Purple Passages | ||
![]() 曲:★★★☆ 演奏:★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★☆ |
Released in 1972 1968-1969 Recordings [1] And The Address [2] Hey Joe [3] Hush [4] Emmaretta [5] Chasing Shadows [6] The Bird Has Flown [7] Why Didn't Rosemary? [8] Hard Road (Wring That Neck) [9] The Shield [10] Mandrake Root [11] Kentucky Woman [12] April |
Rod Evans (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Nick Simper (b) Ian Paice (ds) Produced by Derek Lawrence |
1972年にリリースされた第1期ディープ・パープルのベスト盤。アナログ時代から興味をもちつつも2枚組というボリュームに敷居の高さを感じて購入を見送っていたものが、CD でスッキリと1枚に、価格もリーズナブルになってようやく購入したのは93年ころの話。90年代の前半(レコードがまだ売られていてCDより安かった)には、このような「アナログを1枚にまとめました。お値段は1枚分です」というCDならではのメリットが生きるアルバムがあった。そんな思い出話はさておき、ジョン・ロードが音楽的イニシアチブを握っていた第1期ディープ・パープルのサウンドの軸はやはりオルガンで、適度にポップ、演奏もそこそこテクニカル、それ以前のポップ・ミュージックと比べるとヒネリのある曲展開など、ヴァニラ・ファッジなどに代表される当時流行の典型的なアート・ロック・グループのひとつという印象を受ける。リッチー・ブラックモアはこの種のバンドにしては巧いギターだなと思わせる程度のプレイで、あくまでもグループ内のいちギタリストの役割に収まっている。サウンドの中心であるジョン・ロードのプレイも後に比べるとロック色は控えめ。ロッド・エヴァンスのヴォーカルはロック系ヴォーカルとしてはソフトなタイプでこのサウンドに良く合っていて、オルガンとともに第1期サウンドの中枢を担っている。イアン・ペイスのドラムについてはこの時点ですでに個性的。[8]は第2期に入ってもライヴで演奏された曲で、[10]の後半部分はライヴで "Space Truckin" の後半部分(というか延々と続くこちらのパートがライヴのハイライトだった)として第3期まで演奏されていた。[4]はアルバム未収録曲で昔はこのアルバムの目玉的存在だったが、今はサード・アルバムの「Deep Purple」のボーナス・トラックで聴くことができる。第2期へとつながる部分も垣間見えることから、グループをより理解するには聴いておいた方が良い程度=つまりマニア向け作品。ただしアート・ロックが好きな人は積極的に聴いてみて損はない。尚、邦題は「紫の軌跡」。(2006年6月26日) 2019年1月現在、CDは廃盤で入手困難なようです。第一期ディープ・パープルのレア・トラックは、オリジナル・アルバムのボーナストラックに収録されているようなので、そちらをどうぞ。 |
In Rock | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★ 入門度:★★★★★ 評価:★★★☆ |
Released in 1970 [1] Speed King [2] Blood Sucker [3] Child In Time [4] Flight Of The Rat [5] Into The Fire [6] Living Wreck [7] Hard Lovin' Man [8] Black Night (original single version) [9] studio chat [10] Speed King (piano version) [11] studio chat [12] Cry Free (Roger Glover remix) [13] studio chat [14] Jam Stew [15] studio chat [16] Flight Of The Rat [17] studio chat [18] Speed King (Roger Glover mix) [19] studio chat [20] Black Night (Unedited Roger Glover mix) |
Ian Gillan (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Roger Glover (b) Ian Paice (ds) Produced by DEEP PURPLE |
ジョン・ロード主導で活動してきたディープ・パープルはイアン・ギランとロジャー・グローヴァーを迎え、オーケストラとの競演盤である「In Concert」を経て次の方向性を模索する。リッチーは、ジョン・ロードに「もし失敗したらずっとオーケストラと演奏するから」と断って(ジョーク?)次作はハードなロックをやろうと提言、ジョン・ロードもそれに同意。ここにディープ・パープル史上、もっともハード・ロック色の強いアルバムが生まれた。後のスタジオ盤ではタイトな演奏を聴かせるパープルだけれど、このアルバムでは8トラックの貧弱な録音機材という条件の悪さも手伝って実に荒々しくへヴィ。[1]と[3](部屋で大音量で聴いているのを見た母親に頭がおかしくなったと思われたとは学生時代の友人の弁)があまりにも有名ではありますが、他の曲もヘヴィでハードな曲が満載。はじめに「Machine Head」の整然としたサウンドを聴いていた僕は、そのギャップに驚いたことをよく覚えている。このアルバムがウケた(全英4位)ことから以降の方向性も決まった、ディープ・パープルにとってマイルストーン的作品。 ボーナス・トラックについて。まず"Black Night"。スタジオ・バージョンはベスト盤を入手しなくてはならなかっただけにこれはうれしい。あとは未発表曲が[12][14]で、まあそこそこの曲レベルだけれど、リハーサルっぽい他の音源を含めてオマケとしては充分楽しめる。別ミックスはオリジナルとそれほど大きく印象は変わらない。いずれにせよボーナス分は"Black Night"を除くと完全にマニア向け。(2006年6月26日) |
Live In Stockholm 1970 | ||
![]() 曲:★★★☆ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★★☆ |
[Recording Date] 1970/11/12 Disc 1 [1] Introduction [2] Speed King [3] Into The Fire [4] Child In Time [5] Wring That Neck Disc 2 [6] Paint It Black [7] Mandrake Root [8] Black Night |
Ian Gillan (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Roger Glover (b) Ian Paice (ds) Produced by Tony Edwards |
第2期ディープ・パープルのライヴ盤といえばなんといっても「Made In Japan」。このアルバムはそこから遡ること約2年、「In Rock」発売後のツアーの模様を収めたもの。両者に本質的な違いはないものの、このランナップになってまだそれほど時間が経っていないこと、レパートリーが少なかったこともあって内容はそれなりに違う。荒々しさの中にも楽曲の完成度の高さと演奏に締まりが感じられる「Made In Japan」に対し、こちらはインストゥルメンタル曲/インストゥルメンタル・パートが多く(よってギランの出番は少ない)、インター・プレイの醍醐味をより堪能できる。[8]のギター・ソロはアーミングだけで済ませてしまうことも多いリッチーがここではきちんと(?)弾いているのも良い。このアルバムの音源じたいは以前より「Scandinavian Nights」などで入手できたものだけれど、リミックス/リマスターが施され音質は明らかに向上。これまでの音源になかった[1]は、ただの司会者の紹介ではなく[2]に至るまでの約2分のウォーミング・アップ。恐らく当日の曲順通りに並び替えられたことも含め「ライヴ音源を聴いている」感じから「コンサートをちゃんと聴いてる」感じになった。バージョン・アップ盤として良心的な仕上がり。(2006年8月12日) |
Fireball | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★☆ 入門度:★★★ 評価:★★★★ |
Released in 1971 [1] Fireball [2] No No No [3] Demon's Eye [4] Anyone's Daughter [5] The Mule [6] Fools [7] No One Come [8] Strange Kind Of Woman (A-side remix 96) [9] I'm Alone Freedom (out-take) [10] Freedom (out-take) [11] Slow Train (out-take) [12] Demon's Eye (remix 96) [13] The Noise Abatement Society Tapes [14] Fireball [15] Backwords Piano [16] No One Come |
Ian Gillan (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Roger Glover (b) Ian Paice (ds) Produced bt DEEP PURPLE for Edwards Colletta productions |
ツアー真っ最中に録音した第2期のスタジオ盤2作目。前作と同じく8トラックの機材による録音であるにもかかわらず音質は格段に向上している。しかし、ミドル・テンポの曲が多く内容もちょっと地味めに聴こえるせいか、名盤2枚に挟まれて実に存在感が薄いアルバムでもある。この頃はすでにライヴで長尺演奏を繰り広げていたことを考えると、ここで聴ける曲はコンパクトだし、「In Rock」が持っていた荒々しさがかなり後退していることから、どうやら彼らはスタジオ盤はライヴとはまったく別のものという姿勢で曲を作っていたのではないかと推測できる。それは過剰な作り込みを意味するものではなく、スタジオという密室で音楽を緻密に構築してくことを目指した故のことだったのではないだろうか。そうしてできたこのアルバムの質は決して低くはない。曲はある意味ポップだし[4]のような異色曲をはじめ、バラエティに富んだ内容になっている。ハードでヘヴィであることこそが何よりも重要という考えでなければ、タイトで引き締まった演奏は十分聴き応えがある。ただし、リッチーのギター・ソロは全体的に控えめ。多面性を持ったこのアルバムが評価されず、ハード・ロック然とした面だけに人気が集中してしまったことがこのグループの悲劇だったのかもしれない。尚、イアン・ギランがこのアルバムを気に入っている一方で、ライナーノーツには「このアルバムで良いのは[1][2][6]だけ」というリッチーのコメントが載っているところにこのアルバムの性格が見える。ライヴでは聴けないパープルの一面を楽しむべきアルバム。 ボーナス・トラックについて。[8]は日本盤では[3]の代わりに3曲目に入っているもので、[3]よりも有名曲ということもあり個人的にはこちらに曲順を入れ替えたいところ。それでも1枚のCDで両方聴けるのは有難い。[13]はお遊びセッションがたまたまテープに残っていました的なものでマニアはむしろ喜びそう。その他いわゆるボツになった曲は、勢いでとりあえず録音してみましたというアップテンポの曲が多いけれど完成度が意外と高くて侮れないし、むしろスタジオ・セッションならではのタイトな演奏の良さが出ている。[11]は、ある部分がそのままレインボウの"Make Your Move"で使われていて、初めて聴いたときには「ミュージシャンというのはずいぶん前の古い曲のアイディアでも使うのなんだねえ」と驚いたことを思い出す。(2006年7月1日) |
Machine Head | ||
![]() ![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★★ 評価:★★★★☆ |
[Recording Date] 1971/12/6-21 Released in 1972 Disc 1 (1997 Remixes) [1] Highway Star [2] Myabe I'm A Leo [3] Pictures Of Home [4] Never Before [5] Smoke On The Water [6] Lazy [7] Space Truckin' [8] When A Blind Man Cries Disc 1 (Remastered) [1] Highway Star [2] Myabe I'm A Leo [3] Pictures Of Home [4] Never Before [5] Smoke On The Water [6] Lazy [7] Space Truckin' [8] When A Blind Man Cries [9] Maybe I'm A Leo (Quadrophonic Mix) [10] Lazy (Quadrophonic Mix) |
Ian Gillan (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Roger Glover (b) Ian Paice (ds) Produced by DEEP PURPLE |
高校生だった84年ころに初めて聴いたディープ・パープルのアルバムがコレだった。最初は妙にスッキリ整然とした音に「ふ〜ん、これが伝説のハード・ロック・グループなんだ」程度に思った記憶がある。当時、ボンゾの重量級ドラムに魅せられていたせいでイアン・ペイスのドラムが軽薄に聴こえていたのもマイナス要因のひとつだった(今はもちろんペイスの凄さも理解している)。その後、各種ライヴ音源を聴き、そのワイルドなパフォーマンスを知るにつれ、このアルバムがますます迫力のないこじんまりとしたものに思えてしまったために、15年くらいは聴くことがなかった。ところが、WOWOWで放送されていたクラシック・アルバム・シリーズの「Machine Head」というドキュメントを見て、このアルバムの魅力を再認識。コンサート会場とはまったく異なる閉鎖的空間(このアルバムはホテルの狭い廊下で録音された)での演奏が、ライヴと違ってくるのは当然といえば当然。例えば[4]のイントロ(ここが長すぎてヒットしなかったのでは?)のシンプルで味のある雰囲気など、ライヴでは再現できないと思われるコンパクトなカッコよさが至るところに散りばめられた質の高い演奏であることにようやく気づいたというわけである。地味ながら5人の音楽性の高さを伺わせるこういう部分が評価されていないのは非常に残念であると思わずにはいられないほど、このアルバムには構築された完成度の高い音楽性に魅力がある。尚、リフやメロディをはじめとするシンプルさ故に「パープルは飽きる」と評価をする人もいるけれど、シンプルであることの良さを理解した上で狙ってそうしていたことも先のドキュメントから知ることができる。ライヴのようなパワーと勢いがないとはいえ、前作よりは明らかにハードな面が出ており、それが密室という制約の中で引き締まった演奏として結実したことこそがこのアルバムの真価。 アニバーサリー・エディションのDisc 1はリミックスが施され、より全体的に厚みを増した今風の音作りになっている。[1]はライヴ・バージョンのようにオリジナル・バージョンの開始点より前の部分から収録。他の曲も、オリジナル・テイクのイントロ前の音から入っていたりフェードアウト以降の演奏が終わりまで収録されていたり、更にはソロ・パートが違うテイクと差し替えられていたりというおまけもあって、オリジナル盤を聴き倒した人が十分に楽しめる内容になっている。ここまでいじるとオリジナルを冒涜したという反論も予想されるところで、しかし、もう1枚オリジナル・アルバムのリマスター盤を付けたことによってそれを回避するという商品としては完璧なパッケージになっているのがこのアニバーサリー・エディション。個人的にはオリジナル・ミックスの方が好みではある。[8]はイアン・ギランとイアン・ペイスは未だに是非アルバムに入れたかったと言っている静かな曲。リッチーの反対によりアルバムに収録されなかたこの曲は、曲そのものは悪くないと思うもののアルバムのどこに入れたら良いのかわからないも確かで、外したのはリッチーの慧眼だったように思いう(単に曲が嫌いだっただけかもしれないけど)。(2006年7月1日) |
Made In Japan (Remaster Edition) | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★ 評価:★★★★★ |
[Recording Date] 1972/8/15 (Osaka) [3] 1972/8/16 (Osaka) [1] [2] [5] [7] [10] 1972/8/17 (Tokyo) [4] [6] [8] [9] Released in 1972 Disc 1 [1] Highway Star [2] Child In Time [3] Smoke On The Water [4] The Mule [5] Strange Kind Of Woman [6] Lazy [7] Space Truckin' Disc 2 [8] Black Night [9] Speed King [10] Lucille |
Ian Gillan (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Roger Glover (b) Ian Paice (ds) Produced by DEEP PURPLE |
多くの人が最高傑作に挙げる72年の日本ツアーを収めたライヴ盤。平均で1曲あたり約10分の長尺演奏となっているのはスタジオ・バージョンよりもアドリブ・パートが多いからで、そのインタープレイこそがファンを魅了していた部分(ただし、免疫がない人にとっては冗長と感じる)。ここでの演奏は「Live In Stockholm 1970」と比べると野性味という点では劣るものの、自由度をあまり損なうことなく研ぎ澄まされたテンションでタイトに演奏されている。リッチーやジョンのプレイは言うに及ばず、通して聴くと特に印象に残るのがイアン・ペイスの独自の躍動感と安定したドラミング。とにかく、これだけの演奏が記録され、こうして聴けることを神に感謝しなくてはいけない。[7]で曲が終わった後に長い静寂の後、パラパラと拍手が始まりやがて大歓声になっていく様などは観客が圧倒されていただろうことを窺がわせる。リマスター・エディションになりアンコール的に加えられた3曲は、これまで収録していなかった(収録時間の都合上できなかった)代表曲を網羅しており演奏も良い。また全体的に音質も向上していることからオリジナル盤よりもこの2枚組を断然お勧めする。尚、日本公演3日間が収められた3枚組もあり、こちらはギターとオルガンの左右チャンネルは補正されているのは良いとして、こちらはギターの音量が控えめにミックスされているという違いがある。(2006年6月26日) |
Burn | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★ 評価:★★★★ |
Released in 1974 [1] Burn [2] Might Just Take Your Life [3] Lay Down, Stay Down [4] Sail Away [5] You Foll No One [6] What's Going On Here [7] Mistreated [8] "A" 200 30th Anniversary bonus track [9] Coronarias Redig [10] Burn (2004 remix) [11] Mistreated (2004 remix) [12] You Fool No One (2004 remix) [13] Sail Away (2004 remix) |
David Coverdale (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Glen Hughes (b, vo) Ian Paice (ds) Produced by DEEP PURPLE |
第3期パープルの有名盤。特に[1]は今でもお茶の間に流れるスタンダードで、曲の展開やソロ・パートもパープル・ファンが望むお約束で固められた典型的な曲。しかしながら、この第2期の延長線的な[1]が他の曲と比べると明らかに浮いているところがこのアルバムの特徴であり、魅力もある。ハードロックに確実に軸足が乗っていながら、当時アメリカでポピュラー・ミュージックとして人気があったソウルやファンクの要素を持ったサウンドをドライな録音でタイトに聴かせている。よりストラトらしい乾いたサウンドになっているリッチーのギターも冴えており、カヴァーデイル、ヒューズとのバランスがうまく取れているところが美点。[3][5]の軽快なノリが、アルバムを象徴するサウンドで、イアン・ペイスの旨味もより強調されている。思うに[1]がなかったら第3期はもっと正当に評価されたのではないだろうか?この曲があったからこそ第3期の栄光があったんだろうと思う反面、リッチーにしがみつくファンを増長させてしまった。その呪縛でパープルは身動きが取れなくなって行ったんだと思う。ボーナストラックは現代的な音処理、ミックスで、例によって聴こえていなかった音が入っていたり、フェードアウトしないで最後まで収録したりと、聴き倒した人向けのものになっている。(2011年1月9日) |
Stormbringer | ||
![]() 曲:★★★★☆ 演奏:★★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★★ |
[Recording Date] 1974/Aug (Munich) Released in 1974 [1] Stormbringer [2] Love Don't Mean A Thing [3] Holy Man [4] Hold On [5] Lady Double Leader [6] You Can't Do It Right [7] High Ball Shorter [8] The Gypsy [9] Soldier Of Fortune 35th Anniversary bonus track [10] Holy Man (Glenn Hughes remix) [11] You Can't Do It Right [12] Love Don't Mean A Thing [13] Hold On [14] High Ball Shorter |
David Coverdale (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Glen Hughes (b, vo) Ian Paice (ds) Produced by DEEP PURPLE and Martin Birtch |
35周年記念アルバムとして、今度は一般的にはほとんど話題にならない本作が選ばれた。僕は10〜20代のころにハードロックを夢中に聴いたものの、30代からはジャズを中心に聴くようになり、ノスタルジー以外の目的でロックを聴くことが、言い換えると未聴の古いロック・アルバムを買うことがすっかり減ってしまった。それなのに本作を買ったのは、隠れた名盤という世評と第4期が好きな自分の嗜好に合うだろうという予測から、そしてオマケかつ目玉である74年当時のQuad Mixをオリジナルに再構築された5.1chミックス(と48Khz/24bit PCM)のDVD-Audioが付いているからという理由。まず、基本的な内容に触れると、確かにリッチー・ブラックモアが弾きまくっているところがほとんどなく一般的にイメージされているディープ・パープルのサウンドを求める向きにはまるで引っかかるところがないかも、と思わせる。リズムがファンク化し、ジョン・ロードがジャジーにエレピを弾く曲までもがあり、前作「Burn」よりもソウル色が濃くなったことは衆目の一致するところであるけれど、従来のパープル的でないというだけで明らかにロック的なカッコよさがあり、そして実際に良質なロックでもある。このラインナップ、そして第4期においてもライヴでは大味なハードロック的な匂いが濃厚だったこと、そして必ずしもそれが良いと考えていなかった僕にとっては、このスタジオ盤ならではタイトでソリッドなフィーリングこそが、このグループの本質であったように思えてならない。グレン・ヒューズによると思われるボーナストラックの選曲は、まさにその本質路線。全体に曲のクオリティも高く、乗り気でなかったとされるリッチーだって脇に回ったギタリストとして優れていることを示している([4]の軽快なソロがイイ)など、アルバムのレベルは高い。リッチー信者ではなく、ソウル・フィーリングに抵抗がなければ聴いておくべき作品。 DVD-Audioについて。2ch PCMはどういうわけか低音が薄くシャリついた音でCDの方が遥かに良い音のバランス。5.1chはサラウンド・チャンネルへの振り方の面白みがもう一つ冴えないけれど、聴き倒したマニアにはいろいろと違って聞こえてくる部分もありそうな仕上がり。ただ、このアルバムの場合、サラウンド感で音の一体感が薄れるのは必ずしも良い効果をもたらしているようには思えない。(2011年1月9日) |
Made In Europe | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★ 入門度:★★★ 評価:★★★★ |
[Recording Date] 1975/4/7 (Paris) and others? Released in 1976 [1] Burn [2] Mistreated [3] Lady Double Dealer [4] You Fool No One [5] Stormbringer |
David Coverdale (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Glen Hughes (b, vo) Ian Paice (ds) Produced by DEEP PURPLE and Martin Birtch |
リッチー・ブラックモア最後のステージであるパリ公演を含む第3期ライヴ盤。パープルと言えばやはりライヴ。このアルバムはどうやら(当時のアナログで)1枚にすること、第3期の曲だけで構成することという制約があったようで、それが却ってエッセンスを集約するという結果をもたらしている。カリフォルニア・ジャム当時のぎこちなさは消え、これこそが第3期ライヴ・パフォーマンスの真の姿を現しているのではないかと思える。それでもまだこの時期のカヴァーデイルは表現力不足で青臭い。演奏全体として見ると緻密さはなく勢いで突っ走っている印象を受け、大味な演奏になっている。とはいえ、その分だけハード・ロックとしてのカタルシスを味わえるという側面がよく出ている。要はソウル・ロックとハード・ロックの折り合いが付きそうで付かなかったこのグループの本質をここで確認することができる。勢いだけでなく悪い意味の荒っぽさも聴きたければ「Mk V The Final Concerts」がお勧め。(2006年6月25日) |
MkV The Final Concerts | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★☆ |
[Recording Date] 1975/4/3 (Graz) [1] [2] [8] [10] [11] 1975/4/7 (Paris) [3]-[7] [9] Disc 1 [1] Burn [2] Stormbringer [3] Gypsy [4] Lady Double Dealer [5] Mistreated [6] Smoke On The Water [7] You Fool No One Disc 2 [8] Space Trucking [9] Going Down/Highway Star [10] Mistreated (alt take) [11] You Fool No One (alt take) |
David Coverdale (vo) Ritchie Blackmore (g) Jon Lord (key) Glen Hughes (b, vo) Ian Paice (ds) |
「Made In Europe」と同じ4月7日のパリ公演を含む、とされているけれど演奏のダブりは1曲か? さて、こちらは第2期の代表曲も含まれていて、特に[9]に注目が集まるところ。期待に反してデキは良くなく、荒いを通り越して雑なヴォーカルと演奏。特にリッチーのギター・ソロが雑で、見方によっては手抜きにも聴こえてくる。こういう雰囲気を好む人もいるかもしれないけれど、少なくとも僕にとっては何度も聴く気にはなれる仕上がりではない。全体的に勢いで押し切っている雰囲気があり、そこをどう受け止めるかでこのアルバムへの評価が変わってくるでしょう。グレン・ヒューズも「Made In Europe」よりこちらの方が目立つ(目障り?)。ドン・ニックスの、というよりは第2期ジェフ・ベック・グループの代表曲である"Going Down"が演奏されていることじたいがリッチー脱退を示唆している。手放しで絶賛できる内容ではないとはいえ、フル・ステージに近い状態で聴ける第3期のライヴ音源は重要。スピーカーで大音量で聴くべし。(2006年6月25日) |
Come Taste The Band | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★☆ 入門度:★★ 評価:★★★★ |
[Recording Date] 1975/8/3-9/1 Released in 1975 Disc 1 [1] Comin' Home [2] Lady Luck [3] Gettin' Tighter [4] Dealer [5] I Need Love [6] Drifter [7] Love Child [8] This Time Around/Owed To 'G' [9] You Keep On Moving [10] You Keep On Moving Disc 2 (Kevin Shirley Remix) [1] Comin' Home [2] Lady Luck [3] Gettin' Tighter [4] Dealer [5] I Need Love [6] You Keep On Moving [7] Love Child [8] This Time Around [9] Owed To 'G' [10] Drifter [11] Same In L.A. [12] Bolin/Pace Jam |
David Coverdale (vo) Tommy Bolin (g, vo) Jon Lord (key) Glen Hughes (b, vo) Ian Paice (ds) Produced by Martin Birtch and DEEP PURPLE |
リッチー・ブラックモア脱退後最初の、そしてディープ・パープル最後のアルバム(再結成は除く)。もともとリッチーが脱退したのはカヴァーデイルやヒューズの音楽性とのズレが原因であったことはよく知られているところで、邪魔なリッチーが抜けたここではその2人の方向性が更に進んだ形になる・・・と予想していたんだけれど、思ったほどではなく、やはり彼らの「実家」はハードロックにあるんだなと実感させる。というのも、既に前作の「Stormbringer」でかなりソウル/ファンク化していた故に、ロック・グループとしてこれ以上踏み込んではいけない(踏み込むとロックじゃなくなる)ところにいたのだから当然といえば当然のこと。そんな方向性にトミー・ボーリンはマッチしており、実に良い仕事をしている。[3]の中間部などは、古くからのパープル・ファンはカッコよいと思っても認められないだろうし、嫌悪感すら抱く可能性がある。[6]をはじめとして後のホワイトスネイクの姿が見え隠れするのも聴きどころ。[8]はまさにこのメンバーならではドラマ性と展開を持ったの佳曲。[9]の入りの雰囲気なんてこれまでのパープルにないカッコよさ。ストレートなロックからファンキーなもの、ブルース・フィーリングを持ったものまで内容はなかなか多彩で曲もコンパクトで聴きやすい。ちょっと地味めで曲がパッとしないこともあり玄人向けの感もあるけれど作品じたいの質は高いと思う。リッチー偏重のハードロックにしがみついている人には用のないアルバム。 35th Anniversary Editionについて。Disc 1はリマスタリングされた音質向上盤で2枚目がリミックスという構成は「Machine Head」と同じ。リミックス盤はフェードアウトなしで最後まで聴かせるという手法も同じ。そのリミックス盤はモダナイズされたサウンドになり、聴こえる音、聴こえなくなった音があって聴き倒した人にはそれなりに違いを楽しめる。それでいて雰囲気を大きくは変えていないサジ加減が、企画モノという趣旨に合っている。フェードアウトなしで伸びた部分も含めてボーリンのギターがより目立つ構成になっており、ファンには嬉しい。ところが"Drifter"と"You Keep On Moving"を入れ替えているのが意味不明で、実際違和感しかないのが残念。Disc 2のボーナストラックは完成度云々を言うレベルでない、それなりのクオリティだけれど、トミー・ボーリンが弾きまくっているのは聴きどころ。(20011年1月13日) |
Live in California 1976 | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★ 入門度:★★ 評価:★★★★ |
[Recording Date] 1976/2/27 1976/1/26 [12] [14] Disc 1 [1] Burn [2] Lady Luck [3] Gettin' Tighter [4] Love Child [5] Smoke on the Water (Inc Georgia on My Mind) [6] Lazy [7] The Grind Disc 2 [8] This Time Around [9] Tommy Borin Solo [10] Stormbringer [11] Highway Star (Inc Not Fade Away) [12] Smoke on the Water (Inc Georgia on My Mind) [13] Going Down [14] Highway Star (Inc Not Fade Away) |
David Coverdale (vo) Tommy Bolin (g, vo) Jon Lord (key) Glen Hughes (b, vo) Ian Paice (ds) |
ギタリストがリッチー・ブラックモアでないからというだけで過小評価されている感のある第4期ディープ・パープルのライヴ盤。「Come Taste The Band」はややこじんまりした印象があったものの、やはりライヴとなると伸び伸びとした演奏が展開され、このライヴこそがグループの真の姿を捉えたものだと言える。[5]の終盤で"Georgia On My Mind"を奇声で歌うグレン・ヒューズに意味を見出せない一面を感じるものの、カヴァーデイルとヒューズの指向性にはやはりトミー・ボーリンの方が合っている。そのトミー・ボーリンは、過去のレパートリーにおいてもリッチーの代わりになろうという気なんて更々ないところが良い。[10]の後半がまるで別の曲になっているのもボーリン効果だろうし、それがパープルらしいかどうかは別にして随所にリッチーの呪縛から解き放たれた演奏を聴くことができる。ジョン・ロードやイアン・ペイスのプレイも高いレベルで安定しており第4期理解者にとっては必聴アルバム。(2006年8月20日) |