという点では他の映像ソフトにはない面白味があるとも言える。ドラムセット版"Prism"(ブリューはギターで参戦)を観れるのはレアかも。
[2] Live At The Nakano Sun Plaza
中野サンプラザで実際に僕も観たこのライヴ映像の歴史は長い。まずは95年にWOWOWで放送、その後ビデオソフト「Live In Japan」として販売されたのだが、このとき3曲追加されただけでなく1曲めに演奏された"VROOOM  VROOOM"と 後半に演奏された"VROOOM "の順番が入れ替えられた。次に「Deja VROOOM」というDVDソフトで99年に登場、ここでまた"VROOOM VROOOM"と"VROOOM"の曲順が戻された。DVDのときは当時最新のフォーマットだったDTS収録も、DTS Master Audio、LPCM 5.1chと最新のフォーマットにアップデートされている。
[3] Tony's Road Movie
レヴィンのハンディカメラで撮影されたもので、「Deja VROOOM」にも収録されていた95年来日時のオフやリハーサル映像。真剣にゲームセンターでレーシングゲームに興じるメンバーがちょっと笑える(フリップは不参加)。
[4] THRAK Electric Pres Kit
ダブル・トリオ結成当時のインタビュー集。画質が悪く、どこで使われたものなのか不明。

Sex Sleep Eat Drink Dream

曲:★★
演奏:★★★★
入門度:★
評価:★
[Recording Date]
1995/7/1 [1]
1979/unknown
Released in 1995

[1] Walking On Air
[2] Sex Sleep Eat Drink Dream
[3] Heartbeat
[4] One Time
[5] Silent Night
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g, soudscape)
Trey Gunn (stick)
Tonny Levin (stick, b)
Pat Mastelotto (ds)
Bill Bruford (ds)
何気に CD シップで見つけた95年発売のアメリカ盤。[1]は当時未発表だったもので、今は「<Club 31> Live At The Wiltern 1995」で1ステージまるごと聴ける。[2]と[4]はそれぞれ、3分42秒、4分00秒に短縮した編集バージョン。[3]はライヴ盤「B'BOOM」から。さて、このCDを購入したのは見慣れぬ曲[5]が入っていたから。未発表曲と想像していたこの曲が、フリッパートロニクスによる「きよしこの夜」だとわかったときの落胆は大きかった。(2006年7月22日)

The ConstruKction Of Light

曲:★★★☆
演奏:★★★
入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1999/10/21-12/15
Released in 2000

[1] ProzaKc Blues
[2] The ConstruKction Of Light (T)
[3] The ConstruKction Of Light (U)
[4] Into The Flying Pan
[5] FraKctured
[6] The World's My Oyster Soup
   Kitchen Floor Wax Museum
[7] Larks' Tongues In Aspic(Part W)
   (T)
[8] Larks' Tongues In Aspic(Part W)
   (U)
[9] Larks' Tongues In Aspic(Part W)
   (V)
[10] Coda: I Have A Dream
[11] Heaven And Earth
      (ProjeKct X)
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g,)
Trey Gunn
   (bass, touch guitar,
    baritone guitar)
Pat Mastelotto (ds)

Produced by
             KING CRIMSON
ダブル・トリオからブラッフォードとレヴィンが抜けてカルテット編成になったクリムゾン第一作目。ProjeKct Three/Four のリズム・セクションに何も感じていなかった僕は一抹の不安を覚えながら本作を聴いた。結果は・・・やっぱり何も感じなかった。複雑でヘヴィなギターは素晴らしいし、[2][3]や[7]-[10]なんて特にカッコイイと思う。リズム・セクションだってテクニックがあるのは良くわかる。なのにやっぱりつまらない。
昔、「BURRN!」というヘヴィ・メタル雑誌にミスター・ビッグのレビューがあり、そこには「テクニックがありすぎるというのも演奏にスリルがなくなって困ったもの」というような意味のことが書いてあったことがある。この考え方、かなりおかしい。ミスター・ビッグには聴き手にスリルを感じさせるテクニックがなかったのだ。このレビュアーは正確に演奏することがテクニックだと思っている。音楽は聴き手の心を揺さぶってナンボのもの。特にロックやジャズでは正確さなんてそれほど重要じゃない。聴き手の琴線に触れる演奏ができないのは本当のテクニックがないということだ。
これと似たようなことがトレイ・ガンとパット・マステロットにも言える。いかに複雑なリズムをこなしていてもつまらなければ意味がない。別にブラッフォードと同じように叩けと言っているわけではない。むしろ、1人になって伸び伸びと叩くマステロットに違うカッコよさを期待していたくらいだった。その違うカッコよさがあればよかったんだけれど僕には感じられなかった。ドラムを習い始めたばかりのビギナーが使うような手垢にまみれたリズム・パターンが顔を覗かせるのも不満で、こんなリズムを聴きたくてクリムゾンを聴いてるんじゃない、と思ってしまう。これでも好きになろうと何度も聴いて努力したんだけれど・・・。2000年10月4日の渋谷公会堂では1列目で観る機会にも恵まれた。でも、やっぱりダメだった。うーん、残念としか言いようがない。(2006年7月18日)

Shoganai

曲:★★★
演奏:★★★
入門度:★
評価:★★★
[Recording Date]
2002/7/8-8/30
Released in 2002

[1] Bude
[2] Happy With What You Have
                    To Be Happy With
[3] Mie Gakure
[4] She Shudders
[5] Eyes Wide Open
[6] Shoganai
[7] I Ran
[8] Patato Pie
[9] Lark' Tongues In Aspiv Part W
[10] Clouds
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g,)
Trey Gunn (warr guitar,
     fretless warr guitar,  
     rubber guitar)
Pat Mastelotto (ds)

Produced by Robert Fripp
     and David Singleton
Produced by
     KING CRIMSON and
     Machine [2]
海外盤では 「Happy With What You Have to Be Hapy With」 というタイトルで発売されている、次作「The Power To Believe」 の予告編的ミニ・アルバム。とはいえ、まともな曲と言えるのは[2][5][8][9]だけで他は効果音のようなもの。[5]はアコースティック・バージョン。[8]はクリムゾン流コテコテのブルースでアイランズ・クリムゾン時代に他のメンバーのブルース趣味と音楽性の不一致で揉めていたのは既に過去のことということか。なぜか[9]を別録音で再収録。ところがブリューの後半のギターが暴れまくっていてなかなかカッコいい仕上がり。次作への手の内を見せる手法はそのときは嬉しいんだけれど、その次作が届いたときに新鮮味がなくなるということも後で感じてしまったのも事実ではある。(2006年7月22日)


The Power To Believe

曲:★★★★
演奏:★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
2002/7/8-8/30
Released in 2003

[1] The Power To Believe I:
   A Cappella
[2] Level Five
[3] Eyes Wide Open
[4] EleKtric
[5] Facts Of Life: Intro
[6] Facts Of Life
[7] The Power To Believe II
[8] Dangerous Curves
[9] Happy With What You Have
                    To Be Happy With
[10] The Power To Believe III
[11] The Power To Believe IV: Coda
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g,)
Trey Gunn (warr guitar,
      fretless warr guitar)
Pat Mastelotto (ds)

Produced by
     KING CRIMSON and
     Machine [2]
2002年に「Nuovo Metal」を標榜したミレニアム・クリムゾンの完成形。「The ConstruKction Of Light」後のツアーで鍛え上げられたこともありバンドとしての成長が感じられる。"Power To Believe" というインタールード的な小曲をいくつか散りばめ、アルバムとしての統一性を出そうとしているところは「In The Wake Of The Poseidon」の"Peace"の手法と類似したもので結果的に全体を通して聴きやすい印象を与えることに成功している。サウンドはより洗練され、まとまりが出ていながらメタルっぽい荒々しさも消えていないところが良い。トレイ・ガンは相変わらず地味で面白みがないけれど、マステロットは彼なりに工夫していると思う。完成度は「The ConstruKction Of Light」よりこのアルバムの方が上でしょう。一方、この後の方向性が見えなくなっていて行き詰まりを感じるのも事実。余談ながらフリップはスタジオ盤ではCD一杯の収録時間を使わず60分以内に収めている。これはアルバムの聴きやすさを考慮したものではないかと推察。曲があるからといって CD一杯に詰め込んでしまうと、まとまりがなくなりダレてしまうことをゆくわかっているフリップの慧眼によるものではないかと思う。(2006年7月19日)

The Power To Believe Tour Box

曲:★★
演奏:★★★
入門度:★
評価:★★
[1]-[7] Sushi On Street
         - Press Conference
[8] Happy With What You Have To Be
Happy With
 2002/5/20
[9] Sushi On Street
         - Press Conference
[10] Message 22
 2002/3/11
[11] Emerald Banter
 2002/Aug
[12] Superslow
 2002/Aug
[13]-[19] UMJ Officers Japan
         - television interview
[20]-[22] Sus-tayn-Z Suite
 2002/Aug
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g,)
Trey Gunn (warr guitar,
      fretless warr guitar)
Pat Mastelotto (ds)
2003年ジャパン・ツアーのときに会場で販売されていたもの。会場ではパンフレットの販売がなく、このCDがその代わりに売られていたと記憶している。現在は DGM Live! からオンラインで購入可能。内容は[1]-[7][9]が2003年1月のプレス・カンファレンス。[13]-[19]が2002年10月、日本でのテレビ・インタビュー。音楽が入っているのは8曲で合計23分弱。[8]はかなりラフな仕上がり。[10]は三味線のような音にエフェクトのかかった声がかぶさる妙な曲でアルバムには入りそうにないリハーサルっぽい演奏。それでも決してレベルは低くないのはこれまでのクリムゾンの実績通り。[11]は[8]のさらにおまけみたいなもの。[12]もリハーサルっぽいけれど、スロー・テンポの重いリズムでこのラインナップらしい演奏。[20]-[22]はフリップによるサウンドスケープ。というわけでマニア以外は手を出す必要ありません。個人的にはコンサートに行ったときの思い出の品という感じ。尚、iTunesにこのCDを入れるとジャンルがAlternative & Punkと出てきて海外でのクリムゾンのポジションを垣間見ることができる。(2006年7月30日)

Frame By Frame: The Essential King Crimson

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★
Disc 1 (1969-1971)
[1] 21st Century Schizoid Man
[2] I Talk To The Wind
[3] Epitaph
[4] Miinchild
[5] In The Court Of The Crimson King
[6] Peace - A Theme
[7] Cat Food
[8] Groon
[9] Cadence And Cascade (remix)
[10] The Sailor's Tale (ablidged)
[11] Ladies Of The Load
[12] Borelo (remix)

Disc 2 (1972-1974)
[1] Larks' Tongues In Aspic: Part I
     (abridged)
[2] Book Of Saturday
[3] Easy Money
[4] Larks' Tongues In Aspic: Part II
[5] The Night Watch
[6] The Great Deciever
[7] Fracture (abridged)
[8] Starless (abridged)
[9] Red
[10] Fallen Angel
[11] One More Red Nightmare

Disc 3 (1981-1984)
[1] Elephant Talk
[2] Frame By Frame
[3] Matte Kudasai
[4] Thela Hun Ginjeet
[5] Heartbeat
[6] Waiting Man
[7] Nerotica
[8] Requiem
[9] Three Of A Perfect Pair
[10] Discipline
[11] The King Crimson Barber-Shop

Disc 4 (Live 1969-1984)
[1] Get Thy Bearlings & Variations
[2] Travel Weary Capricorn
[3] Mars
[4] The Talking Drum
[5] 21st Century Schizoid Man
[6] Asbury Park
[7] Larks' Tongues In Aspic: Part III
[8] Satori In Tangiers
[9] Indiscipline
Disc 4 recording tracks are
also available ...

[1] [2] are also available in
Epitaph Vol.3

[3] is also available in
<Club 25> Live At Fillmore
East 1969

[4] [5] are also available in
The Nightwatch

[6] is also available in USA

[7] [8] are also available in
Absent Loves

[9] is also available in
<Club 4> Live At Cap
D'Agde 1982
CDプレイヤーが一般家庭に普及はじめたのは確か86年頃だったと記憶している。当初、アナログ旧作のCD復刻が進み、それがひと段落した90年頃から今度は大物たちのボックス・セットが次々と出始めた。エリック・クラプトン、レッド・ツェッペリン、イエス、ピンク・フロイドなどがこのブームに乗って、さまざまな内容でリリース。レコードのような重厚さに欠けるCDに不満の声を持つアナログ派の欲求も満たすべく LPサイズに近い箱に豪華ブックレットを付けるという手法が定番だった。キング・クリムゾンもそのブームに乗って(?)ロバート・フリップ自ら全面的に制作に取り組んだボックス・セットを91年についにリリース。それがコレ。
個人的には Disc 1と3はこの時期のベスト盤として単体リリースしても良い選曲、内容だと思う。Disc 2は収録時間の都合から仕方のないこととはいえ肝心な部分が削られて収録されている曲が多いのはやはりいただけない。Disc 4 は当時はすべて入手不可能な音源ばかりで超目玉的存在だったんだけれども、今ではそれぞれの日のライヴ全体(かそれに近い状態)がリリースされているので価値はなくなった。Disc 1 [9]のヴォーカルがハスケルからブリューに、[9]と[12]のベースがやはりハスケルからトニー・レヴィンに差し替えられていることもトピックだったけれど、これらの音源も今では「Lizard」の40周年記念盤や「Sailors' Tale」ボックスに収録されている。4枚通して聴きながら読んでも最後まで辿り着けない豪華ブックレットはなかなか読み応えがある。
このボックス・セットを入手した当時、80年代クリムゾンは「Discipline」しか聴いておらず印象が良くなかった。でも、Disc 3を聴いてから良さを理解できるようになったこともあって僕にとってはディシプリン・クリムゾンを理解するのにおおいに役立った思い出のボックス・セットでもある。Disc 4の内容を見ながら、こんなに音源があるのなら1ステージ分コンプリートで出してよ、と思ったものだけれど、まさかそれ以上に凄い音源放出になっていくとは当時は思ってもいなかった。(2019年1月28日)

Schizoid Man

曲:★★★★★
演奏:★★★★
入門度:★
評価:★★
[1] 21st Century Schizoid Man
[2] 21st Century Schizoid Man
[3] 21st Century Schizoid Man
[4] 21st Century Schizoid Man
[5] 21st Century Schizoid Man
[1]-[3]
Greg Lake (vo, b)
Robert Fripp (g)
Ian McDonald (sax)
MIchael Giles (ds, vo)
Peter Sinfield
 (words and illumination)

[4]
Boz Burrell (vo, b)
Robert Fripp (g,)
Mel Collins (sax)
Ian Wallace (ds, vo)

[5]
John Wetton (vo, b)
Robert Fripp (g)
David Cross (violin)
Bill Bruford (ds)
[1]はオリジナルの短縮バージョン。[2]がオリジナルのスタジオ・バージョン。[3]は69年12月25のライヴ。[4]は「Earthbouds」から。[5]は「USA」から。このCDが発売されたのは96年で、当時は[2]以外未発表だったこともあってそれなりに面白い企画だったし、今後リリースされる音源の予告編的な意味合いもあった。これを聴いてまだ見ぬ 「Earthboud」や「USA II(当時はUSAは完全版としてリリースするとアナウンスされていた)」に夢を馳せたことを思い出す。今、強いてレアな点を挙げれば[1]ということになるだろうけれど、ワン・コーラス、中間部、エンディングを削って4分47秒(1分50秒削除)に仕上げただけのもので残念ながらサプライズはない。不思議なのは[5]で「USA」と聴き比べると微妙に違う。クレジットでは同日の録音になっているけれど一体どうなっているんだろう?(2006年7月22日)