EHN 2009年1月29日
PFOA は母マウスが暴露した子マウスの
乳腺の発達を遅らせる

解説:アビーD. ベニンホッフ博士

情報源:Environmental Health News, Jan 29, 2009
PFOA slows breast development in mice exposed via mom
Synopsis by Abby D. Benninghoff, Ph.D.
http://www.environmentalhealthnews.org/ehs/newscience/pfoa-impairs-breast-development-in-mice/

オリジナル:White SS, K Kayoko, LT Jia, BJ Basden, AM Calafat, EP Hines,
JP Stanko, CJ Wolf, BD Abbott, SF Fenton. 2008.
Effects of perfluorooctanoic acid on mouse mammary gland development and
differentiation resulting from cross-foster and restricted gestational exposures.
Reproductive Toxicology doi:10.1016/j.reprotox.2008.11.054.

訳:安間 武(>化学物質問題市民研究会)
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/
掲載日:2009年2月2日
このページへのリンク:
http://www.ne.jp/asahi/kagaku/pico/research/ehn/ehn_090129_PFOA_slows_breast_development.html


 焦げ付き防止なべや食品容器中で広く使用されている化学物質に母マウスの妊娠後期又は授乳中を通じ短い時間であっても暴露すると、子マウスの乳腺の発達が遅れる。この研究結果は、たとえ微量であっても発達の重要な期間に暴露すると乳腺の発達に長期的影響を及ぼすことがあることを示している。暴露を制限し、関連する健康影響を低減するために措置をとることができるよう化学物質はいつ、最も危険となるかを知ることが重要である。

何をしたか?

 この化学物質(PFOA)が乳腺発達を変更する時期を正確に特定するために、出産前の3つの異なる期間、PFOAをマウスに暴露させた。

 最初の二つの実験では、妊娠メスマウスは妊娠期間を通じて(実験1)又は妊娠中期及び後期だけ(実験2)のどちらかにPFOAを(体重1kg当たり5mgまで)経口で投与された。

 出生後、同腹の子マウスは他の母親の子マウスと交換され、母マウスはお互い養母として(相互養母)子育てをした。この交換は4つの暴露シナリオをもたらす。PFOAへの暴露なし、胎内での暴露のみ、養母のミルクだけからの暴露、胎内とミルク両方からの暴露である。

 研究者らは、子マウスが成熟してから(実験1)、又は新生児の時に(実験2)、PFOAの乳腺発達への影響を検証した。彼らは、導管、組織、及び腺が形成されるべき時期の存在または不在によって成長の遅れを評価した。遅れが長ければ長いほど、成長が低ければ低いほど、より深刻な影響を示した。

 第3の実験では、研究者らはPFOA暴露の特定のウインドウをテストした。彼らは、非常に短い2日間という暴露を含んで妊娠マウスを妊娠後期の異なる間隔で暴露させた。子孫(子マウス)の乳腺発達は、マウス生涯の中期(出生後22〜62日)及び老年期(18か月)に評価された。

何がわかったか?

 胎内又は母親のミルク又はその両方でPFOAに5 mg/kg体重まで、暴露させた全ての子孫(子マウス)は、成獣になるまでに乳腺発達を損なわれた。実際、相互養母の実験はPFOA暴露のひとつの経路が、他の経路より悪い影響を及ぼすことを示した。

 もうひとつの発見は、胎内でPFOAに暴露した全ての子孫は出生後、最初の日に乳腺の発達に遅れを示したことである。乳腺発達の変化は、血中のPFOAのレベルがコントロール・マウスと同程度に復帰した後も成獣になるまで継続した。

 最後に妊娠の非常に後期または出生後早い時期に短期間、PFOAに暴露した子孫はPFOAの発達毒性に特に脆弱であった。実際に、急速な乳腺変化の重要な時に授乳を通じた非常に短い暴露(少なくとも12時間)で乳腺発達に有害影響を及ぼすのに十分であった。

何を意味するか?

 この研究の結果、出生後早い時期、特に発達に重要な期間にPFOAにわずかにでも暴露すると乳腺構造に永久的な変化をもたらすかもしれないことを示唆している。これはダイオキシンのような他の環境物質についても同様である(Fenton 2006)。

 PFOAがどのようにしてこれらの乳腺発達の変更を引き起こすのかについては知られていないが、著者らはこの研究を継続しており、PPARアルファと呼ばれる信号分子の役割の可能性を調べている。

 子孫のマウスで検出されたPFOA濃度(2,000ナノグラム/リットル)は、高度に暴露したコミュニティで報告されている個人の暴露(約500ナノグラム/リットル)より約4倍高かった。それらは、一般人々の集団(平均5ナノグラム)よりはるかに高い。

 したがって、人の胎内でのPFOAへの暴露が子どもの初期の乳腺発達又は女性の後の授乳能力に影響を与えるかどうか分からない。

資料


化学物質問題市民研究会
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