定理:絶対値の対数の微分
( log|x| )’=1/x , x∈R , x≠0 [『高等学校微分積分』p.62]
※なぜ?→証明
定理:関数の絶対値の対数の微分 logarithmic derivative
( log| f(x) | )’= f ' (x)/ f (x) 、ただしf(x)≠0、f(x)が微分可能なxの範囲において。 [『高等学校微分積分』p.62]
※なぜ?→証明
※活用例:対数微分法、相対変化率
関数の対数微分の応用(2)―― 相対変化率 the relative rate of change
関数の絶対値の対数の微分公式
( log| f(x) | )’=
f ' (x)/
f(x)
≡
は、
f(x)の
xにおける相対変化率
the relative rate of change of f(t)
増加率
成長率
などの名称で、
経済学に頻繁に登場。
経済学では、これを「変化率」と呼ぶこともあるようだけど、
数学書では、「変化率」という言葉は微分係数と同義に用いられることもあるので、
この経済学の言い回しは、混乱のもとになるような気がするのですが・・・。
※相対変化率の具体例−自動車の速度計・加速度計
相対変化率の具体例―価格の変化
対数微分法・相対変化率の活用例―[実質GNP]=[名目GNP]/[物価水準] とすると、[実質GNP成長率]=[名目GNP成長率]−[物価上昇率]
対数微分法・相対変化率の活用例:素朴な貨幣数量説を対数微分を用いて増加率の関係に変形
対数微分法・相対変化率の活用例:コブダグラス型生産関数を時間について微分
二通りの定義がある模様。
どちらも等しくなるので、心配無用。
【共通の定義】
関数
f(x)の
x=
x0における弾力性
η(
x0)=[
x=
x0における
f(x)の変化率]/[
x=
x0における
xの変化率]
ところが、「変化率」の定義の違いから、
以下に見るように、二種類の「弾力性」定義が生じてしまう。
二種類の「変化率」は、お互いに値もことなるが、
そこから定義される二種類の「弾力性」については、
どういうわけか、どちらの値も、等しくなる。
だから、正確に言えば、
変化率の異なった二つの定義によって、
ただ一様に定義された「弾力性」について、二つの解釈がなされうる、
ということになるだろう。
【「弾力性」の定義1】
[ Goldstein,et.al, Calculus and Its Applications, pp.282-284. ]
[a-1] x=x0におけるf(x)の変化率
変化率を、前項の相対変化率で定義する。
単位は、「x一単位あたりで何パーセントの変化率」になる。
ゆえに、
x = x0におけるf(x)の変化率は、
( log | f (x0) | )’= f ' (x0)/f (x0)
≡
で定義される。
ここで、分子は、x = x0でのfの微分係数であり、
x = x0付近でのxのわずかな挙動に対する、f(x0)の反応幅の比率を、
(実際にはxを単位量も動かしていないのだが)
xを単位量動かしたとしたと想定した場合のf(x0)の増分で表示している。
(瞬間速度は、「瞬間」に進んだ距離を、
実際には為されていない1「時間」に進んだとした想定のもとでの距離で
表示する。これと同じ。)
したがって、このf(x0)の増分が、
そのときのf(x0)の何パーセントにあたるのかを、
相対変化率の全体は表している。
[a-2] x=x0におけるxの変化率
x = x0 におけるxの変化率は、f(x)=xとおいたときの相対変化率
( log | f (x0) | )’= f ' (x0)/f (x0)





で定義される。
x = x0 付近でのxのわずかな挙動に対する、xの反応幅の比率は、当然1。
xを単位量動かしたとしたと想定した場合のxの増分は当然1。
したがって、このxの増分が、そのときの x = x0 の何パーセントにあたるのかを意味する、
x = x0 におけるxの相対変化率は1/x0 。
[b] x=x0におけるf(x)の弾力性
関数f(x) の x = x0 における弾力性
=[ x = x0 におけるf(x)の変化率]/[ x = x0 におけるxの変化率]









∵絶対値の対数の導関数、関数の絶対値の対数の導関数(相対変化率)
【「弾力性」の定義2】
[ 奥野・鈴村『ミクロ経済学』p.278、伊藤『ミクロ経済学』pp.31-37;pp.54-56.]
a. x = x0におけるf(x)及びxの変化率
変化率を、[変化による増分]/[変化前の量]で、定義する。
したがって、x = x0におけるf(x)の変化率は、


x = x0におけるxの変化率は、


一般に、x = x0におけるf(x), xの変化率じたいは、概念としては描けるものの、
( f(x) がx = x0で連続なら ) 0に収束するだけで、関数の性格について何も語らない。
しかし、この二つの変化率の比である弾力性は、関数の性格を捉える上で有力な手がかりとなる。
b. x = x0におけるf(x)の弾力性
関数f(x)のx = x0における弾力性
η(x0)=[x = x0におけるf(x)の変化率]/[x = x0におけるxの変化率]







∵極限の商













∵絶対値の対数の導関数、関数の絶対値の対数の導関数(相対変化率)
なぜ、異なった変化率の定義から出発しても、同一の弾力性定義へ行き着くのか?
第一の変化率:相対変化率(「x一単位あたりで何パーセントの変化率」)、
第二の変化率:[変化による増分]/[変化前の量](増分が0に限りなく近いのでゼロ)
この二つの関係をよくみると、
第一の変化率×
=第二の変化率
つまり、
第一の[x = x0におけるf(x)の変化率]




第二の[x = x0におけるf(x)の変化率]

なので、
第一のf(x)の変化率×
=第二のf(x)の変化率 。
第一の[x = x0におけるxの変化率]:1/x0
第二の[x = x0におけるxの変化率]:



なので、
第一のxの変化率×
=第二のxの変化率
ゆえに、
第二の弾力性=[第二のf(x)の変化率]/[第二のxの変化率]
=(第一のf(x)の変化率)/(第一のxの変化率) ∵limxが分母分子で打ち消しあう
=第一の弾力性
(reference)
吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 微分・積分 新訂版』啓林館、pp.49-52.
竹之内脩『経済・経営系数学概説』新世社、1998年、pp.92-93。
和達三樹『微分積分』岩波書店、1988年、pp.47-52.
高橋一『経済学とファイナンスのための数学』新世社、1999年、pp.49-55.
Chiang, Fundamental Methods of Mathematical Economics: Third Edition, McGraw Hill,1984. pp.155-173.
Goldstein,Lay,Schneider, Calculus and Its Applications (International Editions): Eight Edition, Prentice Hall, 1999.
中谷巌『入門マクロ経済学第三版』日本評論社、1993年、p.110;162;356
岩田一政『国際経済学』新世社、1990、pp.79-80.
岩田一政『現代金融論』新世社、1992、p.23.
奥野正寛、鈴村興太郎『ミクロ経済学』岩波書店、1985年、p.80;84;90:108;168;180;197:199;278.
伊藤元重『ミクロ経済学』日本評論社、1992年、pp.31-37;pp.54-56.
縄田和満『EXCELによる回帰分析入門』1998年、pp.6-7.