戻る


行列の標準形  
(舞台設定)
R実数をすべて集めた集合実数体) 
A(m,n)型実行列 
(主張の確認)
(m,n)型実行列Aは、どのようなものでも、基本変形のみを用いて、次の形の標準形に変形できる。  
     
   Image1386.gif  
 この標準形は、(1,1)成分, (2,2)成分, …, (r,r)成分というr個の成分だけが1、  
     そのほかの
成分はすべて0   
 という行列。   

戻る


(証明) [斎藤『線形代数入門2章§4定理4.2(pp.50-51);砂田『行列と行列式』§4.2定理4.11(pp.144).] 
次の手順にしたがうことで、
基本変形だけで、あらゆる行列を標準形に至らせることができる。 
なお、ここでは、
(m,n)型実行列Am>nである場合に、A標準形に至らせる手順のみを取りあげる。
Step0:  
 
(m,n)型実行列Aが、零行列であるか否かをチェック。 
  
(i) (m,n)型実行列Aが、零行列であるケース     
    →
Aは、もともと、標準形である。1になっている成分の個数(rankA)=0]。 
  
(ii)(m,n)型実行列Aが、零行列ではないケース 
      →
step1へ進む。   
Step1:         
  
Step1-1下図のように、(m,n)型実行列Aの(1,1)成分が0であるならば、
      
      Image1427.gif
      列の入れ替えを行う列基本変形type2 と、
      行の入れ替えを行う行基本変形type2 だけを用いて、
      (m,n)型実行列Aの(1,1)成分に、非0を持ってくる。 
  
Step1-2(m,n)型実行列A(1,1)成分を要として第1行を掃き出す。  
      それから、
(m,n)型実行列A(1,1)成分を要として第1列も掃き出す。 
      その結果、次のかたちが得られる。  
             
        Image1428.gif     
      ※具体的には?→詳細     
      ※「掃き出す」とよばれる変形は、基本変形のみの組み合わせであることに注意。 
  
Step1-3(m,n)型実行列Aから、第1行第1列を取り去った残りの(m1,n1)型行列が、
      
零行列であるか否かをチェック。  
        
(i) (m1,n1)型実行列零行列であるケース     
            →Aは標準形に到達。1になっている成分の個数(rankA)=1。 
             確かに、基本変形だけで標準形に到達している。 
            
            Image1429.gif  
        (ii) (m1,n1)型実行列零行列ではないケース 
            →
step2へ進む。   
Step2:     
  
Step2-1:下図のように、(m,n)型実行列Aの(2,2)成分が0であるならば、 
        
        Image1430.gif    
         列基本変形type2を用いた、第2列第3列第n列との入れ替え 
         行基本変形type2を用いた、第2行第3行第m行との入れ替え 
      だけによって、   
      Aの(2,2)成分に非0を持ってくる。
  
Step2-2(m,n)型実行列Aの(2,2)成分を要として第2行を掃き出す
      それから、(m,n)型実行列Aの(2,2)成分を要として第2列も掃き出す。 
      すると、次のかたちが得られる。 
       
       Image1431.gif    
      ※具体的には?→詳細  
      ※「掃き出す」とよばれる変形は、基本変形のみの組み合わせであることに注意。
  
Step2-3(m,n)型実行列Aから、
      
第1行・第2第1列・第2を取り去った残りの(m2,n2)型実行列が、
      
零行列であるか否かをチェック。  
        
(i) (m2,n2)型実行列零行列であるケース     
            Image1432.gif    
            →Aは標準形に到達。1になっている成分の個数(rankA)=2。 
             確かに、基本変形だけで標準形に到達している。  
        
(ii) (m2,n2)型実行列零行列ではないケース 
            →
step3へ進む。   
Step3:         
 : 
 :   
 :    
Step (n-1):  
  
Step (n-1)-1(m,n)型実行列A( n1,n1)成分が0であるならば、  
           
          Image1402.gif 
        列基本変形type2を用いた、(n-1)nとの入れ替え   
        
行基本変形type2を用いた、(n-1)nmとの入れ替え  
        だけによって、      
        
A( n1,n1)成分に、非0を持ってくる。   
  
Step(n-1)-2(m,n)型実行列A( n1,n1)成分を要として第(n-1)行を掃き出す。  
        それから、
(m,n)型実行列A( n1,n1)成分を要として第(n-1)列も掃き出す。 
           
          Image1403.gif
      ※具体的には?→詳細 
      ※「掃き出す」とよばれる変形は、基本変形のみの組み合わせであることに注意。
  
Step(n-1)-3(m,n)型実行列Aから、
        
第1行〜第(n-1)第1列〜第(n-1)を取り去った残りの(mn+1,1)型実行列が、  
        
零行列であるか否かをチェック。  
        
(i) (mn+1,1)型実行列零行列であるケース     
           
          Image1404.gif
            →Aは標準形に到達。1になっている成分の個数(rankA)=n-1。 
             確かに、基本変形だけで標準形に到達している。  
        
(ii) (mn+1,1)型実行列零行列ではないケース 
            →
stepnへ進む。   
Step n:  
  
Step n-1(m,n)型実行列A( n,n)成分0であるならば、
              
            Image1405.gif  
       行基本変形type2を用いた、n(n+1)mとの入れ替え   
       だけによって、   
       
A( n,n)成分に、非0を持ってくる。 
  
Step n-2(m,n)型実行列A( n,n)成分を要として第n列を掃き出す
      ※具体的には?→詳細 
      ※「掃き出す」とよばれる変形は、基本変形のみの組み合わせであることに注意。
      すると、次の標準形に到達する。  
            
            Image1396.gif    
      1になっている成分の個数(rankA)=n。 
      確かに、基本変形だけで標準形に到達している。 

戻る