順列・組みあわせ・二項定理 : トピック一覧 

 ・定義:順列組み合せ
 ・定理:組合せの性質二項定理多項定理
 ※総目次  


定義:順列 permutation

【定義】  ・「 nPr は、
  自然数n,r ( ただし、nr≧1 ) にたいして、
   n階乗/(nr)の階乗 
  として、定義される。

・すなわち、
 n,rN (ただし、 nr≧1 ) にたいして、
 nPr = n!/(nr) !

※なお、nrの場合(nr) !=0!となるが、
 これは、階乗の定義により、1となる。


【文献】


・薩摩『確率・統計』1-2(p.7)
・柴田『確率・統計』1-3(pp.12-3)
・吉田-栗田-戸田『平成元年3/31文部省検定済:高等学校確率統計』1章2(pp.11-15).
【解釈】 ・異なるn個のものからなる集合があるとき、
 そのうちのr個を取り出し、順序をつけて一列に並べたら、
 その並べ方が何通りあるか?
 これを表すのが、nPr=n!/(nr) !
 この文脈で、nPrは「n個のものからr個とった順列」と呼ばれる。


 nPr =   n  ( n−1 )  ( n−2 )    ( nr+1 ) 
  = n !/(nr) !
 






列の 1
2
3

r
番目に何通りの選び方がありうるか?

【読み】 ・「 nPr を音読する場合は、
 「ぱーみゅていしょん・エヌ・あ〜る」
 「ピーのエヌあ〜る」
 と発音されるとのこと。
  →薩摩『確率・統計p.7

【例】 ・四つの文字{a,b,c,d}から、
 2個とって順序をつけて一列に並べる。何通りの並べ方があるか。
  列の1番目:{a,b,c,d}から一つとるのだから、四通りの選び方がある。
  列の2番目:{a,b,c,d}から一番目の選択を除いたものから、
       一つとるのだから、
       三通りの選び方がある。

 だから、四つの文字から2文字とって並べるときの並べ方の総数は、

 4P2 =   4 
 3 
 
 







列の 1

2

番目に何通りの選び方がありうるか?



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定義:組合せ combination

【定義】

nCr は、
 自然数n,r ( ただし、nr≧1 ) にたいして、
  nPrr ! 
として、定義される。

・すなわち、
  n,rN (ただし、 nr≧1 ) にたいして、
   nCr = nPrr ! = n!/{ r! (nr)!

※なお、n=rの場合r!(n−r)!=0!となるが、これは、階乗の定義により、1となる。 

※活用例:ライプニッツの公式、2変数関数の高階全微分テイラーの定理

【文献】

 ・薩摩『確率・統計』1-2(p.10)
 ・柴田『確率・統計』1-3(pp.13-4).
 ・吉田-栗田-戸田『平成元年3/31文部省検定済:高等学校確率統計』1章3(pp.16-21)

【拡張】

自然数nr=0にたいして、nCrnC0 =1 と定義する。
 →『高等学校確率統計』1章3(p.17)

階乗の定義における「0!=1」を押さえておきさえすれば、上記の定義nCrn!/{ r! (nr)! } に、r=0を代入すれば、そうなる。
 実際、nC0n!/{ 0! (n−0) ! } = n!/(1・n! )=n!n!=1  

【解釈】

・異なるn個のものからなる集合があるとき、そのうちのr個を取り出し、(順序にかまわず)それをただ一組としたら、その組み合わせが何通りあるか?
 これを表すのが、nCr=nPrr ! 
 この文脈で、nCrは「n個のものからr個とった組み合わせ」と呼ばれる。
nPrは、r個の同一要素を異なった順序に並べかえたものを、( たとえば、{a,b,c}{a,c,b}{b,a,c}{b,c,a}{c,a,b}{c,b,a} )別のものとしてカウントしている。
 これらをまとめて一つとしてカウントするようにすれば、nCrになる。
r個の同一要素を異なった順序に並べかえ方は、r !だから、  nCr = nPrr ! = n!/{ r! (nr)! }

【読み】

nCr 」を音読する場合は、

 「こんびねーしょんエヌあ〜る」

 「すィーのエヌあ〜る」

と発音されるとのこと。

  →薩摩『確率・統計p.10




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定理:組合せの性質

(1)    nCr = nCn−r


 【文献】

  ・薩摩『確率・統計』1-2(p.10)
  ・吉田-栗田-戸田『平成元年3/31文部省検定済:高等学校確率統計』1章3(p.17)           

【証明】
 組合せの定義式でrが(nr)になっても、r!が(n−r) !に、(n−r) !r!に入れ替わるだけ。全体としては変わらない。
 左辺=n!/{r! (nr)!}  ∵組合せの定義
 右辺=n!/[(nr) ! {n−(nr)}!]      ∵組合せの定義rのところを nrとおけばよい
   =n!/{(nr) ! r!}
   =nCr =左辺 ∵組合せの定義



(2)   n個の場合と(n−1)個の場合を関係付ける漸化式 
        nCr = n−1C r + n−1C r−1

    これを図式化したのが「パスカルの三角形


 【文献】

 ・薩摩『確率・統計』1-2-例5(p.10)
 ・柴田『確率・統計』1-5(p.18).
 ・吉田-栗田-戸田『平成元年3/31文部省検定済:高等学校確率統計』1章3(p.21)

【証明】
 n−1Cr =( n−1 ) !/[ r! {( n−1 )−r}! ]  ∵組合せの定義
     =( n−1 ) !/{ r! ( nr−1 ) ! }
      =( n−1 ) !/{ r! ( nr ) !/( nr ) }    ∵( n−r−1 ) !=( n−r ) !/( n−r )
      ={ (n−1) ! (n−r) }/{ r! (nr) ! } 

  n−1Cr−1=(n−1 ) !/[ (r−1 ) ! { (n−1 )−(r−1 ) }! ]  ∵組合せの定義
       =( n−1 ) !/{ (r−1 ) ! (nr ) ! }
        =( n−1 ) !/{ r ! (n−r ) !r }    ∵(r−1 ) !r !r
         ={ (n−1 ) ! r }/{ r ! (n−r ) ! }
 ゆえに、
  右辺={ (n−1 ) ! (n−r ) }/{ r ! (n−r ) ! } + { (n−1 ) ! r }/{ r ! (n−r ) ! }
     ={ (n−r ) + r  }・(n−1 ) ! /{ r ! (nr ) ! }     ∵単なる分配則。(n−1) !/{ r ! (nr) !}で括る。
      =n・(n−1 ) !/{ r ! (nr ) ! }
        = n !/{ r ! (nr) ! } ∵n (n−1 ) !n !
         =左辺




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定理:二項定理 Binomial Theorem

【二項定理】  次の等式を二項定理という。
        
(a+b) n = nC0 a n + nC1 an-1 b + nC2 a n-2 b 2 +…+ nCr a nr br +…+ nCn-1 a b n-1 + nCn bn
   
 =
n
Σ
r=0
 nCr anr br 

                 =a n +nan-1b + {n(n−1)/2}an-2b 2 +…+ {n!r! (n−r) !} anr br +…+ n a bn-1+ bn

【例】      a=1とした場合の例
   
(1+x) n = nC0 + nC1 x + nC2 x 2 +…+ nCr xr +…+ nCn−1 xn-1+ nCn xn
n
Σ
r=0
 nCr xr  


【二項係数】   二項定理の展開形は(n+1)項からなる多項式となるが、
        この (n+1)個の項を、第0項から第n項という風に数えあげて行った場合の第r項の係数nCr
        二項係数と呼び、
   
(
n
r
)
        とも書く。

【パスカルの三角形】

       二項係数の値は、
       組み合せについての定理 nCrn−1C rn−1C r−1 を図式化した「パスカルの三角形」を書くと、
       容易に把握できる。
         [図:パスカルの三角形]
       数値化すると、
       [図:パスカルの三角形] 

      だから、
        n=2のとき、(a+b) 2 = 2C0 a 2 + 2C1 a b + 2C2 b 2 = a 2 + 2 a b + b 2
        n=3のとき、(a+b) 3 = 3C0 a 3 + 3C1 a 2b + 3C2 a b 2+ 3C3 b3 = a 3 + 3 a 2b + 3 a b 2+ b3
        n=4のとき、(a+b) 4 = 4C0 a 4 + 4C1 a 3b + 4C2 a 2b 2+ 4C3 ab 3+ 4C4 b4 = a 4 + 4a 3b + 6a 2b 2+ 4ab 3+ b4
        n=5のとき、(a+b) 5 = 5C0 a 5 + 5C1 a 4b + 5C2 a 3b 2+ 5C3 a 2b 3+ 5C4 a b4 + 5C5 a b5
                 =a 5 + 5a 4b + 10a 3b 2+ 10a 2b 3+ 5a b4 + a b5
        n=6のとき(a+b) 6 = 6C0 a 6 + 6C1 a 5b + 6C2 a 4b 2+ 6C3 a 3b 3+ 6C4 a2 b4 + 6C5 a b5+ 6C6 b6
                 =a 6 +6a 5b + 15a 4b 2+ 20a 3b 3+ 15 a2 b4 +6a b5+ b6
          


【活用例】
 →解析学への応用例:2変数関数の高階全微分テイラーの定理
 →確率論への応用例:二項分布(ベルヌーイ分布)
 
【文献】

・薩摩『確率・統計』1-3(pp.12-3)
・吉田-栗田-戸田『平成元年3/31文部省検定済:高等学校確率統計』1章4(pp.22-24)           
          

トピック一覧:順列・組合せ
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多項定理 


薩摩『確率・統計』1-3(p.14)を参照。


(reference)

吉田耕作・栗田稔・戸田宏『平成元年3/31文部省検定済高等学校数学科用 高等学校 確率・統計 新訂版』啓林館.pp.11-24.
柴田文明『理工系の基礎数学7 確率・統計』岩波書店、1996年、pp.11-19。
薩摩順吉『理工系の数学入門コース7 確率・統計』岩波書店、1989年、pp.7-14。