グリーンピース 2016年1月25日 プレスリリース
有害化学物質が多くの有名ブランドの
アウトドア衣料品中で見つかる


情報源:Greenpeace Press Release - 25 January, 2016
Hazardous chemicals found in many outdoor clothing brands
http://www.greenpeace.org/international/en/press/releases/2016/
Hazardous-chemicals-outdoor-clothing-brands/


訳:安間 武 (化学物質問題市民研究会
掲載日:2016年1月29日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/kaigai/kaigai_16/
160125_Greenpeace_Hazardous_chemicals_found_in_many_outdoor_clothingl.html

【ミュンヘン 2016年1月25日】 人の健康と環境に危険な有害で残留性のある化学物質が一流のアウトドア・ブランドの製品中に見出されている。ザ・ノース・フェイス、パタゴニア、マムート、コロンビア、ホグロフスのようなブランドは、持続可能性や自然への愛を主張しているにもかかわらず、彼らの製品に耐候性をもたせるために過フッ素化合物(PFCs)を使用し続けていることをグリーンピース・ドイツの新たな報告書が明らかにした[1]。その報告書『痕跡を残す:アウトドア製品中の隠された有害化学物質』は本日、ヨーロッパ最大のアウトドア製品の展示会 ISPO ミュンヘンにおける記者会見で発表された[2]。

 グリーンピースは、19の異なる国と地域で購入した 40製品をテストした。有害な過フッ素化合物(PFCs)は衣料品だけでなく、靴、テント、バックパック、ロープ、そして寝袋からも見出され、過フッ素化合物(PFCs)が検出されなかったのはわずか 4品目だけであった。テストされたブランドのほとんどは、彼らは最早、最も危険な長鎖 PFCs を使用していないと公的に主張しているにもかかわらず、それらは18品目中で高濃度で見出された[3]。

 ”我々はがんを含む多くの健康影響に関連している長鎖 PFC である PFOA を高レベルでザ・ノース・フェイスとマムートのいくつかの製品中で見出した。この物質はノルウェーではすでに制限されている。これらは、アウトドア愛好家の衣料品が彼らが踏査する場所と同様に持続可能でありクリーンであることを望む彼らにとって残念な結果である”と、デトックス・アウトドア プロジェクトのリーダー、ミルジャム・コップは述べた。

 PFCs は、自然界には存在しない化合物である。いったん環境中に放出されると、それらの大部分は非常にゆっくりと分解し、食物連鎖中に入り込み、ほとんど不可逆的な汚染をもたらす。それらは地球上のどのような離れた場所でもイルカや北極クマのような動物の肝臓や、人間の血液中で見出される[4]。

 ”ザ・ノース・フェイスやマムートのようなブランドは、彼らが製造チェーン中で使用する化学物質になると、彼らが口にする自然への愛とか敬意等の約束を実行しない。アウトドア関係者らとともに、我々は彼らに真のリーダシップと自然への敬意が何を意味するのかを我々に示すよう要求する。有害な化学物質の使用を止め、製品からすぐに有害物質を取り除け(detox)”とコップは付け加えた。

 近年、多くのアウトドアブランドは、短鎖 PFCs はより良い代替であると主張して、長鎖 PFCs から短鎖への切換えを開始している。しかし最近、38か国からの200人以上の科学者らが、布製品を含んで消費者製品の製造のために短鎖を含んで PFCs の使用を避けるよう勧告する’マドリード声明に署名した[5] (訳注1) 。

 大手アウトドア・ブランドはまだ有害化学物質に強く依存しているが、英国ブランドであるパラモ・ディレクショナル・クロージングは本日、有害物質を使用しない(Detox)という約束を発表した[6]。パラモは、その全製造チェーンから PFC を廃絶し、PFCs を使用しない装備は可能であることを示し、業界内で最高の標準を設定したアウトドア製品業界で最初のブランドである。このイギリスのブランドはすでに Detox を約束した34の国際的ファッション及びスポーツ用品のブランドに仲間入りした。

 ”我々は、アウトドアのコミュニティが実際に産業界におけるゲームチェンジャー(訳注:物事の流れや優劣を根底から覆すような、新しい可能性や思想を持つ個人や製品、企業などのこと)となり得ることを確信しており、我々はブランドに、彼らの顧客が求める Detox を受け入れるよう要求している”と、コップは結論付けた。

 これは、支援者とアウトドア愛好家のコミュニティの協力を得て設計されたグリーンピースの初めての製品テストである。(テスト対象製品を選定するために) http://detox-outdoor.org を通じて30,000票以上の投票が収集され、グリーンピースはそのうち最も得票の高った製品を研究所に送った。

編集者への備考
[1] ポリ−及びペル−フッ素化合物(又はPFCs)は、多くの産業プロセスと消費者製品中で使用されている。アウトドア用品産業は製品に防水性や防汚性を持たせるために PFCs を使用しているので、特に重要なユーザーである。いったん、環境中に放出されると、多くの PFCs は非常にゆっくり分解し、環境中に長い年月、残留し、地球全体に拡散する。PFCs のあるものは生殖に害を引き起こし、腫瘍の成長を助長し、ホルモン系に影響を与える。

[2] "Leaving Traces. The hidden hazardous chemicals in outdoor gear" 報告書 『痕跡を残す:アウトドア製品中の隠された有害化学物質』 はここをクリック

[3] For the PFC findings click here.

[4] "Footprints in the Snow" report here.

[5] The Madrid Statement can be read here.

[6] Paramo's detox commitment can be read here.

連絡先:
Constanze Klinghammer, Press Officer, ISPO, +49 175/3454113
Mirjam Kopp, Global Project Leader Detox Outdoor, Greenpeace Switzerland, +41 44 447 41 59, mirjam.kopp@greenpeace.org
Greenpeace International Press Desk, pressdesk.int@greenpeace.org, +31 (0)20 718 2470 (available 24 hours)


訳注1
訳注:製品中の PFCs に関する関連記事
訳注:当研究会が紹介した PFCs の健康影響に関する記事
  1. EHN 2015年8月20日 子どもの免疫系障害に関連する化学物質が授乳期間中に母親から赤ちゃんに移動する ブライアン・ビエンコースキー(EHN)

  2. EHP 科学セレクション 2014年12月 PFOA と高コレストロール: 関連がありそうとする調査結果の根拠

  3. EHP リサーチ 2015年1月 過フッ素化合物と人間の精液の質:生命研究  (アブストラクト)

  4. EHN 2013年12月10日 過フッ素化合物と母乳及び女性の閉経期についての調査

  5. EHN 2013年7月18日 防汚剤は妊娠中の高血圧に関係すチャールストン・ガゼット 2012年4月16日 特別委員会 C8と腎臓・睾丸がんを関連付ける

  6. EHN 2011年7月20日 撥水・撥油・防汚剤などに使われる化学物質により高い曝露をした子どもたちは 注意力がなく衝動的である

  7. チャールストン・ガゼット 2011年7月19日 C8 委員会 デュポンのPFOAでがん死上昇を発見と述べる

  8. 米化学会 C&EN 2011年6月29日 過フッ素化合物(PFCs)は衝動性に関係する

  9. EHN 2009年12月7日  防汚剤は低出生体重と早産に関連する

  10. 米国立環境健康科学研究所ジャーナル EHP 2009年6月号 サイエンス・セレクション 若者への遺産 パーフルオロアルキル酸(PFAAs)とヒトの精子

  11. 国立環境健康科学研究所ジャーナル  EHP 2009年4月号 PFOS と PFOA は不妊と関係がある

  12. EHN 2009年1月29日 PFOA PFOA は母マウスが暴露した子マウスの乳腺の発達を遅らせる

  13. EHP 2008年6月号 サイエンス・セレクション 脳への影響 過フッ素化合物PFCsと神経細胞の発達

  14. 米化学会 ES&T サイエンス・ニュース 2008年4月16日 PFOS は低用量暴露で免疫系に影響を与える

  15. EHP 2007年11月号 サイエンス・セレクション 人体中の PFOS と PFOA 新たな研究が胎児期の曝露と出生時低体重との関連を示す

  16. EHP 2006年8月号フォーラム 化学物質への暴露 PFOA は肝臓の遺伝子発現を変える




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