A Sauceful Of Secrets | ||
![]() 曲:★★ 演奏:★★★ 入門度:★★ 評価:★★★ |
Released in 1968 [1] Let There Be More Light [2] Remember A Day [3] Set The Controls For The Heart Of The Sun [4] Corporal Clegg [5] A Saucerful Of Secrets [6] See Saw [7] Jugband Blues |
David Gilmour (g, vo) Syd Barrett (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key, vo) Nick Mason (ds) Produced by Norman Smith |
シド・バレットがバンド脱退、新たにデイヴィッド・ギルモアを迎えたピンク・フロイドのその入れ替わり過渡期にあたる作品。僕はシド・バレット(時代)に特別な思い入れはなく、後のフロイドに比べると曲の完成度という意味ではかなり劣る印象。その代わりサイケデリックなアート・ロック的なムードがプンプン。しかも、当時その他大勢のアート・ロック系グループとは一味違う幻想的な音空間は紛れもないピンク・フロイドならではの個性が既にある。長い曲こそ少ないものの、プログレの象徴的存在に祭り上げられている彼等のルーツはこんな感じだったとよくわかる1枚。さまざまな音を効果的に使ったサウンドとその拡散性がマッチした初期の代表作。[5]は後のフロイドに通じる名曲。(2006年12月10日) |
More | ||
![]() 曲:★★ 演奏:★★★ 入門度:★☆ 評価:★★★ |
Released in 1969 [1] Cirrus Minor [2] Nile Song [3] Crying Song [4] Up the Khyber [5] Green Is the Colour [6] Cymbaline [7] Party Sequence [8] Main Theme [9] Ibiza Bar [10] More Blues [11] Quicksilver [12] Spanish Piece [13] Dramatic Theme |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key, vo) Nick Mason (ds) Produced by PINK FLOYD |
映画のサントラとして短期で製作されたアルバム。引き続きサイケデリックなムードは濃いものの曲それぞれの色は結構ハッキリしてきているように思う。音を丁寧に重ねるリック・ライトの朴訥としたオルガンとキュインキュインと効果音的なデヴィッド・ギルモアのギターが醸し出すスペイシーな音空間、計算された細かく音を配置した音作りはピンク・フロイドならではの世界で、その点では既にスタイルが出来上がっていると言える。ハード・ロック的な曲、フォーク的な曲、特異なブルース風、無国籍風インタールード的なもの、そして得意の実験的な曲とバラエティに富んでいてやや散漫な感じもするけれど、力みがないなく曲もコンパクトであることからフロイドにしては聴きやすい。ただし後の作品のような完成度はまだまだ。(2006年12月10日) |
Ummagumma | ||
![]() ![]() 曲:★★★ 演奏:★★★★ 入門度:★ 評価:★★★☆ |
Released in 1970 Disc 1 [1] Astronomy Domine [2] Careful With That Axe, Eugene [3] Set the Controls For The Heart Of The Sun [4] Saucerful Of Secrets Disc 2 [1] Sysyphus, Pt. 1 [2] Sysyphus, Pt. 2 [3] Sysyphus, Pt. 3 [4] Sysyphus, Pt. 4 [5] Grantchester Meadows [6] Several Species Of Small Furry Animals Gathered Together In A Cave And Grooving With A Pict The Narrow Way [7] Narrow Way, Pt. 1 [8] Narrow Way, Pt. 2 [9] Narrow Way, Pt. 3 [10] Grand Vizier's Garden Party, Pt. 1: Entrance [11] Grand Vizier's Garden Party, Pt. 2: Entertainment [12] Grand Vizier's Garden Party, Pt. 3: Exit |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key, vo) Nick Mason (ds) Produced by PINK FLOYD |
Disc 1はライヴ演奏集。スタジオ盤で使えたさまざまな効果音を抜きにしても、しっかりとピンク・フロイドの音世界ができていることに驚かされる。反面、生演奏ならではの良さというのも特には感じることもなく、聴きようによっては怪しい新興宗教の儀式の場のように思えなくもない。曲や演奏を楽しむというよりは催眠術に身を委ねるかのような世界に快感を覚えるか眠気に襲われるか、聴き手が試される。Disc 2はスタジオ録音。おどろおどろしい導入部から現代音楽の影もチラつく美しいピアノと実験性に富んだ音空間が印象的な[1]-[4]はリック・ライト作。いかにもフロイド的な暗いメロディを持ったフォークと効果音が融合した[5][6]がロジャー・ウォーターズ作。同じくフォーク的でも英国トラッドの香りを漂わせ、そこからギターの重いリフとフロイド的効果音を重ねていき、後につながるメロディと叙情性を見せる展開となる[7]-[9]はギルモア作。打楽器を中心にやはりフロイド的音空間を構築する[10]-[12]はニック・メイソン作。各メンバーごとに持ち場を与えられた作りでそれぞれの個性を知るには格好の構成ながら、そこには一貫したフロイド・ミュージックがあるところが素晴らしい。個人的には初期フロイドの総括的なアルバムで次作からいよいよ本格的な「作品」の製作に入る。(2006年12月10日) |
Atom Heart Mother | ||
![]() 曲:★★★★ 演奏:★★★★ 入門度:★★★☆ 評価:★★★★ |
Released in 1970 [1] Atom Heart Mother Suite a. Father's Shout b. Breast Milky c. Mother Fore d. Funky Dung e. Mind Your Throats Please f. Remergence [2] If [3] Summer '68 [4] Fat Old Sun [5] Alan's Psychedelic Breakfast a. Rise And Shine b. Sunny Side Up c. Morning Glory |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key, vo) Nick Mason (ds) Produced by PINK FLOYD |
ピンク・フロイドの代表作というだけでなくプログレッシヴ・ロックの金字塔として扱われる名作。60年代後半、ビートルズが終わりを迎えようとしていた英国では次世代の音楽が確実に芽生え、そこからより深く幅広い表現を求めた音楽が評価されるようになり、曲の形式や長さの制約はどんどん無意味なものになっていた。もちろんピンク・フロイドも多くのそういった新しい音楽を追求するグループのひとつだった。しかし、このアルバムがリリースされた71年という時代には他にも長尺演奏を聴かせるバンドは沢山あったはず。このアルバムがそれらとは別次元で語られているのは完璧に構成されたこの[1]によるところが大きい。それまでの集団前衛アート・ロック的なムードは後退。リックのオルガン、ギルモアのギター、シンプルなロジャーのベース、もっさりしたニックのドラムという各演奏者のキャラクターが少しずつ明確になってきたこと、そこにロン・キージンのアレンジによるブラス、コーラス、ストリングスが加わることによって一大交響曲に仕上がった[1]のインパクトは大きい。その後のフロイドのイメージを決定付けるものになったという意味でシンボリックな名曲。全体のムードとしては、より気怠く叙情的に変化しているところもポイント。アナログで言うところのA面いっぱいを使い切った[1]ばかりが話題になるけれど、アナログで言うB面にあたる[2]以降のシンプルな美しさを併せ持つサイケな曲も味わい深い。特に朝食の風景を描いた実験的な[5]はフロイドでなければできないユニークな曲。このアルバムをもってピンク・フロイドのサウンドが完成したと言える。(2006年12月10日) |
Meddle | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★★ 評価:★★★★★ |
Released in 1971 [1] One Of These Days [2] A Pillow Of Winds [3] Fearless [4] San Tropez [5] Seamus [6] Echoes |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key, vo) Nick Mason (ds) Produced by PINK FLOYD |
重厚なオープニング、原題の「最近のある日」よりも邦題の「吹けよ風、呼べよ嵐」の方がイメージが合う[1]に始まり、気怠い[2]、軽快でもどこか暗くフロイドらしいメロディの[3]、ブルージーな[4]とアコースティック・ギターの曲が続く、これもまたフロイドらしい素朴な前半もいいけれど、なんと言っても23分を越える[5]がハイライト。いや、アナログで言うA面はこの[5]を聴くためのプロローグと言っても過言ではない。エフェクトのかかった効果音的なピアノからリックの神秘的なキーボードに、いかにもギルモアらしい細く粘っこいギターが絡むイントロからフロイドでしか成しえない深遠なムードに支配される。フロイドらしいダークな歌メロ、リックのオルガンの渋いバッキング、ニックのモッタリしたドラム、すべてが完璧に噛み合っている。冗長になってもおかしくない中間の静寂パートでさえもクライマックスを迎えるための音空間として曲の重要な構成部分になっている。いつまでも続くかのようなエンディングの余韻がまた素晴らしい。ピンク・フロイド史上、いや、プログレ史上最高の名曲がここにある。(2007年2月7日) |
Dark Side Of The Moon | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★☆ 評価:★★★★★ |
Released by 1973 [1] Speak To Me [2] Breathe [3] On The Run [4] Time〜Breathe (Reprise) [5] The Great Gig In The Sky [6] Money [7] Us And Them [8] Any Colour You Like [9] Brain Damage [10] Eclipse |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key) Nick Mason (ds) Produced by PINK FLOYD |
洋楽にハマりはじめ、高校生の頃もっぱら好んで聴いていたのは英国ハードロック・グループ。プログレに手を広げ、イエスやキング・クリムゾンも聴くようになると、当然行き着くのがピンク・フロイド、そしてその当時(85年)にまだビルボードのTop200のチャートに残っていたこのアルバム。しかし、最初に聴いたときには「なんじゃこれ」。ハードロックや、70年代のプログレは激しい演奏が魅力のひとつであり、そこに惹かれていた若造にとって、ゆったりと流れ、歪んだギターサウンドを中心としているわけでもない音楽が心の中に入ってこなかったのは仕方のないことだった。同級生の中には「あんなのかったるくて」と言う人もいた。それはさておきの本作。それはさておき、あまりにもこの有名すぎるこのアルバム。まず驚くのは、73年リリースとは思えないその録音とサウンド。同時代のロック系アルバムとは異次元、楽器の機微を鮮明に捉えたクリアでモダンなサウンドは今聴いても古さをあまり感じさせない。アルバムを通して1曲としてはいるものの、実際には短い曲が連ね、様々なタイプの曲を揃えつつも、起承転結をしっかりと構成して1枚のアルバムとして一気に聴かせてしまう。個別の曲の質が高く、構成が完璧。オルガンとピアノを中心としたサウンドの中で幻想的なギターが分け入るというサウンドだった前作までから一気にレベルを上げて、巧みかつ十分に計算してアレンジされたキーボード、ギターで全体のサウンドが別次元の領域に入っている。前作までのサウンドもフロイドらしい、フロイドならでは魅力がもちろんある(そして僕はそれを好んでいる)けれど、このアルバムは「音」がとにかく別物になっている(故にこのアルバムが気に入らなくても前作がハマる人もいるはず)。次作にも本作のサウンドは継承されてはいるものの、すべての要素が高次元で結実したこのアルバムは、フロイドのアルバムの中でも孤高の存在だと言える。(2020年4月18日) |
Wish You Were Here | ||
![]() 曲:★★★★★ 演奏:★★★★★ 入門度:★★★★★ 評価:★★★★☆ |
Released in 1975 [1] Shine On You Crazy Diamond (Part One) [2] Welcome To The Machine [3] Have A Ciger [4] Wish You Were Here [5] Shine On You Crazy Diamond (Part Two) |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key) Nick Mason (ds) Roy Harper (vo [3]) Produced by PINK FLOYD |
ピンク・フロイドはとっつきにくい。親しみやすさという言葉がこれほど縁遠いグループはないだろう。それは例えばキング・クリムゾンのように複雑で高度な演奏で人を寄せ付けないものとは違って、曲が作るムードそのものが一般人を遠ざける主因になっている。特に日本人にこの感性は理解し難いようで、例えば音楽の感性が退化してしまっている現代の日本人学生などにはほとんど理解できない子守唄にしか聴こえないはずだ。アメリカでは老若男女に親しまれているという事実とのギャップは一体なんなんだろうという疑問はさておき、そんなフロイドにあって最も親しみやすいサウンドなのがこのアルバムではないだろうか。それでありながら、従来のフロイドらしい幻想性、叙情性もまだ残っているところが素晴らしい。更に特筆するべきはデヴィッド・ギルモアのギターが泣きまくっているところ。元々ブルース・ギタリストとして泣かせることは十分得意なギルモアが、[1][5]で聴かせるギターはベスト・プレイと言えるし、曲をドラマチックに盛り上げている。従来の作品と比べるとややあっさりしていてコアなファンには物足りないと感じさせる部分があるのではないかと思われるものの、録音状態も良く幅広く勧められる1枚。(2007年3月18日) |
Animals | ||
![]() 曲:★★ 演奏:★★★ 入門度:★ 評価:★ |
Released in 1977 [1] Pigs On The Wing 1 [2] Dogs [3] Pigs (Three Different Ones) [4] Sheep [5] Pigs On The Wing 2 |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key) Nick Mason (ds) Produced by PINK FLOYD |
僕にとって音楽は娯楽そのもの。聴いている間、仕事や生活の悩みから開放され至福の時間に浸るためのもので、いわば現実逃避として楽しんでいる。だから政治や世相を嘆き「なんて嫌な世の中なんだろう」「堕落した権力者なんて」といった現実そのものを歌ったメッセージ・ソングは聴かない。理由はそれだけではない。例えば政治批判の曲にシャレっ気のあるアレンジや、気持ちが昂ぶるメロディなどが取り入れられるはずがない。考えてみればそれは当然のことでツマラナイ現実そのものを歌っている以上、娯楽性のある音楽がマッチするはずがなく必然的に音楽性が単純で色彩感のないものになってしまう。だから歌詞の内容が聞き取れなくても、ボブ・ディランやジョン・レノンの音楽は非常につまらないと感じてしまうのだ。メッセージ・ソングがウケていた70年代前半は、一方で別種のトリップ・ミュージックが受けていて、その代表格がハード・ロックやプログレッシヴ・ロックだったしピンク・フロイドもその中心にいたグループだった。歌詞は詩的で想像力をかきたて、幻想的な曲はトリップ・ミュージックとして申し分のないものだった。しかし、それは「Wish You Were Here」までのこと。このアルバムは資本家や権力者を強く批判したコンセプト・アルバムでメッセージ・ソングの例に漏れず非常にシンプルな音作りになっているのが特徴。前作までにあった身を委ねたくなるような幻想性はここにはまったくない。前述した「メッセージ・ソングは音楽性が」論は、実は、アニマルズ以降のフロイドはどうしてこんなにつまらないんだろうということを考えて出した結論でもある。この種の「批判をしよう」というネガティヴな気持ちを持った人間から豊かな音楽が生まれるはずがないし、巨大なロック・ビジネスに身を置く者は、ロジャー・ウォーターズが批判する権力者たちによって支えられているという矛盾に答えることもできない。メッセージ・ソングの限界を僕に教えてくれたという意味で印象に残っているアルバム。(2007年1月9日) |
The Wall | ||
![]() 曲:★★ 演奏:★★★ 入門度:★★★ 評価:★★ |
Released in 1979 Disc 1 [1] In The Flesh? [2] The Thin Ice [3] Another Brick In The Wall (part I) [4] The Happiest Days Of Our Lives [5] Another Brick In The Wall (part II) [6] Mother [7] Goodbye Blue Sky [8] Empty Spaces [9] Young Lust [10] One Of My Turns [11] Don't Leave Me Now [12] Another Brick In The Wall (part III) [13] Goodbye Cruel World Disc 2 [14] Hey You [15] Is There Anybody Out There? [16] Nobody Home [17] Vera [18] Bring The Boys Back Home [19] Comfortably Numb [20] The Show Must Go On [21] In The Flesh [22] Run Like Hell [23] Wating For The Worms [24] Stop [25] The Trial [26] Outside The Wall |
David Gilmour (g, vo) Roger Waters (b, vo) Richard Wright (key) Nick Mason (ds) Produced by David Gilmoour, Bob Ezrin and Roger Waters |
基本的には前作の延長線上にある後期フロイドの代表作。「Animals」の項目で書いた通り、ロジャー・ウォータースが主導権を握った後期フロイドは幻想性が減退していて僕にとってはつまらない。聴いていて精神的にトリップできず、ただ退屈な時間が過ぎるだけになってしまう。それでも本作は聴きやすく、どこか穏やかな明るさすら感じる部分もあるところが愛されている理由だろうか。2枚組というボリュームも僕にとっては辛いところ。ギルモアのギターの幻想性が薄れているところも残念。(2007年3月18日) |