実数値関数の極限の定義:トピック一覧 |
・定義:距離空間上で定義された実数値関数の収束・極限値 ・定理: 関数の収束と点列数列の収束の関連 |
※ 実数値関数に関する諸概念の定義:実数値関数の定義と諸属性/実数値関数の極限/連続性/可測関数/※実数値関数の極限の具体例:1変数関数の収束・極限値/2変数関数の収束・極限値/ n変数関数の収束・極限値/ ※実数値関数の極限の一般化:ベクトル値関数の極限/距離空間のあいだの写像の極限 →総目次 |
定義:距離空間上で定義された実数値関数の収束 convergence・極限値limit |
||
→具体例: 1変数関数の収束・極限値/ 2変数関数の収束・極限値/ n変数関数の収束・極限値/→一般化:ベクトル値関数の極限/距離空間のあいだの写像の極限 →活用例:連続性の定義 |
||
舞台設定 |
以下の手順で設定した舞台上で、 Step1:集合X (集合ならなんでもよい)を用意する。 Step2:実数を全てあつめた集合(実数体)Rを用意する Step3:「集合X」から「実数体R」への実数値関数 f を用意。 つまり、「 f:X→R 」 Step4:集合Xに距離dX を定めて、集合X上に、距離空間( X , dX )を設定。 Step5:実数体Rに距離dを定めて、集合Y上に、距離空間( R , d )を設定。 Step6:「集合X」上の動点を、Pと名づける。 「集合X」上の定点を、Aと名づける。 つまり、「P, A∈X」 |
|
はじめに |
「 距離空間( X , dX )上で点Pを点Aに近づけたとき、実数値関数 f (P) が、実数cに収束する」 「距離空間( X , dX )上で点Pを点Aに近づけたときのf (P) の極限は実数cである」 f ( P )→c ( P → A ) ![]() とは、 点Pを、点Aと一致させることなく点Aに近づけたとき、 点Pの点Aへの接近経路にかかわらず、 実数値関数 f (P) の値が同じ1つの実数値cに近づくことをいう。 |
[ 文献]矢野『距離空間と位相構造』1.1.3(p.13)。 |
* 上記の定義では、「近づく」とはいかなる事態を指すのか、という点が、不明確。そこで、厳密には、「距離空間上で定義された実数値関数の極限値」は、 以下のように、定義される。 |
||
厳密な 論法 |
「 距離空間( X , dX )上で点Pを点Aに近づけたとき、f (P) が、実数cに収束する」 「距離空間( X , dX )上で点Pを点Aに近づけたときのf (P) の極限は実数cである」 f ( P )→c ( P → A ) ![]() ![]() とは、 任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、ある正の実数δをとると、 0<dX( P, A )<δ ⇒ d ( f (P), c )=| f (P)−c| <ε が成り立つ ということ。 この定義を、論理記号で表せば、 (∀ε>0)(∃δ>0)(∀P∈X)(0<dX(P, A)<δ ⇒ d ( f (P), c )=| f (P)−c|<ε) となる。 |
|
近傍を |
「 距離空間( X , dX )上で点Pを点Aに近づけたとき、f (P) が、実数cに収束する」 「距離空間( X , dX )上で点Pを点Aに近づけたときのf (P) の極限は実数cである」 f ( P )→c ( P → A ) ![]() ![]() とは、 実数cの任意の(どんな)「R上のε近傍 Uε( c )」に対して(でも)、 ある「Xにおける点Aの除外δ近傍U*δ(A)」が存在して、 f ( U*δ(A) ) ⊂ Uε( c ) を満たす ということ。 この定義を別の表現でいうと、 任意の(どんな)正の実数εに対して(でも)、ある正の実数δが存在して、 「 f ( U*δ(A) ) ⊂ Uε( c ) 」 すなわち「 P∈U*δ(A) ならば、f (P) ∈Uε( c )」 を成り立たせる、 ということ。 この定義を、論理記号で表せば、 (∀Uε( c ))(∃U*δ(A))( f ( U*δ(A) ) ⊂ Uε( c ) ) (∀ε>0)(∃δ>0)( f ( U*δ(A) ) ⊂ Uε( c ) ) (∀ε>0)(∃δ>0)(∀P∈X)( P∈U*δ(A) ⇒ f (P) ∈Uε( c )) となる。 |
→ [トピック一覧:実数値関数の極限]→総目次 |
舞台設定 |
この定理は、 Step2:実数を全てあつめた集合(実数体)Rを用意する Step3:「集合X」から「実数体R」への実数値関数 f を用意。 つまり、「 f:X→R 」 Step4:集合Xに距離dX を定めて、集合X上に、距離空間( X , dX )を設定。 Step5:実数体Rに距離dを定めて、集合Y上に、距離空間( R , d )を設定。 Step6:「集合X」上の動点を、Pと名づける。 「集合X」上の定点を、Aと名づける。 つまり、「P, A∈X」 |
[ 具体例]→1変数関数の収束の、数列の収束への言い換え → 2変数関数の収束の、点列・数列の収束への言い換え → n変数関数の収束の、点列・数列の収束への言い換え [ 類例]→ベクトル値関数の収束の、点列の収束への言い換え [一般化] →距離空間の間の写像の収束の、点列の収束への言い換え [ 文献] |
|
定理 |
次の命題 P,Qは互いに言い換え可能である。つまり、命題P⇔命題Q。 命題P: 「距離空間( X , dX )上で点Pを点Aに近づけたとき、 f (P) が、実数cに収束する」 これを、記号であらわせば、 f (P)→c ( P→A ) ![]() |
||
命題 Q:距離空間( X , dX )上のどんな点列{ Pi }={ P1 , P2 , P3,…}についてであれ、 1. その点列{ Pi }={ P1 , P2 , P3,…}が点Aに収束し、 かつ 2. その点列の各項 P1 , P2 , P3,…がどれも点Aと一致しない 限り、 その点列の各項 P1 , P2 , P3,…を実数値関数fによりR上に写した像の数列 { f ( Pi ) }={ f ( P1 ), f ( P2 ) , f ( P3 ) ,… } は実数cに収束する。 つまり、 距離空間( X , dX )上の任意の点列{ Pi }={ P1 , P2 , P3,…}について、 Pi→A (i→∞) かつ P1≠A , P2≠A , P3≠A ,…ならば、f ( Pi)→c (i→∞) 論理記号で表すと、 (∀{ Pi })(( Pi→A (i→∞)かつ(∀i) ( Pi ≠A) )⇒ f ( Pi) → c (i→∞) ) |
|||
活用例 |
→ [トピック一覧:実数値関数の極限]→総目次 |
reference)
矢野公一『
距離空間と位相構造』共立出版、1997年、1.1.3関数と写像の連続性(p.13-)。