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→ビギナーのための極限定義 →厳密な極限定義 − 考え方 →厳密な極限定義 − ε-δ法による表現 ( 論理にこだわって / 論理記号読下しサンプル ) →厳密な極限定義 − 近傍概念を用いた表現 【関連】 ・1変数関数の極限概念:右極限/左極限/片側極限/包括的な極限/x→+/−∞での極限/発散 ・関数一般に拡張された極限概念: →2変数関数の極限/n変数関数の極限/実数値関数一般の極限/n変数ベクトル値関数の極限/写像の極限 →数列の極限 |
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ε−δ論法による厳密な「極限」定義
・《実数の集合D》を定義域とする1変数関数f
とは、
どんな《正の実数》
を選んで、εに代入しても、 その〈εに代入した《正の実数》〉に好都合な《正の実数》を探し出してδに代入することによって、
「どの《 fの定義域に属す実数》をxに代入しても、
を成り立たせることができる 論理記号で表すと、 ということ。 ※どう読むの?→ 読み下しサンプル※どういうこと?→ 考え方 / 論理にこだわって ※別の表現は?→ 近傍概念を用いた簡潔な表現 ※「関数fがx0において連続」の定義では、 「0<|x−x0|<δ」ではなく、「|x−x0| < δ」─つまり、x0を含めて考えた。 *この定義の導入者は、ワイエルシュトラスであるという[岩波文庫『ゲーデル不完全性定理』解説(p.89)]。
・《実数の集合D》を定義域とする1変数関数f
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【極限値を定義可能な範囲】 ・右上の【文献】欄にリストアップした教科書を見比べると、
・最も広範なのは設定4。上記のノートでは、これを採用した。 |
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「Dを定義域とする1変数関数f(x)は、xがx0に近づくとき、αに収束する」
f (x) → α (x→x0 , x∈D)
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lim |
f (x) = α |
x→x0 |
* 変項 Dの議論領域 : あらゆる《実数の集合D》《Rの部分集合》をあつめた集合
。すなわち、Rのベキ集合。[杉浦・Lang]
※ 赤は、教育的配慮から、あらゆる《区間の和集合》をあつめた集合に限定している。
* 変項 fの議論領域 : あらゆる《Dで定義された1変数実数値関数》をあつめた集合
* 変項x0の議論領域 : fの定義域D の触点を集めた集合。すなわち、fの
定義域D の閉包。
* 変項αの議論領域 : あらゆる実数をあつめた集合 R
* 変項 f の議論領域 : あらゆる《Dで定義された1変数実数値関数》をあつめた集合
* 変項 x0
の議論領域 : fの
定義域D の触点を集
めた集合。すなわち、fの
定義域D の閉包。
* 変項εの議論領域 : あらゆる実数をあつめた集合 R
* 変項δの議論領域 : あらゆる実数をあつめた集合
R
* 変項 x の議論領域 : f
の定義域D
* 変項αの議論領域 : あらゆる実数をあつめた集合 R
・「 ∀ε>0
∃δ>0 ∀x∈D ( 0<|
x−x0|<δ
⇒ |
f
(x)−α |<ε)
」 は、下記の略記。
「 ∀ε∈
{
x∈R
|
x> 0 } ∃δ∈ {
x∈R
|
x> 0 } ∀x∈D
( 0<|
x−x0|<δ
⇒ |
f
(x)−α |<ε
)
」
つまり、「 ∀ε∈
(0,∞)
∃δ∈ (0,∞)
∀x∈D
( 0< |
x−x0|<δ
⇒ |
f
(x)−α |<ε
)
」
ないし、
「 ∀ε (
ε>0
⇒ ∃δ
( δ>0
かつ ∀x∈D
( 0< |
x−x0|<δ
⇒ |
f
(x)−α |<ε
) )
) 」
・上記定義が意味しているのは、
{ x∈R | x> 0 } つまり (0,∞) から、どの実数を 選んで変項εに代入しても、(←意味:「∀ε>0」 「∀ε∈ { x∈R | x> 0} 「∀ε∈ (0,∞)」 の部分)
《εに代入した実数》に好都合な実数が、 {
x∈R
|
x> 0 }
つまり (0,∞)
のなかに、少なくとも一個は存在するので、
その《εに代入した実数》に好都合な実数を、 {
x∈R
|
x> 0 }
つまり (0,∞)か
ら探し出してδに代入することによって、(←意味 「∃δ>0」
の部分)
「どの《Dに属す実数》をxに
代入しても、f
、x0 は、
『 0<|
x−x0|
<δならば、|
f(x)−α |<ε
』を満たす」 (←意味:0< |
x−x0|<δ
⇒ |
f
(x)−α |<ε)
)
を成り立たせることができる
ということ。
→1変数関数の極限定義 →トピック一覧:1変数関数の極限 |
→1変数関数の極限定義 →トピック一覧:1変数関数の極限 |
・設定の違い
・定義1の設定の違い(関数fの議論領域、x0の議論領域の設定の違い)
初学者向けに限定された設定
↑
設定1-1:fは、開区間Iで定義された関数。x0は、Iの一点。[笠原p.25]
設定1-2:fは、区間もしくは「区間から有限個の点を除いた《実数の集合》」で定義された関数。x0は、Iの一点。[小平p.76;79]
設定1-3:fは、《実数の集合》で定義された関数。 ∃δ>0 《fの定義域》⊃ ( x0−δ, x0+δ)−{x0}
設定1-4:集積点
↓
一般的な設定
∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε) {省略形→小平}
∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( x∈I かつ 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)
∀ε>0 ∃δ>0
∀x∈I
( 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)」
ポイント1:設定の違い(関数fの定義域―x0 の議論領域)
ポイント2:「 ∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)」か、
「 ∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( x∈「fの定義域」 かつ 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)」
すなわち、 「 ∀ε>0 ∃δ>0
∀x∈定義域
(0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)」か、
という事情。
おおまかな比較表 (だいたいのイメージなので、あてにしてはいけない)
極限 設定1 笠原 |
極限 設定2 小平 |
極限 設定3 松坂 黒田 ほか |
極限 設定4 | ※ もう一つの 極限概念 |
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x0は定義域に属し、x0の両隣も定義域: x0が《定義域の内点》(たとえば、区間の中間) |
○ | ○ | ○ | ○ | ○ | |
x0は定義域に属し、x0の一方の隣も定義域だが、他方の隣は、定義域ではない: たとえば、閉区間の端点(定義域に属す「《定義域の集積点》である《定義域の境界点》」) |
× | × | × | ○ | ○ | |
x0は定義域に属すが、x0の両隣は定義域でない: x0が孤立点(定義域に属す「定義域の集積点でない境界点」 |
× | × | × | × | ○ | |
x0は定義域に属さないが、x0の両隣は定義域: つまり、(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース) |
× | ○ | ○ | ○ | ○ | |
x0は定義域に属さないが、x0の一方の隣は定義域: たとえば、開区間の端点(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース) |
× | × | × | ○ | ○ | |
x0は定義域に属さず、x0の両隣も定義域に属さない: つまり、x0は定義域の外点 |
× | × | × | × | × |
I.関数の定義域を、区間ないし区間和に限定しているテキスト
関数fの議論領域を、「区間ないし区間和を定義域とする関数」に限定しているテキスト
(1)点
[混乱回避のため、f,x0の議論領域を狭い範囲に設定。]
笠原p.25:
・関数f, x0の議論領域について。
fは、開区間Iで定義された関数。x0は、Iの一点。もっとも狭く定義。
「開区間Iの上で定義された実数値関数 y=f(x):I→R を考える。xがIの一点x0に近づくとき、f(x)が一定値aに限りなく近づく、とうことを正確に表現しよう。」
・定義 : ∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)
そこでの定義の有無
↓
○ x0は定義域に属し、x0の両隣も定義域: x0が《定義域の内点》(たとえば、区間の中間)
× x0は定義域に属し、x0の一方の隣も定義域だが、他方の隣は、定義域ではない: たとえば、閉区間の端点(定義域に属す「《定義域の集積点》である《定義域の境界点》」)
× x0は定義域に属すが、x0の両隣は定義域でない: x0が孤立点(定義域に属す「定義域の集積点でない境界点」)
× x0は定義域に属さないが、x0の両隣は定義域:つまり、(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース)
× x0は定義域に属さないが、x0の一方の隣は定義域: たとえば、開区間の端点(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース)
× x0は定義域に属さず、x0の両隣も定義域に属さない: つまり、x0は定義域の外点
小平:
・関数f, x0の議論領域について。(p.76;79)
区間Iで、x0を除いて定義された関数f
「本章では、主として、区間または区間から有限個の点を除いて得られる集合で定義された関数を考察する。関数fが、例えば、区間Iから1点aを除いた集合I-{a}で定義されているとき、fをIでaを除いて定義された関数という。さらに、fがIまたはI-{a}で定義されているとき、fをIで高々aを除いて定義された関数と
いうことにする。(p.76)」「定義2.1 区間Iで高々点a∈Iを除いて定義された関数f(x)が与えられたとし、αを実数とする。・・・ならば、
x→aのときf(x)はαに収束する。αはx→aのときのf(x)の極限値であるといい、・・・あるいはx→aのときf(x)→αとかく。(p.76)」
aは、閉区間の端点でもよいの?→(p.79)
「上の定義2.1において、たとえば、I=[a,b)なるときには、x∈Iと考えているから、(2.1)は、『0<x-a<δ(ε)のと
き|f(x)-α|<ε』と同値であって、したがってα=lim x→a f(x)は、xが右からaに近づくときのf(x)の極限値である。」
「aがIの内点であるときにも、xが右から、あるいは左からaに近づくときの極限値を考察することがある。すなわち…となるならば、αはxが右からaに近
づくときのf(x)の極限値であるといい、…と書く。xが左からaに近づくときのf(x)の極限値も同様に定義する。」(p.79)
・定義:「(2.1) ∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)
」
「 ∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( x∈I かつ 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)」
p.77「厳密にいえば(2.1)は、0<|x−x0|<δ, x∈Iなるとき | f
(x)−A|<ε)」と書くべきであるが、xIのときにはf(x)が定義されていないため、(2.1)は無意味である。(2.1)が意味をもつためにはx∈Iでなければならないから、'x∈I'を省略したのである。以下、同様に、x
Iのとき無意味な場合には条件x∈Iを省略することにする。
そこでの定義の有無
↓
○ x0は定義域に属し、x0の両隣も定義域: x0が《定義域の内点》(たとえば、区間の中間)
× x0は定義域に属し、x0の一方の隣も定義域だが、他方の隣は、定義域ではない: たとえば、閉区間の端点(定義域に属す「《定義域の集積点》である《定義域の境界点》」)
× x0は定義域に属すが、x0の両隣は定義域でない: x0が孤立点(定義域に属す「定義域の集積点でない境界点」)
○ x0は定義域に属さないが、x0の両隣は定義域:つまり、(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース)
× x0は定義域に属さないが、x0の一方の隣は定義域: たとえば、開区間の端点(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース)
× x0は定義域に属さず、x0の両隣も定義域に属さない: つまり、x0は定義域の外点
U.関数の定義域を、区間ないし区間和に限定せず、《実数の集合》一般でよいとしているテキスト
関数fの議論領域を、「《実数の集合》《Rの部分集合》一般を定義域とする関数」に限定しているテキスト
(1)点x0を「∃δ 《fの定義域》⊃ ( x0−δ, x0+δ)−{x0} 」を満たすものに限定
[定義域が除外近傍を含む] 「x0が定義域の内点⇒条件」だが、「条件⇒x0が定義域の内点」ではない。
「x0が定義域の集積点⇒条件」だが、「条件⇒x0が定義域の集積点」ではない。
いや、∀ではなく、∃δ>0 《fの定義域》⊃ ( x0−δ, x0+δ)−{x0}
定義域に属す点については、孤立点はもちろん、、閉区間の端点を除外?
定義域に属さない点については、外点はもちろん、開区間の端点も除外?
松坂1:3.1-E(p.100)
fは点x0のある近傍で、x0自身を除き、定義されているものとする。(x0においては、fは定義されていても定義されていなくても、どちらでもよい。)
「いま、fを一つの関数とし、fはaのある近傍で、a自身を除き、定義されているものとする。(aにおいてはfは定義されていても、定義されていな
くても、どちらでもよい。)」「"任意のε>0に対し、あるδ>0が存在して、0<|x-a|<δを満たすすべてのxに対して
|f(x)-α|<ε が成り立つ。"これが関数の極限のいわゆるε-δ式の定義である。」 lim x→a
f(x)とf(a)は概念上別のものだという図解。
永倉・宮岡『解析演習ハンドブック[1変数関数編]』4.1.1(p.134):「関数fの定義域Iは点aの削除近傍{x∈R|0<|x-a|<h}(h>0)を含むものとする。すなわちfは点aのまわりで定義されていて、点aでは定義されていてもいなくてもよいとする。(4.1.1)次をみたすとき、xがaに近づくとき、f(x)の極限値はLであるという。
任意の正数ε>0に対して、x∈I, 、0<|x-a|<δならば、|f(x)-L|<εとなる正数δ>0が存在する。 」
ということは、 ∀ε>0 ∃δ>0
∀x
(x∈Iかつ 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−L|<ε)」
黒田:定義3.1 (p.93):
「関数f(x)はx=aの近くで定義されているとする。ただし、x=aではfは定義されていても、いなくてもよいとする。言い換えれば、δ0をある正数として、D(f)《fの定義域》⊃ ( a−, a+δ0 )−{a} であるとする。このことを簡単に「fは0<|x−a|<δ0で定義されている」という」
「【定義3.1】(関数の極限)0<|x−a|<δ0で定義されている関数f(x)がx→aのときある数αに収束convergeするとは、任意のε>0に対して、正数δ>0(δ<δ0)が存在して0<|x−a|<δ ⇒| f
(x)−α|<εが成り立つことをいう。αをx→aのときのf(x)の極限limitといい、極限αが存在するとき、f(x)はx→αのとき収束する、極限をもつなどという 」
・細井『はじめて学ぶイプシロン・デルタ』4章(極限値条件2pp.28-29;p.31)
極限値条件2「 ∀ε>0 ∃δ>0
∀x
( 0<|x−x0|<δ
⇒ | f
(x)−A|<ε)」(p.28)
「極限値条件2を考えるのにあたって、関数f(x)は点x=aの前後では定義されているのだとしていました。つまり、あるα,α'&
gt;0があって、少なくともx∈(a-α,a)∪(a,a+α')であるようなxに対してはf(x)は値が定まっているのだとしていました。場合によっ
ては、f(x)はaの右側のある区間(a,a+α')あるいは(a,a+α']でしか定義されていないということもあります。…こういうときには、
x∈(a,a+α)であるようなxにたいしてだけ極限値条件2を考えることにします。そして、極限値が存在する場合には、必要なら、…と表し、x=aにお
ける右極限と言います。f(x)がaの左側のある区間(a-α,a)あるいは[a-α,a)でしか定義されていないときにも、同様に極限を考えて、…と表
し、左極限と言ったりします。x=aの両側で定義されている場合でも、必要なら、右極限や左極限を計算します。極限があるのは、右極限と左極限の両方が
あって、それらが一致している場合です」(pp.31-32)
そこでの定義の有無
↓
○ x0は定義域に属し、x0の両隣も定義域: x0が《定義域の内点》(たとえば、区間の中間)
× x0は定義域に属し、x0の一方の隣も定義域だが、他方の隣は、定義域ではない: たとえば、閉区間の端点(定義域に属す「《定義域の集積点》である《定義域の境界点》」)
× x0は定義域に属すが、x0の両隣は定義域でない: x0が孤立点(定義域に属す「定義域の集積点でない境界点」)
○ x0は定義域に属さないが、x0の両隣は定義域:つまり、(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース)
× x0は定義域に属さないが、x0の一方の隣は定義域: たとえば、開区間の端点(定義域に属さない「定義域の集積点である境界点」の特殊ケース)
× x0は定義域に属さず、x0の両隣も定義域に属さない: つまり、x0は定義域の外点