レザークラフトの工具の手入れや調整法などについての説明を中心に紹介するページです。
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廻切革包丁
(まわしぎり)

 曲線の裁断用に、布川さんに製作していただいた、廻切革包丁です。




「廻切の紹介」

廻し切り
 廻切の右利き用の画像です。左が刃表側、右が刃裏側から見たところです。

 形は切り出しのようですが、角度を付ける向きが、右利き用の廻切は左利き用の切り出しと同じで、左利き用の廻切は右利き用の切り出しと同じになります。

 刃の形状の画像は、このあと紹介しますが、形状を切り出しのようなものにしただけではなく、回転性がよくなるように、刃裏の側面と刃表の切れ刃の側面にアールを付けています。そして、刃先が丸みをおびています。この加工があってはじめて曲線を切るための廻切の性能が発揮されます。

 次に、裁断したサンプルの画像を紹介しますが、回転性・操作性はたいへん良い物となっています。
廻し切り 廻し切り
 左の画像の革の厚さは、1.6ミリです。白く光っているのが1円玉です。正確な円ではありませんが、花のモチーフの中心の小さな丸も、廻切革包丁で切ったものです。
 右の画像の革の厚みは4.2ミリです。やはり白い円は1円玉です。この厚さでこのくらい曲線を切ることができれば、十分な実用性がありますね。

 力の入れ方や、刃の傾け方などには、少しクセがあるかもしれませんが、使い始めるとすぐに慣れると思います。断面の垂直性を保つためには、曲線の内側に廻切を傾けるような感覚を持つと良いと思います。

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「刃の形状」

廻し切り
 廻切の刃の先端の画像です。これは製作者の布川さんが製品を出荷する時の状態です。仮の刃が付けられているので、すぐに革を切り操作性を確認していただくことができます。

 使ってくださる人が、手に取って見ていただければわかるものなのですが、お手入れをしていく中で、最初の形がどのようなものであったのかを確認していただくために、最初の製品の画像をこのページにおいておきます。角度・先端の丸み・アールの取り具合などの参考にしてください。

 刃の形状には、面の構成と刃先の形状の幾何的な裏付けがあるのですが、理論通りに研ぐことは人の手には至難の業と言いますか、これだけ研ぎ角度の浅い刃物ではほとんど不可能に近いものがありまして、実際の研ぎでは使いやすく実用的な研ぎを目指すことになります。
廻し切り 廻し切り
 この2枚の画像は、私が使っている廻切です。左が刃表側、右が刃裏側ですね。私のクセが付いていますので、すでに最初の布川さんの製品の形状とは違ってきています。

 研ぎの工程でも説明しますが、小刃付け(刃先のわずかな2段研ぎ)がきつめなのが、画像から見て取ることができると思います。こじりに強くなるように、きつめにしています。刃先の丸みの部分もしっかりと刃を付けてあり、刃が側面に回り込んでいく感じが大切です。

 刃先の丸みは、剛性を高めるために重要な部分でありますし、裁ち板の中での刃の動きを滑らかにするのにも役立っているような気がします。(事務用のカッティングマットは、刃物にはあまり良くない造りですから、裁ち板にはビニプライをお使いになることを勧めます。)

 では、人により研ぎ方が違ってくると思いますが、私なりの研ぎ方を紹介したいと思います。

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「廻切の研ぎ方」

1.刃表を研ぐ
廻し切り 廻し切り

 最初に刃表を研ぐのは、通常の革包丁と同じです。ただし、刃の側面に対して、約40度刃を傾けて製作しています。(刃先の角度は約50度。)この角度は、研ぎ方によって簡単に変わります。お好みの角度で使用していただいてかまいませんし、実用的な角度というのは、それなりに許容範囲があるようです。

 一つだけ参考としては、刃研ぎでは力の入れ方で削れ方が変わります。意識的にどこかに力を入れることもありますし、無意識にどこかに力が片寄ってしまうということもあります。 

 そこで一つヒントですが、上の2枚の画像では砥石に対して廻切を当てる角度が違っているのがわかると思います。私の場合、左の画像の角度で当てると、刃先側が早く減ります。右の画像の角度で当てると、刃先とは反対の側が早く減ります。刃物の持ち方によっても、力のかかり方が変わると言うことですね。

 難しく考える必要はありませんが、ときどきは、角度も確認してみるのも自分のクセがわかって面白いかなと思います。 
2. 刃表のアールを付ける。
廻し切り
 刃表の中研ぎが終わった時点で、刃裏のアールの反映で、刃先は少し丸みがついているはずです。この丸みを大切にしながら、刃表のアール付けをします。

 画像では、ダイヤモンドヤスリでアールを付けています。目で見て確認しながらできるので、やりやすいと思います。

 私自身は、砥石に刃を当ててアールを付けていますが、切れ刃の側面を砥石にぴたっと当てて、刃先側に力を入れない感覚でアールを付けます。ローリングといった感じの動作になります。普通の砥石はかじりやすいので、ダイヤモンド砥石を使っています。砥石では、どのように削られているかを見ながら研ぐことができないので、研ぎになれていない人は、ダイヤモンドヤスリを使い、目で見ながら削ることから始めた方が良いかもしれません。

 アールを付けるのは、刃表の切れ刃の側面です。裏のアールもそうなのですが、べたっと大きくアールを付けるのではなくて、ころんと丸みを付けるような感覚です。

 べたっと大きく削ってしまうと、刃先の強度にも影響してきますし、何よりも削る必要のないところを削って手間を掛けてしまうのは損ですね。

 簡単にころんとアールを付ける感じで気楽にやってみましょう。このとき失敗しないようにするコツは、刃先付近ではほとんどアールを取らないという感覚を持って作業することだと思っています。アールを付けるにしてもほんのわずかで、削ると言うところまでは行かない感覚です。私の場合は、刃先にはほとんど砥石を当てないという感覚でアールを付けています。

 このアールの付け方によって、回転性が変わってきます。切る革の厚みによっても、必要なアールは微妙に変わるようです。一度研ぎ上げてから実際に使用してみて、微調整をするのが良いと思います。回転性が思わしくない時には、アールを大きくするのですが、この大きくと言うのがほんのわずかなのです。わずかなアールの違いによって操作性が大きく変わるので、大きめよりも小さめを心掛けた方が良いと思います。

 刃裏のアールは、製作時に最初から付けていただいていますが、研いでいると当然刃裏の形状も変わってきますので、必要があれば裏のアールも調整します。こちらもころんと丸いアールです。
3. 刃表・刃裏、そして刃裏と刃表のアールを仕上げます。

 通常の研ぎと同じように、仕上げ砥石を掛けます。違いは刃裏のアールと刃表のアールも仕上げると言うことですね。

 刃裏と刃表の仕上げは、通常の仕上げ研ぎと同じです。刃裏のアールと刃表のアールは、砥石の上にアールを当ててローリングといった動作で仕上げてください。このときのポイントは、刃裏のアールは裏を押して平面になっている部分を意識することです。裏を押している部分と、それ以外の裏の部分とは角度が違っているのです。裏はわずかに刃先に向かって角度がついている状態で、裏が押されることになるはずなのです。

 仕上げの時も刃先の丸みは大切にしてください。

 小刃(刃先のわずかな2段研ぎ)はややきつめに付けた方が良いと思いますが、このとき刃先の丸みに沿って刃が側面に回り込んでいくように小刃を付けます。刃先の丸みへの小刃付けもローリングしながら行います。この丸みへの小刃付けをした時に、刃先の丸みがしっかりと出るはずです。丸み部分は、丸く研ぎつぶすのではなく、あくまでも刃が側面に回り込むように小刃を付けるということが大切です。
4. 最後に、革砥で仕上げます。

 研ぎ終わりましたら、油を引き、革砥で仕上げます。裁断作業でも、革砥で刃先を整えながら刃物を使うことが、快適な作業のために大切ですね。
 数字を付けて、順番に研ぎの工程を説明しましたが、刃先の形状確認のために、途中で軽く仕上げ砥を当てるということもあるかもしれません。使う人が、それぞれ行いやすい段取りで、手入れをしてください。

 そして、何よりも、鋭利な刃物ですから、取り扱いには気を付けて安全な作業をしてください。
廻し切り
廻切の出荷時の形状
仮刃が付けられています
廻し切り
辻永使用中の刃表
廻し切り
辻永使用中の刃裏

 廻切革包丁には、布川さんの説明プリントが入っております。簡潔で、わかりやすい図入りです。そちらと合わせてこのページを参考にしてください。

 研ぎのことを文章にすると、なんだか面倒な感じがしますが、実際には慣れてしまうと簡単にできると思います。ヒントになる言葉をたくさん入れようとすると、読んだ感じがすっきりしなくなってしまいますね。

 でも、普通の研ぎにひと手間増えるだけなのです。それだけで、回転性・操作性が格段に向上するのです。物作りは道具次第、道具は人次第ということで、どんどん研いでみてください。

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