Rock Listner's Guide To Jazz Music

King Crimson

キング・クリムゾンはプログレッシブ・ロックの代表的なグループとして絶大な支持を集めている。難解な音楽性、卓越した演奏力を下地にしたインタープレイ、高度なミュージシャン・シップ、売れることをハナから放棄しているその姿勢、さらにロバート・フリップ自身の知性から来る(勿体ぶった調子の)発言の数々が一体となって一種のカリスマ的な存在になっていると評しても過言ではない。

オフィシャル・アルバム以外のクリムゾンの音源は、レッド・ツェッペリンやマイルス・デイヴィス同様、数限りなく存在する。そんな中、フリップ自身が過去の音源を蔵出しすることにかなり熱心で、時にはブートレグ(海賊盤)をリマスタリングして発売してしまうという荒業まで使ってアーカイヴ発掘に精を出す様から、かなり偏執的な面が見て取れる。これらは「Collectors Club」として DGM Live! というサイトで購入することができるけれど、音源に手を出すのは泥沼にハマることを意味するので決してお勧めはできない。

余談ながら以前英会話教室に通っていたとき、いろんな国の人たちと時に音楽談義になることがあった。ロック・グループについて話をするときに、イエス、ピンク・フロイド、ジェネシスという名前は即座に理解してもらえるのに、キング・クリムゾンの名前を出してわかってくれた人には一度も遭遇したことがない。諸外国に較べて日本での人気は異常ということは聞いたことがあるんですが、日本以外ではかなりマイナーなグループであるというのは本当のことのようです。

コレクターズ・クラブについて


ロバート・フリップ自らの意思により貴重な音源をリリースしてマニアを喜ばせている(否、地獄に陥れる)のがコレクターズ・クラブ。古い音源は、最新のデジタル技術で最良の状態に仕上げてリリースするという徹底振りで、しかし、その音源が実はブートレグだったりするところなどはファン・サービスとしても、いささか過剰な感がある。マニアは「こんなに似たような音源ばかりを買い揃えて意味があるのか?」とか「貴重な音源だからといってこの音質のものを喜んでいいのか」と自問自答しながらもその泥沼に嵌ってい行く。

このコレクターズ・クラブは国内盤ではコレクターズ・キング・クリムゾン・シリーズとしてリリースされている(されていた)。普通の CD ショップで買えて、しかも読むのも億劫になるほどの文章量のブックレッに翻訳がついているというのは大変ありがたく、こんなマニアックなものまで発売してくれたポニー・キャニオン(その後、ユニバーサル・ミュージック→WHDエンタテインメントへ移管)には、まったくもって頭が下がる。しかし、途中から徐々にブックレットも薄くなり、また内容も薄くなってきたこと、ProjeKct シリーズや2000年以降のクリムゾンも含まれるようになって、特に欲しいと思っていない音源を抱き合わせで買うのがムダに思えてきたため僕は欲しいものだけ DGM へメール・オーダーするという方針に変更した。DGM download を含めると膨大な音源が入手可能になってしまった今、すべてを購入することに限界を感じたので割り切るしかなくなってしまったのだ。埋もれた良質かつ貴重な音源を出し惜しみするミュージシャンもファンをイライラさせるけれど、ここまで出されるのもなんだかちょっと迷惑な気持ちにさえなってしまうという余りにも身勝手な態度を取る自分に引け目を感じつつ、飢餓感を与えるのも必要ではないかとフリップに言ってみたい気もする。

また国内盤コレクターズ・シリーズは曲がカットされていたり、部分的に編集を加えているものも少なくないので、こだわりを持つ人にとっても DGM からの直接購入がお勧め。(追伸:現在の国内盤Collector's King Crimson BoxではDGMオリジナル盤と同じ内容になっているようです)

コレクターズ・クラブとは別の、DGM Live! には、このシリーズに含まれていない貴重な音源も販売されているので気になる人はチェックしてみてもいいでしょう。余談ですが<DGM Live!> London, Jazz Cafe, England 1997 をダウンロードした2ヵ月後、DGM からメールが来て、Additional live material was recently discovered in the archives for the DGM Live release - ProjeKct One, Dec. 4, 1997 ということだったので、確認してみるとその中の1曲が長くなっていて再度購入することなくダウンロード可能になっていたことがあった。また、<Club 16> Live In Berkeley 1982 はピッチが速かったという理由で、修正した音源を無料で配布している(後に通常通り有償になったようだ)、というように実に良心的な一面もあることを付け加えておきたい。