Rock Listner's Guide To Jazz Music


Live Album


Epitaph Vol.1 & 2

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★
評価:★★★★☆
Volume.1
BBC Studio Sessions
[1] 21st Century Schizoid Man
[2] In The Court Of
                 The Crimson King
[3] Get Thy Bearlings
[4] Epitaph
Fillmore East 1969/11/21
[5] A Man A City
[6] Epitaph
[7] 21st Century Schizoid Man
Fillmore West 1969/12/12or13
[8] Mantra
[9] Travel Weary Capricorn
[10] Improv:
     Travel Weary Capricorn
[11] Mars

Volume.2
Fillmore West 1969/12/14
[1] In The Court Of
               The Crimson King
[2] Drop In
[3] A Man A City
[4] Epitaph
[5] 21st Century Schizoid Man
[6] Mars
Greg Lake (vo, b)
Robert Fripp (g)
Ian McDonald (woodwind,
        key, mellotron, vo)
Michael Giles (ds, vo)
Peter Sinfield (illumination)
ロバート・フリップの「劣悪音源復旧プロジェクト」はこのアルバムから始まった。音源はメンバーが所有していたカセット、マニアが所有していたエア・チェックのテープ、そしてブートレグからと、およそ常識では考えられないもので、これを最新のテクノロジーで復元して1997年にリリース。よって音質はお世辞にも良いとは言えない。このラインナップの正式音源はスタジオ録音(In The Court Of The Crimson King)しか残されておらず、その後、ボックス・セット「Frame By Frame: The Essential King Crimson」で一部ライヴ音源が発表されていただけだったということもあって、たとえ音が悪くとも未発表曲まで入ったこのメンバーによるライヴ演奏をたっぷり聴けるこのアルバムにマニアは狂喜した。

まずは、ひとくくりにされている [1]-[4]の BBC セッションから。[1][2]は69年5月6日録音で5月11日に英国TV番組「トップギア」で放送されたもの。1stアルバムのスタジオ録音直前ということもあり、アルバム・バージョンと雰囲気はさほど変わらない。[1]はイタリアのブートレグからの復刻。[2]はBBCが所有していたもの。どちらも音質はクリアとは言えないが、まずまず聴ける。[3][4]は8月19日録音で同番組9月7日放送。[3]のマスターテープは放送時に録音していたファンのものを使用していて音は悪いが、この曲のスタジオ録音は恐らくこれだけ。[4]はBBCのマスタからで音質は良好。

フィルモア・イーストの音源は、録音は8トラック・レコーダーで行われたが、マスター・テープは消失し、マイケル・ジャイルズが所有していたマスターのコピーから復元。この音源は後に「<Club 25> Live At Fillmore East」で復刻している。

フィルモア・ウェスト公演のマスターは不明だが、イーストと同じような音質。後述の通り、クレジットの14日は最終公演なので12日か13日の音源と思われる。

Vol.2 は12月14日のフィルモア・ウェスト公演、で第一期最終ライヴを完全収録。まともな音質の音源がほとんどない中、これが一番良い音質。マスター・テープはサウンドボードからテープレコーダーで録音したもの。そのマスター・テープは[5]終了後の歓声、拍手がなかったらしく、ブートレグから挿入してコンサートの連続感を出すという涙ぐましい作り込みをしている。演奏はこのラインナップにとっては平均的なもの。尚、CD箱の裏面には確かに12月16日と書いてあるものの、オリジナル・クリムゾンの最終公演は現在のDGMサイトでは12月14日と書かれており、14日が正しいようだ。

通して聴くと、スタジオ盤では完璧に構築されていた演奏が、ライヴでは意外とラフでアンサンブルなどは結構危なっかしいところがあることもわかる。しかし、漲るエネルギーと決めるところはしっかり決めている高度な演奏、未発表曲で聴ける多面性、"Mars"におけるカオスなど、聴きどころは満載でマニアは必聴。(2013年10月25日)

Epitaph Vol.3 & 4

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★
評価:★★★★
Volume.3
Pumpton Festival 1969/8/9
[1] 21st Century Schizoid Man
[2] Get Thy Bearlings
[3] In The Court Of
                 The Crimson King
[4] Mantra
[5] Travel Weary Capricorn
[6] Improv including
             By the Sleepy Lagoon
[7] Mars

Volume.4
Chesterfield Jazz Club 1969/9/7
[1] 21st Century Schizoid Man
[2] Drop In
[3] Epitaph
[4] Get Thy Bearlings
[5] Mantra
[6] Travel Weary Capricorn
[5] Improv
[6] Mars
Greg Lake (vo, b)
Robert Fripp (g)
Ian McDonald (woodwind,
        key, mellotron, vo)
Michael Giles (ds, vo)
Peter Sinfield (illumination)
「Epitaph Vol.1 & 2」で、ブートレグもどき(ブートレグそのもの?)の音源を最新のテクノロジーで復刻させるという荒業に出たフリップが、さらに音質に難のある音源にまで着手して第2弾として発売したのがこのアルバムで、音の悪さ故にDGMのメール・オーダーのみで販売されていたものを、クリムゾン人気の高いここ日本では正式にリリース(ポニー・キャニオンは熱心だったなあ)。今思えばコレクターズ・クラブのさきがけ的なアルバム。

Vol.3はアナログを含む5枚のブートレグを組み合わせて復元したとのことで、音質はその通りのレベルではあるものの、楽器の音の分離はまずまずでブートレグとして見れば悪くない。[2][5]は「Frame By Frame: The Essential King Crimson」で先に発表されていたもので、ここでは1ステージのコンプリート盤として聴ける。

Vol.4はフリップの所有していたカセット・テープからの復元。音質はVol.3同様に悪いけれど、こちらの方はクラブでの録音ということもあり反響音が少ないという違いがある。演奏は引き続ハイ・レベル。[1]のエンディングでスタジオ録音と同じ形を取っているのがレア。 Disc 2 [2]は後の"The Letters"の原型で、この時期から演奏していた曲だったことがここで正式に判明(ブート・マニアは知ってたのでしょうが)。(2006年7月15日)

Earthboud

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★☆
評価:★★★☆
[Recording Date]
1972/2/11 [1] [5]
1972/3/10 [2]
1972/2/26 [3]
1972/2/27 [4]

[1] 21st Century Schizoid Man
[2] Peoria
[3] The Sailor's Tale
[4] Earthbound
[5] Groon
Boz Burrell (vo, b)
Robert Fripp (g, mellotron)
Mel Collins (sax, mellotron)
Ian Wallace (ds, vo)

Produced by Robert Fripp
[2]は<DGM Live!> The Barn, Peoriaで、[3]は「<Club 2> Live At Jacksonville 1972」で、[4]は「<Club 23> Live In Orland 1972」で今では聴くことができるようになったし、またアナログの収録時間による制約から途中でのフェード・アウトまたは途中からのフェード・インするなど編集されている曲が多いこともあって、今となってはやや価値が下がった感のあるアイランズ・クリムゾン唯一の正式ライヴ盤。発売当時から音の悪さは有名だったようでCD化されるのにずいぶん時間を要したのもその影響か。音が悪くとも、このアルバムが幻の逸品だったのはクリムゾンにとって初のライヴ・アルバムだったということ、このラインナップ唯一のライヴ音源だったこと、という要因があるけれど、やはりなんと言っても演奏が凄まじかったからというのが一番の理由でしょう。[1]を除いてヴォーカルなしのジャム風のハードなインストゥルメンタルという構成は、どのような意図があったのか謎で、知性には欠けるもののブルース・フィーリングを持ち味とした異色プログレ・ユニットとしてこのランナップならではの凶暴な一面を凝縮したものであることは確か。フリップのギターのカッティングにファンク風味を感じる[2]もこの時期ならでは。サックス奏者としてもっと評価されてもいいメル・コリンズはイアン・マクドナルド以上の激しさをもったインプロヴァイザーであることを証明しているし、ウォーレスのドッタンバッタンした騒々しいドラム(エルヴィン・ジョーンズとトニー・ウィリアムスが師匠と言っているけれど?)もスタジオ録音ではわかりにくかった部分。このラインナップのライヴ音源は現在数多く入手可能になっているし、「Sailors' Tale」ボックスで曲を追加したアップデート版になってもいるけれど、荒っぽいジャム系の演奏が好きな人にはダイジェスト盤として今でもお勧めできる。(2019年1月31日)

Ladies Of The Road

曲:★★★★★
演奏:★★★★☆
入門度:★★
評価:★★★☆
[Recording Date]
1971/4/12-15 [7]
1971/5/11 [2]
1971/11/13 [3] [5] [9]
1972/3/12 [1] [4] [6] [8]

[1] Picture Of A City
[2] The Letters
[3] Formentera Lady (abridged)
[4] The Sailor's Tale
[5] Curkus
[6] Groon
[7] Get Thy Bearings
[8] 21st Century Schizoid Man
[9] The Court Of The Crimson King
Boz Burrell (vo, b)
Robert Fripp (g, mellotron)
Mel Collins
       (sax, fl, mellotron)
Ian Wallace (ds, vo)
Peter Sinfield
(FOH sound & VCS)
Disc 1はコレクターズ・クラブなどで既に発表済みの音源ばかり。コレクターズ・クラブをいろいろ集めるのはちょっと、というライト(?)なファンにはいいかも。Disc 2と合わせてフリップはアイランズ・クリムゾンを総括したかったのだろうか。そのDisc 2 はアイランズ・クリムゾンによる数ある"21st Century Schizoid Man"のライヴ演奏から、中間部をつなぎ合わせて54分間の狂乱に仕上げた編集好きのフリップならではの企画。ただひたすらフリップとコリンズのソロが延々と続く。こと演奏のワイルドさについては折り紙つきのアイランズ・クリムゾン。歪んだギターとフリーキーなサックス、音が悪いが故にさらに異様なエネルギーを発しているように聴こえる激しいドラムにより、脳を刺激し続けるところが「THRaKaTTaK」と大きく異なるところ。いや、むしろ激しさのエッセンスを凝縮したものであるだけにカオスがまた一段と際立ち、この際、この曲がこのメンバーのオリジナルでないことなどどうでもよくなってくる。尚、オビには「クリムゾン版ビッチェズ・ブリュー」と書かれているけれど、アチラはテオ・マセロの編集によって演奏の断片から曲を構成しているのに対して、コチラは形のある曲を編集によってより解体されたものとして聴かせているので本質はだいぶ違うと思う。それにしても、音質もテンポもバラつきがあるはずの音源を組み合わせて、よくもこんな長尺ものに仕上げたものだと感心していると、終盤に急に無音部分が続き、最後はいきなりブッツリと切れて終了。あくまでもお遊び企画なので真に受け止めて分析しないようにしましょう。オルタナ系やトランス系が好きな若い人が聴いたらどう感じるんだろうか。(2006年7月18日)

The Nightwatch

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1973/11/23

Disc 1
[1] Easy Money
[2] Lament
[3] Book Of Saturday
[4] Fracture
[5] The Night Watch
[6] Improv:
     Starless And Bible Black

Disc 2
[7] Inprov: Trio
[8] Exiles
[9] Improv: The Fright Watch
[10] The Talking Drum
[11] Larks' Tongues In Aspic Pt II
[12] 21st Century Schizoid Man
John Wetton (vo, b)
Robert Fripp (g, mellotron)
David Cross
   (violin, viola, mellotron)
Bill Bruford (ds)
今では掃いて捨てるほどある第3期キング・クリムゾンの音源、しかし、CDショップで普通に買えるライヴ盤は豪華4枚組の「The Great Deceiver」(後に2セットに分割)を除くと本作と、だいぶ後になってリリースされた「USA」だけ(2021年現在、コレクターズクラブの一部はAmazonで買えるものもあります)。そういう意味でまずはこのアルバムから入るのは良い選択かもしれない。時期的には、このラインナップで活動を始めて約1年と脂が乗ってきた絶好のタイミング。実はこの時期あたりから演奏の自由度は後退しはじめていると思う。代わりに曲のクオリティは高くなっており、ある程度曲の枠組みがある中で自由度が高い演奏という骨組みができあがってきている。即興演奏を必要以上に持ち上げる人がいるけれど、本当に即興でバンドとして演奏できる曲というのは単調な曲でないと無理ということはジャズの世界でも同じで、意外とつまらないもの。そういう意味で複雑極まりないな構成と、その中で演奏の自由度を併せ持つこの時期のクリムゾンは他では得がたい魅力がある。このアムステルダム公演はマニアには古くから有名な音源で、それは[4]、[5]の冒頭、[6]、[7] が、そのまま「Starless And Bible Black」に収録されているから。あのアルバムで聴けた緊張感溢れる充実した演奏で他の曲も堪能できるところがこのアルバムの魅力。[9]以降の後半の怒涛の展開に何も感じない人は、キング・クリムゾンなどというややこしい音楽を必要としていない人なのでさっさと見切りをつけた方がいい。曲の構成と自由度の高い演奏が極上のレベルでバランスしたこの日は名演と呼ぶにふさわしい。(2007年3月21日)
「Straless」ボックスに収められている音源はリマスターによる変化が小さくない。音がよりクリアになり、シャリシャリ感、フランジャーかかった感じがなくなった。ギターの妙な響きが抑えられており、ベースの音に芯のある太さと立体感ある。逆に言うとスタジオ録音のようなタイトな音像になっているのでそこは好みが分かれるかもしれない。この期に及んで "Easy Money" より前の曲の音源が出てこなかったということはテープは残っていないということなんでしょう。(2014年11月16日)

The Great Deceiver

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★
評価:★(今となっては)
Disc 1
Palace Theatre, Providence, RI:
1974/6/30
[1] Walk On ... No Pussyfooting
[2] Larks' Tongues In Aspic: Part 2
[3] Lament
[4] Exiles
[5] Improv: A Voyage To The
       Centre Of The Cosmos
[6] Easy Money
[7] Improv: Providence
[8] Fracture
[9] Starless

Disc 2:
Providence ... continued (encore)
[1] 21st Century Schizoid Man
[2] Walk Off From Providence ...
    No Pussyfooting
    Walk On to Glasgow ...

Glasgow Apollo:
1973/10/23
[3] Sharks' Lungs in Lemsip
[4] Larks' Tongues In Aspic: Part 1
[5] Book Of Saturday
[6] Easy Money
[7] We'll Let You Know
[8] The Night Watch
[9] Improv: Tight Scrummy
[10] Peace - a Theme
[11] Cat Food

Penn State University:
1974/6/29
[12] Easy Money
[13] ... It Is For You, But Not For Us

Disc 3:
Pittsburgh, PA - Stanley Warner
Theatre:
1974/4/29
[1] Walk On ... No Pussyfooting
[2] The Great Deceiver
[3] Improv: Bartley Butsford
[4] Exiles
[5] Improv: Daniel Dust
[6] The Night Watch
[7] Doctor Diamond
[8] Starless
[9] Improv: Wilton Carpet
[10] The Talking Drum
[11] Larks' Tongues In Aspic: Part 2
(abbreviated)

Penn State University:
1974/6/29
[12] Applause & Announcement
[13] Improv: Is There Life Out There?

Disc 4:
Toronto, Massey Hall:
1974/6/24
[1] Improv: The Golden Walnut
[2] The Night Watch
[3] Fracture
[4] Improv: Clueless & Slightly Slack

Zurich Volkshaus:
1973/11/15
[5] Walk On ... No Pussyfooting
[6] Improv: Some Pussyfooting
[7] Larks' Tongues In Aspic: Part 1
[8] Improv: The Law Of Maximum
Distress: Part One
[9] Improv: The Law Of Maximum
     Distress: Part Two
[10] Easy Money
[11] Improv: Some More Pussyfooting
[12] The Talking Drum
John Wetton (vo, b)
Robert Fripp
     (g, mellotron, elp)
David Cross
     (violin, viola,
            mellotron, elp)
Bill Bruford (ds)
「Frame By Frame: The Essential King Crimson」リリースの翌92年、突如として発売された第3期キング・クリムゾンのライヴ集。全曲未発表音源でしかも4枚組というボリュームのこの箱を店頭で見つけた僕は、値段も見ずにレジへ直行したことを覚えている。当時このラインナップのライヴ音源は「USA」を含め一切CD化されておらず、聴いたことがなかったのだからその興奮も仕方がない。そして中身を聴いてまた呆然。なんというスゴイ演奏なのか。ライヴでこのレベルの高さは何なんだと。既存の曲を高い自由度をもって演奏するだけでなく、ライヴならではのインプロヴィゼーションが多く収録されていることが最大の魅力で、未発表曲もあり、Disc 2 [10][11]のようなこの時期(73年後半)だけ演奏された貴重なテイクもあり、もったいぶったフリップの解説を含む読みきれないほどの量を誇る豪華ブックレットもありという内容で、他のアーティストも含めてここまで濃いライヴ盤のボックスは今もって空前絶後だと思う。以降もこのラインナップの音源は、コレクターズ・クラブも含めて無数出ているけれど、このラインナップが好きな人ならばこのボックスは必携(ちなみに、ここに収録されている音源は拡張版としてコレクターズ・クラブでリイシューされているものもある)。クリムゾンは音質的に難がある音源もリリースしていて「まあ、貴重な音源だからこの音質でも仕方ないか」というあきらめ感を抱かせるものが少なくないけれど、音質面でもこのボックスはすべてが上物と言える。

Disc 1 [7] mprov: Providence は「Red」に収録されているものの元音源で曲が終わった後の余韻が続いているところまで聴ける。Disc 2 [7] We'll Let You Know は「Starless And Bible Black」に収録されている音源。

Disc 2 [3]-[11]は<DGM Live!> Apollo, Glasgow, Scotlandとして、Disc 2 [12][13]、Disc 3 [12][13] は<DGM Live!> Penn State University, University Park, Pennsylvania として後に公開されている。

尚、現在このボックスはリマスターされて Disc 1&2 と Disc 3&4 でバラ売りされている。
(2006年7月25日)

「Road To Red」ボックスで74年春の北米ツアーを一斉に蔵出し、ブラッシュアップした今、音源コレクションとしてはこのボックスの意義はなくなってしまった。「Road To Red」の対象から外れている73年10月23日の音源は DGM Live! で完全版を入手できるのでこちらももう価値がない。「Great Deciever」ボックスを出したとき、今のようにアーカイヴを大放出することも考えていたのだとしたら大した「詐欺師」である。(2013年11月4日)

USA


曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1974/6/28

[1] Walk On
[2] Larks' Tongues In Aspic Pt II
[3] Lament
[4] Exiles
[5] Improv: Asbury Park
[6] Easy Money
[7] 21st Century Schizoid Man
[8] Fracture
[9] Starless
John Wetton (vo, b)
Robert Fripp
     (g, mellotron, elp)
David Cross
     (violin, viola,
            mellotron, elp)
Bill Bruford (ds)
アナログ時代からあった、このラインナップによる最古のオフィシャル・ライヴ音源。僕がクリムゾンを聴き始めた88年ころにはCD化されておらず、幻のアルバムだった。その後、これでもか、というくらい大量の音源(「The Great Deceiver」「The Night Watch」他)が出てきたためにその飢餓感が薄れてしまったのも事実ながら、出たら出たで喜んでしまうのがマニアの悲しい性。アナログ時代から[8][9] が追加されたこのアルバムは、1枚モノということもあり第2期クリムゾン初心者には最適なライヴ・アルバムと言って差し支えない。演奏はもちろん非常に充実しており、[6]がフェード・アウトしてしまうこと以外に大きな不満はなく安心してお勧めできる。ただし、アナログ時代同様どういうわけか[2][7]でバイオリンを、[3]ではピアノをエディ・ジョブソンの演奏に差し替えているのが不可解。ジョブソンのオーバーダブのないオリジナル音源である「<DGM Live!> Casino, Asbury Park, New Jersey」が配信されている今、このアルバムの価値は一般のCDショップで単品で買えることくらいになってしまったような気がする。(2006年7月18日)

Absent Loves


曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1984/7/11

Disc 1
[1] Entry Of The Crims
[2] Larks' Tongues In Aspic
Part V
[3] Thela Hun Ginjeet
[4] Red
[5] Matte Kudasai
[6] Industry
[7] Dig Me
[8] Three Of A Perfect Pair
[9] Indiscipline

Disc 2
[10] Satori In Tangier
[11] Frame By Frame
[12] Man With An Open Heart
[13] Waiting Man
[14] Sleepless
[15] Larks' Tongues In Aspic Part U
[16] Discipline
[17] Heartbeat
[18] Elephant Talk
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g)
Tonny Levin (stick, b)
Bill Bruford (ds)
98年5月に突然リリースされた80年代クリムゾンの最終公演。発表された時期はダブル・トリオの活動がひと段落したころで、なぜこの時期に?という思いは少なからずあった。僕はもともとこのラインナップの熱心なファンではなかったんだけれど、ダブル・トリオでのパフォーマンスに触れているうちに「この4人も結構いいかも」と思うようになってきて、そんなタイミングのときに聴いたこのアルバム。結論から言うと実に素晴らしい。スタジオ盤よりもダイナミックで、このグループの真価はライヴにあるということを強烈に見せつけられる。2枚組、100分超という収録時間でも長さが気にならないほどの圧倒的パフォーマンス。この後、同ラインナップの音源はコレクターズ・クラブから多数出てはいるけれど内容的にはこのアルバムが抜きん出て充実している。録音状態の良さ、音のバランスの良さも言うことなし。セットリストもこのアルバムがもっとも充実している。このアルバムを聴けばダブル・トリオ・クリムゾンが、80年代クリムゾンの発展型であることが良くわかる。何かと拒絶反応を受ける80年代クリムゾン、でもそういう人にこそこのアルバムを聴いてほしい。これを聴いてもダメと感じたら80年代クリムゾンは無理して聴かなくてもいいと思う。(2006年8月1日)

B'Boom

曲:★★★★☆
演奏:★★★★☆
入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1994/10/6-16

Disc 1
[1] VROOOM
[2] Frame By Frame
[3] Sex, Sleep, Eat, Drink, Dream
[4] Red
[5] One Time
[6] B'Boom
[7] THRAK
[8] Improv: Two Sticks
[9] Elephant Talk
[10] Indiscipline

Disc 2
[1] VROOOM VROOOM
[2] Matte Kudasai
[3] The Talking Drum
[4] Larks' Tongues In Aspic Pt U
[5] Heartbeat
[6] Sleepless
[7] People
[8] B'Boom
[9] THRAK
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g, soudscape)
Trey Gunn (touch guitar)
Tonny Levin (stick, b)
Pat Mastelotto (ds)
Bill Bruford (ds)
94年に活動を再開したキング・クリムゾンは肩慣らしを兼ねて南米ツアーからライヴ活動を開始。当然、ブートレグが出回ることをフリップは予想してすぐにその音源をライヴ・アルバムとしてリリースしてしまった。よって、サブタイトルは「official bootleg - live in argentina」。あまりの荒業に笑ってしまうと同時に、このユニットに対するフリップの自信のようなものまで感じてまう。まだ、アルバム「THRAK」がレコーディングされる前のライヴで「VROOOM」で披露された曲の可能性、過去のレパートリーの厚みのあるサウンドをいち早く聴くことができることからリリース当初はおおいに興奮したことを思い出す。まだ演奏には締りがない部分もあるけれど、従来のクリムゾン・ファンも納得させるだけのハイレベルなものでダブル・トリオ初期の演奏をもっとも楽しめるアルバムと言える。個人的には、この時期にしか演奏されていなかった、音の厚みがあって迫力タップリの "Sleepless" がお気に入り。(2007年2月10日)
ダブルトリオ初期の全公演が公開されている今、音源コレクションという意味では価値がなくなったけれど、本作は選別された演奏と曲をまとめたライヴ・アルバムとしてはまだ価値があると思う。(2019年1月10日)

THRaKaTTaK

曲:★
演奏:★★★
入門度:★
評価:★
[Recording Date]
1995/10/1 - 11/29

[1] THRAK
[2] Fearless and Highly THRaKked
[3] Mother Hold The Candle
    Steady While I Shave The
    Chicken's Lip
[4] THRaKaTTak Part I
[5] The Slaughter Of
                     The Innocents
[6] This Night Wounds Time
[7] THRaKaTTaK Part II
[8] THRAK reprise
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g, soudscape)
Trey Gunn (touch guitar)
Tonny Levin (stick, b)
Pat Mastelotto (ds)
Bill Bruford (ds)
ダブル・トリオ・クリムゾンにおけるライヴでのハイライト曲は間違いなく"THRAK"だった。演奏者に高い自由度を与えたこの曲は「VROOOM」で初めて披露されたときから少しずつ形を変えて行き、95年の日本公演のときにはかなり解体されたインプロ曲になっていた。その日本公演の初日、95年10月1日神奈川県民ホールから11月29日シカゴ・ローズモント・シアターまでの41公演からインプロ・パートをまとめて編集したのがこのアルバム。6人による即興を楽しむという意味ではこんなに面白い企画はないけれど、曲という形式を重んじる人にはただの趣味の悪い環境音楽にしか聞こえないに違いない。これ以降、フリップは「Ladies Of The Road」でも"Schizoid Men"で似たようなことをやっていることから、恐らくこの種の編集作業じたいが好きなのでしょう。ただし、このディスクは何度も聴くのはちょっと辛い。一音一音集中して聴かないと面白みが理解できないし、そうかと言ってそんなことしていると集中力が持たない。聴き流すとただの変な音の垂れ流し。怖いもの見たさに一度くらい試してもらってもいいかも知れないけれどお勧めはできない。(2006年7月15日)
Wikipedia(http://en.wikipedia.org/wiki/Thrakattak)には、どの部分をどの公演の音源から取ってきたのかというリストが掲載されているので興味のある方はどうそ。

VROOOM VROOOM

曲:★★★★☆
演奏:★★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1996/8/2-4 (Disc 1)
1995/11/20-22,24,25 (Disc 2)

Disc 1
[1] VROOOM VROOOM
[2] Coda: Marine 475
[3] Dinosaur
[4] B'Boom
[5] THRAK
[6] The Talking Drum
[7] Larks' Tongues In Aspic Part U
[8] Neurotica
[9] Prism
[10] Red
[11] Improv: Biker Babes
                 Of The Rio Grande
[12] 21st Century Schizoid Man

Disc 2
[1] Conundrum
[2] Thela Hun Ginjeet
[3] Frame By Frame
[4] People
[5] One Time
[6] Sex Sleep Eat Drink Dream
[7] Indiscipline
[8] Two Sticks
[9] Elephant Talk
[10] Three Of A Perfect Pair
[11] B'Boom
[12] THRAK
[13] Free As A Bird
[14] Walking On Air
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g, soudscape)
Trey Gunn (touch guitar)
Tonny Levin (stick, b)
Pat Mastelotto (ds)
Bill Bruford (ds)
確か99年頃だったと思う。まだインターネットという言葉が一般に浸透すらしておらず、ネットにある情報じたいもさほど有益なものが非常に少なかった時代、また会社のパソコンでの個人利用にうるさくない良い時代のできごと。フリップが立ち上げたキング・クリムゾン主体のWebサイトには96年のダブル・トリオ編成によるライヴ音源が無償で公開されていた。フォーマットはWMAで容量はそれなりに大きかったけれど、会社のパソコンにダウンロードして、めでたくCD化に成功。このように未発表音源がネットで公開されることを目の当たりにして、今後クリムゾンを骨までしゃぶり尽くすにはインターネットが不可欠になると思い、個人でプロバイダーと契約したことを思い出す。後にこのサイトはDGMとなり、レア音源をDGM Live!で続々と配信。クリムゾンを楽しむのにインターネットが重要になるとの予想は当たっていたものの、ここまで膨大な音源をネットで放出してくるなんて当時は予想できなかった。

Disc 1 は、その思い出深い無料公開されていたメキシコのライヴ音源。しかしネットで配信されていたものとは曲目、曲順ともに少し異なる。[1]と[2]は実際にこの流れで演奏はしておらず編集によるもの。ダブル・トリオ編成でのツアー終盤の演奏ということもあり、演奏は熟れてきている。当時は[8]がと[12]の収録が珍しかった。その[12]は人数が多いだけに音の厚みはある一方、この6人ならではという斬新さや新鮮さはない。また、ブリューのヴォーカルはこの曲に関してはさすがに合っているとは言い難い。それでも特にデキが悪いわけではなくファン・サービスとしては上々。今では96年ツアーの多くは公開されているし、このメキシコ・シティでの3日も全公開されているので音源としてのレア度はなくなった。

Disc 2 はコレクターズ・クラブの「<Club 5&6> On Broadway 1995」と同じ音源から10曲をカットして、[2][3][13] を加え、曲順も入れ替えたもの。ダブル・トリオによる[2]が収録されたことが当時はトピックだったけれど、95年のUSツアーは今ではDGM Live!で全公演分が公開されているから今ではいくらでも聴くことができる。[13]はブリューの独演。

どちらも、最初に発表された音源に少しだけ付加価値を加えて商品性を高めようとしていたもので、今となってはそうした音源的価値はほとんどなくなった。95年と96年ツアーのダイジェスト版という価値があるくらいか。(2022年4月12日)

Cirkus

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★★
評価:★★
Volume 1 - Neon Heat Disease 1984-
1998
[1] Dinosour
[2] Thela Hun Ginjeet
[3] Red
[4] B'Boom
[5] Thrak
[6] 1 ii 2
[7] Neurotica
[8] Indiscipline
[9] VROOOM VROOOM
[10] Coda Marine: 475
[11] Desception Of The Thrush
[12] Heavy ConstruKction
[13] Three Of A PErfect Pair
[14] Sleepless
[15] Elephant Talk

Volume 2 - Fractured 1969-1996
[1] 21st Century Schizoid Man
[2] Ladies Of The Load
[3] A Man A City
[4] In The Court Of The Crimson King
[5] Fracture
[6] Easy Money
[7] Improv: Besancon
[8] The Talking Drum
[9] Larks' Tongues In Aspic Part II
[10] Starless
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g, soudscape)
Trey Gunn (touch guitar)
Tonny Levin (stick, b)
Pat Mastelotto (ds)
Bill Bruford (ds)
99年発売。サブ・タイトルは 「The Young Person's Guide To King Crimson LIVE」 ということで、クリムゾンのライヴ演奏を集めたベスト盤。しかもProjeKctシリーズの音源まで入れているところから察するにフリップにとってはクリムゾンもProjeKctもそれほど距離が離れていないのかという推測が成り立つ。定番の連続曲 Disc 2 [9]-[10]を時代が違う音源で違和感なく組み合わせたりして流れに工夫を凝らしているところも見える。基本的には他のディスク、あるいは映像作品で入手できる音源ばかりで、唯一未発表と思われる Disc 2 [7]はわずか1分33秒のただのインタールード、次の曲へのイントロ程度のもの。ダブル・トリオの音源が多すぎるところがやや不満だけれど、クリムゾンのライヴをとりあえず聴いてみたいという初心者にはいいかもしれない。尚、収録曲の元音源は以下の通り。

Disc 2 [3] [4] 69/12/16
<Club 25> Live At Fillmore East

Disc 2 [1] 72/2/26
<Club 2> Live At Jacksonville

Disc 2 [2]  72/2/27
<Club 23> Live In Orland

Disc [6] [8] 73/11/23
The Nightwatch

Disc 2 [7] 74/3/25
Previously unreleased

Disc 2 [10] 74/4/29
The Great Deceiver

Disc 2 [5] 74/6/24
The Great Deceiver

Disc 1 [2] [13] [14] 84/7/11
Absent Loves

Disc 1 [8] [15] 95/10/5-6
Video 「Live In Japan」
DVD 「Deja VROOOM」

Disc 1 [1] [3] [4] [5] [7] [9] [10]
Disc 2 [9] 96/8/2-4
VROOOM VROOOM

Disc 1 [6] 97/12/1
Live At Jazz Cafe (ProjeKct One)

Disc 1 [11] [12] 98/7/1
<Club 17> Live In Northampton
(2006年7月22日)

Heavy ConstruKction

曲:★★★☆
演奏:★★★☆
入門度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
2000/May-Jul
Release in 2000

Disc 1
[1] Into The Frying Pan
[2] The ConstruKction Of Light
[3] ProzaKc Blues Real Audio
[4] Improv: Munchen
[5] One Time
[6] Dinosaur
[7] VROOOM
[8] FraKctured
[9] The World's My Oyster Soup
     Kitchen Floor Wax Museum
[10] Improv: Bonn

Disc 2
[11] Sex, Sleep, Eat, Drink, Dream
[12] Improv: Offenbach
[13] Cage
[14] Larks' Tongues In Aspic: Part W
[15] Three Of A Perfect Pair
[16] The Deception Of The Thrush
[17] Heroes

Plus enhanced CD live concert video

Disc 3
[1] Sirap
[2] Blastic Rhino
[3] Lights Please (part 1)
[4] ccccSeizurecc
[5] Off And Back
[6] More (And Less)
[7] Beautiful Rainbow Real Audio
[8] 7 Teas
[9] Tomorrow Never Knew Thela
   (including Tomorrow Never
     Knows)
[10] Uboo
[11] The Deception Of The Thrush
[12] Arena Of Terror
[13] Light Please (part 2)
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g,)
Trey Gunn (touch guitar,
        ashbory bass, talker)
Pat Mastelotto (ds)

Disc 3 Produced by
     Pat Mastelotto
     and Bill Munyon
第6期キング・クリムゾンのオフィシャル・ライヴ盤。「The ConstruKction Of Light」の曲がスタジオ盤よりも魅力を増していて、やはりクリムゾンはライヴで本領を発揮するなあと思わせてくれるし、特にトレイ・ガンのプレイがより躍動的になっているところがこのアルバムの価値か。しかし、それでも第4期や第5期のレパートリーを聴くと何かが足りないと感じてしまう。ダブル・トリオの曲は音数が減るから当然と思うかもしれないけれど、ブラッフォードとレヴィンなら別の可能性を模索した演奏を展開していたのではないかと思う。そういう不足感を感じさせてしまうところにガンとマステロットの限界を感じずにはいられない。また、この2人はフリップの従僕である以上の存在感がない。そんなこのラインナップが本領を発揮するのは打ち込み的なリズムをベースにしたインプロながら、これとて逆説的に言えばこのリズム隊は有機的なウネリを作れないということの証でもある。でも、フリップはこの時期そんなリズムを欲していた。そこに第6期クリムゾンの本質が集約されてしまう。Disc 2にはCD-Extraとして45分間のライヴ映像も収録。Disc 3はインプロを編集したものだけれどクオリティは低い。(2007年3月21日)

Level Five

曲:★★★★
演奏:★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
2001/Aug
Release in 2002

[1] Dangerous Curves
[2] Level Five
[3] Virtuous Circle
[4] The ConstrucKtion Of Light
[5] The Deception Of The Thrush
Adrian Brew (vo, g)
Robert Fripp (g,)
Trey Gunn (warr guitar)
Pat Mastelotto (ds)
2001年8月の北米ツアーから。第6期クリムゾンが次のステップとして標榜する「Nuovo Metal」のプレビュー的な役割を果たしたライヴ盤。ミニ・アルバム扱いながらトータル45分で、レコードの時代なら十分フル・アルバムのボリューム。[1]-[3]が新曲で、全体にメカニカルなリズムを強調した独自のオルタナチックな仕上がりは次作への期待を高めるには十分なものだった(まさか、その後にスタジオ盤プレビューとして「Shoganai」が出るとは思っていなかった)。第6期クリムゾンは、曲によってデキの良し悪しの差が激しく、このアルバムでは悪い部分が入っていないこともあって前後のリリースの経緯などをとりあえず忘れてしまえば 1枚のアルバムとして意外とまともに聴ける(2007年2月11日)