「廻切の研ぎ方」
1.刃表を研ぐ
最初に刃表を研ぐのは、通常の革包丁と同じです。ただし、刃の側面に対して、約40度刃を傾けて製作しています。(刃先の角度は約50度。)この角度は、研ぎ方によって簡単に変わります。お好みの角度で使用していただいてかまいませんし、実用的な角度というのは、それなりに許容範囲があるようです。
一つだけ参考としては、刃研ぎでは力の入れ方で削れ方が変わります。意識的にどこかに力を入れることもありますし、無意識にどこかに力が片寄ってしまうということもあります。
そこで一つヒントですが、上の2枚の画像では砥石に対して廻切を当てる角度が違っているのがわかると思います。私の場合、左の画像の角度で当てると、刃先側が早く減ります。右の画像の角度で当てると、刃先とは反対の側が早く減ります。刃物の持ち方によっても、力のかかり方が変わると言うことですね。
難しく考える必要はありませんが、ときどきは、角度も確認してみるのも自分のクセがわかって面白いかなと思います。 |
2.
刃表のアールを付ける。

刃表の中研ぎが終わった時点で、刃裏のアールの反映で、刃先は少し丸みがついているはずです。この丸みを大切にしながら、刃表のアール付けをします。
画像では、ダイヤモンドヤスリでアールを付けています。目で見て確認しながらできるので、やりやすいと思います。
私自身は、砥石に刃を当ててアールを付けていますが、切れ刃の側面を砥石にぴたっと当てて、刃先側に力を入れない感覚でアールを付けます。ローリングといった感じの動作になります。普通の砥石はかじりやすいので、ダイヤモンド砥石を使っています。砥石では、どのように削られているかを見ながら研ぐことができないので、研ぎになれていない人は、ダイヤモンドヤスリを使い、目で見ながら削ることから始めた方が良いかもしれません。
アールを付けるのは、刃表の切れ刃の側面です。裏のアールもそうなのですが、べたっと大きくアールを付けるのではなくて、ころんと丸みを付けるような感覚です。
べたっと大きく削ってしまうと、刃先の強度にも影響してきますし、何よりも削る必要のないところを削って手間を掛けてしまうのは損ですね。
簡単にころんとアールを付ける感じで気楽にやってみましょう。このとき失敗しないようにするコツは、刃先付近ではほとんどアールを取らないという感覚を持って作業することだと思っています。アールを付けるにしてもほんのわずかで、削ると言うところまでは行かない感覚です。私の場合は、刃先にはほとんど砥石を当てないという感覚でアールを付けています。
このアールの付け方によって、回転性が変わってきます。切る革の厚みによっても、必要なアールは微妙に変わるようです。一度研ぎ上げてから実際に使用してみて、微調整をするのが良いと思います。回転性が思わしくない時には、アールを大きくするのですが、この大きくと言うのがほんのわずかなのです。わずかなアールの違いによって操作性が大きく変わるので、大きめよりも小さめを心掛けた方が良いと思います。
刃裏のアールは、製作時に最初から付けていただいていますが、研いでいると当然刃裏の形状も変わってきますので、必要があれば裏のアールも調整します。こちらもころんと丸いアールです。 |
3.
刃表・刃裏、そして刃裏と刃表のアールを仕上げます。
通常の研ぎと同じように、仕上げ砥石を掛けます。違いは刃裏のアールと刃表のアールも仕上げると言うことですね。
刃裏と刃表の仕上げは、通常の仕上げ研ぎと同じです。刃裏のアールと刃表のアールは、砥石の上にアールを当ててローリングといった動作で仕上げてください。このときのポイントは、刃裏のアールは裏を押して平面になっている部分を意識することです。裏を押している部分と、それ以外の裏の部分とは角度が違っているのです。裏はわずかに刃先に向かって角度がついている状態で、裏が押されることになるはずなのです。
仕上げの時も刃先の丸みは大切にしてください。
小刃(刃先のわずかな2段研ぎ)はややきつめに付けた方が良いと思いますが、このとき刃先の丸みに沿って刃が側面に回り込んでいくように小刃を付けます。刃先の丸みへの小刃付けもローリングしながら行います。この丸みへの小刃付けをした時に、刃先の丸みがしっかりと出るはずです。丸み部分は、丸く研ぎつぶすのではなく、あくまでも刃が側面に回り込むように小刃を付けるということが大切です。 |
4.
最後に、革砥で仕上げます。
研ぎ終わりましたら、油を引き、革砥で仕上げます。裁断作業でも、革砥で刃先を整えながら刃物を使うことが、快適な作業のために大切ですね。 |
数字を付けて、順番に研ぎの工程を説明しましたが、刃先の形状確認のために、途中で軽く仕上げ砥を当てるということもあるかもしれません。使う人が、それぞれ行いやすい段取りで、手入れをしてください。
そして、何よりも、鋭利な刃物ですから、取り扱いには気を付けて安全な作業をしてください。 |
|

廻切の出荷時の形状
仮刃が付けられています |

辻永使用中の刃表 |

辻永使用中の刃裏 |