Rock Listner's Guide To Jazz Music


Free


Tons Of Sobs

曲:★★★★
演奏:★★★★
入門度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1968/10/8-31
1968/12/17 [7]
Released in 1968

[1] Over The Green Hills Part I
[2] Worry
[3] Walk In My Shadow
[4] Wild Indian Woman
[5] Goin' Down Slow
[6] I'm A Mover
[7] The Hunter
[8] Monnshine
[9] Sweet Tooth
[10] Over The Green Hills Part II

bonus track:
[11] I'm A Mover (BBC Session)
[12] Waitin' On You (BBC Session)
[13] Guy Stevens Blues
[14] Monnshine
    (Alternative Vocal)
[15] Sweet Tooth
    (Early Take & Alt Lyrics)
[16] Vision Of Hell
    (Unreleased Master Mix)
[17] Woman By The Sea
    (Alt Version)
[18] Over The Green Hills
   (BBC Session)
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Produced by Guy Stevens
ポール・ロジャース、18歳(49年12月17日生まれ)。ポール・コゾフ、18歳(50年9月14日生まれ)。アンディ・フレイザー、16歳(52年7月3日生まれ)。サイモン・カーク、19歳(49年7月28日生まれ)。これが7日間でレコーディングされたこのデビュー・アルバム製作時の年齢。演奏は荒削りで若さ溢れるものでありながら、既に引くところや決めるべきポイントをわきまえ、パッションを音に昇華させているのが何よりも驚異的。ロックやジャズにおいては正確に演奏できることが上手いというものではなく、いかに感情を音で表現できるかが大事な部分で、誤解を恐れずに言えばズレたりハズれたりすることは問題ではなく如何にツボを抑えた演奏ができるかの方が遥かに重要。そういった聴かせどころのツボは彼らのルーツであるブルースから学び、習得したのでしょう。この時期、英国はブルースが大流行していてブルース・ベースのロックを演奏するグループが掃いて捨てるほどあった。にもかかわらず、デビュー・アルバムにして他のどのグループにも似ていないオリジナリティが見えることが更に驚異的。後の作品を思えばまだ貫禄や風格のようなものはなく、フレイザーのベースの存在感もまだそれほどではない。ロジャースはオリジナルのメロディを自在に崩して歌い、技術も表現力もとても10代とは思えない。別テイクが聴けるようになった今、更に明らかになったその歌いまわしの柔軟性には舌を巻くばかり。カークのドラムは既にスタイルを確立していて荒々しい演奏の中心的存在。そしてコゾフのギターは全スタジオ作品中、最も流暢に歌いまくっている。ろくに演奏もできず、深みという語彙さえ持ち合わせていないミュージシャン気取りがテレビで大きな顔をしているどこかの国と、10代にしてこれだけの表現ができる土壌を持つ国と、あまりにも大きなギャップに唖然とする。
ボーナス・トラックについて。
[11][12][18]はBBCの番組トップギア出演用に録音されたもので未発表のライヴ音源。[12]はB・B・キングのカヴァーで軽快なテンポのブルース。[18]はテンポを落として演奏されたバージョンで、しんみりというよりはただ寂しくも薄暗い仕上がり。いずれにしても69年のライヴ演奏が聴けるのはありがたいこと。[13]は「Songs Of Yesterday」ボックスで初公開された音源のリミックスでほとんど違いはわからない。[14]はヴォーカルのみ差し替えられたバージョンで、オリジナル・テイクとほとんど歌い方は変えていない。ミックスは若干異なり、ヴォーカルの背後で浮遊するコゾフのギターがクリアに聴こえる。[15]はイントロで一度止めて、再開するところから収録。この冒頭部分がいかにも一発録りのセッションという雰囲気が伝わってきてカッコイイし、全体的にもいい意味で力が抜けた演奏になっていて良い。[16]は本来アルバムに収録される予定だった曲で発売時期が延びるうちにライヴで人気があった[7]を別途スタジオ録音して差し替えられたという曰くつきの曲。「Songs Of Yesterday」ボックス収録テイクと演奏は同じでミックスが若干異なりギター・ソロのときにオルガンのバッキングが入るのが違い。[17]はタイトルが違うけれど実は「Fire And Water」収録の"Remember"で、歌い方、アレンジ、演奏がそれぞれ全く異なる。「Songs Of Yesterday」収録バージョンと基本的に同じで、こちらはイントロとエンディングにピアノが入っていないのが違い。(2006年9月16日)

Free

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1969/1/3-6/29
Released in 1969

[1] I'll Be Creepin'
[2] Songs Of Yesterday
[3] Lying Sunshine
[4] Trouble On Double Time
[5] Mouthful Of Grass
[6] Woman
[7] Free Me
[8] Broad Daylight
[9] Mourning Sad Morning

bonus track:
[10] Broad Daylight
    (Single version)
[11] The Worm (Single version)
[12] I'll Be Creepin'
    (Single version)
[13] Sugar For Mr Morrison
    (Single version)
[14] Broad Daylight
    (BBC Session)
[15] Songs Of Yesterday
    (BBC Session)
[16] Mouthful Of Grass
    (Solo version)
[17] Woman
    (Alternative version)
[18] Trouble On Double Time
    (Early version)
[19] Mourning Sad Morning
    (Alternative version)
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Produced by Chris Blackwell
まだオーソドックスなブルース・ロック・バンド然とした部分を残すファースト・アルバムから長足の進歩を遂げ、早くも完全なるオリジナリティを確立した2作目。まだ17歳のアンディ・フレイザーによる、骨格と躍動の根源を成すベースが際立ち、作曲面でも存在感を示している。ロジャースのヴォーカルには磨きがかかり、コゾフのギターもただのブルース・ギターから一歩踏み出したあの泣きのスタイルがより顕著になり、カークのドラムもよりタイトでパワフルになり、つまりバンドとしての実力が大幅にアップ。まさにリード・ベースと言っても過言ではない骨太の[2]、独自のブルース・ロックを聴かせる[6]、平均年齢20歳以下とは思えぬ深遠な表現を聴かせるスローな[7]と[9]が特に印象深い。よりシンプルでスキマのあるサウンドが完成しつつあり、それでいながら、一気に成熟路線に入る以降のアルバムとはまた異なる若さが聴きどころで、このアルバムをベストとする人がいても不思議のない力作。尚、録音は実質9日間。
ボーナス・トラックについて。
[10][11]は「Songs Of Yesterday」ボックス収録テイクと同じ。[12]はギター・ソロがカットされているだけでなくモノラルのため音の定位感も違う。[13]はベースの印象的なイントロから徐々にテンポを上げてコゾフのギターが絡むと更に盛り上がるインスト曲。「Songs Of Yesterday」収録バージョンと比較すると、こちらはモノラルでエンディング前にフェード・アウトしてしまうのが残念。[14]はコーラスが妙にクリアに聴こえるミックスで、よりテンポを落としてねっとりと演奏される。短いけれどコゾフのギターはいつも通り冴えている。[15]はラフで躍動感に満ちたライヴらしい演奏とヴォーカルを堪能できる。[16]は[5]のアコースティック・ギターのみの演奏。そのギターはアンディ・フレイザー。特に難しいことをしているわけでもない演奏なのにこれが思わず聴き入ってしまう素朴な美しさ。コーラスやコゾフのギターで色づけされた[5]よりこちらの方が心に染みる。[17]はオリジナル・テイクと雰囲気は変わらないが、ギターのオブリガードとエンディングにかけてのソロが加えられていてコゾフ・ファンにはうれしい仕上がり。[18]は「Songs Of Yesterday」収録テイクと同じ。[19]はソロ・パート以外のフルートがカットされたバージョンで、こちらの方が曲本来の良さが出ている。(2006年10月30日)

Fire And Water

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★★★
評価:★★★★★
[Recording Date]
1970/1/11-3/8
Released in 1970

[1] Fire And Water
[2] Oh I Wept
[3] Remember
[4] Heavy Load
[5] Mr. Big
[6] Don't Say You Love Me
[7] All Right Now

bonus track:
[8] Oh I Wept
   (Alt Vocal Take)
[9] Fire And Water
   (New Stero Mix)
[10] Fire And Water
    (BBC Session)
[11] All Right Now
    (BBC Session)
[12] All Right Now
    (Single Version)
[13] All Right Now
    (First Version)

Deluxe Edition
Disc 1
[1] Fire And Water
[2] Oh I Wept
[3] Remember
[4] Heavy Load
[5] Mr. Big
[6] Don't Say You Love Me
[7] All Right Now
[8] Fire And Water
[9] Mr. Big
[10] All Right Now
[11] Remember
[12] Mr. Big
[13] Don't Say You Love Me
[14] All Right Now

Disc 2
[1] Fire And Water
    (US Album Mix)
[2] Oh I Wept
    (Alternate vocal version)
[3] Remember (New Mix)
[4] Don't Say You Love Me
    (New Mix)
[5] All Right Now (First version)
[6] All Right Now (Single version)
[7] Fire And Water (Previously
    released backing track)
[8] Fire And Water
    (Alternate stereo mix)
[9] Fire And Water
[10] Don't Say You Love Me
[11] Mr. Big
[12] All Right Now
[13] Mr. Big
[14] All Right Now (Take #1)
[15] All Right Now (Take #2)
[16] All Right Now (Take #3)
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Produced by FREE
and John Kelly
オリジナル・フリーによる4枚のアルバムには駄作がなく、それぞれに持ち味があってどれか1枚を選ぶのはなかなか難しいけれど、やはりこのアルバムを代表作とせざるを得ない。無駄な音を一切排除、これ以上シンプルで音数の少ないロックは後にも先にもなく、この落ち着き払ったロックを今の若い人が聴いたらただの地味な音楽にしか聴こえないのではないかと思えるほどである。しかし、そのソリッドなサウンドをよく聴けば内に秘めた湧き出るパッションを確かに感じることができる。ロジャースのヴォーカルは既にテクニックも情感の表現も最高潮、しかも若さ溢れる荒削りな面もタップリあって何度聴いても平伏してしまう。コゾフのギターの音数は最小限に抑えられ、それ故に1音1音が輝きを放つようになる。装飾を排除した音楽は更にフレイザーのベースを浮き上がらせ、シンプルなカークのドラムもさらに際立つ、という独特のサウンドを作り上げている。これはフレイザーとロジャースの志向だったようで、ギターの弾き方まで指図するフレイザーに抑圧されたコゾフがフラストレーションを感じ始めたのもこの頃らしい。尚、フリーにとって唯一にして最大のヒット曲[7]は短調極まりない、ある意味フリーらしさから離れた曲で、ライヴ用に気軽に乗れる単純な曲を必要としていたことから良くも悪くも気軽に作られたもの。アイランド・レコードのクリス・ブラックウェルの進言により、シングル・カットしたものの、メンバーはヒットするとは思っていなかったようで特にフレイザーは、「他にもっと成熟した表現を持つ良い曲があるのにと思った」と後に語っている。こんなコメントからも10代とは思えない音楽への深い理解と成熟した感性に恐れ入ってしまう。このアルバムも実質の録音日数はわずか9日間。
ボーナス・トラックについて。
[8]はヴォーカルのみの別テイクで「Songs Of Yesterday」バージョンともヴォーカルが微妙に違うような気がするものの、どちらもそれほど変わらない。ただ、モノラルで音が少し悪い。[9]は「Songs Of Yesterday」ボックスのalternative stereo mixに類似、ヴォーカルもギター・ソロも異なっていてどちらかと言えばオリジナル・テイクの方に近い仕上がり。[10]は BBCでのライヴでよりワイルドなロジャースと、1コーラスが終わるとすぐにギター・ソロに入る展開が特徴。[11]も同日の録音でいかにもスタジオ・ライヴというムード。こちらもロジャースのヴォーカルが生き生きしていることと、ギター・ソロ以降の展開が素晴らしいところが聴きどころ。[12]はサビにコーラスが入ること、2コーラス目のサビの後のコゾフのギター・パートをかなり乱暴にカットしてベースのリフに入ること、ギター・ソロの後いきなりサビになること、ミックスが異なるなど、オリジナルとはかなり違う印象。[13]は「Songs Of Yesterday」収録バージョンと同じ。(2006年10月30日)

Deluxe Editionについて。
まず肝心のアルバム本体の曲は、2001年にリリースされたリマスター盤とずいぶん音質が違う。音の抜け、広がり感がなく、オーディオ的観点から言うと明らかに音が悪い。視点を変えるとモノラルっぽく音に塊感があってアナログ的な味わいがあるのでこちらを好む人もいるかもしれないけれど、フリーの演奏のリアリティを聴くという意味では2001年盤の方が断然素晴らしいと思う。
ボーナストラックについて。未発表曲は5曲。
Disc 1。
[7]はバッキングトラックのレコーディング時の一部。スタジオでの会話など、スタジオの雰囲気が垣間見えるけれど、未発表「曲」と呼ぶのは憚られる。[8][10]は70年6月4日のBBCセッションからで「Live At The BBC」Disc 1の[11][12]と同じ。[9]は69年12月8日のBBCセッションからの未発表曲でかなり音がコモった音質。この日のセッションは「Live At The BBC」に良好な音質で3曲収録されているので、どこかに埋もれていた別マスターテープが発見されたのかもしれない。
[11] → 「Live At The BBC」Disc 2 [4] と同じ。
[12] → 「Live At The BBC」Disc 2 [8] と同じ。
[13] → 「Live At The BBC」Disc 2 [9] と同じ。
[14] → 「Live At The BBC」Disc 2 [11 ]と同じ。
Disc 2。
[1]はUSアルバムバージョンと称されていて未発表扱いではないけれど初めて聴くテイクのように思える。オリジナルより19秒短いところに注目しながら聴いてみると、これがビックリの単にマスターテープのスピードを上げただけのもの。従ってテンポもキーも違ってくる。これは酷い。フリーへの冒涜。
[2]-[5][8]は「Songs Of Yesterday」と同じ。
[9]「Songs Of Yesterday」Disc 4 [3]と同じ
[10] 「Songs Of Yesterday」Disc 4 [5]と同じ。
[11] 「Songs Of Yesterday」Disc 4 [6]と同じ。
[12] 「Songs Of Yesterday」Disc 4 [5]と同じ。
[13] 「Free Live!」の [13]と同じ。
[14]-[16] が初公開の目玉音源。プロモーション・ビデオ撮影時に実際に演奏していたときの言わば本当の音、もちろんビデオではレコードの音が後に被されているので、この演奏の音は日の目を見ることがなかったはずの音源、そして最近発見されたらしい。あるいはこのデラックス・エディションが作られるきっかけはこの音源にあったのかもしれない。演奏はリラックスしていながらタイト、ほかのライヴ演奏とは一味違うだけでなく、毎回歌い方を変えるロジャースのヴォーカルを楽しめる。マニアなら聴く価値あり。(2011年2月19日)

Highway

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★★★
評価:★★★★☆
[Recording Date]
1970/8/18-11/5
Released in 1970

[1] The Highway Song
[2] The Stealer
[3] On My Way
[4] Be My Friend
[5] Sunny Day
[6] Ride On Pony
[7] Love You So
[8] Bodie
[9] Soon I Will Be Gone

bonus track:
[10] My Brother Jake
    (Single)
[11] Only My Soul
    (Single 'B' Side)
[12] Ride On Pony
    (BBC Session)
[13] Be My Friend
    (BBC Session)
[14] Rain
    (Alternative Version)
[15] The Stealer
    (Single Version)
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Produced by FREE
実質録音日数は14日間で前作のわずか半年後にリリースされたオリジナル・フリー最後のアルバム。平均年齢20歳の若者が作ったとは思えない成熟した表現の数々に感嘆する。そして"All Right Now"の二番煎じがないところに彼等の音楽家としてのプライドと自信が表れている。反面、シングルどころかアルバムもまったくヒットしなかったことが解散に繋がってしまったとも言われている。メロトロンのような音が入ってサウンドがソフトになったという印象があるものの、本質的な部分はまったく前作と変わっておらず、ヒットしなかったからという理由だけでこのアルバムの扱いが著しく低いことがなんとも悔しい。[2]はギター・ソロとその背後で単調なリフを繰り返すフレイザーのベースがカッコいい代表曲。また、[4][7][9]のバラードにおけるロジャースのヴォーカルの素晴らしさと味わい深さも特筆モノ。コゾフのギターの出番がやや少ないという弱点はあるけれど、内から湧き出るロックの熱さと深遠な表現が融合した傑作。
ボーナス・トラックについて。
[10]はオリジナルのシングル・バージョン。[11] は「Songs Of Yesterday」ボックスと同じ。[12][13]はBBCセッションから。やや音が悪いもののスタジオ盤よりもラフな演奏で特にロジャースの気合いの入ったヴォーカルが聴ける。[14]は「Songs Of Yesterday」とは別テイクとなっているが殆ど変わらない。曲が終わってからアコースティック・ギターをジャジャジャジャとかき鳴らす音が入っているのが違うくらい。[15] はイントロにコゾフのギターが入っているのとフェード・アウトのタイミングがほんの少し遅いところが違う程度。「Songs Of Yesterday」収録のエン
ディングまでのフル・バージョンに較べたら価値がない。(2006年6月20日)

Free Live!

曲:★★★★☆
演奏:★★★★★
入門度:★★★
評価:★★★★
[Recording Date]
1970/Jan [1] [7] [9] [10] [14]
1970/9/13 [2]-[6] [11]-[13]
1971/3/26 [8]
Released in 1971

[1] All Right Now
[2] I'm A Mover
[3] Be My Friend
[4] Fire And Water
[5] Ride On A Pony
[6] Mr. Big
[7] The Hunter
[8] Get Where I Belong

bonus track:
[9] Woman
[10] Walk In My Shadow
[11] Moonshine
[12] Trouble On Double Time
[13] Mr. Big
[14] All Right Now
[15] Get Where I Belong
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Produced by FREE
and Andy Jones
解散を間近に控えたフリーのライヴ盤。単品としてCDショップで普通に購入できる唯一のライヴでもある。"All Right Now"の余勢を買って売れて良かったはずの「Highway」が泣かず飛ばずであったにもかかわらず、このライヴ盤が英国では4位まで上がるヒットになったのは、やはり"All Right Now"が収録されているからか。その[1]は、カークのリズム・パターンがスタジオ盤とはかなり違う。長い間、ライヴ・バージョンはこのアルバムの演奏しか聴けなかったわけで「ああ、ライヴはこういうふうだったんだ」と思わされてきんだけれど、オフィシャルなライヴ音源が他にいくつか聴ける今、ここでのカークのリズム・パターンは実は異色だったことが判明。それはともかく、このアルバムはライヴならではの荒削りなパフォーマンスが堪能できるところが素晴らしい。ファンならよく知るところではあるけれど、フリーはライヴの方がテンポを落としてよりヘヴィに演奏するのが特徴。スタジオ録音では抑制されていたコゾフのギターは、それはそれでカッコ良くて味があるのものの、自由奔放に暴れる様を堪能するならやはりライヴ。しかし、このアルバムの気に入らないところは明らかに後で被せられたとわかるわざとらしい歓声で正直シラケる。あと、多分に僕の感覚的な印象で[1]を筆頭にどこか地に足が着いていない浮ついた演奏に聴こえるところもマイナス・ポイント。他のライヴ音源の方がよりフリーらしいどっしり感が出ていると思う。そんなところが僕にとって愛聴盤にならない理由である。[8]はスタジオ録音で、ライヴの熱狂を落ち着かせるかのようなゆったりした後期フリー特有のポップな曲。ドタバタしたカークのドラムと曲の骨格を成すフレーザーのベース、ロジャースのリラックスしたヴォーカルが印象的。
ボーナス・トラックについて。
すべてライヴ音源。[9]は85年にリリースされたシングル "Wishing Well" のB面に収録されていたとされるもの、[10]は同12インチ・シングルのB面に収録されたものとされている。演奏のテンションは標準的。[11][12]はコゾフのコンピレーション・アルバム「Blue Soul」に収録されていたもので、スタジオ・テイクと全く違う、重く引きずるような[11]は中盤からコゾフのギターが炸裂して行く出色の演奏。余談ながら、「Blue Soul」には"Crossroad"も収録されており、ここでのロジャースのヴォーカルとコゾフのギターの応酬は鬼気迫るものがあるのでマニアなら是非聴いてもらいたいところ。[13]はいつも通り重々しく淡々と始まり、徐々に盛り上げる。見せ場であるソロ・パートのデキもカッコよく[6]よりこちらの方が良い。演奏はワイト島バージョンと似た印象。[14]は[1]と同日録音で重複しているのはこの日2ステージあったから。しかし、スタジオ・バージョンとは別ノリのリズミカルな[1]とはだいぶ異なり、落ち着いたリズムで展開される。こちらもワイト島バージョンに近い雰囲気。[15]は「Songs Of Yesterday」ボックス収録曲と同じ。各ライヴ音源、基本的にはこれまでオフィシャル音源として発表されてきたものと同じテイクのようなので小出しにしないで1ステージをまとめて欲しい。(2006年9月18日)

Free At Last

曲:★★★☆
演奏:★★★☆
入門度:★★
評価:★★★
[Recording Date]
1972/1/27-3/17
Released in 1972

[1] Catch A Train
[2] Soldier Boy
[3] Magic Ship
[4] Sail On
[5] Travellin' Man
[6] Little Bit Of Love
[7] Guardian Of The Universe
[8] Child
[9] Goodbye

bonus track:
[10] Burnin'
    (Altaernate Take)
[11] Honky Tonk Women
[12] Magic Ship
    (Alternate Mix)
[13] Little Bit Of Love
    (Alternative Mix)
[14] Guardian Of The Universe
    (Paul Rodgers Solo Version)
[15] Child
    (Early Mix)
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Produced by FREE
「Highway」が充実した内容だったにもかかわらず、まったくヒットしなかったことがメンバーの確執を深め、結果的にフリーは解散してしまう。その後、各自バラバラに活動したものの、いずれも商業的な成功には程遠く、コゾフのドラッグ依存症が酷くなったことでその救済の意味も含めて一時的に再結成に踏み切った。そのアルバムが本作。録音は例によって実質12日間と短い。ここで聴けるのは間違いなくあの4人のフリー。しかし、内に秘めた激しい情念を表現するというこのバンドの核心が以前と同じレベルには至っていない。逆に言えば、以前のアルバムは、彼らがいかに精神的なものを音楽に昇華していたかということがわかる。悪くはないけれど、あえてこのアルバムを聴こうと思わせる魅力には欠ける1枚。

ボーナス・トラックについて。
[10]は途中からフェード・インする「Songs Of Yesterday」ボックスとは別のテイク。[11]は「Songs Of Yesterday」と同じ。[12]は多分ミックスが違うだけ。[13]はイントロのフレイザーのベースがカットされているところと、ピアノとギターが少し多めに入っているところが違う程度。[14]はピアノのバッキングを残して他の楽器はカットしたバージョン。[15]はコゾフのギターを抜いたバージョン。(2007年3月2日)

Heartbreaker

曲:★★★★
演奏:★★★★
入門度:★
評価:★★★★
[Recording Date]
1972/9/27-12/8
Released in 1973

[1] Whishing Well
[2] Come Together
            In The Morning
[3] Travellin In Style
[4] Heartbreaker
[5] Muddy Water
[6] Common Mortal Man
[7] Easy On My Soul
[8] Seven Angel

bonus track:
[9] Whishing Well
   (US Mix)
[10] Let Me Show You
    (Single "B" Side)
[11] Muddy Water
[12] Band Me Down
        /Turn Me Around
    (Prospective Album Track)
[13] Heartbreaker
    (Reharsal Version)
[14] Easy On My Soul
    (Reharsal Version)
Paul Rodgers (vo, g, p [7])
Paul Kossoff (g [2]-[4][6][8])
Snuffy Walden (g [7])
山内 テツ (b, per [5])
Simon Kirke (ds, g [5])
Rebop Kwaku Baah
                    (Conga [1])

Produced by FREE
このアルバムをフリーの作品と呼ぶのはかなり抵抗がある。なにせ中心人物だったアンディ・フレイザーがいないし、ポール・コゾフが部分的にしか参加していないのだから仕方がない。山内テツも良いベーシストなんだけれど、フレイザーと較べると分が悪い。そういうフリー・ファナティックの思い入れを横においておくと、このアルバムはとても良いと言える。曲が何と言っても良いし、フリーの感覚からすると柔軟で洗練されたラビットのキーボードが全体のサウンドを素晴らしいものにしている。有名曲[1]、重厚なブルース[4]、心に染みるバラードの[5]が目立つものの、他の地味な曲も実に味がある。従来の重苦しいリズム感が抜けて、バッド・カンパニーのサウンドに近づきつつあると言える。尚、録音は実質12日程度。フリーのスタジオ録音は最後まで一貫して一発録りを基本としていた。

ボーナス・トラックについて。
[9][10]は「Songs Of Yesterday」ボックスと同じテイク。[11]はヴォーカル違いで完成間近バージョンといったところか。コーラスがなくミックスも異なるので[5]とは少し雰囲気が異なる。[12]はラビット、山内テツ、カークによるセッション。レコーディングを想定してラビットが仮にヴォーカルを入れ、結局ロジャースはヴォーカルを録音しなかったとクレジットされているわりにはしっかりコーラスまで仕上げてあるなかなか美しい曲。[13]は音が悪くデモ・テープのような感じで演奏もかなり荒っぽいが、そこがまた魅力的。[14]はまさにリハーサルという雰囲気でラビットのピアノとベースに合わせてロジャースがリラックスした歌を聴かせる。(2006年9月18日)

Songs Of Yesterday

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
入門度:★
充実度:★★★★★
評価:★★★★★
Released in 2000

[1]Disc 1
[1] Over The Green Hills
   (A New Stereo Mix)
[2] Walk In My Shadow
   (Alternative Stereo Mix)
[3] Wild Indian Woman
   (A New Stereo Mix)
[4] Guy Stevens Blues
   (Previously unlelreased)  
[5] Visions Of Hell
   (Previously unlelreased)  
[6] I'm A Mover
   (Unused 7" Mono Mix)
[7] Moonshine
   (Alternative Stereo Mix)
[8] Woman By The Sea
   (Previously unlelreased)
[9] Free Me (Previously unlelreased)
[10] Long Tall Sally
     (Previously unlelreased)
[11] Broad Daylight
     (Original 7" Mono Mix)
[12] The Worm (Original 7" B-Side)  
[13] Trouble on Double Time
     (Previously unlelreased)
[14] Spring Dawn
     (Previously unlelreased)
[15] I'll Be Creepin'
     (Previously unlelreased)
[16] Sugar For Mr.Morrison
     (A New Stereo Mix)
[17] Songs Of Yesterday
     (A New Stereo Mix)
[18] Woman (Previously unlelreased)
[19] Mourning Sad Morning
     (Alternative Stereo Mix)
[20] Fire And Water
     (Alternative Stereo Mix)

Disc 2
[1] All Right Now
   (Previously unlelreased)
[2] Oh I Wept (A New Stereo Mix)
[3] Remember (A New Stereo Mix)
[4] Don't Say You Love Me
   (New Stereo Mix)
[5] Stealer (Full Version)
[6] Highway Song
    (Alternative Stereo Mix)  
[7] On My Way
    (Alternative Stereo Mix)
[8] Sunny Day(A New Stereo Mix:
Different Vocals)  
[9] Ride On A Pony
   (Alternative Stereo Mix)
[10] Love You So (A New Stereo
Mix:Alternate Vocals)  
[11] Soon I Will Be Gone
    (Previously unlelreased)
[12] My Brother Jake
    (A New Stereo Mix)
[13] Makin' Love (Only My Soul)  
[14] Rain (Previously unlelreased)
[15] Get Where I Belong
    (Previously unlelreased)
[16] Only My Soul
    (Original 7" B-Side)
[17] Travelling Man
    (Alternative Stereo Mix)
[18] Molten Gold
    (Previously unlelreased)

Disc 3
[1] Little Bit Of Love
   (Alternative Mix)
[2] Soldier Boy
   (Alternative Mix)  
[3] Sail On
   (Previously unlelreased)
[4] Guardian Of The Universe
   (Previously unlelreased)
[5] Child (Alternative Mix)
[6] Honky Tonk Women
   (Previously unlelreased)
[7] Lady
   (Previously unlelreased)
[8] Muddy Water
   (Previously unlelreased)
[9] Heartbreaker
   (Live from Mixing Desk)
[10] Wishing Well
    (Previously unlelreased)
[11] Let Me Show You
    (Previously unlelreased)
[12] Let Me Show You
    (Original B-Side)
[13] Muddy Water
    (Alternative Mix)
[14] Common Mortal Man
     (Alternative Mix)
[15] Heartbreaker
     (Alternative Mix)
[16] Seven Angels
     (Alternative Mix)

Disc 4 (Live)
[1] Ride on a Pony
[2] Be My Friend  
[3] Fire and Water  
[4] The Stealer
[5] Don't Say You Love Me
[6] Mr. Big
[7] I'll Be Creepin'
[8] Free Me
[9] Woman
[10] I'm A Mover
[11] Walk in My Shadow
[12] Songs of Yesterday
[13] All Right Now
[14] Crossroads

Disc 5
[1] (I Just Wanna)
    See You Smile
[2] Like Water
[3] Zero BC
[4] Ol'Jelly Roll
[5] Follow Me
[6] Fool's Life
[7] I'm On The Run
[8] Sammy's Alright
[9] Hold On
[10] Tuesday Williamsburg
[11] Unseen Love
[12] Time Spent (Time Away)

Disc 5 performed by:
[1] Paul Rodgers
and The Maytals
[2] [3] Peace
[4] [5] Sharks
[6]-[9]
Kossoff, Kirke, Tetsu, Rabbit
[10] [11] Rabbit
[12] Paul Kossoff
     /John Martyn
2000年にリリースされた驚愕のボックス・セット。何が凄いかといえば、一部ミックスが違うだけのトラックがあるとはいえ、フリーの音源についてはすべて未発表あるいは入手困難なものばかりということ。しかもどの曲も内容が素晴らしい。ここまで徹底したマニアックな内容は他のアーティストのボックス・セットでも類を見ない。貴重だというだけではなく聴けばフリーへの理解が深まること必至。とにかくマニアは必聴必携。以下、特に意義深いものについてコメントを。

<Disc 1>
[1]はファースト・アルバムでは分断され、冒頭と終盤だけ収録されていたものを原型の1曲として収録。プロデューサーかエンジニアの声から始まり実に生々しいムード。以降、他のミックス違いだけの曲でもこのようなスタジオ・チャットを、イントロやエンディングで聴くことができる。
[4]は、タイトル通りいかにもジャムっぽいミドル・テンポのブルース。スティーヴ・ミラーのオルガンとコゾフのギターの掛け合いをフィーチャーしたインストゥルメンタル。
[5]はスロー・テンポのいかにもフリーらしいブルージーな曲で粘りあるリズムから一転、フレイザーのベースが躍動しはじめるギター・ソロ・パートから盛り上がりる佳曲で終盤のコゾフのギターは例によってエモーショナル。
[8]はタイトルが違うけれど実は「Fire And Water」収録の"Remember"の原曲。ただし歌い方、演奏(特にヴォーカルに入るまでの長いイントロ)とも異なり、あくまでも別曲として楽しめる。
[9]はアルバム・テイクよりテンポが早く、オルガンがフィーチャーされ、ややハードな仕上がりの完全別テイク。
[10]は初期ならではのアップ・テンポでラフなロックンロールで、コゾフのギターが冴える。
[11]はミックスが異なり女性コーラスまで加えられてオリジナルより妙に明るい仕上がり。
[12]はシングル[11]のB面収録曲。いかにもフリーらしいリフを持つミドル・テンポの曲。
[13]は「Free」収録バージョンの半年前の録音で演奏は全く異なる。ガイ・スティーヴンスがプロデュースしていることからファースト・アルバムの延長線的な内容で、これはこれでカッコイイ。
[14]はアコースティック・ギター1本のシンプルなバラードで、お蔵入りが信じがたいクオリティ。
[15]はオリジナルよりもノリが良く、聴けば違いがすぐにわかる別テイク。
[16]はフレイザーの印象的なリフから後半はコゾフのギターが盛り上げるインストゥルメンタル。
[17]はただの別ミックスだが、イントロが違っていて新鮮。
[18]オリジナルと同じムードではありながら、歌い方も演奏もまったくの別テイク。
[20]は完全に別テイクで特に歌い方がだいぶ違っている。

<Disc 2>
[1]はサビのアカペラ・コーラスから始まる。ギターの音が乾いた感じで全体に軽く感じる。サビのベース・ラインはライヴ・ヴァージョンに近い。中間のギター・ソロはなし。
[2]は別ミックスでヴォーカルは少しだけ歌い方が違う。
[5]はイントロをはじめ、ところどころにコゾフのオブリガードが入る。しかし、重要なのはフェード・アウトせずに最後まで収録されていることで、カットされていた終盤のコゾフのソロが本当に素晴らしい。コゾフが好きな人は、ここを聴くためにこのボックスを買っても後悔しない。もちろん猛り狂うコゾフに合わせてフレイザーとカークも熱い。
[10]は別ヴォーカルで歌い方、雰囲気がまるで違う。こうも違う解釈で歌い分けることができるロジャースに感服。
[11]は方向性はオリジナル・バージョンと違わないものの、演奏もヴォーカルも全く別テイクで、こちらの方が生々しい仕上がりで素晴らしい。
[13]は[16] のリハーサル・テイクのような感じでリラックスしたムードでむしろこちらの方が素晴らしい。曲もシンプルでアコースティック・ギターとドタバタ・ドラムによる彼等の得意なパターン。
[14]はフリーらしいリズム感を持ったアコースティック・ギター+ドラム+ベースのポップな曲。ロジャースのリラックスしたヴォーカルとフレーザーらしいベースが聴きどころ。
[15]は別テイクで、ヴォーカル、ベース・ラインの違いがわかる。エンディングにピアノが入っていないのも特徴。
[16]は、エレキ・ギターにピアノまで入った [13] の完成品。
[18]はポール・コゾフ名義でも録音されたこともある、ロジャースがヴォーカルを取った曲(コゾフの「Blue Soul」に収録)。フリーでも演奏していたことがここで判明。ジェス・ローデンのコーラスが鬱陶しいコゾフ・バージョンよりもこちらの方が良いデキ。

<Disc 3>
[4]はオルガンをバックにロジャースが歌う。オルガンはコードを変えるだけで、リズムを取るものは何もなしという状況で完璧に歌うロジャースの歌唱力に改めて感服させられる。
[6]はレコーディングのウォーミング・アップとして演奏したもの。当然本気モードではないんだけれどこれが意外と味があって、こういうところからも彼らが「本物」であることがよくわかる。
[10]はコンガがフィーチャーされ、ギター・ソロがスナッフィー・ウォルデンに差し替えられたバージョンでオリジナルよち軽快な仕上がり。コゾフも参加していることになっているけれど存在感なし。
[11]は[12]のジャム・セッション・バージョンで、コゾフのギターも渋く、よりリラックスした演奏が楽しめる。3分くらいのところで終わりそうな雰囲気になりながらまたノってきてさらに3分も続くところが面白
い。
[12]は[11]の本番バージョンなのでしょうが元々ジャムっぽい曲。ここでは別テイクと言ってよい仕上がり。ただし、約3分でフェード・アウト。

<Disc 4>
[1]-[6]は70年9月13日、クロイドンでのライヴ。[4] のみ1stショウとライナーノーツに書かれているが、「Fire And Water Deluxe Edition」では[5]が1stショウと解説されている。
[7]-[14]はサンダーランドでのライヴ。両日ともに「Free Live」収録曲と同じ日のもので、スタジオ・ライヴを除くフリーのライヴ音源はこの2日間だけに限られている。

<Disc 5>
[1]はレゲエ調の曲でロジャースのリラックスしたヴォーカルが聴ける。
[2][3]はフリー1度目の解散時に結成したロジャースのトリオ編成によるグループで、これがなかなか良い。バッド・カンパニーのアルバムに入っていてもおかしくない曲で実際に [3] は「Burning Sky」で再演。
[4][5]は Peace と同じ時期にアンディ・フレイザーが結成したグループ。やはりブルース・ベースのロックでピアノにフリーの影が見える。ただ、ベースは意外と控えめ。
[6]-[9]も同じ時期にカークがフリーを引き継ぐような形で活動していたグループ。ヴォーカルはカークが担当していて、コゾフも控えめながら活躍。
[10][11]はラビットのソロ。[10 は美しいピアノから入り、例の渋いオルガンが聴ける、おまけにホーンまで導入したラビットらしい曲でコゾフも参加している。
[11]もピアノから始まる美しく壮大な曲。
[12]はコゾフのギターが主役の、18分にも及ぶインストゥルメンタル。フリー脱退後のコゾフはこういうちょっとフュージョンっぽいサウンドで、そこに独特のトーンを絡ませる感じの演奏が多い。

Disc 5を通して聴くと、驚くほど意外性がないというか散漫な感じがないことに気づく。つまりフリーの音楽性から大きくは離れていないということ。フリーに関係したメンバーは似た感性を持っていたということでしょう。そういう共通の音楽性を持ったミュージシャンが集まったこのグループは、やはり一種の奇跡だったのかもしれない。
(2006年6月20日)

Live At The BBC

曲:★★★★☆
演奏:★★★☆
入門度:★
充実度:★★★
評価:★★★
[Recording Date]
1968/7/15 Disc 1 [1]
1968/11/15 Disc 1 [2]
1969/3/17 Disc 1 [3]-[6]
1969/12/2 Disc 1 [7]
1969/12/8 Disc 1 [8]-[10]
1970/6/4 Disc 1 [11] [12]
1971/4/19 Disc 1 [13]-[20]
1970/1/15 Disc 2 [1]-[4]
1970/7/2 Disc 2 [5]-[11]
Released in 2006

Disc 1
[1] Waiting On You
[2] Sugar For Mr Morrision
[3] I'm A Mover
[4] Over The Green Hills
[5] Songs Of Yesterday
[6] Broad Daylight
[7] Woman
[8] I'll Be Creepin'
[9] Trouble On Double Time
[10] Mouthful Of Grass
[11] All Right Now
[12] Fire And Water
[13] Be My Friend (Take One)
[14] Be My Friend (Take Two)
[15] Ride On A Pony (Take One)
[16] Ride On A Pony (Take Two)
[17] Ride On A Pony (Take Three)
[18] Ride On A Pony (Take Four)
[19] Ride On A Pony (Take Five)
[20] Get Where I Belong

Disc 2
[1] The Hunter
[2] Woman
[3] Free Me
[4] Remember
[5] Fire And Water
[6] Be My Friend
[7] Ride On A Pony
[8] Mr Big
[9] Don't Say You Love Me
[10] Woman
[11] All Right Now
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Produced by
Bernie Andrews
 Disc1 [1] [3]-[6]
Jeff Griffin
 Disc1 [2], Disc2 all
Malcolm Brown
 Disc1 [7][11]-[20]
John Waters
 Disc 1 [8]-[10]
まずDisc 1。全体的に音質はやや悪いけれど十分曲を楽しめるレベル。[1][3][4]は「Tons Of Sobs」、[5][6] は「Free」、[11][12] は「Fire And Water」、[14][19]は「Highway」のリマスター盤に収録済みで分散しておいたものがスッキリ1枚に集まった。そう言うと聞こえは良いが重複がそれだけ多いということ。そして[2][7]-[10][13][15]-[17][20]が未発表。[2]はもともとアルバム未収録で貴重だった曲のさらに別演奏でフレーザーのベースがウネる素晴らしい演奏。[7]-[9]はライヴでの既存の演奏と比べると心持ちテンションが低いけれど、これまた十分楽しめる新音源。[10]はスタジオ盤とは異なりコーラスがなく印象も異なる。ベースの音が聴こえるのにエレキ・ギターの音が2本聴こえるということはロジャースがギターを弾いているということか? [13]は[14]との違いが一応わかる(ロジャースにとってこのくらいの歌い分けは日常)別テイク。"Ride On A Pony"が完奏されているのは[16][19]の2テイクだけでこちらも大同小異ではあるけれど、アルバム収録バージョンよりワイルドなロジャースのヴォーカルが素晴らしい。[20] は既存テイクよりややテンポが遅い程度の違い。イントロとエンディングが切れているのが残念。
そして Disc 2はずべて未発表のライヴで当然期待が高まるところ。しかし、いかんせん音が悪くブートレグ・レベル。ブートレグとして見ればそこそこの音質でも慣れていない人がこれを聴いたら商品としての価値を見出せないかもしれない。BBCで保管していたテープが初めからこの音質とは思えないので、マスター・テープは消失しているのかも。というわけで 2枚目はオフィシャルものとしては価値が薄いと思う。
満を持して(?)出た2枚組がこのレベルということによって、「Songs Of Yesterday」こそが良質な音源を惜しみなく出した決定盤であり、これ以上のお宝はないのではないかという思いが強くなった。CDジャケットの裏にはBBCに残された演奏がもっと沢山あることを示す記載がある。このアルバムについては、マニア以外は手を出す必要はないかなと思いつつ、まにあとしては残っているものはどんどん発掘してほしいと思ってしまうのも事実。(2006年10月18日)

Forever (DVD)

曲:★★★★★
演奏:★★★★★
音質:★★★★
画質:★★★☆
評価:★★★★★
Released in 2006

Disc 1
Beat Club, Germany 1970
[1] Mr. Big
[2] Fire And Water
[3] All Right Now
Doin' Thier Thing, Canada TV
24th July 1970
[4] Ride On Pony
[5] Mr. Big
[6] Songs Of Yesterday
[7] I'll Be Creapin'
[8] All Right Now
Original Videos
[9] All RIght Now
[10] The Stealer
[11] My Brother Jake
[12] Wishing Well
[13] Love You So

Disc 2
Isle Of Wight 1970 (audio only)
[1] Ride On Pony
[2] Woman
[3] The Stealer
[4] Be My Friend
[5] Mr. Big
[6] Fire And Water
[7] I'm A Mover
[8] The Hunter
[9] All Right Now
[10] Crossroad
Paul Rodgers (vo)
Paul Kossoff (g)
Andy Fraser (b)
Simon Kirke (ds)

Disc 1 includes some interviews and more.
Disc 2 includes visuals in
[4][5][9].
まず Disc 1 [1]-[8]はテレビ番組用ライヴ、[9]-[13]はプロモ・ビデオ用映像ながら基本的にはスタジオ・ライヴを集めたもの。映像はデジタル・マスタリング、音声は5.1chでリミックスされており、望みうる最高の品質で堪能できる。曲目リストに載っていないところではBBCの Top Of The Pops に出演したときの "All Right Now" がなんとも時代を感じさせるもので思わず苦笑。それはともかく、運良く残っているこれらの演奏を見るだけでも4人の演奏がいかに熱く、いかに才能に溢れ、そしてこの4人によるケミストリーこそがフリーなんだと改めて見せつけられる。曲がかなり重複しているけれど、そのときの感情で表現するフリーが同じような演奏を聴かせるはずがなく、まったく飽きない。Disc 2は伝説のワイト島フェスティバルでの演奏で音声のみ(5.1ch化)の収録。ブートレグでは以前から有名な音源ながら、こうやって良い音で聴けるのはありがたい。映像は既発のビデオ同様、[4][5][9]だけ収録で、その代わりマルチ・アングルで観ることができる。

このDVDの凄いところは劣悪な映像/音質を惜しみなく収録したことで、現時点で残存が確認されているフリーの映像を恐らくすべて網羅していることでしょう。ワイト島の演奏も結構危ないところがあるし、機材の調子が悪くて困っているところまで入っていて、しかしだからこそ骨の髄までしゃぶりつくしたいマニアには感涙モノのDVDと言える。一方で、動いているフリーを観ることは意外と彼等を理解するのに近道かもしれないので初心者に観てほしいとも思う。生のフリーは曲をただ演奏していただけではないことがわかるはず。

尚、以前発売されていたビデオの映像はコゾフ追悼向けに写真をコラージュした"Love You So"を含めてすべてこのDVDに収録されているので価値がなくなった。ただし60分の映像集としてうまくまとまっていたという点ではビデオの方が上だったかもしれない。(2006年11月25日)