
2003年11月に発売されたC社の面取り工具 「KSへりおとし」です。(KSはクラフトスペシャルの略。CSにしなかったのは、ちょっとしたわけがあるらしい。)
この面取りは、従来の製品と比べて、格段に良くなっています。購入した時点で、切れ味も優れていて、手直ししないですぐに使える状態です。
面取りの刃の幅は、№1〜№3まで3種類です。1が狭く3が広い設定です。従来のC社の「へりおとし」ですと、№1・№2のどちらを買ってもそれほど仕上がりに違いはありませんでした。しかしながら、今回の「KSへりおとし」は、それぞれの幅もしっかりと仕上がっています。
従来の製品とは形状がやや異なりますが、手入れは、従来の製品とほぼ同様な方法で可能です。詳細は、工具の仕立てのページを参考にしてください。
|

写真の左から、№1・№2・№3です。
個人的には、№1がもう少し狭くてもいいように感じましたが、これは自分で狭い面取りを作って使っているために、そう感じたような気がいたします。一般のクラフト向きには十分な幅の設定だと思いました。
へりおとしの理想的な形状としては、「裏の溝は丸く、表の溝は角に、」 だと思います。裏の丸みで、革の面取りに丸みがつきますし、表の角溝で面を取る幅が一定になります。
この面取りは、ほぼ理想的な刃の構成をしています。
この裏の丸みというのが、鉋の類の面取りとの、大きな違いのひとつだと思います。また、革に当てた時の安定性向上のためにも重要なところですね。
|
 |
 |
上の左側の写真が、工具の先を側面から見たところです。この形状から行くと、研ぎながら使用できる長さは、5〜6ミリ程度なのですが、この長さを研ぎ減らすということは、なかなか無いことだと思います。
もともと、頻繁に本格的な研ぎを必要とする工具ではありませんし、今回の鋼材は、従来の製品の鋼材よりも、性の良い物になっているような気がします。この数ミリで一般ユーザーが十分な年数にわたり使用することができるのは、間違いないですね。
上の右側の写真を見ると、裏面の溝が先端部だけではなくて、もっと長く削られていることがわかります。この長めの切削によって、その気になれば、かなりの長さを刃として作ることもできます。(熱処理なども必要になりますが・・・。)その気になっての作業法の説明は省略しますが、この裏面の長めの溝は、私にとってはこの道具を長年使うことも可能だという安心感となりました。
もっとも、手頃な価格で発売されたので(発売時1900円)、無理して加工する必要もないかもしれませんね。
|
 |
 |
さて、次の写真は、実際に面取りをしているところです。切れ味は軽く鋭いですね。鋼の滑りもいいです。面取り幅の安定感もありますし、革に工具の幅筋も付きません。
右の写真の、丸い物は10円玉です。小さなえぐりのカーブも面取りしてみました。たいへん小回りが効き、操作性・視認性ともに申し分ありませんでした。小回りが効いて視認性もいいというのが、この手の形状の面取りの優れた点ですから、この点のきちっとした性能が出ていることは大切なんですね。
本当に、仕上がりの良い工具です。でも、もちろん私なりに多少の手は加えました。
切れ味は申し分ないものですが、表の溝の角度が立ち気味で長さももう少しほしいと思いましたので、浅い角度で少し長めに表の溝を削りました。これは、私の好みでありまして、一般的には必要のない操作だと思います。切れ味が良ければ、鈍角の方が刃持ちも良いのではないかと思います。
また、鋼の質を見るのを兼ねて、幅を少し削ってみました。ダイヤモンド砥石で削っていたのですが、実は、この作業中に油断したら削りすぎて、思っていた形状よりも細くしすぎてしまいました。と言うことで、届いたその日のうちに、すぐに2丁目を注文した次第です。トホホ。
以前から、手頃な価格の良質な国産面取りが製作されるべきだと思っていたので、この「KSへりおとし」は待ちに待ったという感じでした。
この面取りはお勧めです。
たぶん、この面取りは、国内では今後の定番的な基本工具の一つになると思います。
このような使いやすく機能的な工具は、革の物作りの楽しみをより大きな物にしてくれますし、これからのユーザーにプラスになっていくことですね。
革のクラフトのカタログには、高価な外国製工具が紹介されています。優れた工具が紹介されていたのでしょうが、私には、購買単価のつり上げ策といった雰囲気が強く感じられて、今ひとつ納得できない思いで見ておりました。でも、ここに来て、国産工具ががんばってくれるのは、とても喜ばしいことです。
仕上がりの良いコストパフォーマンスに優れた国産工具の充実は、間違いなく革の世界の将来につながりますね。
|
私自身は、かなり気に入っている道具ですが、ネット上の掲示板などを拝見した中では、「いまひとつ」という印象の書き込みも見受けられます。
刃先が肉厚で、表からの研ぎ角が鈍角なので、刃先の作りが少しでも悪いと、切れ味に影響するのかもしれません。刃先さえ合わすことが出来れば、切れ味が向上するはずですので、工具の仕立てのページを参考にして、調整してみてください。
私は、少し上に書いているように、刃表からの研ぎ角度を自分好みに調整しています。刃を薄く作るというイメージでしょうか。 |
|

最後に、同時に発売された、ステッチルレットも紹介しておきます。
従来のルレットよりも、すっきりとしたデザインで、コマが4種類になっています。C社の4種類の菱目打ちのピッチと同様の構成にしたようです。
いままでよりも細かい約3ミリのピッチのコマが入っています。他のコマも従来品よりもいい状態で仕上がっているようです。ただし、ピッチにはわずかにムラがあるようです。完璧な等間隔でピッチを刻むことは期待しない方が良いと思います。もちろん、通常の使用では実用の範囲内だと思います。
私がこの道具を使うのは、革ひもかがりの穴のピッチを刻む時が最も多かったのですが、今回の新製品の6ミリピッチのコマの仕上がりが良くなっていたので、個人的にはその点が最もうれしかったですね。
コマの交換の時のネジの締め付けも、ドライバーと簡易型のレンチ?がついているので、確実になりました。でも、付属のドライバーは小さいので、自分で持っているもう少し大きめのドライバーを使う方が良いかもしれませんね。
|